✍ 古家あきら | 2026-09-05 更新

中小企業の定義は「資本金または従業員数」 — 同じ200人でも、業種で中小かどうかが変わる

中小企業の定義のイメージ。大小さまざまな建物が並ぶ街並みを、場所によって高さの違う1本の基準線が横切っている図

先に結論です。中小企業の定義は中小企業基本法第2条にあり、業種によって4通りの線が引かれています。

ここで見落とされがちなのが、「かつ」ではなく「または」だということ。資本金が10億円あっても従業員が200人なら、中小企業基本法上は中小企業です。逆に「中小企業ではない」と言えるのは、資本金と従業員数の両方が線を超えている会社だけです。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「応募先は中小企業なのか」「この取引先は補助金の対象になる規模か」という趣旨のご相談をいただきます。そのたびに困るのが、この定義が「原則」でしかなく、制度ごとに線が引き直されることです。この記事では、法律の線そのものと、うちのデータで実際に数えた分布、そして目の前の会社がどちら側かを判定する手順まで書きます。

会社の規模を実際に調べる手順そのものは会社の規模を調べる方法にまとめてあります。この記事は「線がどこに引かれているか」の話です。

いちばん多い誤解 — 「資本金かつ従業員数」ではない

条文を実際に引きます。中小企業基本法第2条第1号は、「資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であつて、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの」と書かれています。

「並びに」でつながれた2つの集合を、どちらも中小企業者として扱う書き方です。中小企業庁の定義ページでも、この部分は「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は 常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人」と「又は」で表記されています。

つまり判定はこうなります。

この誤解は実害があります。「うちは資本金5億円だから補助金の対象外だ」と諦めてしまう会社が実際にあるのですが、従業員が300人以下なら中小企業基本法上は中小企業です(ただし制度ごとの線は後述のとおり別途確認が必要です)。資本金そのものの調べ方は会社の資本金を無料で調べる方法に、従業員数は会社の従業員数を無料で調べる方法にまとめています。

業種で線が違う — だから「同じ200人」の判定が割れる

4つの線のうち、最も緩いのが製造業その他の300人、最も厳しいのが小売業の50人です。同じ従業員数でも、業種が違うだけで判定が逆になります。

そして、この「業種次第で変わるゾーン」は決して細い帯ではありません。うちのデータベースで従業員数が分かる144,755社のうち、51人〜300人に入る会社は39,687社。全体の27.4%です。4社に1社以上が、業種を確認しないと中小かどうか判定できない位置にいます。

だから、規模を判定する前に必ず業種を押さえてください。業種の調べ方は会社の業種を調べる方法にまとめています。

うちのデータで数えた — 一律300人なら88.8%、業種別の線なら79.4%

しょくばログのデータベースには、国税庁の法人番号データを土台に、経済産業省gBizINFOの全件データから取り込んだ従業員数が入っています。活動中の法人4,988,967社のうち、従業員数が分かるのは144,755社。この集団で実際に数えました。

まず従業員数の分布です。

中央値は28人、真ん中の半分は9人〜125人です。

そして本題。一律に「300人以下=中小」で数えると88.8%(128,587社)。ところが、業種ごとの線(卸売・サービス100人/小売50人/その他300人)を当てると79.4%(114,961社)まで落ちます。卸売業と小売業を分けられないため小売寄りに厳しく見ると78.3%。「業種で線が違う」というだけで、中小に当たる会社が約1割減るわけです。

一律300人で考えている人は、ここで1割ぶんを取り違えています。

なお、うちが数えたのは従業員数の側だけです。定義は「または」なので、従業員数の線を超えていても資本金の線以下なら中小企業になります。したがって79.4%という数字は下限で、実際の中小企業比率はこれより高くなります。

業種別に見ると、建設業は97.2%が中小・卸売小売は67.1%

同じ集計を業種ごとに割ると、業種の性格がそのまま出ます(カッコ内は当てはめた従業員数の線と、その業種の従業員数の中央値)。

建設業の97.2%と医療・福祉の67.0%で30ポイント差がありますが、これは建設業の会社が特別小さいからだけではありません。建設業は「その他」扱いで300人の線、医療・福祉はサービス業扱いで100人の線と、そもそも当てられている線が3倍違う。従業員数の中央値を見ると建設業13人・医療福祉36人で、絶対値の差は3倍弱です。線の差と実態の差が同じ方向に効いて、判定率の差が広がっています。

運輸業,郵便業だけは毛色が違います。線は緩い300人なのに中小率は81.3%と低い。中央値が110人で、うちが従業員数を把握できている業種のなかで飛び抜けて大きいためです。

業種に例外がある — ゴム製品900人、旅館200人、ソフトウェア300人

4つの線を覚えたら終わり、ではありません。中小企業庁は、中小企業関連立法において政令で別の線が使われる業種があることを明示しています。

ソフトウエア業と情報処理サービス業の例外は実務でよく効きます。日本標準産業分類では情報通信業に入る一方、中小企業基本法の4区分に素直に当てるとサービス業(100人)になりかねないところ、製造業と同じ300人の線が使われるわけです。うちの集計で情報通信業を300人の線で数えたときの中小率88.0%は、100人の線で数えれば大きく下がります。

そして中小企業庁自身が、定義ページにこう書いています。「上記にあげた中小企業の定義は、中小企業政策における基本的な政策対象の範囲を定めた『原則』であり、法律や制度によって『中小企業』として扱われている範囲が異なることがあります」。

条文の書き出しも同じ趣旨です。第2条は「おおむね次の各号に掲げるものとし、その範囲は、これらの施策が次条の基本理念の実現を図るため効率的に実施されるように施策ごとに定めるものとする」と始まります。法律自身が「これは目安で、実際の線は制度ごとに引く」と宣言しているわけです。

代表例が税制です。中小企業庁は、法人税法における中小企業軽減税率の適用範囲は資本金1億円以下と説明しています。中小企業基本法では製造業なら3億円が線ですが、税の軽減はもっと厳しい線で切られます。また多くの補助金・助成金では、大企業と密接な関係を持つ会社が「みなし大企業」として対象から外れます。

「中小企業かどうか」は、聞かれた文脈を確認しないと答えられません。 補助金の話なのか、税の話なのか、単に規模感の話なのか。制度の話なら、最後は各制度の要領を見るのが唯一の正解です。

小規模企業者はもっと厳しい — 20人と5人

中小企業基本法にはもう一段小さい区分があります。第2条第5項の小規模企業者です。

こちらは資本金の条件がなく、従業員数だけです。持続化補助金など小規模事業者向けの制度で使われます。

うちの144,755社にこの線を当てると、小規模企業者に当たるのは42,572社・29.4%。従業員数の分かる会社の3割弱が、中小企業のなかでもさらに小さい区分に入ります。全体の分布で1〜5人が15.7%、6〜20人が27.3%だったことを思い出すと、感覚は合います。

なおこちらにも例外があり、小規模事業者支援法・中小企業信用保険法・小規模企業共済法の3法では、政令により宿泊業と娯楽業は従業員20人以下が小規模企業とされています。

目の前の会社がどちら側か調べる手順

実際の判定は、この順番でやるのが早いです。

1. 業種を特定する。 4つの線のどれを使うかが決まらないと始まりません。国税庁の法人番号データには業種が入っていないので、会社の業種を調べる方法の手順で確認します。

2. 従業員数を探す。 実務上、外から取れる可能性が最も高いのがこれです。gBizINFO、公式サイトの会社概要、求人票の「従業員数」欄が主な出どころです。

3. 資本金を探す。 ここが難所です。うちのデータベースで資本金を持てているのは、活動中の法人4,988,967社のうち4,718社だけ。おおよそ1,057社に1社でしかありません。gBizINFOの財務情報は、有価証券報告書を出している会社を中心にしか揃わないためです。確実に取るなら法務局で登記事項証明書を請求することになります(会社の資本金を無料で調べる方法)。

4. 「または」で判定する。 どちらか一方でも線以下なら中小企業。両方が線を超えていて初めて、中小企業ではないと言えます。資本金が見つからなかった場合、従業員数が線以下なら判定は確定します(従業員数だけで中小と言い切れる)。逆に従業員数が線を超えていた場合は、資本金を確認しないと結論は出せません。

中小企業かどうかの判定フロー。従業員数が業種の線以下なら中小企業が確定し、超えている場合だけ資本金を確認する。資本金も超えていて初めて中小企業ではないと判定される

この非対称性は実務で効きます。従業員数が線以下なら資本金を調べる必要はない、と覚えておくと手間が半分になります。

よくある質問

中小企業の定義に売上高は関係ありますか?

関係ありません。 中小企業基本法第2条が使っているのは「資本金の額又は出資の総額」と「常時使用する従業員の数」の2つだけで、売上高は条文に出てきません。売上高100億円でも従業員が200人の製造業なら、中小企業基本法上は中小企業です。売上高そのものの調べ方は会社の売上高を調べる方法にまとめています。

「常時使用する従業員」にパート・アルバイトは含まれますか?

制度ごとに扱いが違うため、一律には答えられません。 中小企業基本法の条文は「常時使用する従業員の数」としか書いておらず、その内訳の定義は条文に置かれていません。実務では、日雇いや期間を定めて雇われている人の扱い、役員の扱いが制度ごとに整理されています。補助金や税制の適用を判断する場面では、必ずその制度の要領で「常時使用する従業員」の定義を確認してください。 規模感をつかむ目的なら、公表されている従業員数をそのまま使って問題ありません。

個人事業主も中小企業に入りますか?

入ります。 第2条各号は「〜以下の会社及び個人」と書かれており、従業員数の線を満たす個人事業主は中小企業者に含まれます。ただし資本金の条件は「会社」にかかる書き方なので、個人事業主は実質的に従業員数だけで判定されます。個人事業主か法人かの見分け方は個人事業主と法人の見分け方にまとめています。

中小企業と中堅企業はどう違いますか?

中堅企業には、中小企業基本法のような「4区分の線」がありません。 中小企業基本法が定義しているのは中小企業者(第2条第1項)と小規模企業者(同第5項)の2つだけです。「中堅企業」は一般用語として中小企業の上・大企業の下を指して使われることが多く、どの範囲を指すかは文脈や制度によって変わります。規模を正確に伝えたいときは「中堅」ではなく従業員数と資本金の実数で言うのが確実です。

会社の規模が大きいほど良い会社ですか?

規模と働きやすさは別の軸です。 うちのデータでも、従業員数の中央値は業種で10倍近く違います(建設業13人・運輸業110人)。規模は「その業種で普通の大きさか」でしか意味を持ちません。判断材料にするなら、規模そのものより公表されている労働環境の数字のほうが役に立ちます。企業の認定マーク一覧や会社の設立年から見る老舗と新興の見分け方もあわせてご覧ください。

法人の種類(株式会社・合同会社)は中小企業の定義に関係しますか?

関係しません。 条文は「会社及び個人」としか書いておらず、株式会社か合同会社かは問いません。資本金(合同会社なら出資の総額)と従業員数だけで判定されます。法人の種類そのものの違いは法人の種類一覧と見分け方にまとめています。

この記事の数字について

中小企業者の定義(製造業その他3億円/300人、卸売業1億円/100人、サービス業5,000万円/100人、小売業5,000万円/50人)、条文の「おおむね」「施策ごとに定めるものとする」という書き出し、小規模企業者の定義(20人・商業またはサービス業は5人)、および「会社及び個人」という文言は、中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第2条(e-Gov法令検索)によります。

「原則であり法律や制度によって範囲が異なることがある」という注記、みなし大企業、法人税法における中小企業軽減税率の適用範囲(資本金1億円以下)、政令による例外業種(ゴム製品製造業3億円/900人、旅館業5,000万円/200人、ソフトウエア業・情報処理サービス業3億円/300人)、および小規模企業に関する3法での宿泊業・娯楽業の扱い(20人以下)は、中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」によります。

活動中の法人4,988,967社は、国税庁の法人番号公表データを元にしたしょくばログのデータベース(2026年9月5日時点)の集計です。従業員数が分かる144,755社、その分布(1〜5人22,685社/6〜20人39,559社/21〜50人26,656社/51〜100人13,432社/101〜300人26,255社/301人以上16,168社)、中央値28人と四分位(9人・125人)、一律300人での中小率88.8%(128,587社)、業種別の線を当てた中小率79.4%(114,961社)および小売寄りに見た78.3%、51〜300人の39,687社(27.4%)、業種別の中小率と中央値、小規模企業者に当たる42,572社(29.4%)、資本金を保持している4,718社は、経済産業省gBizINFOの全件データを2026年6月14日にしょくばログのデータベースへ取り込んだものを、当社が独自に集計したものです。経済産業省や中小企業庁が公表している統計ではありません。

この集計にはバイアスがあります。gBizINFOに従業員数が載るのは補助金の交付や国の調達への参加などで国に情報が出ている会社が中心で、活動中の法人4,988,967社に対する144,755社は約2.9%にすぎず、比較的規模の大きい会社に偏っています。したがって実際の日本の会社全体では、中小企業・小規模企業者の比率はここで示した数字よりさらに高いと考えられます。また業種の割り当ては日本標準産業分類の大分類にもとづく当社の対応づけであり、中小企業基本法の業種区分(政令で定める例外を含む)と厳密に一致するものではありません。卸売業と小売業は大分類では分離できないため、両方の線で計算した値を併記しています。

制度の適用可否を判断する場面では、必ず各制度の要領で定義をご確認ください。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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