✍ 古家あきら | 2026-10-12 更新

アパレル関連の倒産、2026年1〜9月で210件──卸は9.9%増、小売は12.1%減。社名に「縫製」を持つ会社は全国1,952社、閉鎖率27.9%で4社に3社が有限会社

先に結論です。帝国データバンクの調査で、2026年1〜9月のアパレル関連企業の倒産は210件でした。 前年同期の212件に続き、2年続けて200件を超える水準です。通年では5年連続の増加になる可能性があるとされています。

中身を見ると、増えているのは小売ではありません。製造が52件(前年同期比4.0%増)、卸が78件(同9.9%増)と増え、小売は80件(同12.1%減)と減りました。 店が閉まるニュースは目に入りやすいのですが、いま数字が伸びているのは、表からは見えにくい「作る側」と「つなぐ側」です。

しょくばログという会社データベースを運営していると、業界の倒産が増えたというニュースが出たあと、「取引先は大丈夫か」「応募先は大丈夫か」と個別の会社を調べに来る人が増えます。今回は台帳の数字を添えて、外から確かめられる範囲を整理します。

この記事は、特定の会社の経営を評価するものではありません。報道で確認できる事実と台帳の数字を並べ、取引先と働く人が知っておきたいことを一般化してまとめます。

出典:「アパレル関連企業」の倒産動向調査(2026年1-9月)(帝国データバンク・2026年10月8日)

調査で確認できる事実

帝国データバンクの調査に書かれている内容を、そのまま並べます。

背景として挙げられているのは、物価高と円安による仕入れ値や外注費の上昇、そしてコロナ禍より前から抱えていた借入金の重さです。製造では小規模な縫製業者の倒産が目立ち、取引先の生産が海外へ移ったことや、売掛金の焦げ付きも要因とされています。カフカは海外工場への外注費が為替の動きで上がったこと、ドッグ繊維は設備投資に見合う受注が得られなかったことが説明されています。

見通しについては、原材料高と金利の上昇がさらに収益を圧迫するとして、年間では前年と同じ水準か、5年連続の増加になるおそれがあるとしています。

社名で数えたアパレル関連の会社

しょくばログの台帳(国税庁の法人番号データをもとにした、株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社の516万2社)で、社名にアパレル関連の言葉を含む会社を数えました。

どの言葉でも、閉鎖率は会社全体のほぼ2倍でした。社名で数えているので、業種をそのまま表すわけではありません。「繊維」には商社や化学系の会社も入りますし、反対に社名に何も入っていない縫製工場も多いはずです。それでも、言葉を変えても同じ傾向が出るのは、この業界で会社の入れ替わりが長く続いてきたことの表れだと考えています。

縫製の会社は4社に3社が有限会社

会社の種類で分けると、はっきりした違いが出ました。

有限会社は、2006年の会社法の施行より前に作られた会社です。いまは新しく作れません。縫製の会社の4社に3社が有限会社ということは、20年以上前からある小さな工場が多いということです。調査で「小規模な縫製業者の倒産が目立つ」とされているのと重なります。一方で「アパレル」を名乗る会社は株式会社が多く、比較的新しい会社や、企画・卸を手がける会社が多いと読めます。

有限会社が多いこと自体は、危ないという意味ではありません。長く続いてきた会社である証拠でもあります。有限会社で働くときの見方は、有限会社に就職するときの記事にまとめました。

縫製の会社がある地域

いま登記が生きている縫製の会社1,408社を所在地で見ると、多い順に東京都155社、埼玉県100社、愛知県81社、栃木県74社、岐阜県66社、茨城県63社でした。

都市部だけでなく、北関東や岐阜に工場がまとまっているのが分かります。「アパレル」を名乗る会社では、東京都53社、大阪府48社に続いて、岡山県と広島県が19社ずつで並びました。ジーンズや学生服の産地がある地域です。

「閉鎖」と「倒産」は同じではない

ここは大事な点です。台帳の閉鎖率は、倒産の数ではありません。

閉鎖している縫製の会社544社の理由を見ると、「清算の結了等」が314社(57.7%)、登記官による閉鎖(長く登記の動きがない休眠会社の整理など)が226社(41.5%)、合併による解散が4社でした。閉鎖の多くは、事業をたたんで清算を終えた会社か、動きがなくなって整理された会社です。

反対に、破産した会社は手続きが終わるまで登記が残ります。例えば、愛知県の「カフカ株式会社」は台帳に1社あり、名古屋市中村区の所在で、いまも閉鎖にはなっていません。破産の手続き中でも、台帳の上では「生きている会社」に見える期間があるということです。倒産の数に表れない会社の終わり方は、倒産統計に映らない会社の終わり方の記事で詳しく書きました。

取引先として確かめたいこと

今回の調査で伸びているのは製造と卸です。つまり、アパレルの会社と取引している側(生地屋、付属品の会社、物流、ほかの縫製工場)が影響を受けやすい構図です。

1. 支払いの条件が変わっていないか

いきなり倒産する会社は多くありません。支払いサイトを延ばしてほしい、手形に変えたい、といった申し出が先に来ることがあります。条件の変化は、決算書より早く出るサインです。取引先の確かめ方は取引先の信用を調べる方法にまとめています。

2. 「第二会社方式」の意味を知っておく

上位3社が選んだ第二会社方式は、良い事業だけを新しい会社に移し、古い会社を清算する進め方です。ブランドや店はそのまま残っても、契約の相手が別の法人に変わります。売掛金がどちらの会社に残るのかは、取引先にとって大きな違いです。仕組みは特別清算と第二会社方式の記事で解説しました。手続きの種類の違いは破産・民事再生・特別清算の違いをご覧ください。

3. 法人番号で「同じ会社か」を確かめる

社名やブランド名は同じでも、事業の譲渡や第二会社方式で法人が入れ替わっていることがあります。請求書や契約書の相手が、いまも同じ法人かどうかは、法人番号の調べ方で確かめられます。

アパレルの会社で働く人が知っておきたいこと

縫製の会社は有限会社が多く、小さな会社が中心と見られる業界です。給料の遅れや、急な休業の連絡は見逃さないでください。会社が倒産して給料が払われないときには、国が一部を立て替える制度があります。条件と手順は給料が遅れる会社の記事に書きました。応募の前なら、会社が実在しているか・倒産していないかを確かめる方法も役に立ちます。

運営者として思うこと

アパレルの倒産というと、閉店する店のニュースを思い浮かべる人が多いと思います。けれど今回の数字で増えていたのは、工場と卸でした。表に名前が出にくい会社ほど、調べる手段が少ないのが実情です。

台帳の数字は、アパレルの会社が危ないと決めつけるためのものではありません。閉鎖率が高いのは、長い年月の入れ替わりの結果でもあります。大事なのは、取引や応募の前に、相手が「いまも同じ法人として動いているか」を一度確かめる習慣だと考えています。

よくある質問

アパレルの倒産は増えているのですか?

帝国データバンクの調査では、2026年1〜9月は210件で、前年同期の212件とほぼ同じ水準です。2年続けて200件を超えていて、通年では5年連続の増加になる可能性があるとされています。中身では製造と卸が増え、小売は減っています。

しょくばログで「閉鎖」と出ていない会社なら安心ですか?

安心とは言えません。破産の手続き中の会社は、手続きが終わるまで登記が閉鎖されないことがあります。台帳の状態は手がかりの1つとして使い、最近の報道や連絡先が生きているかも合わせて確かめてください。

縫製の会社に有限会社が多いのはなぜですか?

有限会社は2006年より前にしか作れなかった会社の形です。縫製の会社の73.8%が有限会社だったのは、昔からある小さな工場が多いためと考えられます。有限会社だから経営が危ないということではありません。

取引先が第二会社方式を選んだら、何を確認すればいいですか?

新しい会社にどの事業と契約が移り、古い会社に何が残るのかを確認してください。特に、未払いの売掛金がどちらの会社の債務になるのかは、取引先にとって重要です。法人番号で契約相手の法人を確かめておくと、取り違えを防げます。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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