✍ 古家あきら | 2026-09-20 更新

「DMM WEBCAMP」を運営していたインフラトップが特別清算へ — スクールは別会社に移って続いている。事業を渡した後の"箱"を畳む流れと、六本木の同じ住所に登記された379法人の閉鎖理由の7割が「合併」というデータ

先に結論です。転職者向けプログラミングスクール「WEBCAMP」(のちのDMM WEBCAMP)を運営していた株式会社インフラトップ(東京都港区)が、2026年9月4日付で東京地裁から特別清算開始決定を受けました。負債総額は2024年2月期決算時点で約20億5649万円です。ただし、スクール自体は無くなっていません。スクール事業は2025年8月1日に吸収分割でDMM.comの特別目的会社「六本木管理10号」へ移り、その会社ごと東証プライム上場のSHIFTが買い取り、2026年1月1日付でSHIFT本体に吸収合併されて「SHIFT TERAS CAMPUS」として続いています。今回の特別清算は、中身を出し終えた"箱"のほうを畳む手続きです。うちの会社データベースで見ると、インフラトップの法人番号はまだ閉鎖されておらず、受け皿だった六本木管理10号のほうが先に「合併」で閉鎖されているという、ニュースの見出しとは逆の順番になっています。

出典:https://www.tokyo-np.co.jp/article/514142 (東京新聞・2026年9月8日「プログラミングスクール運営『インフラトップ』特別清算開始決定 負債は約20億円」、東京商工リサーチの情報として報道)

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「通っていたスクールの運営会社が倒産したと聞いたが、受講契約はどうなるのか」という趣旨の問い合わせを受けることがあります。答えは「その会社の名前で今もサービスが動いているか、それとも中身が別の会社に移った後の抜け殻なのか」で全く違います。今回の件は後者の典型なので、上場会社の適時開示だけで再現できる範囲を、時系列で並べ直します。

時系列 — 適時開示4本と報道で再現できる流れ

インフラトップ自身は非上場なので、動きは買い手のSHIFT(3697)が出した適時開示から読めます。数字はすべてその開示からの引用です。

出典:https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20241224/20241224543828.pdf (SHIFT・2024年12月24日「株式会社インフラトップの全事業(教育事業および人材関連事業)を吸収分割により継承する新設会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」)

| 日付 | 出来事 | 出所 | |---|---|---| | 2014年 | インフラトップ設立。転職者向けプログラミングスクール「WEBCAMP」を運営 | 東京新聞 | | 2018年 | DMM.comが株式の60%を取得 | 東京新聞 | | 2024年2月期 | 教育・人材事業の売上高1,529,359千円、経常損失173,508千円 | SHIFT開示(2024-12-24) | | 2024年12月24日 | SHIFTが取得を決議。DMMが新会社を設立→吸収分割で事業を移す→SHIFTがその株式100%を3億9,000万円で取得、という3段階の予定 | SHIFT開示(2024-12-24) | | 2025年7月11日 | 契約変更。新会社の設立をやめ、DMMの既存子会社「六本木管理10号」(2024年8月14日設立・資本金600万円)を受け皿に。契約後に始めた生成AI関連の教育事業は対象外とし、取得価額を7,500万円に変更 | SHIFT開示(2025-07-11) | | 2025年8月1日 | 吸収分割実行(インフラトップ→六本木管理10号) | SHIFT開示(2025-09-01) | | 2025年9月1日・10月1日 | 許認可取得関連手続の遅滞で、株式取得実行日を9月1日→10月1日→「2025年中」に2度延期 | SHIFT開示(2025-09-01、2025-10-01) | | 2025年11月5日 | SHIFTが六本木管理10号(連結子会社・持分100%)を2026年1月1日付で吸収合併すると決議。無対価 | SHIFT開示(2025-11-05) | | 2026年9月4日 | インフラトップが東京地裁から特別清算開始決定 | 東京新聞(9月8日) |

出典:https://finance-frontend-pc-dist.west.edge.storage-yahoo.jp/disclosure/20250711/20250711512562.pdf (SHIFT・2025年7月11日「(開示事項の変更)株式会社インフラトップの事業取得形式と取得価額の変更に関するお知らせ」)

出典:https://www.shiftinc.jp/news/%E5%BD%93%E7%A4%BE%E5%AD%90%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%81%AE%E5%90%B8%E5%8F%8E%E5%90%88%E4%BD%B5%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B/ (SHIFT・2025年11月5日「当社子会社の吸収合併に関するお知らせ」)

3つ、押さえておきたい点があります。

1つ目は、取得価額が3億9,000万円から7,500万円に下がっていること。2024年12月の開示では「SHIFTの定めるM&A判断基準を一部満たしていない」と明記したうえで、グループ参画後の財務体質改善を見込んで決議していました。7か月後の変更開示では「条件面等の最終的な合意に至らず」とだけ書かれ、対象事業から生成AI関連を外して価額を約5分の1にしています。理由の詳細は開示されていないので、ここから先は推測になり、書きません。

2つ目は、受け皿の会社が「中身の無い会社」だったこと。六本木管理10号は2024年8月設立、資本金600万円、発行済株式1,200株。2025年11月の合併開示に載った2025年7月期の数字は、純資産10百万円・総資産11百万円・売上高「-」・当期純損失1百万円です。吸収分割の実行が2025年8月1日なので、決算期末の時点ではまだ事業が入っていない、文字通りの箱でした。

3つ目は、負債約20億円という数字の時点。東京新聞が伝えた「2024年2月期決算時点で約20億5649万円」は、吸収分割の1年半前の貸借対照表の話です。事業を移した後にどの負債が残ったかは、この報道からは分かりません。「負債20億円のスクールが倒産」と読むと、時点がずれます。

特別清算とは何か — 破産との違いを1段落で

特別清算は、会社法にもとづく清算手続きの一つで、株主総会の解散決議を経て清算に入った株式会社が、債務超過の疑いなどがある場合に裁判所の監督下で清算を進めるものです。破産と違って、債権者との協定を結ぶには議決権総額の3分の2以上の同意が要るため債権者の協力が前提になりやすく、親会社が子会社を整理する場面や、事業を先に別会社へ移した後の残った会社を畳む場面でよく使われます。うちのデータベースで先に扱った 靴のアロー印刷の特別清算(第二会社方式) や 球団運営会社の特別清算 も同じ型です。「事業を渡した後の会社」が倒産の見出しに載ることの読み方は 事業譲渡後の倒産の見分け方 にまとめてあります。

今回のケースで受講生の立場から言えることは、契約の相手方がどの会社になっているかを、受講規約や領収書の発行元で確かめることです。2025年8月以降に契約した人の相手方は六本木管理10号、2026年1月以降はSHIFTになっているはずで、インフラトップとの契約が残っているのは生成AI関連の講座など「対象外」とされた部分に限られます。ここは各自の契約書でしか確定しないので、断定はしません。

うちの台帳で見る — 「生きている箱」と「閉鎖済みの受け皿」

国税庁の法人番号公表サイト全件を取り込んだうちの台帳で、登場する3社を引きます。

| 法人番号 | 商号 | 本店所在地 | 登記の状態(台帳の取り込み時点) | |---|---|---|---| | 4013301036253 | 株式会社インフラトップ | 東京都港区六本木3丁目2番1号 | 閉鎖なし | | 9010401184597 | 株式会社六本木管理10号 | 東京都港区六本木3丁目2番1号 | 2026年2月9日閉鎖・事由「合併による解散等」 | | 3011001038942 | 合同会社DMM.com | 東京都港区六本木3丁目2番1号 | 閉鎖なし |

特別清算に入ったインフラトップはまだ「閉鎖なし」で、事業を受け取った六本木管理10号のほうが先に閉鎖されているという並びです。理由は単純で、閉鎖の登記が入るのは合併なら効力発生後すぐ(2026年1月1日合併→2月9日閉鎖で登記に反映)、特別清算なら清算が結了した後だからです。特別清算開始決定は「これから畳む」という入口で、登記記録の閉鎖は出口です。この時差の読み方は 会社の解散・休眠を調べる方法 と 合併・買収されたら法人番号はどうなるか に書いています。

もう一つ、台帳には「六本木管理15号」「六本木管理16号」という、同じ住所・同じ命名規則の株式会社が現存しています。DMMが子会社整理や事業の受け皿として番号付きの会社を用意している構造が、商号の並びから見えます。今回のように「中身が先に別の箱へ移る」取引は、当事者が開示してくれない限り、商号の連番と本店住所の一致くらいしか外からの手がかりがありません。

同じ住所に379法人 — 閉鎖理由の70%が「合併」

3社の本店住所「港区六本木3丁目2番1号」は、住友不動産六本木グランドタワーです。この住所を本店にする法人を台帳で数えると379件ありました。内訳を見ると、この住所の性格がはっきり出ます。

| 項目 | 件数 | 備考 | |---|---|---| | 同住所の法人 | 379 | うち株式会社203、合同会社152、その他24 | | うち閉鎖済み | 98 | 25.9% | | 閉鎖事由「合併による解散等」 | 69 | 閉鎖の70.4% | | 閉鎖事由「清算の結了等」 | 28 | 閉鎖の28.6% | | 閉鎖事由「その他の清算の結了等」 | 1 | | | 閉鎖事由「登記官による閉鎖」 | 0 | いわゆる休眠会社のみなし解散はゼロ |

全国の閉鎖済み法人762,832件のうち「合併による解散等」は59,612件で7.8%です。この住所では70.4%。つまり、ここに本店を置く会社は、事業がうまくいかなくて消えるのではなく、グループ内で統合されて消える割合が全国平均の9倍です。合同会社が152社(40.1%)と多いのも、全国の現存法人での合同会社比率(8.3%)と比べて突出しています。上場会社や大きなグループが「箱」を作っては統合する場所だ、と台帳が言っています。

これは個社の評価ではなく、住所の性格の話です。ただ、転職や取引の相手として会社を見るとき、本店がこういう住所にある小さな株式会社は、単独の会社というより、グループの一部品として作られた可能性を先に疑うのが、台帳側から言える読み方です。同じ住所に複数の法人が並ぶ見方は 会社の住所を調べる方法 に、グループ内で会社を新設して事業を分ける型は 東進レコの新設分割 の回でも扱いました。

「スクール」を名乗る会社1,759社 — 閉鎖率15.9%、うち合併は7.5%

比較のために、商号に「スクール」を含む法人(除外フラグなし)を全国で数えると1,759社、うち閉鎖済みが279社(15.9%)でした。

| 法人種別 | 件数 | 閉鎖済み | |---|---|---| | 株式会社 | 765 | 114(14.9%) | | その他の法人(一般社団・NPO等) | 458 | 70(15.3%) | | 有限会社 | 402 | 76(18.9%) | | 合同会社 | 101 | 14(13.9%) |

閉鎖事由は「清算の結了等」182件、「登記官による閉鎖」73件、「合併による解散等」21件(閉鎖の7.5%)。スクール業は合併で消えるより、普通に畳むか、放置されて登記官に閉鎖される会社が多い業種です。今回のインフラトップのように、上場会社が事業ごと引き取る形は、業種の中では少数派だと分かります。なお商号に「プログラミング」を含む法人は全国で51社しかなく、大手プログラミングスクールの多くは商号にサービス名を持っていません(インフラトップ自身がそうです)。商号でスクールを探しても見つからない理由は 会社の旧社名を調べる方法 の「サービス名と商号のずれ」の項が使えます。

一般化した学び — 「運営会社が倒産」の見出しを読むときの3手順

1. 今その名前でサービスが動いているかを先に見る。今回は「SHIFT TERAS CAMPUS(旧DMM WEBCAMP)」という名前で募集が続いています。動いていれば、倒産した会社は抜け殻である可能性が高い。 2. 買い手が上場会社なら、買い手の適時開示を時系列に並べる。非上場の当事者は何も出しませんが、上場会社は「取得」「変更」「延期」「合併」を全部開示します。今回は4本で流れが再現できました。 3. 法人番号で当事者を全部引き、閉鎖の順番を見る。受け皿が先に閉鎖されていれば、中身は既に移っています。閉鎖されていない側が特別清算に入っている、という並びが「箱を畳む」サインです。

FAQ

特別清算になったら、受講生の契約はどうなりますか

契約の相手方がどの会社かで決まります。今回は2025年8月1日の吸収分割でスクール事業が六本木管理10号へ、2026年1月1日の合併でSHIFTへ移っています。それ以降の契約はインフラトップと無関係のはずですが、生成AI関連の講座は対象外とされていたため、契約書の発行元で確認するのが確実です。この記事は個別の契約関係を保証するものではありません。

負債約20億円は誰が払うのですか

東京新聞が伝えた約20億5649万円は「2024年2月期決算時点」の数字で、吸収分割の前です。事業を移した後にどの負債が残り、誰が引き受けたかは、SHIFTの開示にも報道にも書かれていません。分からないことは分からない、が答えです。

法人番号を引いたら「閉鎖なし」でした。倒産していないのですか

特別清算開始決定は入口で、登記記録の閉鎖は清算が結了した出口です。台帳で「閉鎖なし」でも、裁判所の手続きは進んでいます。逆に、合併で消えた会社は効力発生後すぐ閉鎖されます。手続きの種類で登記への反映の速さが違う、と覚えておくと読み違えません。

「六本木管理10号」のような会社名は怪しいのですか

怪しいというより、用途が違う会社です。番号付きの商号・資本金数百万円・同じ住所に連番で並ぶ、という特徴は、グループが事業の受け皿や整理用に用意する特別目的会社によく見られます。取引や就職の相手として現れたときは、単独の会社としてでなく、親会社と一体で見るのが安全です。

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台帳の数字は国税庁 法人番号公表サイトの全件データをしょくばログが取り込んだ時点のもので、閉鎖の反映には時差があります。取引や契約の判断は、登記事項証明書と当事者の一次資料で確認してください。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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