✍ 古家あきら | 2026-09-12 更新

会社の登記簿は誰でも見られる — 本人の許可も理由の説明も要らず、相手に通知も行きません

先に結論です。会社の登記簿は、誰でも見られます。 商業登記法10条1項は「何人も、手数料を納付して、登記簿に記録されている事項を証明した書面(登記事項証明書)の交付を請求することができる」と書いていて、株主か、債権者か、取引先か、といった資格の限定がありません。窓口でも、オンラインでも、「なぜ取るのか」を聞かれることはなく、取った事実が相手の会社に知らされる制度もありません。

「勝手に取ったら、相手にバレるのではないか」——この検索をする人の不安はここに集中していると思います。答えは、バレる仕組みが無い、です。法務局は請求者が誰かを会社に伝えませんし、登記情報提供サービス(オンライン)にも通知の機能はありません。相手に分かるのは、あなたが自分で「登記簿を見ました」と言ったときだけです。

ただし、法務局で取れる書類は登記簿だけではなく、取れる相手の範囲が3段階に分かれています。 ①登記簿そのもの(登記事項証明書・登記事項要約書)は「何人も」。②定款や株主総会議事録などの附属書類は「利害関係を有する者」だけ。③印鑑証明書は「印鑑を登記所に提出した者」=会社本人だけ。「登記簿は誰でも見られる」を「法務局にある書類は全部見られる」と読み替えると、②③で空振りします。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「取引先の登記簿を相手に断りなく取っていいのか」「応募先の登記簿を取ったら採用に響かないか」という相談が定期的に来ます。この記事では、①誰でも取れる法的な根拠と、通知が行かない理由、②法務局の書類の3層構造、③取り方と料金、④登記簿で分かること・分からないことの振り分け、⑤取る前に0円で済む範囲、の順に書きます。

結論:商業登記法10条の「何人も」がすべて

商業登記法10条1項の主語は「何人も」です。法律がこの言葉を使うときは、日本国民に限らず、法人か個人かも問わず、その会社と何の関係も無い人を含めて「誰でも」という意味になります。登記の制度そのものが、会社の基本情報を公示する(=世の中に見せる)ためにあるので、見る人を限定したら制度の目的が成り立たない、というのが理由です。

同じ条文の並びで、登記事項の概要だけを載せた登記事項要約書も11条1項で「何人も」請求できます。不動産の登記も同じ構造で、不動産登記法119条1項が「何人も」登記事項証明書を請求できると定めています。土地や建物の持ち主を他人が調べられるのと同じ仕組みで、会社の登記も誰でも見られる、と理解してください。

理由は聞かれない。書くのは自分の住所と氏名だけ

窓口で使う「登記事項証明書交付申請書」には、請求する人の住所と氏名を書く欄があります。ただ、これは手続き上の記録であって、身分証の提示を求められることも、目的を書く欄もありません。会社との関係を証明する書類も要りません。オンライン(登記・供託オンライン申請システムの「かんたん証明書請求」)では最初に申請者情報を無料で登録しますが、これも請求者の連絡先を登録するだけで、目的は問われません。

登記情報提供サービス(民事法務協会が運営する、登記情報をPDFで閲覧できるサービス)も同様で、個人の一時利用ならクレジットカードと氏名・住所の入力だけで使えます。どのルートでも「会社との関係」を問う項目は存在しない、これが「誰でも」の実態です。

取ったことは、会社に通知されない

ここが検索の核心なので、仕組みとして説明します。登記事項証明書の交付は、法務局が保管している登記記録を「証明した書面」として出す手続きで、登記されている会社は当事者ではありません。だから会社に照会が行くことも、事後に「誰々が取りました」と知らせることもありません。登記情報提供サービスも、閲覧の履歴は利用者本人の利用明細として残るだけで、閲覧された側の会社には何も届きません。

「代表者の住所まで載っているのに、勝手に取られて何も分からないのか」と思うかもしれません。その問題意識から、令和6年10月1日に「代表取締役等住所非表示措置」が始まりました(商業登記規則31条の3)。株式会社が申し出ると、登記事項証明書に載る代表取締役等の住所が市区町村までの表示になり、それより細かい部分が出なくなる制度です。裏返せば、この措置ができたこと自体が「登記簿は誰でも取れて、取られた側には分からない」という前提の証明でもあります。取られる側の対策は「誰が取ったかを知る」ではなく「載せる情報を減らす」方向で用意されている、ということです。

法務局の書類は3層 — 「登記簿」と「附属書類」と「印鑑証明書」

登記簿は誰でも見られる、で終わらないのがこの話の厄介なところです。法務局が持っている会社の書類は3種類あって、それぞれ請求できる相手が違います。

第2層で誤解が多いのが定款です。「定款は法務局にあるから取れる」と思って窓口に行くと、利害関係を求められて終わります。定款が外部から見られない理由と、代わりに登記簿の目的欄で代用する話は会社の定款は外部から見られる?に条文ごと書きました。株主名簿も同じで、株主は登記事項ではなく、株主リストは附属書類の側にあります。非上場会社の株主は調べられるのかで扱ったとおりです。

取り方と料金 — 読むだけなら330円、証明力が要るなら600円

第1層の取り方は4通りあります。料金は令和7年4月1日以降のものです。

証明書の種類(履歴事項・現在事項・閉鎖事項)の選び方は履歴事項全部証明書と現在事項全部証明書の違いに書きました。調べる目的なら履歴事項一択です。

閉鎖された会社の登記簿も、20年間は誰でも取れる

清算が終わった会社や、合併で消えた会社の登記記録は「閉鎖」されますが、消えるわけではありません。閉鎖した登記記録は閉鎖の日から20年間保存され(商業登記規則34条4項)、その間は閉鎖事項全部証明書として、やはり誰でも取れます。倒産した元取引先の役員が誰だったか、消えた会社の本店がどこだったか、を後から確かめるのはこのルートです。

うちのデータベースでは、法人番号を持つ5,791,529件のうち762,832件(13.2%)が、国税庁の法人番号公表サイトで「登記記録の閉鎖等」の年月日が入っている、つまり登記記録が閉鎖済みの法人です。7〜8件に1件は、現存会社の登記簿ではなく閉鎖登記簿を取る場面になる、ということです。閉鎖の事由ごとの内訳と、合併・買収で消えた法人番号の扱いは「買収された会社」は登記から消えるのかで数えています。

登記簿で分かること・分からないこと

誰でも取れる、と分かった次に大事なのは、取ったところで何が分かるのかです。会社法911条3項が株式会社の登記事項を列挙していて、そこに無いものは登記簿をいくら眺めても出てきません。

登記簿に載っているもの

登記簿に載っていないもの(別の場所を見る)

登記簿は「会社の骨格」を公示する書類で、「会社の中身」を見せる書類ではない、と整理すると期待値が合います。

取る前に、0円で分かる範囲 — うちのデータで見る登記簿の外側

ここからはしょくばログのデータです。登記簿を330円で取る前に、国税庁の法人番号公表サイト(そしてそれを取り込んだうちのデータベース)で無料で分かることがあり、そこで「取る必要が無かった」と決着する場面がかなりあります。

法人番号公表サイトが誰でも無料で見せているのは、商号・本店所在地・法人番号の基本3情報と、その変更履歴(平成27年10月5日以降、直近5件)、そして登記記録の閉鎖等の年月日と事由です。会社の特定と、現存しているか閉鎖済みかの確認までは、ここで終わります。法人番号の引き方は会社名から法人番号を検索する方法、実在確認の手順は会社が実在するか・倒産していないかを確認する方法に書いています。

5,791,529件のうち、登記記録が生きているのは5,028,697件

うちのデータベースに入っている法人番号5,791,529件を、登記記録の閉鎖等の有無で分けると、閉鎖済みが762,832件(13.2%)、現存が5,028,697件(86.8%)でした。現存5,028,697件を国税庁の法人種別で数えると、こうなります。

読みどころは2つです。ひとつは、現存する法人の半分は株式会社ではないこと。有限会社が28.4%、合同会社が8.2%で、この2つだけで36.6%あります。有限会社には取締役の任期が無く役員変更の登記が何十年も動かないことがあり、合同会社は「代表社員」「業務執行社員」という株式会社と違う肩書きで登記されます。登記簿を取る前に法人種別を見ておくと、読むときに戸惑いません。法人種別ごとの違いは法人の種類一覧と見分け方にまとめました。

もうひとつは、法人番号はあるのに、商業・法人登記簿そのものが存在しない団体が、国の機関848件・地方公共団体7,245件・その他18,644件の合わせて26,737件(0.5%)あることです。国税庁の区分で「その他」に入るのは、設立の登記をせずに法人番号の指定を受けた法人や団体で、ここは法務局に行っても登記簿が出てきません。「誰でも見られる」の前に「登記簿があるか」の確認が要る、というのは、数は少ないものの実際にある落とし穴です。

登記簿を取るべき場面・取らなくていい場面

よくある質問

会社の登記簿を勝手に取ったら、相手の会社にバレますか

バレません。登記事項証明書の交付にも、登記情報提供サービスの閲覧にも、登記されている会社へ通知する仕組みがありません。交付申請書に書く請求者の住所・氏名は法務局の手続き記録で、会社に伝わることはありません。相手に分かるのは、あなた自身が閲覧したことを話した場合だけです。

登記簿を取るのに理由や利害関係は必要ですか

不要です。商業登記法10条1項が「何人も」請求できると定めていて、目的を書く欄も、会社との関係を示す書類もありません。理由が必要になるのは登記簿本体ではなく、定款や議事録などの附属書類を閲覧するとき(商業登記法11条の2、利害関係を有する者に限る)です。

他人の会社の印鑑証明書も取れますか

取れません。商業登記法12条1項は印鑑証明書を請求できる相手を「印鑑を登記所に提出した者」(と支配人等)に限っていて、請求には印鑑カードが要ります。登記簿本体が「何人も」なのとは別の扱いで、会社本人か、会社から印鑑カードを預かった人しか取れません。

自分の会社の登記簿を誰かに見られたくないのですが、防げますか

閲覧そのものは防げません。公示が登記制度の目的なので、閲覧者を制限する手続きはありません。できるのは載せる情報を減らすことで、株式会社は令和6年10月1日から代表取締役等住所非表示措置(商業登記規則31条の3)を申し出ると、代表取締役等の住所が市区町村までの表示になります。氏名・本店・目的・資本金・役員構成は引き続き誰でも見られます。

倒産して消えた会社の登記簿も取れますか

取れます。閉鎖した登記記録は閉鎖の日から20年間保存され(商業登記規則34条4項)、閉鎖事項全部証明書として誰でも請求できます。うちのデータベースでは法人番号を持つ5,791,529件のうち762,832件(13.2%)が登記記録の閉鎖済みで、これらは閉鎖登記簿のほうを取ることになります。閉鎖済みかどうかは、取る前に国税庁の法人番号公表サイトで0円で分かります。

まとめ

しょくばログでは全国約579万件の法人番号の会社情報を無料で公開しています。会社名で検索すれば法人番号・所在地・法人種別と、登記記録が閉鎖済みかどうかがその場で分かるので、登記簿を取る前の「そもそもこの会社は現存しているか」「株式会社か有限会社か合同会社か」の確認にお使いください。

参照した一次資料

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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