✍ 古家あきら | 2026-09-12 更新
会社の決算月を調べる方法 — 「日本の会社は3月決算が多い」は資本金1億円以上の話で、普通の会社では17.8%しかない
先に結論です。会社の決算月は、登記簿を取っても分かりません。 事業年度は定款に書く事項であって、会社法911条3項が並べる株式会社の登記事項に「事業年度」は入っていないからです。だから外から確かめるルートは、①有価証券報告書(EDINET・無料)②決算公告(官報か会社サイトの電子公告)③会社サイト・採用ページ・求人票の「会社概要」の3つに限られます。①は上場会社クラスの数千社にしか使えず、②③は会社が出していれば読める、というものです。
そして、調べる前に知っておいてほしい数字があります。「日本の会社は3月決算が多い」というのは、資本金の大きい会社の話です。 国税庁の令和6年度統計年報(法人税)で、年1回決算の普通法人3,002,815社を事業年度の終了月で数えると、3月は535,064社、17.8%しかありません。ところが資本金1億円以上の35,813社に絞ると、3月決算は19,375社で54.1%。半分を超えます。相手が中小企業なら「たぶん3月決算だろう」は5回に4回外れる、ということです。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していて、取引先や応募先の決算月を聞かれることがよくあります。営業なら「予算が決まる前に提案したい」、転職なら「賞与の査定期間がいつ締まるか」、請求なら「相手の期末に売掛を残したくない」。動機はさまざまですが、答えの出し方は同じです。この記事では、①外から確認できる3ルート、②公的統計とうちのデータで見た決算月の実態、③確認できないときに当たりを付ける方法、の順に書きます。
結論:決算月は登記事項ではない
会社法911条3項は、株式会社の設立登記に載せる事項を1号から順に並べています。目的、商号、本店と支店の所在場所、存続期間や解散事由、資本金の額、発行可能株式総数、発行済株式の総数、取締役や代表取締役の氏名、公告方法——と続きますが、「事業年度」はどこにも出てきません。 事業年度は定款で定めるのが通常で、税務署に出す法人設立届出書にも書きますが、どちらも外部に公開される書類ではありません。定款が外から見られないことは会社の定款は外部から見られる?に書いたとおりです。
つまり、登記事項証明書を取っても、登記情報提供サービスで330円払っても、決算月は出てきません。履歴事項全部証明書と現在事項全部証明書の違いで「登記で分かること」を整理しましたが、決算月は株主・取引先・メインバンクと同じく「登記の外側」にある情報です。
ただし登記が間接的に役立つ場面がひとつあります。公告方法を電子公告にしている会社は、電子公告を掲載するウェブページのURLが登記事項(同項28号)なので、そのURLをたどれば決算公告が見つかり、そこに「第○期(自○年○月○日 至○年○月○日)」の形で事業年度が書いてあります。登記が決算月を教えてくれるのではなく、決算月が書いてある場所を教えてくれる、という関係です。
外から確認できる3つのルート
ルート1:有価証券報告書(EDINET・無料・確実)
上場会社や、株主数などの要件で有価証券報告書の提出義務がある会社は、金融庁のEDINETで報告書が誰でも無料で読めます。表紙に「事業年度 第○期(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)」と明記されているので、決算月は一発です。EDINETのコードリストにも「決算日」の列があります。経済産業省のgBizINFOにも、有価証券報告書ベースの財務情報が「決算期」付きで載ります。
このルートの弱点は対象の狭さです。うちのデータベースに取り込んだEDINETコードリストで決算日が入っている会社は4,926社(上場3,834社・非上場1,092社)。国税庁の統計にある普通法人3,025,599社の0.16%です。相手が上場しているかどうかの見分け方は会社が上場しているか確認する方法にまとめてあります。
ルート2:決算公告(官報・電子公告)
株式会社は定時株主総会の後に貸借対照表を公告する義務があります(会社法440条)。公告方法が官報なら官報に、電子公告なら会社サイトの電子公告ページに載り、どちらも「第○期決算公告」「令和○年○月○日現在」といった形で期末日が読めます。決算公告の探し方そのものは会社の売上高を調べる方法に書きました。
ただ、決算公告を実際に出している会社は多くありません。義務があるのに出していない会社が大半なのが実態で、ここは別の記事で扱う予定です。「決算公告が見つからない=決算月は分からない」で、そこから先は会社が自分で出している情報に頼ります。
ルート3:会社サイト・採用ページ・求人票の「会社概要」
いちばん現実的なルートです。会社概要のページに「決算期:3月」「事業年度:4月1日〜3月31日」と書いてある会社は多く、書いていなくても「第○期」や「創立○周年」の記載から、設立年月日と組み合わせて逆算できることがあります。求人票では、賞与の「年2回(7月・12月)」「業績賞与は決算後に支給」といった記載が決算月のヒントになります。求人票の読み方は求人票の給与欄の見方を参照してください。
このルートは「会社が書いていれば分かる」というだけで、書いていなければ終わりです。帝国データバンクや東京商工リサーチの企業情報(有料)には決算期の項目がありますが、そこまで払う前に、次の「実態」を頭に入れておくと当たりの精度が上がります。
決算月の実態 — 国税庁の統計で「3月決算が多い」を確かめる
国税庁の令和6年度統計年報「法人税」には、決算期別の普通法人数という表があります。令和6年4月1日から令和7年3月31日までに事業年度が終了した内国普通法人(会社等・企業組合・医療法人)と通算法人の申告事績で、合計3,025,599社。このうち年1回決算の3,002,815社を事業年度の終了月で並べると、こうなります。
- 3月 … 535,064社(17.8%)
- 9月 … 329,243社(11.0%)
- 12月 … 317,140社(10.6%)
- 6月 … 291,067社(9.7%)
- 8月 … 261,798社(8.7%)
- 5月 … 247,013社(8.2%)
- 7月 … 229,737社(7.7%)
- 4月 … 207,892社(6.9%)
- 2月 … 198,161社(6.6%)
- 10月 … 155,662社(5.2%)
- 11月 … 119,670社(4.0%)
- 1月 … 110,368社(3.7%)
3月がいちばん多いのは事実です。ただ「多い」といっても6社に1社で、残りの82.2%は3月以外です。2位の9月と3位の12月を足しても3月に届かず、4月から2月まで、どの月にも11万社以上の会社があります。もう少し珍しい形として、事業年度が半年の「年2回決算」が22,251社、年3回以上が533社あります。
読みどころは、1月決算の少なさです。3.7%で最下位。11月(4.0%)、10月(5.2%)と、秋から年初にかけての月が軒並み少ない。年末年始に決算作業が重なるのを避ける、という実務上の理由が透けて見えます。
資本金1億円以上だと、3月決算が54.1%に跳ね上がる
同じ表には資本金の階級別の内訳があり、ここにこの記事でいちばん伝えたい数字があります。
- 資本金1億円未満(2,967,002社) … 3月決算は515,689社、17.4%
- 資本金1億円以上(35,813社) … 3月決算は19,375社、54.1%
資本金1億円という線は、法人税の中小企業向け軽減措置の境目でもあり、中小企業の定義で扱った線引きとほぼ重なります。その線を越えた瞬間に、3月決算の割合が3倍になる。「日本の会社は3月決算」という通説は、資本金の大きい会社を見ている人の感覚で、会社の数で言えば少数派の話です。
なぜ大きい会社ほど3月なのかは、統計からは読めません。国や自治体の会計年度(4月〜3月)に合わせると官公庁との取引や補助金の期間管理が楽になること、株主総会を6月に集中させる慣行があること、が理由としてよく挙げられますが、ここは推測として書いておきます。事実として言えるのは、資本金の大小で3月決算の割合が17.4%と54.1%に分かれる、ここまでです。
うちのデータで見る — 有価証券報告書を出す4,926社の決算月
ここからはしょくばログのデータです。EDINETのコードリストから取り込んだ、決算日が記載されている4,926社(上場3,834社・非上場1,092社)を決算月で数えました。
- 3月 … 2,913社(59.1%)
- 12月 … 686社(13.9%)
- 2月 … 267社(5.4%)
- 9月 … 260社(5.3%)
- 6月 … 203社(4.1%)
- 8月 … 121社(2.5%)
- 5月 … 113社(2.3%)
- 1月 … 82社(1.7%)
- 11月 … 76社(1.5%)
- 10月 … 73社(1.5%)
- 7月 … 70社(1.4%)
- 4月 … 62社(1.3%)
国税庁の資本金1億円以上の54.1%より、さらに高い59.1%です。上場3,834社に限ると57.8%(2,217社)、有価証券報告書を出す非上場1,092社では63.7%(696社)で、どちらも6割前後。上場会社クラスでは「3月決算」を初期値にして構わない、という水準です。
もうひとつ、全法人の統計と順位が入れ替わっている月があります。2月です。全法人では6.6%で9位なのに、有価証券報告書を出す会社では5.4%で3位。中身を見ると、2月決算267社のうち116社(43.4%)が小売業でした。百貨店・ホームセンター・靴の量販店といった顔ぶれで、うちのデータに入っている小売業409社のうち2月決算は116社、3月決算159社に次いで2番目に多い決算月です。年末商戦と初売りを終えた2月末で締める、という業界の慣行がそのまま数字に出ています。相手が小売の大手なら、3月の次に2月を疑ってください。
12月決算686社の内訳は、情報・通信業163社とサービス業163社が並んで最多でした。暦年で締める形は外資系や比較的新しい会社に多い、と一般に言われますが、うちのデータで確かめられるのは業種の内訳までです。
確認できないときの当たりの付け方 — 設立月から決算月を推定する
非上場で、決算公告もなく、会社概要にも書いていない。この状態が中小企業の大半です。ここで使えるのが設立月です。会社を作るとき、最初の事業年度をなるべく長く取るために「設立月の前月」を決算月にする、という設計がよく勧められます。4月に設立したら3月決算、10月に設立したら9月決算、という形です。
これが実際にどれだけ当たるのかを、うちのデータで確かめました。gBizINFOから取り込んだ設立年月日を持つ会社のうち、EDINETまたはgBizINFOの財務情報で決算月も分かる1,628社について、設立月から決算月までの月数を数えます。
- 設立月の前月が決算月(設立から11か月後に初回期末) … 259社(15.9%)
- 設立月と同じ月が決算月 … 136社(8.4%)
- それ以外の10通り … 94社〜153社(5.8%〜9.4%)
12通りが均等なら8.3%ずつです。「前月」だけが15.9%と均等の2倍近くあり、次に多い10か月後(153社・9.4%)を大きく引き離しています。つまり「設立月の前月」は、当てずっぽうの2倍は当たる。ただし裏返せば84.1%は前月ではないので、あくまで最初に疑う候補であって、確定ではありません。
なお、この1,628社は決算月が分かる会社、つまりほぼ有価証券報告書を出す規模の会社に偏っています。設立から何十年も経った会社が多く、その間に決算月を変えた会社も含まれます。中小企業だけで数えれば「前月」の割合はもっと高いか低いか、正直なところ分かりません。数字の出どころはここまで、と明記しておきます。
設立年月日そのものは、gBizINFOに載っていれば無料で分かります。うちのデータベースでは63,954社に設立年月日が入っていて、設立月の分布は4月が8,208社(12.8%)で最多、3月5,883社(9.2%)、11月4,302社(6.7%)で最少でした。設立月の確かめ方は会社の設立年月日を調べる方法に書いてあります。
当たりを付ける手順
- 手順1:相手が上場・有価証券報告書の提出会社か確かめる。 該当すればEDINETで確定(初期値は3月、小売なら2月も疑う)
- 手順2:会社サイトの会社概要・電子公告・採用ページを見る。 「決算期」「事業年度」「第○期」「賞与○月」の記載を探す
- 手順3:設立月が分かれば、その前月を第一候補にする。 gBizINFOの設立年月日、または会社概要の「設立」欄から
- 手順4:どれも無ければ、資本金で見当を付ける。 資本金1億円以上なら3月が半分、1億円未満なら3月は6社に1社。資本金の確認は会社の資本金を調べる方法
- 手順5:確定が必要なら本人に聞く。 請求サイクルや契約期間の話として「御社の決算期はいつですか」と聞くのは、取引の場で普通の質問です
決算月が分かると何に効くのか
営業なら、相手の来期予算が固まるのは決算月の手前、使い切りの発注が出るのは決算月の直前、という動き方を読めます。法人税の申告期限は事業年度終了の翌日から2か月以内(法人税法74条)なので、決算月の翌月〜翌々月は経理が最も忙しく、新規の提案が通りにくい時期でもあります。
請求・与信なら、相手の期末をまたぐ売掛は、相手の決算数字に直接影響します。期末直前の大口発注や、期末を過ぎてからの支払い遅れは、それだけで判断材料になります。取引前の確認の流れは取引先の信用を無料で調べる方法にまとめてあります。
転職なら、賞与の査定期間と支給月、昇給の時期が決算月に連動していることが多く、入社月によって初回の賞与が満額にならない、といった話は決算月が分かって初めて計算できます。
よくある質問
登記簿謄本を取れば決算月は分かりますか
分かりません。会社法911条3項の登記事項に事業年度は含まれていません。登記事項証明書に載るのは目的・商号・本店・資本金・株式数・役員・公告方法などまでです。ただし公告方法が電子公告の会社は、電子公告のURLが登記されているので、そこから決算公告をたどると期末日が読めます。
日本の会社は3月決算が多いと聞きましたが、本当ですか
会社の数で見ると、多いとは言いにくい水準です。国税庁の令和6年度統計年報で、年1回決算の普通法人3,002,815社のうち3月決算は535,064社、17.8%でした。ただし資本金1億円以上に限ると54.1%、有価証券報告書を出す会社だけなら、うちのデータで59.1%です。「大きい会社は3月決算が多い」が正確な言い方です。
3月以外で多い決算月はいつですか
全法人では9月(11.0%)、12月(10.6%)、6月(9.7%)の順です。逆に少ないのは1月(3.7%)、11月(4.0%)、10月(5.2%)で、年末年始に近い月は避けられる傾向があります。上場会社クラスでは12月(13.9%)が2位、2月(5.4%)が3位で、2月は小売業が4割強を占めます。
設立月から決算月を推定できますか
第一候補にはなります。うちのデータで設立月と決算月の両方が分かる1,628社のうち、決算月が設立月の前月だった会社は259社(15.9%)で、12通りが均等な場合(8.3%)の約2倍でした。ただし残りの84.1%は前月ではないので、推定は推定として扱い、確定が要るなら会社に直接聞いてください。
決算月は途中で変えられるのですか
変えられます。事業年度は定款で定める事項なので、株主総会で定款を変更し、税務署などに異動届を出せば変更できます。登記事項ではないので、登記の履歴を見ても変更の痕跡は残りません。古い会社ほど、設立時と今の決算月が違う可能性がある、という前提で見てください。
まとめ
- 決算月は登記事項ではない(会社法911条3項)。登記簿を取っても出てこない。定款に書いてあるが定款は外から見られない
- 外から確かめるルートは3つ。 有価証券報告書(EDINET・無料・4,926社のみ)、決算公告(出している会社だけ)、会社サイトや求人票の会社概要
- 3月決算は年1回決算の普通法人3,002,815社のうち17.8%。 9月11.0%、12月10.6%と続き、最少は1月3.7%(国税庁 令和6年度統計年報)
- 資本金1億円以上なら3月決算が54.1%、1億円未満なら17.4%。 「3月決算が多い」は大きい会社の話
- 有価証券報告書を出す4,926社では3月が59.1%。 2月決算267社の43.4%は小売業
- 設立月の前月を決算月にしている会社は15.9%(1,628社中259社)。 均等な場合の2倍だが、8割強は前月ではない
- 確定が要るなら本人に聞く。 決算期を尋ねるのは取引の場で普通の質問
しょくばログでは全国約579万社の会社情報を無料で公開しています。会社名で検索すれば法人番号・所在地・法人種別がその場で分かり、gBizINFOやEDINETの情報がある会社は設立年月日や上場区分も確認できます。決算月を推定する前の「設立月」と「資本金」の確認に、お使いください。
参照した一次資料
- 国税庁「令和6年度 統計年報 2 直接税 法人税 4-2 法人数 (1) 決算期別の普通法人数及び通算法人数」(令和8年2月26日掲載。令和6年4月1日〜令和7年3月31日に事業年度が終了した内国普通法人・通算法人の申告事績) https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/hojin2024/hojin.htm
- 会社法(平成十七年法律第八十六号)第440条(計算書類の公告)・第911条第3項(株式会社の設立の登記事項) e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第74条(確定申告) e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 金融庁 EDINET(有価証券報告書等の閲覧・EDINETコードリスト) https://disclosure2.edinet-fsa.go.jp/
- 自社データベース(EDINETコードリストの決算日・上場区分・提出者業種を持つ4,926社、gBizINFOの財務情報・設立年月日を取り込んだ会社を2026年9月12日に集計)