✍ 古家あきら | 2026-09-10 更新

「税金滞納」倒産が1-8月で181件、前年比58.7%増 — 滞納は外から見えるのか、公開データで確かめた

先に結論から。会社が税金を滞納しているかどうかを、外部の人間が直接確認する方法はありません。 国税庁が個別企業の滞納を公表する制度がないからです。外から見えるのは「税務当局への届出上、この会社の登録がまだ生きているか」だけ。しかもそれは滞納のサインではありません。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「税金を滞納している会社を見分けたい」という発想でたどり着く人がいます。今日はその発想がどこまでは正しく、どこから間違いになるのかを、公開データを実際に数えて確かめます。

今日のニュース:税金滞納倒産、8月までで181件

2026年9月8日、東京商工リサーチが2026年1-8月の「税金滞納」倒産の集計を公表しました。

同社は背景として「物価や人件費、金利などの上昇が企業の資金繰りを圧迫」し、収益が低調な企業で納税を後回しにして運転資金に充てている状況を挙げています。

出典:東京商工リサーチ「2026年1-8月の『税金滞納』倒産181件、前年超える」(2026年9月8日)

件数より、私が注目したのは負債総額が前年より減っていることと、資本金1,000万円未満が6割という内訳です。1件あたりが小さい。つまりこれは大型倒産の話ではなく、従業員が数人〜数十人の会社が、静かに資金繰りで詰まっている話です。応募先や取引先として、ふつうに目の前にあり得る規模です。

滞納そのものは、原則として外から見えない

まず前提を正確にしておきます。日本には個別企業の滞納額や滞納の有無を公表する制度がありません。税務署が差押えをしても、それが公示されることは通常ありません。信用調査会社が把握するのは、取引先や金融機関からの聞き取り、あるいは倒産後の申立書からです。つまり倒産して初めて「滞納していた」と分かるのが基本です。

だから「滞納している会社リスト」を探す方向は、最初から行き止まりです。見るべきは別の窓です。

たった1か所、税務当局との関係が公開されている場所

例外が国税庁の適格請求書発行事業者公表サイト(インボイス登録の公表サイト)です。ここは消費税法第57条の2に基づき、事業者の登録・取消・失効の状況を公表しています。公表事項には、氏名または名称、登録番号、所在地に加えて、

> 登録年月日、取消年月日、失効年月日

が含まれます。しかも取消・失効後7年間はサイトに掲載し続け、7年経過後に削除すると運営方針で明記されています。過去の取引時点でその番号が有効だったかを、後から検証できる設計です。

出典:国税庁「適格請求書発行事業者公表サイトの運営方針」(令和3年7月・令和5年1月改訂)/適格請求書発行事業者公表サイト

登録番号の引き方そのものはインボイスの登録番号(Tの13桁)から会社名を逆引きする方法にまとめてあります。

「登録が消えた=税金を滞納している」は誤りです

ここが今日いちばん伝えたい部分です。同じ運営方針には、登録を取り消される事由も列挙されています。国内の事業者(特定国外事業者以外)についてはこの6つです。

「国税の滞納」は入っていません。 滞納が取消事由になるのは「特定国外事業者」(国内に事務所を持たない国外事業者)のみで、そこには「国税の滞納があり、かつ、その滞納額の徴収が著しく困難であること」という規定があります。

一方の失効は、事業者自身が届出を出した場合です。登録の取消しを求める場合、事業を廃止した場合、合併で消滅した場合、個人事業者が死亡した場合。免税事業者に戻る判断をしただけでも失効します。 そして公表サイトには理由は載りません。日付だけです。

つまり登録の消滅から読み取れるのは「この番号はもう使えない」という取引上の事実だけで、滞納の有無ではありません。

データで確かめた:登録が消えているのは3.4%、しかも増えていない

ここからは実際に数えた結果です。国税庁が公表している法人分の全件データ(2026年5月29日時点)264万3,324件を集計しました。

「もう使えない番号」として掲載され続けているのは、合わせて8万9,680件=全体の3.4%です。

年別に見ると(データ時点より後の日付は将来の失効予定日を含むため除外)、失効・取消の年月日が付いた法人は2024年 3万219件、2025年 3万9,443件、2026年1〜5月 1万2,791件。2025年は月平均約3,287件、2026年1〜5月は月平均約2,558件で、ペースはむしろ落ちています。

税金滞納倒産が前年同期比58.7%増で伸びている一方、インボイス登録の消滅は増えていない。この2つは連動していません。 登録の消滅を滞納の代理指標として使うのは、データ上も無理があります。

そもそも「登録がない会社」は半分近くある

もうひとつ、よくある誤解を数字で潰しておきます。「インボイスの登録番号がない=怪しい」ではありません。

しょくばログが持っている全国579万1,529件の法人データのうち、登記記録が閉鎖されていない現存法人は502万8,697件。そのうち株式会社・有限会社・合同会社・合名会社・合資会社という「会社」に絞ると446万963社です。この446万963社のうち、インボイス登録があるのは234万4,967社=52.6%でした。

会社の種類別に見ると、登録率はきれいに分かれます。

都道府県別では福井県が67.4%で最も高く、沖縄県が43.2%で最も低い。東京都は47.4%で全国平均を下回ります。大都市ほど低いのは、消費者向けの小規模法人が多く、免税事業者のままで支障がないケースが多いためと考えられます。

要するに、登録がないのは「ふつう」です。 BtoCが中心の会社や小規模法人では、登録しない判断に十分な合理性があります。危険信号として意味を持ちうるのは「そもそも無い」ではなく、「あったものが消えている」ほう、それも滞納ではなく「所在不明」「事業廃止」の可能性を示すものとして、です。

応募前・取引前に実際にやる4ステップ

滞納は見えない、という前提で組み直すと、確認できることはこうなります。

1. 会社が実在し、登記が生きているかを法人番号で確認する。 ここが土台です → 会社が実在するか確認する方法 2. 相手が登録番号を出しているなら、公表サイトで「今も有効か」を確認する。 取消・失効の日付が入っていたら、その理由を相手に直接聞く。取引の請求書を受け取る立場なら必須の確認です。 3. 社会保険(厚生年金)の適用事業所になっているかを見る。 応募先の場合はこちらのほうが実務的な影響が大きい → 応募先が社会保険に入っているか確認する方法 4. 営業の実態が本当にあるかを複数のサインで見る。 所在地、電話、求人の出し方、更新の止まり方 → 営業実態のない「幽霊会社」を見分ける5つのサイン

取引先として与信を見る場合は、この4つを層に分けて積む考え方を取引先の信用を調べる方法にまとめています。

よくある質問

会社の税金滞納を無料で調べる方法はありますか

ありません。国税庁も自治体も、個別企業の滞納の有無や金額を公表していません。倒産や破産の申立てがあって初めて外部から見える情報になります。「滞納企業リスト」をうたうサービスがあれば、根拠を確認してください。

インボイスの登録番号がない会社は、税金を払っていないということですか

違います。免税事業者は登録の義務がなく、登録しないことは違法でも異常でもありません。現存する会社446万963社のうち登録があるのは52.6%で、半数近くは登録していません。消費者向けの事業なら登録しない判断のほうが合理的なこともあります。

取引先の登録番号が「取消」になっていました。危ないということですか

危険の証明にはなりませんが、確認は必要です。取消の理由は公表されないため、事業廃止・合併・1年以上の所在不明のいずれかである可能性も、単なる届出の結果である可能性もあります。実務上より重要なのは、その日以降その番号で受け取った請求書は仕入税額控除の要件を満たさない可能性があることです。まず相手に確認してください。

税金滞納で倒産する会社には、共通した特徴がありますか

2026年1-8月の集計では、資本金1,000万円未満が58.0%、負債1億円未満が64.0%、形態別では破産が97.7%を占めました。小規模で、再建ではなくそのまま終わるという形が大半です。ただしこれは倒産した後の統計であって、事前に見分ける指標ではありません。

まとめ

税金滞納倒産は2026年1-8月で181件、前年同期比58.7%増と確かに増えています。しかしその滞納自体は、外部からは見えません。見えるのはインボイス登録の有効・取消・失効の日付だけで、そこに滞納は現れない——国内事業者の取消事由に滞納は含まれず、実際、滞納倒産が増えている期間に登録の消滅は増えていませんでした。

見えないものを見えると思い込むより、法人番号・社会保険・営業実態という見えるものを順に確かめるほうが早いです。しょくばログでは全国579万件の法人データからこうした確認の入口をまとめています。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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