✍ 古家あきら | 2026-09-21 更新
倒産の種類(破産・民事再生・会社更生・特別清算)の違い — 倒産の9割は破産、そして手続き名は法人番号の閉鎖事由には出てこない
先に結論です。「倒産」という言葉は法律には出てきません。会社が行き詰まったときに使える法律上の手続きは4つ——会社を畳む「清算型」が破産(破産法)と特別清算(会社法)、会社を残す「再建型」が民事再生(民事再生法)と会社更生(会社更生法)——で、これに裁判所を使わない私的整理が加わります。 違いは4点で見れば足ります。①誰が申し立てられるか、②開始の原因、③経営権は誰に移るか、④計画を通す多数決の要件。そして実際の件数は極端に偏っていて、東京商工リサーチ(TSR)の2025年度集計では倒産10,505件のうち破産が9,513件、構成比90.5%でした。民事再生の申請はピークの2001年に年901件、2020年以降は年100件を下回り、申請企業のうち同じ会社で事業が続いているのは25.6%です。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「この会社、倒産したって聞いたんですが、データベースでは活動中になっています」という問い合わせがときどきあります。確かめると、民事再生中で会社そのものは存続しているケースがほとんどです。逆に「閉鎖」と出ている会社が倒産したのかと聞かれると、こちらは答えられません。うちの台帳の元になっている法人番号の閉鎖事由は「清算の結了等」「合併による解散等」「登記官による閉鎖」「その他」の4区分しかなく、破産か通常の解散かはそこには書かれていないからです。この記事では、4つの手続きの違いを条文で確認したうえで、762,832件の閉鎖事由を数え、外から「その会社に何が起きたか」を確かめる順番までまとめます。
「倒産」は法律用語ではない — TSRの4分類と私的整理
「倒産」は民間の信用調査会社が集計のために置いている言葉で、破産法にも会社法にも定義はありません。TSRは自社の解説で、倒産を「法的倒産」と「私的倒産」に大別し、法的倒産を再建型の「会社更生法」「民事再生法」、清算型の「破産」「特別清算」の4つに分類しています(TSRデータインサイト 2025年6月15日)。TSRとTDBで倒産件数が食い違う理由は人手不足倒産は63件?30件? — 同じ月なのに数字が2倍違う理由と倒産統計の読み方に書いたので、ここでは分類だけ借ります。
整理すると、次の5つが「倒産の種類」として並びます。
| 区分 | 手続き | 根拠法 | 会社は残るか | 裁判所 | |---|---|---|---|---| | 清算型 | 破産 | 破産法 | 残らない(財産を換価して配当し、法人は消える) | 使う | | 清算型 | 特別清算 | 会社法 第510条〜 | 残らない(解散後の清算を裁判所の監督下で行う) | 使う | | 再建型 | 民事再生 | 民事再生法 | 残る(経営陣が続けるのが原則) | 使う | | 再建型 | 会社更生 | 会社更生法 | 残る(経営権は管財人へ) | 使う | | — | 私的整理 | 法律上の手続きではない(準則型は各ガイドライン) | 残ることが多い | 使わない |
「解散」「休眠」「閉鎖」との違いは会社が解散・休眠しているか調べる方法 — 「解散」と「閉鎖」は別の出来事です、「倒産ではない会社の終わり方」の数は倒産1,037件は「17年ぶり」水準 — でも会社が消える出口は倒産だけではないに分けて書いています。この記事は「4つの手続き名の違いそのもの」に絞ります。
4つの手続きを条文で並べる — 違いは4点で読める
破産 — 支払不能または債務超過、管財人がすべてを引き継ぐ
破産法第2条第1項は、破産手続を「債務者の財産……を清算する手続」と定義しています。開始の原因は第15条第1項の「支払不能」で、法人については第16条第1項で「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態)」に読み替えられます。第15条第2項には「債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する」とあり、手形の不渡りや事業所の閉鎖が「支払停止」として扱われる根拠がここです。
開始決定が出ると、第78条第1項により「破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する」。経営者の手からは完全に離れます。法人は第35条で「破産手続による清算の目的の範囲内において、破産手続が終了するまで存続するものとみなす」とされ、手続が終わると法人は消滅します。会社法第471条第5号でも「破産手続開始の決定」は株式会社の解散事由の一つです。
特別清算 — すでに解散した株式会社が、裁判所の監督下で清算する
特別清算は会社法の中にある手続きで、対象は「清算株式会社」、つまり株主総会の解散決議などで解散し、清算に入っている株式会社です。会社法第510条は、開始の原因を「清算の遂行に著しい支障を来すべき事情があること」または「債務超過……の疑いがあること」と定めています。第511条第1項で申し立てられるのは債権者・清算人・監査役・株主、同条第2項で「清算株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人は、特別清算開始の申立てをしなければならない」と義務化されています。
破産との実務上の違いは2つあります。1つは手続きを進める主体で、破産は裁判所が選んだ管財人ですが、特別清算は会社が選んだ清算人(多くは元の経営陣や親会社が指名した人)が裁判所の監督下で進めます。もう1つは債権者との合意の形で、第563条で清算株式会社は債権者集会に「協定」を申し出ることができ、第567条第1項の可決要件は「出席した議決権者の過半数」かつ「議決権の総額の三分の二以上」。親会社が子会社を畳むときや、事業を別会社に移したあとの旧会社を畳むときに使われることが多いのは、この「合意で終わらせられる」性格からです。「DMM WEBCAMP」を運営していたインフラトップが特別清算へで追った件がまさにこの型でした。
民事再生 — 「おそれ」の段階で申し立てられ、経営陣が続ける
民事再生法第1条の目的は「債務者の事業又は経済生活の再生を図ること」。開始の原因は第21条第1項で、「破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき」、または「事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」です。破産のように支払不能に至っていなくてよく、その手前で申し立てられるのが最大の違いです。
もう一つの特徴が第38条第1項で、「再生債務者は、再生手続が開始された後も、その業務を遂行し、又はその財産……を管理し、若しくは処分する権利を有する」。つまり経営陣がそのまま経営を続けるのが原則で(DIP型と呼ばれます)、監督委員が付くのが通例です。再生計画案の可決要件は第172条の3第1項で「議決権者の過半数」かつ「議決権の総額の二分の一以上」。会社更生より緩く、特別清算より緩い基準です。
会社は残るので、民事再生を申し立てた会社の法人番号は閉鎖されません。創業48年のギフト専門店が民事再生、19店は営業継続 — 法人番号を読むとで見たとおり、うちのデータベース上では「活動中」のままです。冒頭の問い合わせの正体はこれです。
会社更生 — 株式会社限定、経営権は管財人へ、可決要件は権利の種類ごと
会社更生法第1条は対象を「窮境にある株式会社」に限っています。合同会社・合名会社・合資会社は使えません。開始の原因は第17条第1項で民事再生とほぼ同じ(破産原因の生ずるおそれ、または弁済すると事業継続に著しい支障)ですが、申し立てられる債権者・株主に要件があり、第17条第2項で「資本金の額の十分の一以上に当たる債権を有する債権者」「総株主の議決権の十分の一以上を有する株主」とされています。
民事再生との決定的な違いは第72条第1項です。「更生手続開始の決定があった場合には、更生会社の事業の経営並びに財産……の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した管財人に専属する」。経営陣は退き、管財人が経営するのが原則です。更生計画の可決要件(第196条第5項)は権利の種類ごとに分かれ、更生債権は議決権総額の2分の1超、更生担保権は期限の猶予なら3分の2以上・減免なら4分の3以上・事業全部の廃止なら10分の9以上、株式は議決権総数の過半数。担保権者も計画に取り込める(担保権の実行を止められる)のが会社更生の強みで、その分手続きは重く、大企業向けとされてきました。
この「重さ」を軽くする動きが2025年にありました。TSRの2025年12月31日の解説によると、2025年4月に東京地裁で、負債総額50億円未満の株式会社を対象に「小規模会社更生」の運用が始まっています。民事再生と同程度のスケジュールで、公租公課(税金・社会保険料)や担保権も更生計画で権利変更の対象にできる点が特徴だとされています。税金の滞納が事業再建の壁になる話は「税金滞納」倒産が1-8月で181件、前年比58.7%増でも触れました。
私的整理 — 裁判所を使わず、公告もされない
私的整理は法律の手続きではなく、債権者(主に金融機関)と個別に合意して返済条件を変える方法です。中小企業活性化協議会などが関与する「準則型」と、純粋な当事者間の合意があります。TSRの上記解説では、これまでの準則型私的整理は対象債権者全員の同意が必要だったのに対し、2025年6月に成立した早期事業再生法(2026年12月施行予定)では「議決権の総額の4分の3以上の同意で権利変更が可能」になるとされています。裁判所も関与しますが非訟事件で非公開、つまり官報に載りません。
外から見る立場で大事なのはこの「公告されない」点です。法的整理は官報に公告されるため、取引先や求職者が知る手段がありますが、私的整理はそれがありません。TSRの倒産統計にも、私的整理は「取引停止処分」や「内整理」として表面化したものしか載りません。
4点比較表
| | 破産 | 特別清算 | 民事再生 | 会社更生 | |---|---|---|---|---| | 対象 | 法人・個人 | 清算中の株式会社 | 法人・個人 | 株式会社 | | 開始の原因 | 支払不能/債務超過(破産法15・16条) | 清算に著しい支障/債務超過の疑い(会社法510条) | 破産原因の生ずるおそれ/弁済すると事業継続に著しい支障(民再法21条) | 民事再生と同じ(会更法17条) | | 申立てできる人 | 債務者・債権者 | 債権者・清算人・監査役・株主(会社法511条) | 債務者・債権者 | 会社・資本金の1/10以上の債権者・議決権1/10以上の株主 | | 経営・財産の処分権 | 破産管財人(78条) | 清算人(裁判所が監督) | 経営陣が続ける(38条) | 管財人(72条) | | 計画・協定の可決要件 | (配当のみ、決議なし) | 出席者の過半数+議決権総額の2/3以上(567条) | 議決権者の過半数+議決権総額の1/2以上(172条の3) | 更生債権は総額の1/2超、担保権は2/3〜9/10、株式は過半数(196条) | | 会社の行き先 | 消滅 | 消滅 | 存続 | 存続 |
実際の割合 — 倒産の9割は破産、民事再生は年100件未満
条文を並べると4つが対等に見えますが、件数はまったく対等ではありません。TSRの2025年度(2025年4月〜2026年3月)の全国企業倒産は10,505件で、形態別では破産が9,513件、構成比90.5%。TSRはこれを「30年間で過去最高」の構成比としています。直近の2026年8月(830件)でも破産の構成比は91.6%でした。同じ2025年度の集計では、負債1億円未満が8,062件(構成比76.7%)、従業員10人未満が89.9%。小さな会社が、再建を選ばずに畳む、というのが倒産の実像です。
再建型がどれだけ細いかは、TSRが2025年6月に公表した民事再生法の追跡調査(2000年4月〜2024年12月)でわかります。
- 民事再生法の申請は施行翌年の2001年に年901件でピーク、その後減少し、2020年以降は年100件を下回る水準
- 25年間で負債1,000万円以上の申請は11,439社。個人企業を除く8,137社を追跡すると、同じ会社で事業が続いていると確認できたのは2,088社(25.6%)。4社に3社は消滅
- 申請年別の生存率は、2019年までは20%台が多い。2020年以降は40%超だが、TSRは「再生計画の認可決定から3年を経過していない企業も多く、時間の経過とともに消滅する比率が高まる可能性」を注記
「民事再生=会社が生き残る手続き」というイメージと、「申請した会社の4分の3は結局消えている」という結果の間に、これだけの差があります。再生計画を履行できずに破産へ移行する、あるいは事業を別会社に譲渡して申請した会社自体は清算する、という道筋が多いためです。事業だけが別会社に移って旧会社が消える形は倒産前の「事業譲渡」が2年で440件 — 店は続くのに会社だけ消える、を見分けるで扱いました。
うちのデータベースで見えること・見えないこと — 閉鎖事由762,832件の内訳
ここからはうちの台帳の話です。しょくばログのデータベースは国税庁の法人番号公表サイト全件を元にしていて、2026年9月時点で5,791,529法人、うち登記記録が閉鎖されているのが762,832法人(13.2%)です。閉鎖には「閉鎖事由」のコードが付いています。国税庁の資源定義書(k-resource-dl.pdf)によれば区分は4つだけです。
| コード | 事由 | 意味(国税庁の定義) | 件数 | 閉鎖全体に占める割合 | |---|---|---|---|---| | 01 | 清算の結了等 | 設立登記法人について、清算の結了等により登記記録が閉鎖された | 491,764 | 64.5% | | 21 | 登記官による閉鎖 | 商業登記規則第81条により登記記録が閉鎖された | 210,087 | 27.5% | | 11 | 合併による解散等 | 合併による解散等により登記記録が閉鎖された | 59,612 | 7.8% | | 31 | その他の清算の結了等 | 設立登記法人以外について、清算の結了等に類する事由が生じた | 1,369 | 0.2% |
見てわかるとおり、「破産」「特別清算」「民事再生」「会社更生」という手続き名は、どこにもありません。 破産手続が終結して登記記録が閉鎖されれば「01 清算の結了等」、株主総会で解散して普通に清算を終えても「01」。特別清算の結了も「01」です。民事再生・会社更生は会社が残るので閉鎖されず、コードは付きません。つまり法人番号の閉鎖事由から読めるのは「その法人が消えたか、合併で吸収されたか、登記官が職権で閉じたか」までで、消え方が倒産だったかどうかは読めないのです。
「21 登記官による閉鎖」の根拠は商業登記規則第81条第1項第1号で、「解散の登記をした後十年を経過したとき」に登記官が職権で登記記録を閉鎖できる、という規定です。解散の登記だけして清算結了の登記をしないまま10年放置された会社がここに落ちます。入口は2つあり、会社が自分で解散登記をした場合と、会社法第472条の休眠会社のみなし解散(最後の登記から12年経過した株式会社に法務大臣が官報公告し、届出がなければ解散とみなす)で職権により解散登記がされた場合です。どちらも「解散登記から10年後」にまとめて閉鎖されるため、年によって件数が大きく跳ねます。うちのデータベースでも2025年に閉鎖された「21」は58,854件、2026年は9月までで45,604件と、2024年(6,776件)から桁が変わっています。年次の推移を「倒産が増えた」と読んではいけない典型で、断面の比率だけを使うのがうちの決まりです。
会社の種類ごとの閉鎖事由 — 合同会社に「登記官による閉鎖」がほぼない理由
会社の種類別に分けると、制度の違いがそのまま数字に出ます。
| 種類 | 全件 | 閉鎖 | 閉鎖率 | 01 清算結了等 | 11 合併等 | 21 登記官閉鎖 | |---|---|---|---|---|---|---| | 株式会社 | 2,920,971 | 407,175 | 13.9% | 229,840 | 44,892 | 132,443 | | 有限会社 | 1,675,486 | 245,936 | 14.7% | 180,759 | 6,674 | 58,503 | | 合同会社 | 451,017 | 38,575 | 8.6% | 34,739 | 2,436 | 1,400 |
株式会社は閉鎖407,175件のうち「21 登記官による閉鎖」が132,443件(32.5%)を占めるのに対し、合同会社は38,575件のうち1,400件(3.6%)しかありません。理由は2つです。1つは、会社法第472条のみなし解散の対象が「株式会社」に限られていて、合同会社には職権で解散登記がされる入口がないこと(有限会社も、会社法整備法第32条で第472条の適用が除かれています。有限会社の「21」58,503件は、自分で解散登記をしたあと清算結了の登記をしないまま10年経った会社です)。もう1つは、合同会社の制度が2006年に始まったばかりで、「解散登記から10年」を経た会社がまだ少ないことです。結果として、合同会社が消えるときは、ほぼ「01 清算の結了等」——自分で畳んで清算を終えたか、破産して手続が終結したか——のどちらかになります。
「01 清算の結了等」は倒産の4倍以上ある
年次の絶対数を推移として使うのは避けますが、規模感の比較だけしておきます。株式・有限・合同会社で2025年に「01 清算の結了等」で閉鎖されたのは47,160件。同じ2025年のTSRの倒産は10,300件(負債1,000万円以上)。倒産は、会社が「清算を終えて消えた」件数の4分の1にも届きません。 残りの大半は、債務を払い終えて自主的に解散した会社や、負債1,000万円未満で倒産統計に載らない会社です。破産して閉鎖された会社も、ここに混ざって区別できません。
なお破産手続には時間がかかるため、2025年に「01」で閉鎖された会社の中に、2023年や2024年に破産開始決定を受けた会社が含まれています。閉鎖の年と倒産の年はずれます。
その会社に「何が起きたか」を外から確かめる順番
法人番号では手続き名が読めないので、確かめたい会社があるときは次の順番で見ます。
1. 法人番号公表サイトで閉鎖の有無と事由を見る。 「閉鎖」で「01」なら消えている。「活動中」でも、民事再生・会社更生中の可能性は残る。手順は会社が実在するか確認する方法 — 法人番号で"一発"、活動中かは別で見るに書きました 2. 官報の公告を検索する。 破産手続開始・特別清算開始・再生手続開始・更生手続開始は、いずれも裁判所の決定が官報に公告されます。国立印刷局の官報情報検索サービスは有料ですが、直近分は無料の「インターネット版官報」で読めます。裁判所名・事件番号・決定日・管財人(監督委員)の名前まで載ります 3. 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を取る。 破産手続開始の決定、特別清算開始、再生手続開始、更生手続開始はいずれも登記され、清算結了で閉鎖されたあとも「閉鎖事項証明書」で辿れます。窓口で1通600円。誰でも取れることは会社の登記簿は誰でも見られるで書いたとおりです 4. 信用調査会社の倒産速報を見る。 TSRの「TSR速報」、TDBの「倒産速報」は無料で読める範囲があり、手続き名・負債額・申請日がまとまっています。ただし負債1,000万円以上が対象で、小さな会社は載りません
うちのデータベースでできるのは1番目までです。閉鎖されているか、いつ閉鎖されたか、事由コードは何かまでは即答できますが、「破産ですか」と聞かれたら2番目以降を案内しています。
よくある質問
民事再生と会社更生は何が違うのですか
対象と経営権です。会社更生は株式会社しか使えず、開始決定が出ると経営権は裁判所が選任した管財人に移ります(会社更生法第72条)。民事再生は法人・個人を問わず使え、経営陣がそのまま経営を続けます(民事再生法第38条)。計画の可決要件も、民事再生は「議決権者の過半数+議決権総額の2分の1以上」、会社更生は権利の種類ごとに「2分の1超〜10分の9以上」と異なります。担保権を計画に取り込めるのは会社更生だけです。
破産と特別清算はどちらも会社が消えますが、何が違うのですか
進める人と、使える会社です。破産は裁判所が選んだ破産管財人が財産を管理・処分し(破産法第78条)、法人・個人を問わず使えます。特別清算は解散して清算に入った株式会社だけが使え、会社が選んだ清算人が裁判所の監督下で進め、債権者集会の協定(出席者の過半数+議決権総額の3分の2以上)で終わらせることができます(会社法第563条・第567条)。親会社が子会社を畳むときに特別清算が選ばれやすいのは、協定で合意形成できるためです。
倒産した会社は法人番号を見ればわかりますか
一部だけです。破産・特別清算で手続が終わり登記記録が閉鎖されれば「閉鎖/01 清算の結了等」と表示されますが、通常の解散・清算と同じコードなので区別できません。民事再生・会社更生は会社が存続するので、法人番号は「活動中」のままです。手続き名を確かめるには官報の公告か、登記事項証明書の履歴を見る必要があります。
「倒産」は何件くらいあって、そのうち破産は何割ですか
東京商工リサーチの集計で、2025年(暦年)の全国企業倒産は10,300件、2025年度(2025年4月〜2026年3月)は10,505件です。2025年度の形態別では破産が9,513件で構成比90.5%、TSRはこれを30年間で最高の比率としています。民事再生の申請は2020年以降、年100件未満です。いずれも負債1,000万円以上の集計です。
私的整理をした会社は外からわかりますか
原則わかりません。私的整理は裁判所の手続きではなく官報に公告されないため、公開情報には出ません。TSRの倒産統計にも、手形の不渡りによる「取引停止処分」や「内整理」として表面化したものしか載りません。2026年12月施行予定の早期事業再生法は裁判所が関与しますが、TSRの解説では「非訟事件で非公開の手続き」とされています。
まとめ
- 「倒産」は法律用語ではなく、法律上の手続きは4つ。清算型が破産(破産法)と特別清算(会社法)、再建型が民事再生(民事再生法)と会社更生(会社更生法)。これに裁判所を使わない私的整理が加わる
- 違いは4点で読む:①申し立てられる人 ②開始の原因(破産は支払不能・債務超過、再建型は「おそれ」の段階でよい) ③経営権(破産・会社更生は管財人、民事再生は経営陣、特別清算は清算人) ④可決要件(特別清算2/3・民事再生1/2・会社更生は権利種類ごと)
- 件数は対等ではない。TSRの2025年度集計で倒産10,505件のうち破産9,513件(90.5%)。民事再生の申請は2020年以降年100件未満、申請企業の生存率は25.6%
- 法人番号の閉鎖事由は「01 清算の結了等」「11 合併による解散等」「21 登記官による閉鎖」「31 その他」の4区分だけで、手続き名は出てこない。閉鎖762,832件の64.5%が01、27.5%が21
- 「21 登記官による閉鎖」は解散登記から10年後の職権閉鎖(商業登記規則第81条)。合同会社にほぼないのは、みなし解散(会社法第472条)が株式会社限定で、制度も2006年開始だから。合同会社の閉鎖は90%が「01」
- 2025年に「01」で閉鎖された会社は47,160件、同年の倒産は10,300件。会社が消える件数の大半は倒産統計の外にある
- 手続き名を確かめる順番は、法人番号公表サイト → 官報公告 → 登記事項証明書(履歴・閉鎖事項) → 信用調査会社の速報
参照した一次資料
- 破産法(平成十六年法律第七十五号)第2条・第15条・第16条・第30条・第35条・第78条 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000075
- 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第1条・第21条・第38条・第172条の3・第174条 https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000225
- 会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)第1条・第17条・第72条・第196条 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000154
- 会社法(平成十七年法律第八十六号)第471条・第472条・第475条・第510条・第511条・第514条・第563条・第567条 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第八十七号)第2条・第32条(特例有限会社は株式会社として存続/会社法第472条は適用しない) https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000087
- 商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)第81条(解散の登記後10年経過で登記官が登記記録を閉鎖できる) https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
- 東京商工リサーチ「2025年度(令和7年度)の全国企業倒産1万505件」(形態別:破産9,513件・構成比90.5%/負債1億円未満8,062件・76.7%/従業員10人未満89.9%) https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1202724_1610.html
- 東京商工リサーチ「2025年(令和7年)の全国企業倒産1万300件」(2026年1月13日公開。件数10,300件・負債総額1兆5,921億9,000万円) https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1202288_1610.html
- 東京商工リサーチ「2026年8月の全国企業倒産830件」(形態別:破産の構成比91.6%) https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1203214_1610.html
- 東京商工リサーチ TSRデータインサイト「再建型の民事再生、申請企業の生存率25.6%」(2025年6月15日公開。2000年4月〜2024年12月の申請11,439社・追跡8,137社・生存2,088社/2001年901件ピーク・2020年以降100件未満/法的倒産4分類の定義) https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201468_1527.html
- 東京商工リサーチ TSRデータインサイト「事業再生を取り巻く環境の変化=2025年を振り返って(11)」(2025年12月31日公開。小規模会社更生=2025年4月東京地裁・負債50億円未満/企業価値担保権2026年5月施行予定/早期事業再生法2026年12月施行予定・議決権総額4分の3以上・非公開) https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202246_1527.html
- 国税庁 法人番号公表サイト「Web-API・ダウンロード データ資源定義書(k-resource-dl.pdf)」(登記記録の閉鎖等の事由コード 01/11/21/31 の定義) https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/pc/download/images/k-resource-dl.pdf
- しょくばログDB(国税庁 法人番号公表サイト全件を元に構築。2026年9月21日時点:全件5,791,529・活動中5,028,697・閉鎖762,832/閉鎖事由別 01 491,764・21 210,087・11 59,612・31 1,369/種別別は本文の表のとおり。2025年閉鎖分=01 47,160件・21 58,854件、2026年1〜9月=01 17,498件・21 45,604件、2024年=01 45,725件・21 6,776件(株式・有限・合同会社)。閉鎖年の年次推移は休眠会社の一斉整理で跳ねるため、本文では断面の比率と規模感の比較にのみ使用)