✍ 古家あきら | 2026-09-10 更新
非上場会社の株主は調べられるのか — 株主は登記に載りません
先に結論です。非上場会社の株主は、原則として外からは調べられません。株主の氏名は登記事項ではないからです。 会社法911条3項が列挙する株式会社の登記事項を最初から最後まで読んでも、そこに「株主」という言葉は出てきません。資本金の額も、発行済株式の総数も登記されます。でも、その株を誰が持っているかは登記されない。だから登記事項証明書を何通取っても株主は出てこないのです。
株主が制度として公表されるのは、有価証券報告書を出す会社だけです。うちで数えたところ、その会社は全国で4,921社。株主が存在しうる会社(株式会社と有限会社)は3,939,373社あるので、割合にすると約800社に1社(0.12%)です。残りの799社については、外から確定する方法は用意されていません。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「この会社のオーナーは誰か」「実質的な支配者を確認したい」というご相談を、与信・M&A・反社チェックの文脈で定期的にいただきます。そのたびに同じ説明をすることになるので、今回は根拠条文と実数を全部並べて、どこまでが届いて、どこからが届かないのかを一枚の記事にしました。
株主が登記されないことを、条文で確認する
会社法911条3項が定める株式会社の設立登記の登記事項は、目的・商号・本店及び支店の所在場所・存続期間についての定款の定め・資本金の額・発行可能株式総数・発行する株式の内容・単元株式数・発行済株式の総数・株券発行会社である旨・株主名簿管理人の氏名及び住所・新株予約権・取締役の氏名・代表取締役の氏名及び住所……と続きます(会社法 e-Gov法令検索)。
ここで面白いのは、「株主名簿管理人を置いたときは、その氏名又は名称及び住所並びに営業所」は登記されるという点です。株主名簿を管理している信託銀行の名前は登記簿に出るのに、その名簿に載っている株主本人は出ない。制度の設計思想がよく分かる並びだと思います。
では株主名簿はどこにあるのか。会社法121条により、株式会社は株主名簿を作成し、株主の氏名又は名称及び住所・持株数・取得日を記載しなければなりません。そして125条1項で、株主名簿は会社の本店に備え置かれます。ただし2項で閲覧・謄写を請求できるのは「株主及び債権者」に限られ、しかも請求の理由を明らかにしなければなりません。3項には拒絶事由が並び、「閲覧で知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため」の請求は拒めると明記されています。
つまり株主名簿は「存在するが、無関係な第三者には開かれていない書類」です。会社の外にいる人が「取引前に確認したいので株主名簿を見せてください」と言っても、法的な根拠がありません。
会社の中を見る書類の壁については、会社の定款は外部から見られる?でも同じ構造を書きました。定款も株主名簿も、会社が持っている・第三者には開かないという点で共通しています。
法務局には「株主リスト」がある。ただし見られるのは利害関係人だけ
ここは意外と知られていないので、丁寧に書きます。
平成28年10月1日以降、株式会社の登記申請では「株主リスト」の添付が必要になりました(商業登記規則61条2項・3項)。必要になるのは、登記すべき事項について株主総会(種類株主総会)の決議を要する場合と、株主全員(種類株主全員)の同意を要する場合です。役員変更も本店移転も商号変更も株主総会決議で行うことが多いので、実務上は多くの会社が数年に一度は株主リストを法務局に出していることになります。
記載内容は法務省の「株主リスト」が登記の添付書面となりましたに明記されています。
- 株主総会決議の場合 … 議決権数上位10名の株主、または議決権割合が2/3に達するまでの株主の、いずれか少ない方
- 記載事項 … 氏名又は名称、住所、株式数、議決権数、議決権割合。代表者が証明する
- 全員同意の場合 … 株主全員について、氏名又は名称・住所・株式数・議決権数
上位10名の氏名・住所・議決権割合が、書面として法務局に実在する。ここまで読むと「では取れるのでは」と思いますよね。取れません。
商業登記法10条・11条は、登記事項証明書と登記事項概要書面について「何人も」請求できると定めています。ところが同法11条の2は、登記簿の附属書類(=申請書に添付された書面)の閲覧について「利害関係を有する者」に限定しています。株主リストは附属書類です。したがって、利害関係を疎明できない第三者は閲覧できません。
株主の情報は法務局にある。しかし「誰でも見られる書類」と「利害関係人だけが見られる書類」の境界線の、向こう側に置かれている。 これが非上場会社の株主が調べられない、いちばん正確な説明です。
株主が公表される4,921社は、どういう会社か
株主が制度として世に出るのは、金融商品取引法24条により有価証券報告書を提出する会社です。有価証券報告書には「第二部 企業情報」→「第4 提出会社の状況」→「1 株式等の状況」→「(5) 大株主の状況」という欄があり(企業内容等の開示に関する内閣府令)、持株数の多い順に大株主が並びます。ここはEDINETで誰でも無料で読めます。
そこで、EDINETが公開している提出者一覧(EDINETコードリスト、2026年9月10日現在・全11,393件)を落として数えました。
- 内国法人・組合(有価証券報告書等の提出義務者) … 4,922件
- うち 上場 … 3,816社
- うち 非上場 … 1,105社
非上場なのに有価証券報告書を出している会社が1,105社ある、というのがこの記事で一番実務的な発見だと思います。過去に公募増資をした、社債を発行している、株主が一定数以上いる——といった理由で開示義務が続いている会社です。相手が非上場でも、まずEDINETで社名を引く価値があるのはこのためです。
法人番号が入っている非上場1,101社を、うちのデータベース(国税庁の法人番号公表データが元)と法人番号で突き合わせたところ、1,101社すべてが一致しました。法人種別の内訳はこうです。
- 株式会社 … 1,093社
- 合同会社 … 7社
- 有限会社(特例有限会社) … 1社
業種は、サービス業258社・情報・通信業119社・小売業85社・卸売業72社・不動産業59社の順でした(EDINETの提出者業種区分)。
上場している会社については、東証の上場会社数が3,891社です(2026年9月10日時点・日本取引所グループ公表。プライム1,548/スタンダード1,560/グロース596/TOKYO PRO Market 187、うち外国会社5社)。上場しているかどうかの確認手順そのものは会社が上場しているか確認する方法にまとめてあります。
上場会社にはもう一つ、大量保有報告書があります。金融商品取引法27条の23により、金融商品取引所に上場されている株券等の保有割合が5%を超えた者は、5営業日以内に大量保有報告書を提出しなければなりません。いわゆる5%ルールです。条文が「上場されているもの」を前提にしているとおり、非上場会社の株を何割持っていても、この報告義務は発生しません。「5%ルールで調べればいい」という助言は、非上場会社には最初から効きません。
割合で見ると、こうなります
うちのデータベースで、活動中の法人4,988,967社を法人種別ごとに数えた結果です(2026年9月10日集計)。
- 株式会社 … 2,513,316社(50.38%)
- 有限会社(特例有限会社) … 1,426,057社(28.58%)
- その他の設立登記法人 … 519,553社(10.41%)
- 合同会社 … 412,431社(8.27%)
- 合資会社 … 58,916社(1.18%)
- 合名会社 … 12,180社(0.24%)
株主が存在するのは株式会社と有限会社です。会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2条2項が「旧有限会社の……社員、持分及び出資一口を、それぞれ……株主、株式及び一株とみなす」と定めているので、有限会社の出資者も法律上は株主です。合わせて3,939,373社、全体の78.96%になります。
これに対して、大株主が制度として公表される会社は4,921社。3,939,373 ÷ 4,921 = 約800。株主が存在しうる会社800社に1社しか、株主は外から確定できません。
例外:合名会社・合資会社は、出資者が登記に載ります
ここは通説の逆を行く部分です。株式会社より、合名会社・合資会社のほうが出資者が丸見えです。
- 合名会社(会社法912条5号) … 社員の氏名又は名称及び住所が登記事項
- 合資会社(会社法913条5号〜7号) … 社員の氏名又は名称及び住所に加えて、有限責任社員か無限責任社員かの別、さらに有限責任社員の出資の目的及びその価額並びに既に履行した出資の価額まで登記事項
- 合同会社(会社法914条6号・7号) … 登記されるのは業務を執行する社員の氏名又は名称と、代表社員の氏名又は名称及び住所のみ。出資額の内訳は登記されない
合資会社にいたっては、誰がいくら出したかが登記事項証明書1通で分かります。合名12,180社+合資58,916社=71,096社(活動中法人の1.42%)は、この意味で「出資者が公開されている会社」です。数は少ないですが、相手がこの2種類なら真っ先に登記を取ってください。
逆に合同会社について押さえておきたいのは、合同会社に株主はいないということです。出資者は「社員」であり、株式という概念自体がありません。ですから「この合同会社の株主構成を調べたい」という問いは、そもそも成立しません。登記から読めるのは業務執行社員が誰かまでです。合同会社の実像と、外から見える情報の少なさについては合同会社に入社するのは不利なのかで412,431社を数えて書きました。法人種別ごとの違いの全体像は法人の種類一覧にあります。
確定できないなら、何で代用するか
ここからは実務の話です。株主が確定できない前提で、それでも「誰の会社か」に近づく手はあります。ただしすべて推定であって、確定ではありません。この線は必ず引いてください。
1. 親会社を先に探す。 上場企業の有価証券報告書には関係会社の一覧が載ります。相手が「◯◯グループ」を名乗っているなら、親会社側の開示から子会社として名前が出ることがあります。これは推定ではなく開示情報なので、当たれば確度が高い。手順は会社の親会社・グループ会社を調べる方法に書きました。
2. 代表取締役の氏名と住所は登記事項。 会社法911条3項により、代表取締役の氏名及び住所は登記されます。中小企業では代表者イコール支配株主であることが多いので、実務では代表者を起点に見ます(会社の代表者名を調べる方法)。ただし代表者だから株主だ、とは言い切れません。雇われ社長もいます。
3. 資本金と発行済株式の総数は登記事項。 「誰が」は分からなくても「いくらの会社か」「何株あるか」は登記から取れます(会社の資本金を無料で調べる方法)。株式が動いたときの規模感を測る材料にはなります。
4. 同族性の傍証を見る。 役員に同姓が並ぶ、代表者と会社の所在地が同じ、といった特徴は同族経営の傍証になります。家族経営の会社の特徴と見分け方にまとめていますが、これはあくまで傍証です。同姓は他人でもあり得ます。
5. お金を賭ける判断なら、有料の信用調査に行く。 信用調査会社の調査報告書には、取材ベースで株主構成が記載されることがあります。無料で届く範囲を使い切ったうえで、それでも足りないなら費用を払う。この切り替えどきの考え方は取引先の信用を調べる方法と企業の信用調査の費用相場に書きました。
なお、無料の公的データで「取引の相手方」まで追える範囲については会社の取引先を調べる方法で実数を出しています。株主と同じく、公的に開示される部分だけが例外的に見えるという、まったく同じ構造です。
よくある質問
登記簿謄本を取れば株主は分かりますか?
分かりません。会社法911条3項の登記事項に株主は含まれていないためです。登記事項証明書から読めるのは、資本金の額・発行可能株式総数・発行済株式の総数・株券発行会社かどうか・株主名簿管理人がいる場合はその名称、そして役員の氏名(代表取締役は住所も)までです。会社名から登記情報にたどり着く手順は法人番号を会社名から検索する方法を参照してください。
株主名簿を見せてくださいと言えば見せてもらえますか?
会社法125条2項が閲覧・謄写を請求できる者を「株主及び債権者」に限定しているため、無関係な第三者には請求権がありません。株主か債権者であっても請求の理由を明らかにする必要があり、同条3項の拒絶事由(権利の確保・行使に関する調査以外の目的である場合など)に当たれば会社は拒めます。親会社の株主等(親会社社員)は、権利行使に必要なときに限り裁判所の許可を得て請求できます(同条4項)。
法務局にある株主リストは取れませんか?
登記簿の附属書類にあたるため、商業登記法11条の2により閲覧について利害関係を有する者しか請求できません。登記事項証明書が「何人も」請求できる(同法10条)のと扱いが違います。取引を検討している、という程度の事情で利害関係が認められる前提で動くのは危険です。
非上場でも株主が分かる会社はありますか?
あります。有価証券報告書を提出している非上場会社が1,105社あり(EDINETコードリスト2026年9月10日現在)、その有価証券報告書には「大株主の状況」が載ります。相手が非上場でも、まずEDINETで社名を検索する価値があるのはこのためです。過去に公募増資をした会社や社債を発行している会社が該当します。
合同会社の株主を調べたいのですが。
合同会社に株主は存在しません。出資者は「社員」と呼ばれ、株式という単位がないためです。登記事項として公表されるのは業務を執行する社員の氏名又は名称と、代表社員の氏名又は名称及び住所だけ(会社法914条6号・7号)で、誰がいくら出資したかは登記されません。同じ持分会社でも、合名会社と合資会社は社員全員の氏名・住所が登記されるので、扱いが大きく違います。
反社チェックのために実質的支配者を確認したいのですが。
株主名簿や株主リストを外から取ることはできませんが、口座開設や契約の場面では相手方に「実質的支配者に係る申告書」等の提出を求めるのが実務の標準です。自分で調べに行くのではなく、相手に出させる。これが現実的な経路です。取引先チェックの全体像は取引先の反社チェックのやり方にまとめています。
まとめ
- 株主は登記事項ではない(会社法911条3項)。登記簿を何通取っても出てこない
- 株主名簿は本店にあるが、閲覧できるのは株主と債権者だけ(会社法125条2項)
- 法務局には株主リスト(議決権数上位10名または議決権割合2/3まで)が実在するが、閲覧は利害関係人限定(商業登記法11条の2)
- 株主が制度として公表されるのは有価証券報告書を出す4,921社(上場3,816・非上場1,105)。株主が存在しうる3,939,373社に対して約800社に1社
- 5%ルール(大量保有報告書)は上場会社にしか適用されない(金融商品取引法27条の23)
- 合名会社・合資会社は社員の氏名・住所が登記される。合資会社は有限責任社員の出資額まで登記される
- 合同会社に株主はいない。登記から読めるのは業務執行社員まで
「非上場会社の株主は調べられません」と書くと不親切に見えるかもしれません。でも、調べられないことを知っているのと、調べられると思って何日も空振りするのとでは、実務の速さが全然違います。外から届かない情報だと分かった時点で、相手に聞く・有料調査に切り替える・別の指標で判断する、のどれかに進める。 それがこの記事でいちばんお伝えしたかったことです。