✍ 古家あきら | 2026-09-11 更新
履歴事項全部証明書と現在事項全部証明書の違い — 会社を調べるなら履歴事項、それでも「3年前の1月1日」より前は載らない
先に結論です。会社を調べる目的なら、取るのは履歴事項全部証明書です。 現在事項全部証明書との違いは一点で、抹消された事項(下線を引かれて消された過去の登記)が載るかどうか。現在事項には今効いている事項しか載らないので、旧社名・本店の移転・役員の入れ替わり・解散といった「動き」が見えません。会社を調べるとき見たいのは、その動きのほうです。
ただし、ここで止まると半分しか合っていません。履歴事項全部証明書に載る過去にも、期限があります。 商業登記規則30条は、履歴事項証明書に載せる抹消事項を「請求日の3年前の日の属する年の1月1日」から請求日までの間のものに限っています。今日(2026年9月11日)請求すれば基準日は2023年1月1日。それより前に消された事項は、履歴事項を取っても出てきません。そこから先は閉鎖事項証明書の領分です。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「登記を取ったのに昔の社名が出てこない」という相談を受けます。だいたいは現在事項を取っていたか、履歴事項を取ったが変更が基準日より前だったか、のどちらかです。ここでは4種類の証明書の線引きを条文で確かめたうえで、うちのデータで「会社はどのくらいの頻度で動くのか」を数え、3年の窓がどれだけ狭いかを示します。
結論:4種類の証明書は「どこまで過去を載せるか」で分かれている
商業登記規則30条1項は、登記事項証明書の記載事項を4つの区分で定めています。原文の言い回しをそのまま並べます。
- 現在事項証明書 … 「現に効力を有する登記事項(会社法人等番号を含む。)、会社成立の年月日、取締役、監査等委員である取締役、会計参与、監査役、代表取締役、特別取締役、委員、執行役、代表執行役及び会計監査人の就任の年月日並びに会社の商号及び本店の登記の変更に係る事項で現に効力を有するものの直前のもの」
- 履歴事項証明書 … 「前号の事項、当該証明書の交付の請求があつた日(以下「請求日」という。)の3年前の日の属する年の1月1日(以下「基準日」という。)から請求日までの間に抹消する記号を記録された登記事項及び基準日から請求日までの間に登記された事項で現に効力を有しないもの」
- 閉鎖事項証明書 … 「閉鎖した登記記録に記録されている事項」
- 代表者事項証明書 … 「会社の代表者の代表権に関する登記事項で現に効力を有するもの」
読みどころは2つあります。ひとつは履歴事項が「前号の事項」+過去分、と定義されていること。つまり履歴事項は現在事項を丸ごと含んだ上位互換で、現在事項にあって履歴事項にないものはありません。もうひとつは、その過去分に「基準日から請求日まで」という窓が切られていることです。
「全部」と「一部」の違い
証明書の名前に付く「全部」「一部」は、登記記録のどの区を載せるかの話です。同条2項は、一部の区について請求があったときは「商号区、会社状態区及び請求に係る区」を載せると定めています。役員区だけ欲しい、といった使い方が「一部証明書」で、会社を調べる目的で一部を取る理由はまずありません。この先は「全部」を前提に書きます。
現在事項にも「直前の商号・本店」だけは載る
意外と知られていないのがここです。1号の末尾に「会社の商号及び本店の登記の変更に係る事項で現に効力を有するものの直前のもの」とあります。つまり現在事項証明書でも、直前の社名と直前の本店所在地は、1つ前の分だけ載ります。
だから「1回だけ社名を変えた会社の旧社名を知りたい」なら、現在事項でも足ります。逆に言うと、現在事項で見えないのは次のものです。
- 2回以上前の商号・本店
- 退任した役員(就任の年月日は載るが、辞めた人は載らない)
- 解散・清算人・継続といった会社状態の変遷
- 目的の変更前の内容、資本金の減少前の額、発行可能株式総数の変更前の数
役員の入れ替わりを追いたい、代表者が何度交代しているかを見たい、というときは履歴事項でないと始まりません。代表者の変遷の読み方は会社の代表者を調べる方法に、本店の移転履歴は会社の住所を調べる方法にまとめてあります。
履歴事項の窓は「3年前の日の属する年の1月1日」から
基準日の計算は、少し癖があります。「3年前」ではなく「3年前の日の属する年の1月1日」です。
- 2026年9月11日に請求 → 3年前の日は2023年9月11日 → その年の1月1日=2023年1月1日が基準日。2023年1月1日以降に抹消された事項が載る
- 2026年12月28日に請求 → 基準日は同じく2023年1月1日
- 2027年1月5日に請求 → 3年前の日は2024年1月5日 → 基準日は2024年1月1日。2023年中に抹消された事項は、年が明けた瞬間に落ちる
実務上の含みは明快で、年末に取るほうが年明けに取るより1年分多く載るということです。年をまたぐ与信判断や調査であれば、12月中に取っておくと窓が広い。逆に、1月に取った履歴事項に旧社名が無くても、「この会社は変えていない」とは言えません。
もうひとつ。窓は「抹消された事項」に対して切られているのであって、現に効力を有する事項には期限がありません。 20年前に就任して今も代表取締役なら、就任年月日ごと載ります。落ちるのは「終わった事項」だけです。
うちのデータで見る、会社が動く頻度 — 3年の窓は狭い
「3年もあれば十分では」と思うかもしれません。そこで、しょくばログの土台になっている国税庁の法人番号公表データ(全件、2026年5月29日時点)で、活動中の法人4,988,967社について「直近の登記イベント」の種類を数えました。この公表データには法人ごとに「処理区分」という項目があり、法人番号の指定以降に国税庁側で処理された最後のイベントが記録されています。
- 新規(指定以降、商号・所在地の変更なし) … 3,889,957社(77.97%)
- 国内所在地の変更 … 948,002社(19.00%)
- 商号又は名称の変更 … 117,184社(2.35%)
- 吸収合併(存続会社側) … 30,259社(0.61%)
- 登記記録の復活等 … 2,777社
- 国外所在地の変更 … 769社
- 商号の登記の抹消/吸収合併無効 … 合計19社
つまり活動中の会社の5社に1社(1,065,186社=21.35%)は、2015年10月の法人番号指定以降に、社名か所在地のどちらかを少なくとも1回は変えています。 「処理区分」は直近の1件しか持たないので、社名を変えたあとに移転した会社は「所在地の変更」側に数えられます。商号変更の117,184社は下限の数字です。なお、所在地の変更には登記上の本店移転のほか、住居表示の実施や市町村合併による住所の書き換えが含まれうるので、全部が引っ越しではありません。
直近の変更ですら、半数超が基準日より前
ここからが本題です。この「直近の変更」がいつ起きたかを、変更年月日の年で数えました。今日請求したときの基準日は2023年1月1日なので、そこで線を引きます。
- 商号又は名称の変更 117,184社のうち、2023年より前に変更した会社 … 68,741社(58.66%)
- 国内所在地の変更 948,002社のうち、2023年より前に変更した会社 … 517,020社(54.54%)
- 両方を合わせると、1,065,186社のうち585,761社(54.99%)が基準日より前
直近の1件を見てもこうです。社名や本店を変えた会社の半分以上は、その「最後の変更」が今日の履歴事項の窓の外側にあります。 商号と本店については前述のとおり「直前の1つ」が現在事項にも履歴事項にも載るので、この585,761社の最後の変更そのものは証明書で読めます。しかし、それより前の変更、退任した役員、会社状態の変遷は、基準日より前なら履歴事項には出てきません。役員の改選は数年おきに積み上がるものなので、「直近の商号変更が2020年」という会社の役員履歴は、今日の履歴事項では途中から切れていると考えたほうが安全です。
年別の件数も出しておきます。商号変更は2016年8,311件、2019年9,818件、2022年11,029件、2024年13,432件、2025年15,699件と、9年でほぼ1.9倍に増えています。所在地の変更は2016年57,140件、2020年78,744件、2024年140,128件、2025年131,556件で、2016年から2024年で2.45倍。いずれも「活動中の会社の直近イベントとして残っている件数」なので、廃業した会社の分は含みません。会社は、思っているより動きます。
それより前は「閉鎖事項証明書」
基準日より前に抹消された事項は、履歴事項には載りません。実務上は閉鎖事項証明書を請求して確認する扱いです。閉鎖事項証明書は条文上「閉鎖した登記記録に記録されている事項」を載せるもので、登記記録そのものが閉じられる場面は次のようなものです。
- 清算結了(会社が消えたとき)。うちのデータで登記閉鎖済みの法人762,832社の閉鎖事由の内訳は「買収された会社」は登記から消えるのかで数えています
- 合併による解散(吸収された側)
- 本店を別の法務局の管轄へ移したとき(移転前の登記記録は旧管轄側で閉鎖される)
- 組織変更(有限会社から株式会社へ、など)
閉鎖した登記記録には保存期間があり、商業登記規則34条で閉鎖した日から20年間とされています。それを超えると確認できない場合があります。コンピュータ化後の閉鎖記録は全国どの法務局でも取れますが、コンピュータ化前の紙の記録は本店移転前の管轄の法務局に保管されているとされているので、古い会社の古い履歴を追うときは請求先を間違えないことが先です。解散・休眠の判定そのものは会社が解散・休眠しているか調べる方法に手順があります。
商号と本店の履歴だけなら、0円で見られるルートがある
ここは、会社データを扱う側からいちばん伝えたい実務です。旧社名と旧本店所在地だけが知りたいなら、証明書を取る前に国税庁の法人番号公表サイトを見てください。
法人番号公表サイトの法人情報画面には「変更履歴情報」欄があり、直近5件分の「変更が発生した日」「変更事由」「変更前の商号又は名称」「変更前の所在地」が表示されます。検索時に「公表以後の変更履歴を検索対象に含める」にチェックを入れると、旧社名で検索して今の会社にたどり着くこともできます。この履歴には履歴事項証明書のような3年の窓がありません。 代わりに別の限界があって、表示されるのは番号法施行日(平成27年10月5日)以降、法人番号が指定されてからの変更だけです。それより前の旧社名は、登記に戻るしかありません。
正直に書いておくと、しょくばログはこの公表データの最新スナップショットを土台にしているので、うちの会社ページに載るのは今の商号と今の所在地だけです。変更前の商号・所在地は持っていません。旧社名を追うときは、うちで法人番号を特定してから、その番号で国税庁のサイトの変更履歴を見る、という順番が最短です。法人番号の特定は会社名から法人番号を検索する方法に書いたとおりで、番号があれば同名会社を取り違えません。
取り方と実費
会社を調べる目的で登記を読むなら、証明書である必要はほとんどありません。
- 登記情報提供サービス(民事法務協会) … 商業・法人登記情報の全部事項が1件330円。現存会社は「履歴事項の全部」、閉鎖会社は「閉鎖事項の全部」が出ます。利用時間は平日8時30分〜23時、土日祝8時30分〜18時。閲覧と同等で証明文や公印は付きませんが、中身を読む目的ならこれで足ります
- 登記事項証明書(法務局) … 令和7年4月1日から書面請求600円/オンライン請求・送付520円/オンライン請求・窓口交付490円。履歴事項・現在事項・閉鎖事項・代表者事項のどれも同じ手数料です。契約書に添付する、許認可の申請に出す、といった証明力が要る場面はこちら
- 登記事項要約書 … 窓口のみで500円。証明文が付かず、現に効力を有する事項だけを載せる要約なので、調べる目的で選ぶ理由はありません
誰でも、理由の説明なしに取れます。相手の会社に通知が行くこともありません。実在確認までを含めた最初の一歩は会社が実在するか・倒産していないかを確認する方法にまとめてあります。
目的別:どれを取るか
- 取引前の与信・相手の素性を知りたい … 履歴事項全部証明書(330円の全部事項で可)。直近の動きが読めるのはこれだけ。新規取引先の確認事項の手順とセットで
- 契約書・申請書に添付する … 提出先が指定する種類に従う。指定がなければ履歴事項を出しておけば足りないことはない
- 代表者の氏名と権限だけ確認したい … 代表者事項証明書。相手の署名者が代表権を持っているかの確認用
- 旧社名・旧本店を知りたい(1回分) … 現在事項でも履歴事項でも載る。証明書が要らないなら国税庁の変更履歴(0円)
- 旧社名・旧本店を何代も遡りたい … 国税庁の変更履歴(直近5件・2015年10月以降)→ それより前は履歴事項(基準日以降)→ さらに前は閉鎖事項証明書
- もう存在しない会社を調べたい … 閉鎖事項証明書。登記情報提供サービスでも「閉鎖事項の全部」として出る
登記に載らないものは、どの証明書を取っても載りません。株主は非上場会社の株主は調べられるのか、親会社・グループ関係は会社の親会社・グループ会社を調べる方法、定款の中身は会社の定款は外部から見られる?で、それぞれ「登記の外側」の扱いを整理しています。
よくある質問
現在事項全部証明書のほうが安いのですか
同じです。法務省の手数料は登記事項証明書として一律で、書面600円、オンライン請求・送付520円、オンライン請求・窓口交付490円(令和7年4月1日〜)。履歴事項も現在事項も閉鎖事項も代表者事項も変わりません。安さで現在事項を選ぶ理由はないので、迷ったら履歴事項です。
履歴事項全部証明書を取れば、会社の設立以来の全履歴が分かりますか
分かりません。載るのは基準日(請求日の3年前の日の属する年の1月1日)以降に抹消された事項と、基準日以降に登記されて今は効力のない事項です。それより前に終わった事項は載らず、閉鎖事項証明書の領分になります。うちのデータでは、社名か所在地を変えた活動中の会社1,065,186社のうち585,761社(54.99%)で、直近の変更ですら今日の基準日より前でした。設立以来を追うつもりなら、最初から閉鎖事項も視野に入れてください。
現在事項証明書に旧社名が載っていました。現在事項には過去は載らないのでは
商号と本店だけは例外です。商業登記規則30条1項1号が「会社の商号及び本店の登記の変更に係る事項で現に効力を有するものの直前のもの」を現在事項の記載事項に含めています。直前の1つだけが載る仕組みで、2回以上前の社名は載りません。
登記情報提供サービスの330円と法務局の証明書、どちらを使うべきですか
読む目的なら330円で十分です。現存会社なら「履歴事項の全部」が出るので、履歴事項全部証明書と同じ範囲を読めます。証明文と公印が無いだけです。相手に提出する、役所に出す、といった証明力が要る場面だけ法務局の証明書に切り替えてください。
旧社名で検索しても会社が見つかりません。登記を取るしかないですか
先に国税庁の法人番号公表サイトで、「公表以後の変更履歴を検索対象に含める」にチェックを入れて旧社名を検索してみてください。平成27年10月5日以降に社名を変えた法人なら、変更前の商号でヒットします。それで出なければ、変更が2015年10月より前か、そもそも登記上の社名が違うかのどちらかで、そこで初めて登記に戻る順番です。会社名で検索して出てこない原因の切り分けは会社名で検索しても出てこない理由にまとめています。
まとめ
- 会社を調べるなら履歴事項全部証明書。 現在事項との違いは「抹消された事項が載るか」(商業登記規則30条1項)。履歴事項は現在事項を丸ごと含む上位互換
- 現在事項でも「直前の商号・本店」は1つだけ載る。 載らないのは2回以上前の変更、退任役員、会社状態の変遷、変更前の目的や資本金
- 履歴事項に載る過去は「請求日の3年前の日の属する年の1月1日」以降だけ。 今日なら基準日は2023年1月1日。年が明けると基準日も1年進むので、年末に取るほうが1年分多い
- うちのデータでは、活動中の法人4,988,967社のうち1,065,186社(21.35%)が2015年10月以降に社名か所在地を変更。 そのうち585,761社(54.99%)は、直近の変更が今日の基準日より前
- 基準日より前は閉鎖事項証明書。 閉鎖した登記記録の保存は20年(商業登記規則34条)。コンピュータ化前の紙の記録は移転前の管轄の法務局にある
- 旧社名・旧本店だけなら国税庁の法人番号公表サイトの変更履歴が0円。 直近5件、平成27年10月5日以降の変更のみ
- 読むだけなら登記情報提供サービス330円。 証明力が要るなら法務局で600円/520円/490円(令和7年4月1日〜)
しょくばログでは全国約579万社の会社情報を無料で公開しています。会社名で検索すれば、法人番号・所在地・法人種別がその場で分かります。登記を取る前に「どの会社の登記を取るのか」を法人番号で確定させる一歩目に、お使いください。
参照した一次資料
- 商業登記規則(昭和三十九年法務省令第二十三号)第30条・第34条 e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023
- 法務省「登記手数料について」(令和7年4月1日〜:書面600円/オンライン送付520円/オンライン窓口交付490円/登記事項要約書500円) https://www.moj.go.jp/MINJI/TESURYO/
- 民事法務協会「登記情報提供サービス」利用料金・提供内容(商業・法人 全部事項330円、現存会社は履歴事項の全部、閉鎖会社は閉鎖事項の全部) https://www1.touki.or.jp/service/index.html
- 国税庁法人番号公表サイト「ご利用方法(検索・閲覧、ダウンロード機能)について」(変更履歴情報は直近5件、番号法施行日 平成27年10月5日以降) https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/website/riyo-hoho/index.html
- 自社データベース(国税庁 法人番号公表サイト 全件データ 2026年5月29日時点・処理区分/変更年月日を集計、活動中の法人4,988,967社)