✍ 古家あきら | 2026-08-29 更新

会社の親会社・グループ会社を調べる方法 — 資本関係は登記に載らない

先に結論です。会社の親子関係・資本関係は登記事項ではありません。 登記事項証明書を取っても、その会社の株主が誰かはどこにも書いてありません。だから「登記簿を取り寄せれば親会社が分かる」というのは、残念ながら成り立ちません。

外から確定情報が取れるのは、上場企業(と、その親会社)だけです。上場企業なら有価証券報告書の【関係会社の状況】に、親会社・子会社・関連会社の名称と議決権の所有割合まで載ります。非上場企業については、官報・公式サイト・登記の周辺情報から推定するしかありません。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「A社とB社は同じグループですか」という趣旨の質問をいただきます。うちのデータベースは国税庁の法人番号公表データが元なので、商号・所在地・法人種別は持っていますが、資本関係は1件も持っていません。持っていないのではなく、国が公表していないから存在しないのです。この記事は、その「存在しないもの」をどう埋めるかの話です。

なぜ登記簿に親会社が載らないのか

株式会社が登記しなければならない事項は、会社法第911条第3項に列挙されています。実際の条文を上から並べると、こうです。

23号まで読んでも、「株主」「出資者」「親会社」という言葉は一度も出てきません。ここが誤解の元です。資本金の額(いくら出資されたか)は登記されるのに、誰が出したかは登記されない。金額だけが公開され、出し手は非公開、という設計になっています。

株主の一覧そのものは「株主名簿」として会社の本店に備え置かれています(会社法第125条第1項)。ただし閲覧・謄写を請求できるのは株主及び債権者だけで(同条第2項)、しかも請求理由を明らかにする必要があります。会社側には拒める場合も定められていて、たとえば「知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため」の請求は拒否できます(同条第3項第3号)。取引先を調べたい第三者が、この道から入ることはできません。

例外的に、親会社社員は裁判所の許可を得れば子会社の株主名簿を閲覧できます(同条第4項)。わざわざ「親会社社員は裁判所の許可を得て」と書かれているということは、裏を返せばそれ以外の外部者に道はない、ということです。

資本金の額の読み方そのものは会社の資本金を調べる方法に、登記で分かる本店・支店の扱いは会社の住所を調べる方法にまとめています。

上場企業なら「関係会社の状況」で確定する

相手が上場企業なら、話は一気に簡単になります。有価証券報告書の第一部【企業情報】第1【企業の概況】4【関係会社の状況】を見れば済みます。EDINETで無料・登録なしに読めます。

この欄に何を書くかは、企業内容等の開示に関する内閣府令の様式で決まっています。第二号様式 記載上の注意(28)aには、こうあります。

「親会社、子会社、関連会社及びその他の関係会社に分けて、その名称、住所、資本金又は出資金、主要な事業の内容、議決権に対する提出会社の所有割合及び提出会社と関係会社との関係内容(例えば、役員の兼任等、資金援助、営業上の取引、設備の賃貸借、業務提携等の関係内容をいう。)を記載すること」

つまり、社名・住所・資本金・事業内容・議決権比率・関係の中身まで、ひとつの表で出てきます。有料の企業調査を頼む前に、まずここを見ないのはもったいない。

この欄には、読み方を知っていると効く仕掛けが3つあります。

相手が上場しているかどうかの確認自体は会社が上場しているか確認する方法に手順を書きました。上場していなければ、次の章に進んでください。

親会社が非上場でも追える2つの裏道

「調べたい会社は非上場だが、その会社が上場企業を傘下に持っている」——この形なら、非上場の親会社の姿も外から見えます。

親会社等状況報告書(金商法第24条の7)

金融商品取引法第24条の7第1項は、有価証券報告書を提出しなければならない会社の議決権の過半数を所有している会社等に対し、事業年度ごとに親会社等状況報告書を、当該事業年度経過後3か月以内に提出することを義務づけています。記載事項は「当該親会社等の株式を所有する者に関する事項」その他です。

これは実務的にかなり効きます。上場子会社の親が非上場のオーナー資産管理会社であっても、その株主構成がEDINETに出てくるからです。「上場しているのは子会社だけ」というグループを調べるときの、ほぼ唯一の公的ルートです。

大量保有報告書(金商法第27条の23)

上場している株券等について、株券等保有割合が5%を超える保有者は、大量保有者となった日から5日(日曜その他の休日は算入しない)以内に大量保有報告書を提出しなければなりません。記載事項には保有割合・取得資金・保有の目的が含まれます。

「純投資」なのか「政策保有」なのか「支配を目的とするもの」なのかが書かれるので、資本関係の性質まで読めるのが強みです。誰かが静かに買い集めているグループ再編の前触れは、たいていここに先に出ます。

非上場どうしのグループを追う — 官報という遠回り

どちらも非上場、という一番多いケース。ここで効くのが官報です。

会社法第789条第2項は、吸収合併等をする消滅株式会社等に対し、債権者が異議を述べられる旨などを官報に公告し、知れている債権者には各別に催告することを義務づけています。そして公告すべき事項の第2号が、「存続会社等の商号及び住所」です。異議を述べられる期間は1か月を下ることができません(同項ただし書)。

つまり、どの会社がどの会社に吸収されたかは、法律上かならず官報に出るということです。会社の合併・分割は債権者の利害に直結するので、当事者だけの秘密にはできない設計になっています。社名で官報を検索すれば、数年前の再編がそのまま出てくることがあります。

このほか、公式サイトの「沿革」「グループ会社」ページ、採用サイトの会社概要、決算公告なども、地味ですが一次に近い情報源です。会社の事業内容そのものの調べ方は会社の事業内容を調べる方法に整理しています。

しょくばログのデータで「当たりをつける」— 実数で検証した

ここからが、データベースを運営している立場からの話です。うちは資本関係を持っていませんが、商号・住所・法人種別は全国分を持っています。そこから「関係がありそうな会社」に当たりをつけられるか、実際に集計して確かめました。

手がかり1:商号の共通部分で引く

しょくばログの会社名検索で「イオン」と入れると、名前順に並んだ会社が出てきます。実際の先頭12件はこうでした。

見てのとおり、会社でないもの(労働組合)が2件混ざり、社名が似ているだけの会社も混ざります。うちのデータベース全体では、名称に「イオン」を含む活動中の法人は1,267件あります。化学の「陰イオン」由来の社名も、まったく無関係な「イオン」も、全部この中です。

商号の共通部分は候補を絞るには有効、資本関係の証拠にはならない。これがひとつめの結論です。

社名といえば「ホールディングス」ですが、これも同じです。活動中の法人のうち、名称に「ホールディングス」を含むものは全国で20,125社ありました。内訳は株式会社18,288社、合同会社838社、その他の設立登記法人635社、有限会社288社です。都道府県別では東京都6,822社、大阪府1,897社、愛知県1,408社、神奈川県1,053社、福岡県893社の順でした。法人の種類そのものの見分け方は法人の種類一覧にあります。

そもそも会社法上、ある会社が「子会社」に当たるかどうかは商号ではなく実態で決まります。会社法第2条第3号は子会社を「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもの」と定義し、その法務省令=会社法施行規則第3条第3項が、議決権50%超のほか、40%以上で一定の要件を満たす場合(役員の過半数を送り込んでいる、重要な財務・事業方針を支配する契約がある、資金調達額の50%超を融資している等)も「支配している場合」に含めています。社名にホールディングスと付いていなくても親会社である会社は、いくらでもあるということです。

手がかり2:同一住所で引く — ただし数字を見ると使い方が変わる

「同じ住所に登記されている会社どうしはグループでは?」——よく聞く発想です。実際にうちのデータベース全体で集計しました。

活動中の法人4,988,967社を、都道府県+市区町村+番地・建物名まで含めた住所文字列でまとめると、住所の種類は3,928,435件。このうち2社以上が登記されている住所は491,557件で、そこに1,542,251社がひしめいています。活動中の法人の約3割が、誰かと住所を共有しているという計算です。

内訳を帯で分けると、こうなりました。

そして、いちばん多い住所は東京都渋谷区道玄坂1丁目10番8号 渋谷道玄坂東急ビル2F-Cで、4,136社が登記されていました。2位は東京都千代田区丸の内の会計事務所内の住所で2,865社、3位は渋谷区神宮前のビル2階で2,415社。上位10件のうち8件が東京都内でした。

4,136社がひとつの部屋で経営統合しているわけがありません。 これはバーチャルオフィス・レンタルオフィス・会計事務所の住所です。つまり「同一住所=グループ」という仮説は、上の帯の右側(11社以上)ではまったく成り立ちません。

逆に言うと、使えるのは左側の帯です。ちょうど2社・3社の住所で、しかも社名に共通部分があるか、代表者が同じなら、関係を疑う価値は十分あります。同一住所そのものは「珍しくない事実」なので、単独では何の証拠にもなりません。住所だけで会社の実態を判断する危うさは幽霊会社を見分ける5つのサインにも書きました。

手がかり3:代表者で引く

3つめが代表者名です。中小企業のグループは、株式で束ねる前に人で束ねていることがよくあります。同じ人物が複数社の代表を務めていれば、資本関係がなくても実質的に一体で動いている可能性が高い。代表者の追い方は会社の代表者を調べる3つの方法にまとめました。

3つを重ねて、はじめて「疑う」段階

商号の共通部分・同一住所・同一代表者。このうち2つ以上が重なったら「関係がありそう」、そこで初めて官報や公式サイトの一次資料に当たる。これが、資本関係を持たないデータベースから現実的にできる最大限です。1つだけで判断すると、上のイオンの検索結果のように、労働組合や無関係な同名会社を掴みます。

グループ全体の与信リスクを見たいのであれば、親会社の特定より先に見るべきものがあります。手順は取引先の信用を調べる3層信用調査の費用相場に整理しています。

よくある質問

登記事項証明書を取れば親会社が分かりますか?

分かりません。株式会社の登記事項は会社法第911条第3項に列挙されていますが、そこに「株主」「出資者」「親会社」は含まれていません。資本金の額(5号)は登記されますが、それを誰が出したかは登記されない仕組みです。登記事項証明書で分かるのは、商号・本店・目的・資本金の額・発行済株式総数・役員などです。

株主名簿を見せてもらうことはできますか?

会社法第125条第2項により、閲覧・謄写を請求できるのは株主及び債権者に限られ、請求理由を明らかにする必要があります。さらに会社は、権利の確保・行使に関する調査以外の目的である場合など、同条第3項各号に当たるときは請求を拒めます。取引先や求職者といった第三者の立場では、この方法は使えません。

「子会社」「関連会社」「グループ会社」は同じ意味ですか?

違います。子会社は会社法第2条第3号の定義で、議決権の過半数を持たれているか、会社法施行規則第3条第3項の実質支配基準(40%以上+役員派遣・支配契約・融資50%超などの要件)に当たる会社です。親会社は同条第4号です。一方、「グループ会社」は法律上の定義がない通称で、資本関係のない提携先を含めて使われることもあります。求人票や会社概要で「グループ会社◯社」と書かれていても、それが会社法上の子会社の数とは限りません。求人票の言葉の読み方は求人票の見方にまとめています。

社名に「ホールディングス」と付いていれば持株会社ですか?

社名は手がかりであって、判定基準ではありません。うちのデータベースでは活動中の法人のうち20,125社が名称に「ホールディングス」を含みますが、持株会社かどうかは会社法第2条第3号・第4号と会社法施行規則第3条の実態基準で決まります。逆に、ホールディングスと名乗っていない親会社も普通に存在します。

同じ住所に何社も登記されているのは怪しいサインですか?

それだけでは何とも言えません。うちの集計では、活動中の法人4,988,967社のうち1,542,251社が他社と住所を共有しており、まったく珍しいことではありません。101社以上が登記されている住所が全国に289件あり、最多の住所には4,136社が登記されています。これらはバーチャルオフィスや会計事務所の住所です。判断材料にするなら、住所だけでなく電話番号・公式サイト・求人の有無と合わせて見てください。

取引先の親会社が海外の会社のようです。調べられますか?

相手が日本の上場企業であれば、有価証券報告書の【関係会社の状況】に外国法人も名称・住所を記載する決まりなので、そこから追えます(住所は市町村までの記載でも差し支えない、とされています)。相手が非上場の日本法人で、親が海外にある場合は、公式サイトの英文会社概要や、親会社の本国での開示に当たるのが現実的です。

無料でどこまで分かって、どこからが有料ですか?

無料で確定できるのは、上場企業とその親会社の資本関係(EDINET)、および過去の合併・分割(官報)まで。非上場どうしの資本関係は、無料の公開情報では原則として確定できません。ここから先が信用調査会社の領域です。費用感は信用調査の費用相場に整理しました。

この記事の数字について

株式会社の登記事項は会社法第911条第3項、株主名簿の備置き・閲覧は同法第125条、吸収合併等の債権者に対する官報公告は同法第789条第2項、子会社・親会社の定義は同法第2条第3号・第4号によります。実質支配基準は会社法施行規則第3条第3項です。親会社等状況報告書は金融商品取引法第24条の7第1項、大量保有報告書の5%基準と5日以内の提出期限は同法第27条の23第1項によります。有価証券報告書の【関係会社の状況】の位置づけと記載事項は、企業内容等の開示に関する内閣府令の第二号様式記載上の注意(28)および第三号様式(注意⑻が第二号様式の(28)を準用)によります。開示書類はEDINET、公告はインターネット版官報で確認できます。活動中の法人4,988,967社、名称に「ホールディングス」を含む20,125社(株式会社18,288/合同会社838/その他の設立登記法人635/有限会社288、東京都6,822・大阪府1,897・愛知県1,408・神奈川県1,053・福岡県893)、名称に「イオン」を含む1,267社、住所の種類3,928,435件、2社以上が登記された住所491,557件・1,542,251社、住所ごとの社数帯(2社=337,894件/3社=79,546件/4〜5社=43,205件/6〜10社=21,089件/11〜50社=9,066件/51〜100社=468件/101社以上=289件)、および最多住所の4,136社は、しょくばログのデータベース(国税庁法人番号公表データを元にした2026年8月29日時点の集計)です。会社名検索の結果一覧は、同日にしょくばログの検索機能で実際に取得したものです。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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