✍ 古家あきら | 2026-10-14 更新
駅ナカのアクセサリー店「チャンス・ツー」が破産──売上はピークの約22億円から約4億円へ。5店舗を譲渡してからの破産と、社名に「アクセサリー」を持つ会社104社
先に結論です。駅構内の商業施設などで女性向けアクセサリー店を展開していた大阪市北区のチャンス・ツーが、10月2日までに大阪地裁から破産開始決定を受けたと、10月14日に報じられました。 負債総額は約6億円です。売上高はピークの2009年3月期に約22億円ありましたが、2026年3月期は約4億円まで減っていました。
この件で目を引くのは、破産の前に5店舗を他社へ事業譲渡していて、その5店舗はいまも営業を続けている点です。お店の看板が変わらずに残っていても、運営していた会社のほうは破産している。そういう形の幕引きは珍しくありません。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「お店は開いているのに、会社はもうない」という状態が外からはとても見えにくいと感じます。この記事は経営の是非を論じるものではありません。報道で確かめられる事実と、働く人・取引先が知っておきたい学びをまとめます。
報道で確認できる事実
報道(東京商工リサーチの調べ)で確認できる内容は次のとおりです。
- 会社:チャンス・ツー(大阪市北区)。1996年設立
- 事業:25〜35歳の女性を主な対象にしたアクセサリーの販売。自社ブランド「guilty」などを展開し、全国の主要駅の構内にある商業施設などに出店
- ピーク時の店舗数:直営店とフランチャイズ店を合わせて20店舗以上
- 売上高:2009年3月期に約22億円、2026年3月期に約4億円
- 手続き:10月2日までに大阪地裁から破産開始決定
- 負債総額:約6億円
- 店舗:不採算の1店舗を除く5店舗を他社へ事業譲渡。5店舗は営業を継続
経緯として報じられているのは、不採算店の撤退などで業績が下がり、そこへ新型コロナの感染拡大が重なって大きな赤字を出し、債務超過になったという流れです。店舗を増やしていた時期に膨らんだ借入金が重荷になり、資金繰りが苦しくなったとされています。
「店舗の譲渡」と「会社の破産」は別のこと
今回のように、事業や店舗を先に他社へ移し、残った会社を破産で清算する進め方があります。お客さんから見れば、店名も場所も変わらないので、何も起きていないように見えます。
ただ、会社の側では大きなことが起きています。店舗で働く人がどうなるかは、譲渡先に引き継がれるかどうかで分かれます。取引先にとっては、譲渡前の会社への売掛金は、破産した会社への債権として残ります。店が開いているから大丈夫、とは限りません。
事業を譲ったあとに会社が倒産する流れの見分け方は、事業譲渡のあとに倒産する会社の見分け方で詳しく整理しました。破産・民事再生・会社更生などの手続きの違いは、倒産の種類の違いにまとめています。
しょくばログの台帳で見たアクセサリー関連の会社
しょくばログは、国税庁の法人番号データをもとに全国の会社を収録しています。株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社に絞り、社名に含まれる言葉で数えました(2026年10月14日時点の台帳)。
- 社名に「アクセサリー」を含む会社:104社。うち有限会社が58社(55.8%)
- 社名に「ジュエリー」「ジュエル」を含む会社:1,239社。東京都が452社(36.5%)、山梨県が97社
- 社名に「宝飾」を含む会社:610社。うち有限会社が389社(63.8%)
ジュエリー関連で山梨県が多いのは、甲府周辺が宝飾品の産地として知られているためと考えられます。アクセサリーや宝飾の会社は、有限会社の割合が高いのも特徴です。2006年より前に設立された会社が多い分野だと読めます。
登記が閉鎖されている会社の割合も見ました。アクセサリーは104社のうち28社(26.9%)、ジュエリー・ジュエルは213社(17.2%)、宝飾は124社(20.3%)でした。台帳全体の5,160,002社では13.5%です。閉鎖には合併や休眠会社の整理も含まれるため、倒産の多さを示す数字ではありません。あくまで「この名前の会社は入れ替わりが多めだった」という断面です。閉鎖の記録がどこまでさかのぼって見られるかは、閉鎖登記簿はいつまで見られるかで触れています。
台帳では「まだ閉じていない」ことに注意
しょくばログの台帳でチャンス・ツー(法人番号 8140001025594)を見ると、10月14日時点で閉鎖の記録はありません。破産開始決定が出ても、すぐに登記が閉じられるわけではないからです。破産の手続きが終わるまで、会社は登記上は残ります。
つまり「台帳に閉鎖と出ていない=営業している」とは言えません。法人番号での確認方法は、法人番号の調べ方にまとめています。
働く人・取引先が見ておきたい3つのこと
1. 売上の「ピークからの落ち方」
今回の会社は、ピークから約5分の1まで売上が減っていました。1年で急に落ちたわけではなく、長い時間をかけて縮んでいたことになります。決算の数字が見られる場合は、直近1年だけでなく、何年か前と比べると流れがつかめます。
2. 店舗を増やした時期の借入金
報道では、出店を広げた時期の借入金が重荷になったとされています。店舗が減っても借入金は減りません。店の数が減っているのに、会社の規模が大きく見えるときは、借入の残り方を気にしておくとよさそうです。
3. 給料や取引代金の遅れ
給料の支払いが遅れ始めたときの考え方と、国の立替払い制度は、給料が遅れる会社は危ないかで整理しました。服や雑貨の小売で倒産がどう動いているかは、アパレルの倒産動向が参考になります。
運営者として思うこと
駅ナカのお店は、通勤や乗り換えのついでに立ち寄れる便利な場所です。そのぶん家賃も高く、売上が落ちたときの負担は重くなりがちです。コロナで人の流れが止まった時期の打撃が、数年たって表に出てくる会社は今もあります。
一方で、5店舗は他社のもとで営業を続けています。お店で働く人やお客さんにとって、店が残ったことには意味があると思います。会社が終わることと、お店や仕事がすべてなくなることは、必ずしも同じではありません。
よくある質問
チャンス・ツーのお店はもう閉まっていますか?
報道では、不採算の1店舗を除く5店舗は他社へ事業譲渡され、営業を続けているとされています。運営する会社が変わっているため、ポイントや保証などの扱いは各店舗で確認するのが確実です。
破産開始決定が出たら、登記はすぐ閉鎖されますか?
すぐには閉鎖されません。破産の手続きが終わるまで、会社は登記上残ります。そのため、しょくばログの台帳でも決定直後は閉鎖と表示されないことがあります。
社名に「アクセサリー」が入る会社は危ないのですか?
社名だけで危ないとは言えません。登記の閉鎖割合が全体より高めだったのは事実ですが、閉鎖には合併や休眠会社の整理も含まれます。個々の会社は、決算や取引の実態で判断する必要があります。
店舗で働いていた人はどうなりますか?
譲渡先に引き継がれるかどうかは、個別の契約によります。報道では従業員の扱いは明らかになっていません。未払いの給料がある場合は、国の未払賃金立替払制度が使えることがあります。