✍ 古家あきら | 2026-10-05 更新

有料老人ホームの届出とサ高住の登録の違い — 運営会社の調べ方(届出17,246件・サ高住8,312棟・会社サイト553社のデータ)

先に結論です。有料老人ホームは「届出」、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は「登録」で、仕組みが別です。 有料老人ホームを設置する人は、あらかじめ都道府県知事に届け出なければなりません(老人福祉法29条1項)。届け出なかったときは30万円以下の罰金の対象です(同法40条1号)。一方、サ高住は、高齢者住まい法(高齢者の居住の安定確保に関する法律)5条1項で、建物ごとに都道府県知事の登録を「受けることができる」と書かれた、任意の登録です。

しょくばログという会社データベースを運営していると、介護の会社の会社概要に「住宅型有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」と施設の種類が並んでいるのをよく見かけます。ところが、建設業や旅行業のように番号を並べている会社はほとんどありません。条文と国の公表資料で制度を整理したうえで、会社のサイトを数えて見えたことを出します。

有料老人ホームとは:「届出」が義務の施設

法律の定義

老人福祉法29条1項は、有料老人ホームを次のように定めています。老人を入居させ、①入浴・排せつ・食事の介護、②食事の提供、③その他の日常生活上必要な便宜で厚生労働省令で定めるもの(あわせて「介護等」)のいずれかを供与する事業を行う施設で、老人福祉施設や認知症グループホームなどではないもの、です。委託して供与する場合や、将来供与すると約束する場合も含みます。

厚生労働省の発表資料は、これを「高齢者を入居させ、食事の提供、介護の提供、家事の供与、健康管理のいずれかのサービスを行う施設」と言い換えています。食事を出すだけでも、高齢者を住まわせていれば有料老人ホームにあたる、というのが法律の線引きです。施設の名前に「有料老人ホーム」と付いているかどうかでは決まりません。

届出の中身と、変更・廃止の届出

設置しようとする人は、あらかじめ、設置予定地の都道府県知事に、施設の名称と設置予定地、設置者の名称と所在地などを届け出ます(29条1項)。その後も次の届出が続きます。

届け出なかったり、うその届出をしたりすると、30万円以下の罰金の対象です(40条1号)。届出の窓口は、厚生労働省の資料では「届出先の都道府県等」(都道府県・指定都市・中核市)と書かれています。

届出のあとに設置者が負う義務

届け出たホームの設置者には、帳簿の作成と保存(29条6項)、入居する人・入居しようとする人への情報の開示(29条7項)、家賃・敷金・介護等の対価以外の権利金を受け取らないこと(29条8項)、前払金を受け取る場合の保全措置(29条9項)などの義務があります。

都道府県知事は、設置者が報告した「有料老人ホーム情報」を公表しなければなりません(29条11項・12項)。立入検査(29条13項)、改善命令(29条15項)、事業の制限・停止命令(29条16項)の権限もあり、命令に違反すると6か月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金です(39条)。

一方で、老人福祉法29条には、建設業や宅建業のような「番号を標識に掲げる」決まりが見当たりません。 届け出たかどうかを、施設の看板や会社のサイトの番号で確かめる、という方法がとりにくい制度です。

サ高住とは:任意の「登録」

登録の対象と中身

サ高住は、高齢者向けの賃貸住宅または有料老人ホームで、居住の専用部分があるものに高齢者を入居させ、状況把握サービス(心身の状況を把握し、状況に応じた一時的な便宜を供与する)と生活相談サービスなどを提供する事業です(高齢者住まい法5条1項)。登録は建物ごとに受けます。

指定都市と中核市では、この法律の都道府県知事の事務を市長が行います(78条)。

「登録すれば届出は要らない」の特例

ここが一番混乱しやすい所です。食事などを提供するサ高住は、有料老人ホームの定義にもあてはまります。そこで高齢者住まい法23条は、サ高住の登録を受けている有料老人ホームの設置者には、老人福祉法29条1項から3項(届出・変更届・廃止届)を適用しないと定めています。老人福祉法29条5項も、未届の疑いがあるホームから、サ高住の登録住宅を除いています。

整理すると、次の3つに分かれます。

全国の数:届出17,246件、未届584件、サ高住8,312棟

厚生労働省が令和7年7月4日に公表した「令和6年度 有料老人ホームを対象とした指導状況等のフォローアップ調査(第16回)」によれば、令和6年6月30日時点で次のとおりです。

同じ資料の推移を見ると、未届は平成28年6月30日時点の1,207件(9.3%)が最も多く、その後は減っています。届出のほうは平成21年10月末の4,864件から、15年ほどで3.5倍になりました。なお、この未届の数には、報告の時点で有料老人ホームにあたるか判断できていない施設も含まれます。

前払金の調査もあり、17,246件のうち前払金を受け取っているのは2,317件、そのうち保全措置を講じていないのは23件(1.0%)でした。

サ高住は、国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」が公表する登録状況で、令和8年8月末時点で8,312棟・290,950戸です。1棟あたりにならすと約35戸です。都道府県別では、大阪府が858棟(33,606戸)で最も多く、北海道526棟、兵庫県483棟、埼玉県478棟、東京都422棟が続きます。

会社のサイトは何を書いているか:553社のデータ

しょくばログが保存している会社の公式サイトの文章(31,159社)で、2つの言葉に触れている会社を数えました。

有料老人ホームに触れる553社のうち、「介護付有料老人ホーム」の言葉があるのは184社(33.3%)、「住宅型有料老人ホーム」は243社(43.9%)、「健康型有料老人ホーム」は0社でした。

届出や登録の番号は、ほとんど書かれていない

サ高住の登録番号を載せていた4社の書き方は、「登録番号 第12村014号」「松山市登録番号 第67号」「登録番号4号」のようにばらばらでした。登録の窓口が都道府県・指定都市・中核市に分かれていることもあり、旅行業や賃貸住宅管理業のように「番号の形を見れば分かる」ということはありません。

賃貸住宅管理業の登録では、言葉に触れた会社の約9割が番号を載せていました。介護の住まいは、番号ではなく施設の種類で自社を説明している、という違いがはっきり出ています。

運営している法人の顔ぶれ

553社を、社名の法人格で分けると次のとおりです。

医療法人と社会福祉法人をあわせると183社(33.1%)で、約3分の1です。 サ高住に触れる346社では、株式会社164社(47.4%)、医療法人79社(22.8%)、社会福祉法人66社(19.1%)で、医療法人と社会福祉法人の合計が42.0%に上がります。

業種(日本標準産業分類の大分類)は、有料老人ホームに触れる553社のうち「医療,福祉」が370社(66.9%)、分類不能が99社でした。所在地は東京都76社、大阪府57社、愛知県41社の順です。サ高住に触れる346社は、東京都42社、大阪府38社、兵庫県22社でした。閉鎖の登記が入っている会社は、どちらも0社です。

社名から施設は探せない

法人データベース(579万社)で、社名に「老人ホーム」を含む法人は65件しかなく、そのうち31件は地方公共団体(201)の区分でした。「高齢者住宅」は31件、「サービス付」は1件です。全国1万7千件を超える有料老人ホームや8千棟を超えるサ高住は、運営法人の社名にはほとんど表れません。 施設名と運営法人の名前が違うのが普通なので、法人の名前から施設を探すのでなく、施設から運営法人をたどります。

運営会社を調べる手順

1. 施設の種類を確かめる:パンフレットや重要事項説明書で、「介護付」「住宅型」の有料老人ホームか、サ高住か、その両方か(サ高住の登録を受けた有料老人ホームか)を見る 2. サ高住なら登録を確かめる:国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」で建物を探し、登録の有無と事業者名を見る。登録簿は法10条で一般の閲覧に供されるので、都道府県・指定都市・中核市の窓口でも確かめられる 3. 有料老人ホームなら届出を確かめる:都道府県等が公表する有料老人ホーム情報(老人福祉法29条12項)や届出の窓口で、届出済みかを確かめる。番号の表示は義務ではないので、サイトに番号が無いことだけでは判断しない 4. 介護保険のサービスがある場合:介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)や併設の訪問介護などは、介護保険の事業所として登録されている。運営法人の調べ方は介護事業所の運営法人を調べる方法にまとめています 5. 運営法人そのものを確かめる:法人番号は法人番号とはで、実在や閉鎖の有無は会社の実在と倒産の確認で見る。社会福祉法人なら社会福祉法人の財務諸表の見方、医療法人なら医療法人の経営状況の調べ方で決算の情報にあたれる 6. 処分歴を確かめる:改善命令や事業停止命令は公示されます(29条17項)。探し方は行政処分の調べ方にあります

介護の事業者の経営の難しさについては、訪問介護・訪問看護の3法人の破産から見えることも参考になります。許認可全般の探し方は会社の許認可の調べ方です。

よくある質問

有料老人ホームの届出は義務ですか?

義務です。老人福祉法29条1項で、有料老人ホームを設置しようとする者は、あらかじめ都道府県知事に届け出なければならないと定められています。届け出なかった場合やうその届出は、30万円以下の罰金の対象です(40条1号)。ただし、サ高住の登録を受けた有料老人ホームは、高齢者住まい法23条により届出の規定が適用されません。

サ高住の登録は義務ですか?

義務ではありません。高齢者住まい法5条1項は、サービス付き高齢者向け住宅事業を行う者は、建物ごとに都道府県知事の登録を「受けることができる」と定めています。ただし、登録していない住宅が「登録サービス付き高齢者向け住宅」やそれに類似する名称を使うことは禁止されています(14条)。

有料老人ホームとサ高住は何が違いますか?

根拠の法律と手続きが違います。有料老人ホームは老人福祉法の施設で、介護・食事・家事・健康管理のいずれかを提供すれば該当し、届出が義務です。サ高住は高齢者住まい法の住宅で、状況把握と生活相談のサービスを付けた賃貸住宅などが任意で登録を受けるものです。食事などを提供するサ高住は、有料老人ホームにもあたります。

未届の有料老人ホームはどのくらいありますか?

厚生労働省の第16回フォローアップ調査では、令和6年6月30日時点で584件、有料老人ホーム全体の3.3%でした。この数には、報告の時点で有料老人ホームにあたるか判断できていない施設も含まれます。最も多かったのは平成28年6月30日時点の1,207件(9.3%)です。

会社のサイトに届出や登録の番号が載っていないのは問題ですか?

それだけでは判断できません。老人福祉法29条には、有料老人ホームの届出番号を掲げる決まりが見当たりません。しょくばログの保存データでも、有料老人ホームに触れる553社のうち、届出に触れた会社は0社、サ高住の登録番号らしき表記は346社のうち4社でした。サ高住は国土交通省の情報提供システムや登録簿で、有料老人ホームは都道府県等の公表情報や窓口で確かめます。

データについて

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

← お役立ち記事一覧へ