✍ 古家あきら | 2026-09-10 更新

合同会社に入社するのは不利なのか — 41万社の実データで見た本当のデメリット

先に結論です。合同会社に入社しても、給与・社会保険・労働時間・有給休暇のどれ一つとして、法律上の扱いが株式会社と変わることはありません。 健康保険も厚生年金も、法人であれば従業員1人でも強制適用です。合同会社は法人です。ここに例外はありません。

そのうえで、実データを数えた結果として申し上げると、合同会社には本物のデメリットが1つだけあります。それは「中が見えないこと」です。 従業員数が外から分かる合同会社はうちのデータで0.72%。株式会社の4.46%と比べて6分の1しかありません。労働環境の開示データに載っている割合も0.72%対4.42%です。条件が悪いのではなく、条件を確かめる材料が手に入らない。応募する側にとって、これが実質的な唯一のリスクです。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「内定先が合同会社なんですが大丈夫でしょうか」「合同会社って格下ですよね?」というご相談を定期的にいただきます。そのたびに口頭で「大丈夫ですよ」と答えてきたのですが、それでは印象論と変わりません。今回は活動中の法人4,988,967社を法人種別ごとに数え直し、合同会社412,431社が実際にどういう会社の集まりなのかを、全部数字で出しました。

まず、合同会社は珍しくない — 12社に1社

うちのデータベース(国税庁の法人番号公表データ由来、2026年9月10日集計)で、活動中の法人4,988,967社の内訳はこうなっています。

合同会社は41万社。日本の法人のおよそ12社に1社です。 珍しい存在ではありません。

そもそも合同会社は、会社法第2条第1号が定める「会社」4種類(株式会社・合名会社・合資会社・合同会社)のうちの1つで、株式会社と対等な法的地位にあります。「株式会社ではない」ことと「会社ではない」ことは、まったく別の話です。名前から何が読めるかの全体像は法人の種類一覧にまとめてあります。

「合同会社=小さい会社」は、事実として間違い

まずは印象論をひとつ潰しておきます。うちのデータで従業員数が判明している合同会社を人数順に並べると、上位はこうなります(従業員数はいずれも経済産業省 gBizINFO 由来)。

以下、フィリップ・モリス・ジャパン合同会社、ラッシュジャパン合同会社、P&Gプレステージ合同会社、サンディスク合同会社と続きます。従業員1,000人以上の合同会社が30社、300人以上が67社、100人以上が115社あります。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを運営している会社も、日本のアップルもグーグルもアマゾンも合同会社です。「合同会社だから小さい」「合同会社だから信用できない」は、実在の会社名を見れば成り立ちません。

外資系の日本法人に合同会社が多いのは、株主総会や取締役会といった機関設計の縛りが持分会社には無く、本国の親会社が意思決定を通しやすいからです。決算公告の義務もありません(会社法第440条第1項の公告義務は株式会社のみが対象です)。

ただし中央値は5人 — ここは正直に書きます

一方で、全体像は逆方向を向いています。従業員数の値が入っている合同会社2,967社のうち、人数として読み取れた2,857社の中央値は5人。同じ条件で数えた株式会社111,602社の中央値は31人でした。分布はこうです。

合同会社の3社に2社は、従業員9人以下です。 ただしこの数字は「従業員数が外から取れた会社だけ」の分布なので、母集団そのものの姿とは言い切れません。従業員数の調べ方と、その数字がどこまで信用できるかは会社の従業員数を無料で調べる方法に書いたとおりです。

規模が小さいこと自体は、良いことでも悪いことでもありません。ただ「合同会社を選ぶ=小規模な会社に当たる確率が高い」のは事実なので、規模を重視するなら法人格ではなく人数そのものを見てください(会社の規模を調べる方法)。

給与・社会保険・労働時間は、法令上まったく同じ

ここが一番聞かれるところなので、条文で答えます。

健康保険 … 健康保険法第3条第3項第2号は、適用事業所を「国、地方公共団体又は法人の事業所であつて、常時従業員を使用するもの」と定めています。個人事業なら業種と5人以上という条件がつきますが、法人には人数要件がありません。

厚生年金 … 厚生年金保険法第6条第1項第2号も同じ文言です。「法人の事業所又は事務所であつて、常時従業員を使用するもの」。合同会社は法人ですから、社長1人だけの合同会社でも強制適用事業所になります。

労働基準法・労働契約法・最低賃金法・労災保険・雇用保険 … これらはそもそも法人格を区別していません。適用の単位は「事業」であって「会社の種類」ではないためです。

つまり、残業代の計算も、有給休暇の付与日数も、解雇のルールも、合同会社だからといって変わる余地がありません。 加入しているかどうかの実際の確認方法は会社が社会保険に加入しているか確認する方法に手順を書いています。合同会社でも同じ手順が使えます。

なお、合同会社の「社員」は従業員ではなく出資者を指します(会社法第576条第4項により、合同会社は社員全員が有限責任社員)。求人票の「社員募集」とはまったく別の言葉なので、混同しないでください。従業員として入社する人は、会社法上の「社員」にはなりません。

本当のデメリット — 外から中身が見えない

ここからが、データを数えて初めて見えた部分です。

① 従業員数が分かる会社の割合

合同会社412,431社のうち、従業員数が外部データから取れるのは2,967社(0.72%)。139社に1社です。株式会社は2,513,316社のうち112,158社(4.46%)で、22社に1社。6倍の差があります。

② 労働環境の開示データに載る割合

女性活躍推進法・次世代育成支援対策推進法などにもとづく職場情報の公表制度で、うちのデータベースに紐づいている法人は活動中で143,646社。その内訳を法人種別で見ると、

平均勤続年数・平均年齢・有給取得率・月平均残業時間といった数字は、会社の残業時間・有給消化率を外から調べる方法で紹介した公表制度から取ってくるのですが、合同会社はそこにほとんど載っていません。

③ 比較しようとして、できなかった話

正直に書きます。「合同会社と株式会社で平均勤続年数に差があるか」を出そうとしました。結果、勤続年数が公表されている合同会社は21社しかありませんでした(株式会社は2,230社)。21社では、どんな数字が出ても意味を持ちません。平均年齢も23社です。比較そのものが成立しませんでした。

この「比べられなかった」という事実こそが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。合同会社の労働条件が悪いという証拠は、うちのデータにはありません。同時に、良いという証拠もありません。判断材料が存在しないのです。

会社が法人格ゆえに情報を出さない構造は、会社の定款は外部から見られるのかでも触れました。株式会社には株主・債権者の閲覧請求権がありますが、持分会社には会社法上の備置き・閲覧規定が置かれていません。決算公告義務も無い。外に出す義務が、そもそも少ない法人格なのです。

業種の顔ぶれが違う — 比較対象がずれている

もう一つ、印象論の原因になっている構造があります。業種が判明している会社の大分類の内訳です。

合同会社(業種判明37,526社=母集団の9.1%)

株式会社(業種判明505,460社=母集団の20.1%)

株式会社の上位2つが製造業と建設業(合わせて42.5%)なのに対し、合同会社は学術研究・専門技術・情報通信・不動産の3つで49.9%と、ほぼ半分を占めます。 設備も在庫も持たずに始められる業種ほど、合同会社が選ばれている。所在地も同じ傾向で、合同会社の31.12%が東京都(全法人では23.03%)に集中しています。

つまり「合同会社は株式会社より小さい」と見えている現象の相当部分は、法人格の差ではなく業種構成の差です。従業員10人のコンサルティング会社と従業員100人の製造業を並べて「合同会社は小さい」と言っても、比べているものが違います。

「合同会社は潰れにくい」と読んではいけない

数字を1つ挙げます。登記記録が閉鎖された法人を事由別に数えると、

一見すると「合同会社は9割が自分できちんと畳んでいて、株式会社は3社に1社が役所に閉じられている」と読めます。これを「合同会社のほうが健全」と読むのは間違いです。

理由は制度にあります。会社法第472条のみなし解散の対象は株式会社と一般社団・一般財団法人だけで、合同会社などの持分会社は対象外だからです。放置された合同会社は、みなし解散も職権閉鎖もされないまま登記簿に残り続けます。詳しい構造は会社が解散・休眠しているか調べる方法に書きました。

同じ理由で、合同会社は「登記上は生きているが実態は無い」状態を検出しにくいという弱点があります。合同会社が創設されたのは会社法の施行(2006年5月1日)ですから、どんなに古くても社歴20年です。設立が新しいことと会社が新しいことをどう切り分けるかは老舗と新興の見分け方の論点がそのまま当てはまります。

もう一点、会社の取引先を調べる方法で国の落札情報30万6,949件を集計したとき、落札企業に占める合同会社は0.7%(168社)でした。活動中法人に占める合同会社の割合8.27%と比べて、母集団比のおよそ11分の1です。官公庁との取引実績から会社を確かめるルートは、相手が合同会社なら最初から期待できない、ということでもあります。

応募前に、法人格の代わりに見る5つ

合同会社かどうかで判断できない以上、別のところを見るしかありません。うちに寄せられる相談への回答も、結局この5つに落ち着きます。

1. 法人番号を確定させる … 正式な商号と本店所在地を押さえる。同名の別会社を踏まないための出発点です(法人番号を会社名から調べる方法) 2. 社会保険の加入を確認する … 法人なら義務です。加入していなければ、法人格に関係なく赤信号です 3. 求人票の記載を突き合わせる … 給与の内訳、みなし残業の有無、雇用形態。合同会社かどうかより、はるかに多くを語ります(求人票の見方) 4. 認定マークの有無を見る … くるみん・えるぼし・健康経営優良法人など。取得していれば、開示していない会社より情報が出てきます(企業の認定マーク一覧) 5. 面接で直接聞く … 開示データが無いのですから、聞くしかありません。平均勤続年数、直近1年の入退社数、有給取得率。答えられない会社は、それ自体が情報です(面接前の会社研究チェックリスト)

よくある質問

合同会社は株式会社に比べて給料が安いのですか?

法人格による法的な差はありません。最低賃金法も労働基準法も法人の種類を区別していないからです。ただし合同会社の従業員数の中央値は5人(株式会社は31人)で、規模が小さい会社に当たる確率は高くなります。給与水準は法人格ではなく、業種・規模・地域で見てください。

合同会社は社会保険に入っていないことがあると聞きました。

法人である以上、従業員が1人でも健康保険・厚生年金の強制適用事業所です(健康保険法第3条第3項第2号、厚生年金保険法第6条第1項第2号)。これは合同会社でも変わりません。もし加入していないなら、それは法人格の問題ではなく、その会社が義務を果たしていないという問題です。

合同会社から株式会社に変わることはありますか?

あります。会社法の組織変更の手続きによって、合同会社が株式会社になることも、その逆もできます。うちのデータベースでは変更後の商号で情報が更新されるため、旧商号での検索では出てこなくなることがあります。会社名で検索して見つからないときは、この可能性も疑ってください。

合同会社に決算公告の義務がないのは、業績が悪いからですか?

関係ありません。会社法第440条第1項が決算公告を義務づけているのは株式会社だけで、持分会社である合同会社は最初から対象外です。業績の良し悪しとは無関係の、制度上の線引きです。ちなみに設立時の登録免許税も、合同会社は資本金の額に1000分の7を乗じた額(6万円に満たないときは6万円)で、定款に公証人の認証も要りません。始めるコストが低いことが、合同会社が選ばれる大きな理由です。

転職エージェントに「合同会社は避けたほうがいい」と言われました。

法人格そのものを理由にするのは根拠が薄いと思います。日本のアップル、グーグル、アマゾン、USJ、シャネル、PwCコンサルティングはいずれも合同会社です。ただし「情報が外に出にくいので調べにくい」という指摘なら、うちのデータでも裏づけが取れます。従業員数が分かるのが0.72%、労働環境の開示データに載るのが0.72%。避けるべき理由ではなく、余分に確認すべき理由として受け取るのが正確です。

同じ「株式会社ではない名前」でも、2006年で新設が止まった有限会社は事情がまったく逆です。全社が設立20年以上という構造から読んだ兄弟記事が有限会社に就職するのは不利なのかです。

まとめ

しょくばログでは全国約579万社の会社情報を無料で公開しています。会社名で検索すれば、合同会社でも正式な商号・法人番号・本店所在地はその場で確認できます。判断材料が少ない法人格だからこそ、確定できるところから固めてください。

参照した一次資料

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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