✍ 古家あきら | 2026-09-15 更新

訪問介護・訪問看護の事業者が9月上旬に3法人破産、NPO法人・株式会社・合同会社が1つずつ — 訪問介護の倒産は1-5月で31件と5年ぶりの低さなのに、社名に「介護」を持つ法人4,281件を数えたら、NPO法人の閉鎖率33.7%は株式会社の2倍だった

先に結論です。2026年9月15日付の倒産情報(裁判所の公告にもとづく)に、訪問介護・訪問看護の事業者3法人の破産手続き開始決定がまとめて載りました。さいたま市西区の特定非営利活動法人おおみやコアラ(訪問介護・さいたま地裁9月3日決定)、香川県綾歌郡綾川町の株式会社訪問看護ステーション徳(訪問看護・高松地裁9月7日決定)、新潟市中央区の合同会社PIHA(訪問介護センター運営・新潟地裁9月7日決定)です。3法人とも負債額と従業員数は公表されておらず、破綻の経緯も出ていません。法人の形が「NPO法人」「株式会社」「合同会社」と1つずつ違うのが、この3件の並びの特徴です。

出典:【埼玉】NPO法人おおみやコアラが破産 さいたま市西区の訪問介護、2024年に事業所廃止(JC-NET・2026年9月15日) 出典:【香川】(株)訪問看護ステーション徳/破産手続き開始決定 訪問看護(JC-NET・2026年9月15日) 出典:【新潟】(同)PIHA/破産手続き開始決定 訪問介護センター運営(JC-NET・2026年9月15日)

しょくばログという会社データベースを運営していると、介護の求人ほど「事業者の形」がばらばらな業種はないと感じます。社会福祉法人、医療法人、株式会社、有限会社、合同会社、NPO法人、一般社団法人。同じ「訪問介護」の求人でも、応募先の法人の形によって、外から読める情報の量が違います。今回の3件はその見本のような並びなので、介護事業者の倒産が今どのくらい起きているのか、法人の形で何が違うのかを、統計と登記データで数えておきます。

公表された事実

倒産情報に載った要点です。

しょくばログの法人データ(国税庁の法人番号公表サイト全件・2026年6月取り込み)では、3法人とも「稼働中」のままです。おおみやコアラは事業所を廃止してから2年近く経っていますが、登記は動いていません。登記の閉鎖は、破産手続きが終わってから反映されます。会社が実在するか確認する方法で書いた通り、登記で分かるのは「法人として存在するか」であって、「事業をやっているか」ではありません。訪問介護なら、事業をやっているかどうかは、都道府県の介護サービス情報公表システムの「事業所番号」で見るのが正しい順番です(おおみやコアラの事業所番号は1176509154でした)。

介護事業者の倒産は、2025年が176件で過去最多、2026年は「訪問介護」が減っている

東京商工リサーチの集計を、2つ並べます。

出典:2025年「介護事業者」倒産 過去最多の176件 「訪問介護」の倒産が突出、認知症GHも増加(東京商工リサーチ・2026年1月9日) 出典:1-5月の「デイサービス」倒産27件、上半期最多を更新 サービス多様化のなか、コスト上昇と人手不足が負担に(東京商工リサーチ・2026年6月12日)

つまり、今回の3件は「訪問介護の倒産が急増している中の3件」ではありません。統計上は訪問介護の倒産が減っている年に、それでも月に数件ずつ出ている小規模事業者の破産です。介護事業者の倒産は8割が従業員10人未満・負債1億円未満で、負債額すら公表されない「小口倒産」が大半を占めます。今回の3件が負債非公表なのも、その型の通りです。ニュースの見出しにならない倒産のほうが多い、という点は人手不足倒産が過去最多ペースでも書きました。

訪問介護37,264事業所のうち73.2%が「会社」、NPO法人は3.8%

厚生労働省の令和6年介護サービス施設・事業所調査(2024年10月1日時点)の数字です。

出典:令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況(厚生労働省)

訪問介護は4分の3が会社です。会社と言っても株式会社・有限会社・合同会社の別までは、この調査では出ません。そこから先を、登記データで数えます。

社名に「介護」を持つ法人4,281件を、法人の形で分けた

しょくばログが持つ全国579万1,529件の法人データで、社名に「介護」を含む法人を数えました。

NPO法人の閉鎖率33.7%は、介護に限った話ではありません。全国のNPO法人71,050件の閉鎖率は23.7%で、これも全法人平均13.2%の約2倍です。NPO法人は設立時の登録免許税がかからない認証制の法人で、事業報告書を出さないまま活動が止まる例も多い。今回のおおみやコアラも、事業所を廃止した後の事業報告書が2年度分未提出でした。会社ではない法人の倒産の調べ方で書いた通り、NPO法人の事業報告書は所轄庁(都道府県・政令市)のサイトで誰でも読めます。未提出が続いている法人は、そこで分かります。

「訪問介護」と「訪問看護」で、法人の形がまったく違う

社名にそれぞれの言葉を持つ法人だけに絞ると、もうひとつ差が出ます。

訪問介護は有限会社が最多、訪問看護は合同会社が3分の1以上。有限会社は2006年以降つくれない形なので、社名に「訪問介護」を持つ法人の3割は設立20年以上です(有限会社に就職するのは不利なのか)。一方、訪問看護ステーションは事業所数が1年で9.9%増えている分野で、そこに新しく入ってきた事業者が合同会社を選んでいる。今回の合同会社PIHAは「訪問介護センター運営」でしたが、合同会社は設立時の登録免許税が株式会社の15万円に対して6万円で、決算公告の義務もない形です。決算公告を出していない会社は違法かで書いた通り、合同会社には公告義務そのものがないので、財務は外からまったく読めません。

介護事業者に応募する・取引する前に見る順番

今回の3件から言えるのは、「NPO法人だから危ない」「合同会社だから危ない」ではありません。法人の形によって、外から読める情報の場所と量が違う、ということです。順番を書きます。

1. 事業所番号で「今もやっているか」を見る:介護サービス情報公表システム(都道府県)で事業所を検索し、指定の状態と廃止・休止の有無を見る。登記が稼働中でも、事業所が廃止されていることは今回の通りある 2. 行政処分・指定取消の履歴を見る:介護保険法の指定取消・効力停止は自治体が公表している。調べ方は会社の行政処分を調べる方法にまとめた 3. 法人の形で、読める書類を決める:株式会社なら決算公告(出していれば)、NPO法人なら所轄庁の事業報告書と活動計算書、社会福祉法人なら現況報告書(WAM NET)。合同会社と有限会社は公開書類がほぼ無いので、求人票と面接で聞くしかない 4. 登記の変更履歴を見る:本店移転や代表者変更が短期間に続いていないか。会社の登記簿は誰でも見られるので、法人番号があれば手続きは10分で終わる 5. 従業員数を2つの資料で見る:倒産した介護事業者の8割は従業員10人未満。求人票の「スタッフ20名」が事業所全体か、法人全体かを確かめる。手順は会社の従業員数を無料で調べる4つの方法

よくある質問

訪問介護の倒産は減っているのに、なぜ破産が続くのですか

統計上の「減少」は前年同期との比較で、件数がゼロになったわけではありません。2026年1-5月の31件は5か月で31件、つまり月に6件ほどの訪問介護事業者が破産しています。介護事業者の倒産は8割が従業員10人未満・負債1億円未満で、負債額が公表されないまま裁判所の公告だけが残る形が大半です。

NPO法人の閉鎖率が高いのは、経営が苦しいからですか

登記データからは理由は読めません。分かるのは「社名に介護を持つNPO法人413件のうち139件(33.7%)が閉鎖され、そのうち41件は登記官による閉鎖だった」という数字だけです。NPO法人は設立の費用が会社より軽く、事業報告書を出さないまま活動を止める例も多いため、閉鎖の中には「経営破綻」ではなく「活動終了」も混ざっています。個別の法人については、所轄庁に提出された事業報告書を読んでください。

事業所を廃止してから2年後に破産する、というのは普通ですか

珍しくありません。事業所の廃止は介護保険法上の手続き、破産は破産法上の手続きで、別々に進みます。事業をやめても債務が残っていれば、債権者の申し立てや法人側の申し立てで、後から破産手続きが始まります。登記データでは、その間ずっと「稼働中」と表示されます。

合同会社の訪問看護ステーションに応募するのは避けたほうがいいですか

法人の形だけで避ける理由はありません。社名に「訪問看護」を持つ法人の35.5%が合同会社で、閉鎖率は訪問介護より低い12.3%です。ただし合同会社は決算公告の義務がなく、財務は外から読めません。指定の状態・行政処分の履歴・登記の変更履歴・従業員数の裏取り、という順番で見て、最後は面接で「事業所の稼働年数」と「常勤の人数」を聞くのが現実的です。

まとめ

この記事のデータについて:しょくばログの法人データは国税庁法人番号公表サイトの全件(5,791,529件・2026年6月取り込み)です。「社名に◯◯を含む」は商号の文字列一致で、業種の断定ではありません。NPO法人は商号が「特定非営利活動法人」または「NPO法人」で始まる法人を数えました。業種の推定は登記情報からの機械分類です。倒産情報はJC-NET(裁判所の公告にもとづく)、倒産統計は東京商工リサーチ、事業所数と開設主体別の割合は厚生労働省の調査を出典とし、負債額など公表されていない数字は書いていません。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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