✍ 古家あきら | 2026-10-13 更新
閉鎖登記簿とは — なくなった会社の登記は「閉鎖した日から20年」保管され、誰でも取れる。閉鎖済み762,832社の内訳では27.5%が「登記官による閉鎖」(DB実測)
先に結論です。会社がなくなっても、登記の記録は消えません。 清算が終わった、合併で吸収された、本店を別の法務局の管轄へ移した——こうしたときに登記記録は「閉鎖」され、閉鎖登記簿として法務局に保管されます。保存期間は商業登記規則34条で「閉鎖した日から二十年間」と決まっています。
そして閉鎖登記簿も、いまある会社の登記簿と同じく誰でも取れます。法務局で「閉鎖事項証明書」を請求すればよく、コンピュータ化された後に閉鎖された記録なら、民事法務協会の登記情報提供サービスでも1件330円で画面上で確認できます。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「前の勤め先が消えていた。当時の役員を確かめたい」「取引先が合併でなくなったが、どこに引き継がれたのか知りたい」という問い合わせが来ます。どちらも、答えの出発点は閉鎖登記簿です。この記事では、①閉鎖登記簿ができる場面、②保存期間と取り方、③閉鎖事由の読み方、④うちのDBで数えた閉鎖の実数、の順に書きます。
閉鎖登記簿とは:登記記録が「閉じられた」あとの保管先
会社の登記は、会社ごとに1つの「登記記録」として法務局で管理されています。この登記記録が閉じられる場面は、商業登記規則80条と81条に書かれています。
必ず閉鎖されるもの(80条)
- 本店を、別の法務局の管轄へ移転したときの、旧本店側の記録
- 組織変更や合併による解散の登記をしたとき(合併で消える側の会社)
- 新設合併・新設分割などの無効による解散の登記をしたとき
- 清算結了の登記をしたとき
- 特別清算の結了で、特別清算終結の決定がされたとき
登記官が閉鎖できるもの(81条)
- 解散の登記をしてから10年が経ったとき
- 規則に定める申出をしてから5年が経ったとき
81条には続きがあります。期間が来る2か月前から閉鎖されるまでの間に、会社が「まだ清算は終わっていない」と申し出れば、登記官は閉鎖できません。閉鎖されたあとでも同じ申出があれば、記録は復活します。つまり登記官による閉鎖は、会社が自ら手続きを終えたことを意味しません。解散したまま放置された記録を、期間の経過で事務的に閉じたものです。
ここで注意したいのは、本店移転でも記録が閉鎖されることです。管轄外へ移転すると、旧本店の法務局の記録は閉鎖され、新しい本店の法務局に記録が移ります。「閉鎖登記簿がある=会社がなくなった」とは限りません。 本店移転の閉鎖では、会社は別の法務局で生きています。
保存期間は「閉鎖した日から20年」
商業登記規則34条は、法務局が持つ帳簿ごとに保存期間を決めています。会社の登記簿そのものは「永久」、閉鎖した登記記録は「閉鎖した日から二十年間」です。
20年を過ぎた閉鎖登記簿は、保存期間を終えたことになります。古い会社の記録を探していて「見つからない」と言われたら、閉鎖から20年を過ぎていないか、まず確かめてください。
うちのDBの元データ(国税庁の法人番号公表サイト)で数えると、閉鎖済み762,832件の閉鎖日は2015年10月5日から2026年5月28日の範囲にあります。法人番号の制度が2015年10月に始まったので、それより前に閉じた会社はそもそも公表データに入っていません。逆に言えば、法人番号で「閉鎖」と出ている会社は、どれも閉鎖から20年以内です。いちばん古い閉鎖分でも、保存期間が終わるのは2035年10月以降になります。
閉鎖登記簿の取り方 — 3つのルート
ルート1:法務局で「閉鎖事項証明書」を請求する
法務局で取れる商業・法人登記の証明書には、履歴事項・現在事項・閉鎖事項(それぞれ全部・一部)と代表者事項証明書があります。閉鎖された会社の記録を取るなら、閉鎖事項証明書を選びます。
請求できる人に制限はありません。商業登記法10条1項は「何人も」登記事項証明書を請求できると定めていて、閉鎖された記録も同じ扱いです。誰でも取れる理由と、取っても相手に通知が行かない仕組みは会社の登記簿は誰でも見られるで詳しく書きました。
窓口・郵送・オンライン(登記・供託オンライン申請システム)のどれでも請求できます。法務局の案内では、証明書は全国どこの法務局でも取れますが、「電子化されていない登記簿等」は例外とされています。コンピュータ化される前に閉じた紙の閉鎖登記簿は、請求書の様式でも「コンピュータ化以前の閉鎖登記簿の謄抄本」として別の欄になっています。古い紙の記録を探すときは、本店があった地域の法務局に先に問い合わせるのが確実です。手数料は請求方法ごとに違うので、法務省の「登記手数料について」で最新の額を確認してください。
ルート2:登記情報提供サービスで画面上で見る
証明書ではなく「内容を確かめたいだけ」なら、登記情報提供サービスが早いです。サービスの案内では、商業・法人登記情報の範囲は「現存会社等の場合は履歴事項の全部」「閉鎖会社等の場合は閉鎖事項の全部」です。料金は全部事項で1件330円(登記手数料と協会手数料10円の合計)です。
ただし対象は、法務局の事務がコンピュータ化されたあとに閉鎖された登記簿です。紙時代に閉じた記録は出てきません。もう1つ、閉鎖された会社を選んで「現在事項」を請求すると、記録が無い旨の表示でも課金されるとサービス側が注意しています。閉鎖された会社なら、最初から閉鎖事項を選んでください。
ルート3:法人番号公表サイトで閉鎖の事実と日付を見る(0円)
閉鎖登記簿を取る前に、閉鎖されたかどうか、いつ、どんな理由では、国税庁の法人番号公表サイトで無料で確かめられます。法人番号は会社が閉鎖されても消えず、閉鎖年月日と閉鎖事由が載ったまま公表され続けます。調べ方は法人番号の調べ方にまとめました。
まず法人番号で閉鎖の事実を確かめ、役員や合併先などの中身が必要なら閉鎖事項証明書を取る。この順番にすると、不要な請求を減らせます。
閉鎖事由の読み方 — 4つの区分
法人番号公表サイトの閉鎖事由は、次の4区分です。
- 清算の結了等 … 解散して清算を終え、清算結了の登記をした。会社が自ら手続きを終えた形
- 合併による解散等 … 合併で消滅した。事業や権利義務は合併先の会社が引き継いでいる
- 登記官による閉鎖 … 解散の登記から10年などが経ち、登記官が記録を閉じた。会社が自ら閉じたわけではない
- その他の清算の結了等 … 上記以外の清算結了など
合併で消えた会社を追う場合は、閉鎖事項証明書に合併の記録が残ります。合併で法人番号がどうなるかは合併・買収で法人番号はどうなるで、社名が変わった会社の追い方は会社の旧社名の調べ方で書いています。
うちのDBで数えた:閉鎖済み762,832社の内訳
しょくばログの台帳(国税庁の法人番号公表データ、法人番号を持つ5,791,529件)のうち、閉鎖済みは762,832件です。閉鎖事由の内訳はこうなりました。
- 清算の結了等 … 491,764件(64.5%)
- 登記官による閉鎖 … 210,087件(27.5%)
- 合併による解散等 … 59,612件(7.8%)
- その他の清算の結了等 … 1,369件(0.2%)
閉鎖済みの4件に1件以上は、会社が自ら手続きを終えたのではなく、登記官が期間の経過で閉じた記録です。倒産統計に映らない会社の終わり方で書いたとおり、会社の多くは倒産ではなく、静かな解散や休眠で終わります。登記官による閉鎖は、その「静かな終わり」の最後の事務処理だと読めます。
会社の種類で、閉じ方がまったく違う
主な会社の種類ごとに、閉鎖済みの割合と閉鎖事由を並べました。
- 株式会社 … 2,920,971件のうち閉鎖407,175件(13.9%)。清算の結了等56.4%・登記官による閉鎖32.5%・合併11.0%
- 有限会社 … 1,675,486件のうち閉鎖245,936件(14.7%)。清算の結了等73.5%・登記官による閉鎖23.8%・合併2.7%
- 合同会社 … 451,017件のうち閉鎖38,575件(8.6%)。清算の結了等90.1%・合併6.3%・登記官による閉鎖3.6%
株式会社は、登記官による閉鎖が3分の1近くを占め、合併も1割あります。会社法には、最後の登記から12年たった株式会社を解散したものとみなす「休眠会社のみなし解散」の制度があり、解散の登記から10年で登記官が閉鎖できる規則と組み合わさると、株式会社に登記官閉鎖が多いのは自然です。合同会社は歴史が浅く、閉鎖の9割が自分で清算を終えた形でした。
2025年から、登記官による閉鎖が急に増えている
閉鎖日の年ごとに登記官による閉鎖を数えると、2017〜2024年は年8,400〜10,800件台で推移していました。ところが2025年は60,230件に跳ね、その年の閉鎖119,114件の50.6%を占めました。2026年は5月28日までの分だけで47,779件、閉鎖全体の68.3%です(2024年は13.0%)。
これは景気の悪化を示す数字ではありません。登記官による閉鎖は、解散の登記から一定期間が過ぎた記録を、法務局が事務として閉じるものです。件数は法務局の処理の時期で大きく動きます。閉鎖件数の年次推移を「会社がつぶれるペース」として読まないでください。閉鎖のデータで比べられるのは、ある時点での事由の比率や会社の種類ごとの違いまで、と考えています。
閉鎖登記簿で分かること、分からないこと
閉鎖事項証明書には、閉鎖時点までの登記事項が残ります。商号、本店、目的、資本金、役員、解散・清算・合併の記録などです。前の勤め先の当時の代表者や、合併先の会社名を確かめるには十分な情報です。履歴事項証明書との違いは履歴事項と現在事項の証明書の違いを見てください。
一方で、登記簿に載らないことは閉鎖登記簿にも載りません。会社がなぜ解散したのか、従業員が何人いたのか、借金がいくら残ったのかは分かりません。解散したまま閉鎖されていない会社、いわゆる休眠会社の見分け方は会社の解散・休眠の調べ方に書きました。
よくある質問
閉鎖登記簿は誰でも取れますか
取れます。商業登記法10条1項は「何人も」登記事項証明書を請求できると定めていて、閉鎖事項証明書も同じです。理由を説明する必要はなく、会社との関係を証明する書類も要りません。
閉鎖登記簿はいつまで保存されますか
商業登記規則34条で「閉鎖した日から二十年間」です。法人番号の公表データにある閉鎖済み762,832件は、閉鎖日が2015年10月以降なので、すべてこの期間内にあります。
登記情報提供サービスで、閉鎖した会社の登記は見られますか
見られます。サービスの案内では、閉鎖会社等は「閉鎖事項の全部」が提供範囲で、料金は1件330円です。ただし対象はコンピュータ化後に閉鎖された登記簿に限られ、紙時代に閉じた記録は法務局で請求します。
「登記官による閉鎖」は倒産のことですか
違います。解散の登記から10年などが経った記録を、登記官が事務として閉じたものです。期限の前後に会社が「清算は終わっていない」と申し出れば、閉鎖されないか、閉鎖後でも記録が復活します(商業登記規則81条)。
閉鎖登記簿があれば、その会社はもう存在しないのですか
そうとは限りません。本店を別の法務局の管轄へ移したときも、旧本店側の記録は閉鎖されます(商業登記規則80条)。会社が存続しているかは、法人番号公表サイトで閉鎖事由と最新の本店所在地を見ると分かります。
まとめ
- 閉鎖登記簿は、清算結了・合併・管轄外への本店移転などで閉じられた登記記録の保管先。会社がなくなっても記録は残る
- 保存期間は「閉鎖した日から二十年間」(商業登記規則34条)
- 法務局の閉鎖事項証明書は誰でも請求できる。コンピュータ化後の閉鎖分は登記情報提供サービスでも1件330円で見られる
- まず法人番号公表サイトで、閉鎖の有無・日付・事由を0円で確かめる
- 閉鎖済み762,832件の内訳は、清算の結了等64.5%・登記官による閉鎖27.5%・合併7.8%。登記官による閉鎖は2025年から急増しているが、事務処理の波なので景気の指標として読まない
決算の数字が見えないまま会社が終わる話は黒字倒産とはでも扱っています。
参照した一次資料
- 商業登記規則(昭和39年法務省令第23号)34条・80条・81条(e-Gov法令検索 API、2026年10月13日取得)
- 商業登記法(昭和38年法律第125号)10条(同上)
- 一般財団法人民事法務協会「登記情報提供サービス」サービス案内(提供範囲・料金)
- 法務局「証明書の請求」案内(全国どこの法務局でも取得できる旨と例外)
- 国税庁 法人番号公表サイトの公表データ(しょくばログの台帳、閉鎖事由の4区分)