✍ 古家あきら | 2026-10-14 更新
代表者が同じ別の会社があるのは普通なのか — 兼務の理由と、グループ会社かどうかの見分け方。代表者名が載る6万7,228社のうち、同じ名前が2社以上に出てくるのは3,773名分
先に結論です。1人が複数の会社の代表者を務めること自体は、法律で禁じられておらず、めずらしいことでもありません。 事業ごとに会社を分けている、不動産などを持つ資産管理会社を別に作っている、親会社の社長が子会社の代表も兼ねている、といった理由がほとんどです。
ただし、「代表者の名前が同じ」だけでは、同一人物とも、グループ会社とも言い切れません。 同姓同名の別人はたくさんいます。しょくばログの台帳で数えると、代表者名が分かる6万7,228社のうち、同じ名前が2社以上に出てくるのは3,773名分(8,448社)。そのうち所在地まで同じなのは844名分で、残りの多くは別の場所にある会社でした。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「応募しようとしている会社の社長が、別の会社の社長にもなっている。大丈夫なのか」という問い合わせをいただきます。気になる気持ちはよく分かります。そこで、どんな理由で代表者が重なるのかを整理し、実際にどのくらい重なっているのかを台帳で数えてみました。
代表者が同じ別会社がある、よくある理由
1人が複数の会社の代表を務めるのには、たいてい次のどれかの理由があります。
- 事業ごとに会社を分けている(分社):飲食と不動産、本業と新規事業など、事業ごとに会社を分けると、お金の流れや責任の範囲がはっきりします。うまくいかなかった事業を本体から切り離しやすい、という面もあります
- 資産管理会社を持っている:社長個人や一族の不動産・株式を管理するための会社を別に作り、同じ人が代表になっているケースです。従業員がほとんどいない会社であることが多いです
- グループ会社の代表を兼ねている:親会社の社長が、子会社や関連会社の代表取締役も兼ねている形です。持株会社(ホールディングス)の下に事業会社が並ぶ形もこれに近いです
- 事業承継や買収の途中:買い取った会社の代表に、買った側の社長が一時的に就いている。あるいは後継者が、親の会社と自分の会社の両方の代表になっている
- 同姓同名の別人:名前だけを見て「同じ人だ」と思っていても、まったく関係のない別人であることも少なくありません
会社法は、取締役が別の会社の取締役や代表を兼ねることを禁じていません。ただし、自分が取締役をしている会社と同じ種類の取引を、別の会社の代表として行う場合(競業取引)や、会社どうしで取引をする場合(利益相反取引)には、株主総会や取締役会の承認が必要になります(会社法356条・365条)。兼務そのものではなく、兼務によって会社の利益が損なわれないか、という点にルールがあるわけです。
持株会社や親会社・子会社の関係そのものを知りたい方は、ホールディングスとは何をする会社かとグループ会社・親会社の調べ方もあわせて読んでみてください。
代表者名が分かる6万7,228社を数えた
しょくばログの台帳には、国税庁の法人番号公表サイトの全件データが入っていますが、ここには代表者の名前が載っていません。代表者名が分かるのは、経済産業省のgBizINFOに代表者名が掲載されている会社だけで、台帳と照合できたのは6万7,228社でした。全国の会社のごく一部である点は、先にお断りしておきます。
この6万7,228社の代表者欄から、「代表取締役」などの肩書きと空白を取り除いて名前だけにし、同じ名前が何社に出てくるかを数えました。
- 名前の種類:6万2,553名分
- 2社以上に出てくる名前:3,773名分(該当する会社は8,448社、全体の12.6%)
同じ名前が何社に出てくるかの内訳は、次のとおりです。
- 2社:3,121名分
- 3社:499名分
- 4社:100名分
- 5社:31名分
- 6社以上:22名分
2社に出てくる名前が大半で、3社以上はぐっと少なくなります。ただし、ここには同姓同名の別人が確実に含まれています。よくある名字と名前の組み合わせなら、全国に同じ名前の社長がいても不思議ではありません。
肩書きを見ると、「代表取締役」が5万6,486社でほとんどを占め、ほかに「代表取締役社長」3,584社、一般社団法人などの「代表理事」2,708社、合同会社の「代表社員」992社と続きます。代表者欄に2人以上の名前が書かれている会社も207社ありました。代表者が1人とは限らない点も、覚えておくと役に立ちます。
名前も所在地も同じなのは844名分
同じ名前でも、会社の所在地がまったく違えば別人の可能性が高くなります。そこで、名前が同じで、さらに所在地(市区町村と番地まで)も同じ会社が2社以上あるものを数えました。
- 名前も所在地も同じ:844名分(1,746社、代表者名が分かる会社の2.6%)
- 同じ名前の会社がすべて同じ都道府県にある:1,861名分
- 同じ名前の会社が複数の都道府県にまたがる:1,912名分
名前も所在地も同じなら、同一人物が代表を兼ねている可能性はかなり高いと言えます。同じ住所に本店を置く会社どうしで、法人格の組み合わせを見ると、次のようになりました(同じ住所の組846組)。
- 株式会社どうし:676組
- 有限会社と株式会社:66組
- 株式会社と一般社団法人などその他の法人:59組
株式会社どうしが8割ほどです。有限会社と株式会社の組み合わせは、昔からある有限会社を残したまま、新しく株式会社を作ったケースが考えられます。
設立年が両方とも分かる730組で、設立年の差を見ると、10年以上離れている組が507組(約7割)でした。同じ年に設立された組は11組だけです。最初の会社を作ってから、何年もたってから2社目を作る、という流れが多いことがうかがえます。
また、同じ住所の組846組のうち、社名の最初の2文字が共通している組は277組(約3割)でした。「○○ホールディングス」と「○○商事」のように社名でつながりが分かる会社もありますが、社名がまったく違うのに、代表者も所在地も同じという組のほうが多い、ということです。社名だけでグループ会社を探しても、見落としが出ます。
名前も所在地も同じ1,746社のうち、閉鎖の記録があるのは25社でした。代表者を兼ねている会社の多くは、今も登記上は存続しています。
同一人物か、グループ会社かを確かめる手順
応募先や取引先の代表者が、別の会社の代表にもなっているのを見つけたら、次の順で確かめると判断がしやすくなります。
1. 法人番号で会社を特定する:社名が似た会社はたくさんあるので、まず法人番号で「どの会社の話か」を確定します。調べ方は法人番号の調べ方にまとめています 2. 所在地を比べる:本店所在地が同じか、近いかを見ます。同じ住所なら同一人物の可能性が高く、遠く離れていれば別人の可能性も考えます。住所が同じビルの一室に複数の会社があるケースについては住所がマンションの一室の会社は怪しいのかでも触れています 3. 会社のサイトで「グループ会社」「関連会社」を見る:会社概要や沿革に、関係する会社が書かれていることが多いです 4. 登記事項証明書で代表者を確かめる:法務局で取れる登記事項証明書(登記情報提供サービスでも可)には、代表取締役の氏名が載っています。代表者の確認方法は会社の代表者の調べ方で詳しく書いています 5. 必要なら面接で聞く:「グループ会社はありますか」「社長はほかの会社も経営されていますか」と聞くのは失礼ではありません。事業の全体像を知るうえで自然な質問です
なお、法務局の商業登記は、会社名や所在地から調べる仕組みです。人の名前から、その人が代表をしている会社を一覧で出す公的な窓口は、一般には用意されていません。名前が同じ会社を見つけても、それはあくまで手がかりで、同一人物かどうかは上の手順で確かめる必要があります。
代表者の兼務で、働く側が気にしておきたいこと
代表者が複数の会社を持っていること自体は、心配する理由にはなりません。そのうえで、働く側として知っておくとよい点があります。
- 社長が常駐しているとは限らない:複数の会社を見ている社長は、日々の現場を別の役員や店長に任せていることがあります。面接で「普段は誰が現場を見ているのか」を聞いておくと安心です
- グループ内での異動や出向がありうる:求人票の会社とは別の、グループ会社で働く可能性がないかを確認しておきます
- 1社の経営が悪くなると影響が及ぶことがある:グループ会社どうしで取引や貸し借りがあると、1社の不振が別の会社に波及することがあります。この点は関連会社の連鎖倒産は外から見えるかで整理しています
よくある質問
1人で何社まで代表になれますか
会社法に、代表取締役を兼ねられる会社の数の上限はありません。ただし、それぞれの会社で取締役としての義務を負うので、実際に経営を見られる範囲には限りがあります。しょくばログの台帳で数えた範囲でも、同じ名前が6社以上に出てくるのは22名分と、ごく少数でした。
代表者が同じなら、グループ会社と考えてよいですか
そうとは限りません。社長個人の資産管理会社のように、事業上はつながりのない会社もありますし、同姓同名の別人の場合もあります。台帳でも、名前が同じ3,773名分のうち、同じ住所に2社以上あるのは844名分でした。所在地や会社のサイトの記載とあわせて確かめてください。
社長が別の会社も経営しているのは、ブラック企業のサインですか
それだけでは判断できません。分社やグループ経営は、多くの会社が普通に行っていることです。気になる場合は、どの会社で誰が現場を見ているのか、グループ会社への異動があるのかを面接で聞くほうが、実態が分かります。
代表者の名前から、その人が経営する会社を調べられますか
法務局の商業登記は、会社名や所在地から調べる仕組みで、人の名前から会社を一覧する公的な窓口は一般には用意されていません。会社のサイトの「グループ会社」の記載や、報道、名前での検索で手がかりを探し、最後は登記事項証明書で一社ずつ確かめるのが確実です。
代表者が2人いる会社があるのはなぜですか
会社法上、代表取締役は1人に限られず、複数置くことができます。たとえば会長と社長の両方が代表権を持つ形です。しょくばログの台帳でも、代表者欄に2人以上の名前が書かれている会社が207社ありました。
まとめ
- 1人が複数の会社の代表を務めるのは、分社・資産管理会社・グループ会社などでよくあること。兼務自体は会社法で禁じられていない
- 代表者名が分かる6万7,228社のうち、同じ名前が2社以上に出てくるのは3,773名分。所在地まで同じなのは844名分で、同姓同名の別人も多く含まれる
- 同じ住所の組では、設立年が10年以上離れている組が約7割。社名が共通する組は約3割で、社名だけではつながりが見えないことが多い
- 同一人物かどうかは、法人番号・所在地・会社のサイト・登記事項証明書の順で確かめる
集計について:しょくばログの台帳(国税庁 法人番号公表サイトの全件データ)と、経済産業省gBizINFOに代表者名が掲載されている会社を照合した6万7,228社を対象に、代表者欄から肩書きと空白を除いた名前で集計しました(2026年10月14日時点)。名前が同じでも同一人物とは限らず、同姓同名の別人を含みます。所在地は法人番号公表サイトの本店所在地(都道府県・市区町村・番地)が一致するものを「同じ所在地」としています。設立年はgBizINFOの記載がある会社のみです。個人名や特定の会社の組み合わせは掲載していません。取締役の競業取引・利益相反取引の承認は会社法356条・365条によります。