✍ 古家あきら | 2026-09-04 更新

保育園の倒産・廃業が過去最多の36件 — 施設は増えたのに、子どもは減っている

先に結論です。保育園は「潰れる園が増えた」のではなく、「園の数は増えたまま、通う子どもだけが減っている」状態にあります。帝国データバンクが2026年9月4日に公表した調査によると、2026年1〜8月に消滅した保育園は休廃業・解散30件と倒産6件で合計36件、同じ期間として過去最多です(出典:帝国データバンク「保育園の倒産・休廃業解散動向(2026年1-8月)」2026年9月4日)。前年同期の廃業20件から1.5倍に増えています。

一方で、施設そのものは減っていません。こども家庭庁の「保育所等関連状況取りまとめ」によれば、令和7年4月1日時点の保育所等数は39,975か所(前年比170か所増、+0.4%)。同じ時点で利用児童数は2,678,417人(前年比26,641人減、▲1.0%)、定員充足率は88.4%(前年比0.4ポイント減)まで下がりました(出典:こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」令和7年8月28日公表)。

箱は増え、中身は減る。36件という数字は、その差が経営の限界を超えた園から順に表面化したもの、と読むのが素直です。

「三重苦」の中身は、実は採用の話でもある

帝国データバンクは、保育園が「子供の減少による園児獲得競争の激化や保育士不足、運営コストの上昇といった三重苦に直面」していると指摘しています。このうち2番目が、しょくばログという会社データベースを運営している立場からいちばん気になりました。

同レポートは、保育士の退職や採用難で配置基準を満たせず、園が自主的に定員枠を縮小したり預かりを制限したりして、機会損失で減収になっているケースが増えていると書いています。

これは順番が普通と逆です。ふつう「経営が苦しい→人を採れない」ですが、保育所は認可事業で、保育士の人数が足りなければ法令上、そもそも子どもを預かれません。つまり「人を採れない→預かれない→売上が立たない→経営が苦しい」という順番で効いてくる。求人が埋まらないことが、そのまま収入の上限になる業種です。

保育士として転職先を探している方にとって、これは他人事ではありません。「常に募集が出ている園」は、人気がないのではなく、配置基準ギリギリで回している可能性があるからです。求人が急に消えたり、内定後に条件が変わったりする背景の一般的な読み方は求人が突然消える理由にまとめています。

「地方が7割超」は、地方が危ないという意味ではない

同レポートでもう一つ目を引くのが地域の話です。2026年に発生した保育園の倒産・廃業のうち、首都圏・京阪神・中京以外の「地方」が占める割合が7割超。2016年の47.1%から大きく上がった、とされています。

ただし、この数字を「地方の園は危ない」と読むのは早すぎます。倒産・廃業の件数を地域別に割った比率は、そもそも地方に園がどれだけあるかに引っ張られるからです。分母を見ないと意味が取れません。

うちのデータベースで、名前に「保育園」「保育所」「こども園」を含む活動中の法人1,164社の所在地を数えると、こうなりました。

つまり、この母集団ではもともと6割超が地方にあります。倒産・廃業の地方比率が7割超というのは、「もともと6割が地方にある中で、7割が地方で起きている」という関係です。差はありますが、「地方だけが特別に危ない」と言えるほどの開きではありません。

念のため書いておくと、うちの1,164社は法人番号の登記名で数えたもので、帝国データバンクの調査対象(施設ベース・負債1000万円以上の法的整理と、登記上の解散や活動停止)とは母集団の作り方が違います。同じ土俵の数字ではないので、傾向の目安として並べているだけです。

ここからが本題 — 園の名前で調べても、法人は出てきません

保育園を調べようとして最初につまずくのが、ここです。

全国の保育所等は39,975か所あります。ところが、国税庁の法人番号公表サイトのデータで「保育園」「保育所」「こども園」を名前に含む活動中の法人を数えると、1,164社しかありません(しょくばログのデータベース/活動中の法人4,988,967社を対象に集計)。

39,975か所に対して1,164社。約34分の1です。

これは登記漏れではありません。園は法人ではなく、法人が運営する「施設」だからです。「さくら保育園」の運営元は「社会福祉法人○○会」で、法人番号が振られているのは後者だけ。園名で検索して何も出てこないのは当たり前で、隠しているわけではありません。

では、その1,164社は何者なのか。法人種別で分けるとこうなりました。

8割が社会福祉法人や学校法人などの「その他の設立登記法人」です。法人番号の分類そのものについては法人の種類一覧を参照してください。

ちなみに活動中の法人のうち、名前が「社会福祉法人」で始まるものは21,218社、「学校法人」で始まるものは7,875社あります。保育所を運営する主体の実数は、園名ではなくこちら側にあります。

運営法人までたどる3ステップ

園を調べるときの手順は、こうなります。

1. 園の公式サイトか、市区町村の保育所一覧で「運営法人名」を確認する。認可保育所であれば、自治体が事業者名を公開しているのが通例です。園のサイトなら「園について」「法人概要」「アクセス」の下部に書かれていることが多いです。 2. その法人名で法人番号を引く。会社名から法人番号を検索する方法の手順がそのまま使えます。「社会福祉法人」を付けた正式名称で引くのが確実です。 3. 法人番号が取れたら、登記上の状態を見る。解散や登記閉鎖が入っていないか、本店所在地が変わっていないか。読み方は会社が解散・休眠しているか調べる方法にまとめました。

ここで一つ注意があります。運営法人が1つの園しか持っていないとは限りません。複数園を運営する法人なら、1園の閉園と法人の消滅は別の出来事です。逆に1法人1園の場合は、園の存続と法人の存続がほぼ同じ意味になります。法人番号を引いたら、その法人が何園やっているかを併せて見てください。ここを飛ばすと読み違えます。

応募前・入園前に見る順番

個別の園を名指しで論じるのは避けますが、今回の数字から一般化して言えることを整理します。

この5つはどれも無料で、登録も要りません。園の評判の口コミを読む前に、こちらを先に見たほうが判断が早いです。

よくある質問

Q. 保育園が36件消滅したというのは、多いのですか? 全国39,975か所に対する36件なので、割合としては小さい数字です。ただし帝国データバンクは、これが同じ1〜8月の期間として過去最多であり、前年同期の20件から1.5倍に増えた点を問題にしています。水準ではなく、増え方を見るべき数字です。

Q. 「休廃業・解散」と「倒産」は何が違うのですか? 同レポートの定義では、倒産は負債1000万円以上の法的整理、休廃業・解散は特段の手続きを取らずに事業活動が停止した状態、または商業登記等での解散(みなし解散を除く)です。36件のうち30件が後者で、大半は法的整理を経ない静かな終わり方をしています。

Q. 園の名前で法人番号を検索しても出てきません。何かの間違いですか? 間違いではありません。園は法人ではなく施設なので、法人番号は運営法人に振られています。うちのデータでも、園に由来する名前の活動中の法人は1,164社で、全国の保育所等39,975か所の約34分の1にとどまります。運営法人名で引き直してください。

Q. 定員充足率88.4%は、どの範囲の数字ですか? こども家庭庁が集計した全国の保育所等の合計です(令和7年4月1日時点)。園ごと・自治体ごとの充足率はこれとは別で、都市部と過疎地域では大きく違います。自分が見ている園の数字と、全国平均を混ぜないでください。

Q. 待機児童はもう問題ではなくなったのですか? 全国の待機児童数は令和7年4月1日時点で2,254人(前年比313人減)、待機児童のいる市区町村は211、100人以上いるのは1市だけです。総量としては大きく減りました。ただしこれは全国の合計で、特定の自治体・特定の年齢クラスで足りないことは今もあります。

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出典

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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