✍ 古家あきら | 2026-09-09 更新

会社の定款は外部から見られる? — 見られるのは全法人の1.6%、残りは登記簿で代用する

先に結論です。会社の定款は、外部の人間には見られません。 株式会社の定款について会社法31条2項が閲覧を請求できる相手を「その株主及び債権者」と名指しで限っていて、取引先候補も、応募者も、興味を持った同業者も、ここには入らないからです。「利害関係があります」と説明しても増えません。条文が相手を列挙してしまっている以上、説明で枠は広がらない。

しかも合同会社・合資会社・合名会社にいたっては、定款を備え置く義務の規定そのものが会社法に置かれていません。 株主や債権者に見せる仕組みが、最初から用意されていないのです。これは後で条文を数えて確かめます。

そのうえで、この記事で言いたいことは3つあります。①法務局にも公証役場にも「誰でも」ルートは無い ②ただし法人格によっては「何人も見られる」と法律に書いてある ③会社の定款は、中身の一部が登記簿に転記されているので、そこを330円で読むのが現実解。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「定款って見られないんですか」という問い合わせをいただきます。うちは国税庁の法人番号公表データを土台に全国約579万社ぶんのデータを持っていますが、定款は1件も持っていません。 持っていないのではなく、取得する手段が無い。この記事は、その「取得する手段が無い」の輪郭を、条文と自社データの実数で引いたものです。

結論:会社法31条は、閲覧できる相手を名指しで限っている

会社法31条は「定款の備置き及び閲覧等」という見出しの条文です。中身を分解します。

読みどころは2項の主語です。「株主及び債権者」以外の登場人物が、いない。 そして3項でわざわざ親会社の株主を足しているということは、足さなければ入らなかったということです。しかもその親会社の株主ですら、裁判所の許可が要る。ここまで丁寧に相手を絞っている条文で、名前の書かれていない第三者に権利が生えることはありません。

「取引先だから」は、債権者になってからの話

実務でいちばん誤解が起きるのがここです。債権者に当たれば2項で請求できます。ただし債権者になるのは、その会社に対する債権が発生した後です。取引の可否を判断している段階、つまり与信をかけている最中は、まだ債権者ではない。定款をいちばん見たいタイミングでは、まだ資格が無いという順番になっています。契約後に見られるようになっても、判断には間に合いません。取引前の与信で実際に何が使えるかは取引先の信用を調べる方法のほうに寄せてあります。

合同会社は、もっと徹底している — 備置きの規定が存在しない

ここは司法書士サイトでもあまり書かれていない部分なので、条文を実際に数えて確かめました。会社法の全条文の見出しを機械的に走査したところ、「定款の備置き及び閲覧等」という条は第31条ただ1つでした。

31条は会社法の第2編(株式会社)に置かれた条文です。合名会社・合資会社・合同会社をまとめた持分会社の編(575条〜675条)には、これに対応する条が置かれていません。持分会社編に定款の名前が付いた条を並べると、575条(定款の作成)、576条(定款の記載又は記録事項)、591条(業務を執行する社員を定款で定めた場合)、610条(退社に伴う定款のみなし変更)、637条〜640条(定款の変更)で、備置きと閲覧の条だけが無い。

つまり合同会社では、社員でも債権者でも、会社法を根拠に「定款を見せろ」と言うことができません。外部の人間はなおさらです。

一方で、合同会社には別の身軽さもあります。公証人の認証が要らない。 会社法30条1項は「第二十六条第一項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない」と定めていますが、26条1項は株式会社の設立の定款のことです。持分会社の定款は575条で作られるので、30条の対象外。だから合同会社の定款は、公証役場にも存在しません。見られない代わりに、認証コストもかかっていないというのが実態です。

うちのデータで、この扱いを受ける会社が何社あるかを数えました。2026年9月9日時点、活動中の法人4,988,967社のうち、合同会社は412,431社(8.27%)、合資会社58,916社(1.18%)、合名会社12,180社(0.24%)。 合わせて483,527社が、定款の備置き規定を持たない会社です。法人格ごとの違いは法人の種類一覧と見分け方に整理しています。

有限会社は「株式会社」として31条が適用される

もうひとつ数の大きい話をしておきます。うちのデータで活動中の有限会社は1,426,057社(28.58%)あります。日本の法人の3割弱が有限会社です。

有限会社法は廃止されていますが、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2条1項が「旧有限会社は…会社法の規定による株式会社として存続する」と定め、2項が「旧有限会社の定款…を…存続する株式会社の定款…とみなす」としています。だから特例有限会社の定款には、31条がそのまま適用されます。 株主と債権者は見られる、第三者は見られない。合同会社より、むしろ開いている側です。

法務局にも公証役場にも、「誰でも」ルートは無い

「定款は設立登記のときに法務局へ出しているのだから、法務局で取れるはずだ」——これがいちばんよく聞く誤解です。結論から言うと、取れません。

法務局のルールは商業登記法11条の2です。 条文はこうです。「登記簿の附属書類の閲覧について利害関係を有する者は、手数料を納付して、その閲覧を請求することができる」。定款は登記簿そのものではなく、登記申請に添えた附属書類の側にあります。そして請求できるのは「利害関係を有する者」に限られる。登記事項証明書が誰でも理由も要らずに取れるのとは、まったく別の扱いです。登記簿本体のほうが誰でも取れる話は会社が実在するか・倒産していないかを確認する方法に書いたとおりで、そこと混同すると期待値を外します。

公証役場も同じです。 株式会社の原始定款は公証人が認証し、公証役場に保存されます。ただし公証人法44条1項が請求できる人を「嘱託人又はその承継人」と定めています。嘱託人とは認証を頼んだ側、つまり発起人などです。第三者は入りません。

ちなみに、その認証にいくらかかるかは公証人手数料令35条で決まっています。資本金の額が100万円未満なら3万円(発起人が全員自然人で3人以下、発起人が設立時発行株式の全部を引き受け、取締役会を置かない、の3条件をすべて満たす場合は1万5千円)、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以外は5万円。この金額がかかっているからこそ、株式会社の定款は公証役場に残っていて、そして残っているのに第三者は取れない、という状態になっています。資本金そのものの調べ方は会社の資本金を調べる方法にまとめています。

実は「何人も見られる」法人格がある — 活動中法人の1.6%

ここからが、この記事でいちばん伝えたい反転です。定款が非公開なのは会社の話であって、法人一般の話ではありません。 法人格によっては、法律が正面から「誰でも見られる」と書いています。

公益社団法人・公益財団法人は、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律21条5項が、こう定めています。「何人も、公益法人の業務時間内は、いつでも…定款…について、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該公益法人は、正当な理由がないのにこれを拒んではならない」。株主でも債権者でもなく「何人も」。しかも拒否には正当な理由が要る。会社法31条2項と読み比べると、書きぶりが正反対です。

特定非営利活動法人(NPO法人)は、特定非営利活動促進法30条が所轄庁に義務を課しています。「所轄庁は、特定非営利活動法人から提出を受けた事業報告書等…又は定款等について閲覧又は謄写の請求があったときは…これらの書類を閲覧させ、又は謄写させなければならない」。ここでも請求できる人の限定がありません。加えて実務上は、内閣府のNPO法人ポータルサイトで法人ごとのページに「定款」のダウンロード項目が並んでいて、所轄庁が登録した閲覧書類をPDFで落とせるようになっています。役所へ出向かずに読めるということです。

社会福祉法人は、もう一段進んでいます。社会福祉法59条の2第1項1号が、定款の認可を受けたとき等に「定款の内容」を公表しなければならないと定め、社会福祉法施行規則10条1項が「法第五十九条の二第一項の公表は、インターネットの利用により行うものとする」と方法まで指定しています。請求を待つのではなく、法人の側からネットに出す義務です。

ここで注意すべき「一般」と「公益」の分かれ目

紛らわしいので明示しておきます。一般社団法人・一般財団法人は、公益法人とは扱いが違います。 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律14条2項は、定款の閲覧を請求できる相手を「その社員及び債権者」と定めていて、これは会社法31条2項とほぼ同じ構造です。「一般」は非公開、「公益」は何人も可。 名前が似ているだけに、ここを取り違えると空振りします。

実際に何社あるのか(自社データ集計)

「見られる法人格がある」と言われても、日本にどれだけあるのかが分からないと使えません。うちのデータベースで数えました。2026年9月9日時点、活動中の法人4,988,967社が母数です。

一方、定款が原則非公開の会社(株式・有限・合同・合資・合名)は合計4,422,900社=88.65%。参考までに、非公開側にまわる一般社団法人は87,490社、一般財団法人は7,887社で、公益法人9,795社の約9.7倍あります。「社団法人だから見られる」は、数のうえでは9割方はずれる見当だということです。

まとめると、日本の活動中法人のうち、定款を第三者が正面から見られるのは1.6%。残り98.4%は、別の手を考える必要があります。

定款が見られなくても、中身の一部は登記簿に出ている

では会社側の98.4%はどうするか。答えは「定款を諦めて、定款の中身が転記された場所を読む」です。

会社法911条3項が、株式会社の設立登記で登記しなければならない事項を列挙しています。この中には、定款で定めた内容がそのまま登記される項目がいくつも混ざっています。定款由来のものを抜き出すと、こうなります。

「定款の定めがあるときは、その定め」という書き方が繰り返し出てくることに注目してください。これは、定款を読まなくても定款の内容が読める部分です。会社の統治の設計——役員の責任をどこまで免除する設計にしているか、公告をどこに出すことにしたか、株式に単元を置いたか——が、この範囲でなら外から見えます。

取り方と実費

330円ルートの実際の使い方は会社が解散・休眠しているか調べる方法で手順を追っています。目的欄から事業内容を読む部分は会社の事業内容を無料で調べる方法、そもそもの会社の特定は会社名から法人番号を検索する方法へ。

上場会社は、自分から出していることがある

上場会社では、IRサイトの株式情報ページに定款のPDFを置いている例があります。株式会社上組やアミューズのように、株式取扱規則と並べて公開している会社です。全社が置いているわけではないので確実な方法ではありませんが、「会社名+定款」で検索して1分で分かることなので、相手が上場していれば最初に試す価値はあります。上場しているかどうかの確認は会社が上場しているか確認する方法に手順があります。

しょくばログを運営して分かった、いちばん正直な話

うちのデータベースには定款が1件もありません。土台が国税庁の法人番号公表データなので、持っているのは商号・本店所在地・法人種別・法人番号といった、公表することが最初から前提の項目だけです。定款はそこに入っていません。入れようがない。

そのうえで、問い合わせをいただくときの「定款が見たい」の中身を伺うと、だいたい3つに割れます。①この会社が何をやっている会社なのか知りたい ②取引していい相手か判断したい ③応募先の実態を知りたい。

そして3つとも、定款では解けません。 定款の目的欄は「その会社が将来やってもいいこと」の一覧であって、いま実際にやっていることではない。設立時に将来を見越して10項目20項目と書き並べるのが普通なので、むしろ実態からは遠ざかります。①なら公式サイトと求人票、②なら登記の変遷と決算、③なら社会保険の加入状況や求人の出方のほうが、はるかに近い。

定款は、会社の「決めごと」であって「実績」ではない。 見られないことに落胆する必要はあまり無い、というのが、データを扱う側から見た正直な感想です。代表者の変遷から会社の状態を読む方法は会社の代表者を調べる方法に、売上規模の当て方は会社の売上高を調べる方法にまとめてあります。

よくある質問

取引先候補の会社に「定款を見せてください」と頼むのはアリですか

アリです。というより、それがいちばん早い方法です。会社法31条2項は会社に対する請求権の話であって、任意で見せることを禁じてはいません。取引開始前の資料提出として定款の写しを求めるのは実務で普通に行われています。ただし、まだ債権者ではない段階なので断られても文句は言えないという前提で頼むことになります。断られたときに「隠している」と読むのは行きすぎで、次の項目のとおりです。

定款を見せてくれない会社は怪しいですか

怪しさの判断材料にはしないほうがいいです。定款には発起人の氏名や住所など個人情報が入っていることが多く、断る理由として十分に正当です。原始定款をそのまま渡せば、何十年も前の関係者の住所が第三者に渡ることになります。断る会社が慎重なだけ、というケースのほうが多い。実在性や事業の継続性を疑うなら、定款ではなく登記の変遷と会社が実在するか・倒産していないかの確認で当たるほうが確実です。

登記簿の「目的」欄は、定款の目的とまったく同じものですか

同じです。会社法911条3項1号が「目的」を登記事項としていて、これは定款の絶対的記載事項がそのまま登記されたものです。だから目的だけを知りたいのなら、定款を追う必要はまったくありません。 330円で全部事項を取れば読めます。ただし前述のとおり、目的欄は「やってもいいこと」の一覧なので、実際の主力事業とは別物として扱ってください。

定款が変更される前の、古い内容を見ることはできますか

外部からは、原則できません。定款変更は株主総会の決議で行われ、変更後の定款が会社に備え置かれます。過去版が公示される仕組みはありません。ただし、変更が登記事項に及んだ場合はその履歴が登記に残ります。 商号変更・本店移転・目的の変更・公告方法の変更などは、履歴事項全部証明書に旧内容が下線付きで残るので、そこからは追えます。本店の移転履歴を読む話は会社の住所を調べる方法で扱っています。

合同会社の定款を見る方法は本当に一つも無いのですか

会社法を根拠にした請求権は無い、というのが正確な言い方です。備置き・閲覧の条が持分会社編に置かれていないので、条文を示して求めることができません。残る道は、相手に任意で見せてもらうか、金融機関や許認可の手続きで提出が求められる場面に立ち会うか、といった個別の事情に依存するものだけです。外から一律に取れるルートは無い、と考えて設計してください。

NPO法人や社会福祉法人の定款は、本当に無料で読めるのですか

読めます。NPO法人は特定非営利活動促進法30条により所轄庁が閲覧・謄写に応じる義務を負い、内閣府のNPO法人ポータルサイトでは法人ごとのページから定款のPDFを落とせます。社会福祉法人は社会福祉法59条の2と施行規則10条1項により、定款の内容をインターネットで公表する義務があります。公益社団法人・公益財団法人は認定法21条5項の「何人も」に基づき、法人に対して直接閲覧を請求できます。この3系統だけは、会社を調べるときの常識をそのまま持ち込まないでください。

まとめ

しょくばログでは全国約579万社の会社情報を無料で公開しています。会社名で検索すれば、法人番号・所在地・法人種別といった登記由来の基本情報がその場で確認できます。定款にたどり着く前の「そもそもどの会社か」を特定する一歩目に、お使いください。

参照した一次資料

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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