✍ 古家あきら | 2026-09-22 更新

介護事業所の運営法人を調べる方法 — 法人番号が載っているのは「事業所の詳細→法人情報」タブだけ。運営法人6万749のうち株式会社41%(DB実測)

先に結論から。介護事業所の運営法人を確かめる最短ルートは、介護サービス情報公表システムで事業所を出し、「事業所の詳細」タブを開き、その中の「法人情報」をクリックすることです。 ここに法人等の種類・法人名・ふりがな・法人番号・主たる事務所の所在地・代表者の氏名と職名・設立年月日、さらにその法人がその都道府県内でやっている介護サービスの種類ごとの事業所数まで載っています。

注意したいのは、最初に開く「事業所の概要」画面には運営法人の名前がどこにも出てこないことです(2026年9月に東京都のページで実際に確認しました)。概要にあるのは事業所名・所在地・電話番号・営業時間・従業者数・利用者数などで、法人名の欄はありません。「調べたけど分からなかった」という人の多くは、この概要画面だけを見て引き返しています。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「親のデイサービスの運営会社を知りたい」「介護事業所と取引するので母体を確かめたい」「求人を出している介護事業所の法人を調べたい」という相談が来ます。介護サービスの質の良し悪しには踏み込みません。どこに何が載っていて、それをどう読むかに徹します。

介護事業所を運営している法人は全国に何法人あるか — うちのDBで6万268

まず母数から。うちのデータベースは国税庁の法人番号公表データが土台で、活動中(登記記録が閉鎖されていない)の法人は5,028,697です。ここに介護サービス情報公表システム由来の事業所データ18万1,500件を法人番号で突き合わせると、6万749法人がひもづきました。うち活動中は6万268法人。全法人の1.2%、1,000法人あたり12.0が介護事業所を持っている計算になります。

法人種別で見ると、これが面白い分布になります。

数字は「介護の運営法人での構成比 / 全法人での構成比」の順に並べます。

(うちのDB・活動中の法人で集計)

読みどころは2つあります。ひとつは「その他の設立登記法人」が32.0%と、全法人の10.4%の3倍濃いこと。これは社会福祉法人・医療法人・NPO法人などが入る区分で、介護が非営利法人の主戦場だということがそのまま出ています。もうひとつは有限会社が12.4%しかないこと。全法人では28.4%を占める有限会社がこれだけ薄く、代わりに合同会社が13.6%(全体8.2%)と濃い。有限会社は2006年の会社法施行で新設できなくなった器なので、これは介護事業者の多くが2006年より後に設立された、比較的新しい会社だということを示しています。介護保険制度が始まったのが2000年ですから、順当な形です。法人の種類一覧で整理した器の違いが、そのまま業界の年齢に出ている例です。

「その他の設立登記法人」19,268法人の中身を名称から仕分けると、こうなりました。

社会福祉法人と医療法人で8割を占めます。それぞれ財務の見え方が違う法人なので、運営法人が分かったら社会福祉法人の財務諸表を見る方法や医療法人の経営状況を調べる方法へ進めます。地方公共団体が469あるのは、市町村立の特別養護老人ホームや老人保健施設が数えられているためです。

都道府県で8倍の差 — 和歌山31.0、東京3.9

活動中の運営法人6万268を都道府県別に見ると、実数の上位は大阪府6,847・東京都4,617・愛知県3,444・福岡県3,378・神奈川県3,024で、東京より大阪のほうが多いという結果でした。

ただ実数は法人の母数に引きずられるので、その県の活動中法人1,000あたり何法人が介護をやっているかに直すとこうなります。

和歌山と東京で約8倍の差です。東京は会社の母数が飛び抜けて大きいので密度が下がる、という事情が大きいのですが、それを差し引いても地方ほど「地元の法人の中で介護法人が占める割合」が高い。高齢化率の高い県が上位に並んでいるのは自然な形です。同じ密度の逆転現象は社会福祉法人でも起きていました。

閉鎖した法人も見ておきます。6万749のうち登記記録が閉鎖されているのは481法人(0.8%)で、内訳は清算結了284・合併による消滅197。株式会社全体の閉鎖率13.9%と比べれば桁違いに低いのですが、これは公表システムに載っていた=現に事業をやっていた法人だけを見ているからで、業界の安全性を示す数字ではありません。介護法人の倒産については訪問介護・訪問看護の法人が続けて破産した件でも書いたとおり、登記が閉じるのはずっと後です。

公表システムのどこに運営法人が載っているか — 実機で追った4ステップ

2026年9月に東京都のページで実際に操作した手順です。

1. 介護サービス情報公表システムのトップで都道府県を選ぶ。全国共通の検索窓はなく、47都道府県のリンクから入る作りです。 2. 「介護事業所を検索する」を開く。他に「地域包括支援センター」「住まい(サービス付き高齢者向け住宅)」「有料老人ホーム」「生活支援等サービス」「認知症に関する相談窓口」の入口が並んでいます。探しているものが介護保険の指定事業所でないなら、ここで入口を間違えないことです。 3. キーワード検索に事業所名を入れて検索。入力欄の案内は「事業所名 市町村名等を入力」です。 4. 結果一覧から「詳細情報を見る」→「事業所の詳細」タブ→中の「法人情報」を開く。

この4番目が肝です。実例として「ニチイケアセンターかみさぎ」(東京都中野区・訪問介護)の法人情報タブを開くと、こう出ます。

事業所ひとつを調べるつもりで開いたのに、その法人が東京都内に何か所持っているかまで分かるわけです。これは民間のまとめサイトにはない情報で、規模感をつかむのにいちばん早い。

そして法人番号が書いてあるのが決定的です。法人番号さえ取れれば、法人番号から会社を調べる手順に乗り換えられます。国税庁の法人番号公表サイトで商号・本店の変更履歴をたどる、登記簿を取る、しょくばログで同じ法人の他の顔を見る——ここから先は介護の話ではなく、ふつうの会社調べになります。店名やサービス名から運営会社をたどる一般的な手順より、介護事業所についてはこのルートのほうが確実です。

法人名でも検索できる(案内には書かれていないが)

入力欄の案内は「事業所名 市町村名等」ですが、実際に試すと法人名でも引けます。東京都で「ニチイケアセンター」(事業所名)を検索すると170件、「ニチイ学館」(法人名)で検索すると180件。法人名のほうが10件多く、屋号が違う事業所まで拾えました。

つまり、運営法人がすでに分かっているなら、法人名で検索したほうがその県の事業所を取りこぼさない。逆に、事業所名がブランド名になっていて法人名が想像もつかない場合は、事業所名で1件引いて法人情報タブに行けばよい。どちらからでも往復できます。

事業所番号10桁の読み方 — 実データで検算した

検索結果には必ず介護保険事業所番号(10桁)が出ます。この10桁は意味のある並びで、厚生労働省の資料「事業所番号の考え方について」に構成が書かれています。

3桁目の事業所区分番号は、0=地域包括支援センター等/5=老人保健施設/7=指定事業所/8=基準該当事業所/9=地域密着型サービス事業所/A=介護予防・日常生活支援総合事業事業所/B=介護医療院。この桁だけ英数字で、英字は大文字のみ・「I」「O」「Q」は使いません。

実際に拾った番号で確かめます。「ニチイケアセンターかみさぎ」(中野区・訪問介護)は1371405935。分解すると `13`(東京都)+ `7`(指定事業所)+ `14`(市町村番号)+ `0593` + `5`。同じ中野区の「ニチイケアセンター中野本町」のグループホームは1391400122で、`13` + `9`(地域密着型サービス事業所)+ `14` + `0012` + `2`。区分番号だけが7と9で分かれていて、市町村番号14は共通です。番号を見ただけで、それが地域密着型かどうかが分かるわけです。

チェックデジットも計算できます。方式は「モジュラス10 ウェイト2-1 分割方式」を拡張したもので、英字はA=10、B=11……と読み替え、チェックデジットを除く9桁の右端から2・1・2・1……と重みを掛け、積が2桁なら各桁に分けて足し、合計を10で割った余りを10から引きます。上の4件(1371405935/1371400381/1391400122/1371400357)で計算したところ、4件とも実際の10桁目と一致しました。厚労省資料にある計算例(9桁が「11A223267」ならチェックデジットは1)も同じ手順で再現できます。仕組みは法人番号のチェックデジットと考え方が近いので、転記ミスの自己チェックに使えます。

ただし「1事業所=1番号」ではありません。 同じ厚労省資料には、同一法人が同一所在地で複数の事業所の指定を受ける場合は特例として同じ番号を使えること、医療機関等コードをすでに持っている場合はそのコードをそのまま介護保険事業所番号とすることが書かれています。実際に先ほどの「ニチイケアセンター中野本町」は、訪問介護(1371400357)とグループホーム(1391400122)で別番号でした。番号が同じだから同じ事業所、番号が違うから別法人——どちらの決めつけも成り立ちません。

なぜ公表されるのか、載っていない事業所があるのはなぜか

根拠は介護保険法第115条の35(介護サービス情報の報告及び公表)です。介護サービス事業者は、指定や許可を受けてサービスの提供を開始しようとするときなどに、介護サービス情報を都道府県知事に報告しなければならない(第1項)。都道府県知事は報告を受けた後、その内容を公表しなければならない(第2項)。知事は必要なら調査でき(第3項)、報告しない・虚偽の報告をした事業者には是正命令を出せます(第4項)。民間サイトの任意掲載ではなく、法律上の義務だということです。

報告の時期は事業者が勝手に決めるものではありません。介護保険法施行令第37条の2の3が「報告は、都道府県知事が毎年定める報告に関する計画に従い、行う」と定め、施行規則第140条の48がその計画に「計画の基準日」「報告の対象となる介護サービス事業者」「提出期限」などを書くよう求めています。だから都道府県ごとに提出期限が違い、同じ県内でも事業所ごとに入力開始日が違う。東京都のページにも「入力開始日は事業所ごとに異なります」という案内が出ています。

そして探しても見つからない事業所がある理由がここにあります。施行規則第140条の44は、報告が必要な「厚生労働省令で定めるとき」から、次の事業所を除いています。

つまり前年の介護報酬が100万円以下の小さな事業所は、報告の対象外になり得る。公表システムに出てこないことは、無許可の事業所である証拠にはなりません。指定を受けているかどうかを確かめたいなら、都道府県・市町村が出している指定事業所一覧に当たるのが筋です(許認可の調べ方の各論として、介護は都道府県・市町村の二本立てだと覚えておくと迷いません)。

2024年度から財務諸表も公表されるようになった

もうひとつ、最近の変化があります。東京都のページには「令和6年度の介護保険法施行規則の改正に伴い、2024年度の公表より財務諸表の公表が義務化されました」という事業者向けの案内が掲示されていて、運営情報の「財務諸表」タブに電子ファイルを添付するかURLを入力するよう求めています。実際、公表画面の「運営状況」タブにも、利用者の権利擁護・サービスの質の確保・相談苦情対応などと並んで「財務諸表」の区分が設けられています。

これとは別に、介護保険法第115条の44の2で「介護サービス事業者経営情報」の制度も動いています。事業者は事業所・施設ごとの収益及び費用などを都道府県知事に報告しなければならず(第2項)、知事はそれを調査・分析して公表するよう努め(第1項)、厚生労働大臣は収集・整理した分析結果を国民にインターネットで迅速に提供できるよう施策を実施する(第3項)。事業所単位の収支が国の側に集まる仕組みです。

保育園の運営法人を調べるときに比べると(保育園の運営法人)、介護は事業所ごとの公表がひとつのシステムにまとまっていて、しかも財務にまで手が伸びつつある。外から見える度合いは、非営利・営利を問わず高い部類です。

公表システムで分からないこと

正直に限界も書いておきます。

よくある質問

事業所の概要画面に運営会社の名前が出てきません。壊れているのでしょうか

仕様です。「事業所の概要」には法人名の欄がありません。上部のタブから「事業所の詳細」に移り、その中の「法人情報」を開いてください。法人等の種類・名称・法人番号・所在地・代表者・設立年月日がまとめて出ます。

法人名から、その会社がやっている介護事業所を一覧できますか

できます。都道府県を選んで「介護事業所を検索する」のキーワード欄に法人名を入れてください。案内には「事業所名 市町村名等」とありますが、法人名でも引けます(東京都で「ニチイ学館」180件、「ニチイケアセンター」170件で実測)。加えて、事業所1件の法人情報タブには、その法人がその都道府県内で実施しているサービスの種類ごとの箇所数が載っています。

探している介護事業所が公表システムに出てきません

3つの可能性があります。①前年の介護報酬等の支払額が100万円以下で、施行規則第140条の44により報告の対象外になっている。②都道府県ごとの報告計画の時期にまだ当たっていない。③そもそも介護保険の指定事業所ではない(自費の家事代行など)。指定の有無そのものは、都道府県・市町村が出す指定事業所一覧で確かめられます。

事業所番号から都道府県や事業所の種類は分かりますか

分かります。10桁のうち1〜2桁目が都道府県番号、3桁目が事業所区分番号(7=指定事業所、9=地域密着型サービス事業所、5=老人保健施設、B=介護医療院など)、4〜5桁目が市町村番号、6〜9桁目が事業所番号、10桁目がチェックデジットです。ただし同一法人・同一所在地で番号を共用する特例や、医療機関等コードを流用する扱いがあるので、番号が同じ=同じ事業所とは限りません。

運営法人の決算まで見たいのですが

法人の種類で道が分かれます。社会福祉法人ならWAM NETの財務諸表等電子開示システム、医療法人なら都道府県の事業報告書等閲覧制度。株式会社・合同会社なら原則として上場企業か決算公告を出している会社しか見られません。加えて、2024年度の公表分からは公表システム自体の「運営状況→財務諸表」にも財務書類が載るようになっています。まずは法人情報タブで法人の種類と法人番号を押さえるのが先です。

まとめ

介護事業所の運営法人を調べる道筋は、次の3段です。

1. 介護サービス情報公表システムで都道府県を選び、事業所名か法人名で検索する 2. 「事業所の詳細」→「法人情報」で、法人の種類・法人名・法人番号・代表者・設立年月日・県内の事業所数を取る 3. 法人番号を手に、法人番号公表サイト・しょくばログ・法人種別ごとの財務公開制度へ進む

うちのDBで数えると、介護事業所を運営している活動中の法人は6万268。株式会社41.0%、社会福祉法人・医療法人などの「その他の設立登記法人」32.0%、合同会社13.6%、有限会社12.4%。営利と非営利が半々で混ざっている業界なので、運営法人の種類を最初に押さえると、その先どこを見ればいいかが決まります。

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この記事で使った一次資料:介護保険法 第115条の35・第115条の44の2、介護保険法施行令 第37条の2の3、介護保険法施行規則 第140条の44〜第140条の48(いずれもe-Gov法令検索の現行法より取得)/厚生労働省「事業所番号の考え方について」/介護サービス情報公表システム(東京都のページで2026年9月に実際に操作して確認)/うちのデータベース(国税庁の法人番号公表データ+介護サービス情報公表システム由来の事業所データ18万1,500件・2026年9月時点の断面)

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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