✍ 古家あきら | 2026-09-12 更新

会社の行政処分を調べる方法 — 公表先は業種ごとにバラバラで、登記簿にも法人番号にも一切載りません

先に結論です。会社の行政処分を全業種まとめて検索できる公的な窓口はありません。 建設業・宅建業・運送業の処分は国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」、派遣会社・人材紹介会社の処分は厚生労働省の報道発表と各都道府県労働局のページ、訪問販売や通信販売の処分は消費者庁の「執行事例の検索」、金融機関の処分は金融庁の「行政処分事例集」——と、処分を出した役所がそのまま公表先になっています。だから「会社名 行政処分」で検索して何も出なくても、処分が無かったことにはなりません。その会社の業種の公表先を見に行く必要があります。

もうひとつ、先に言っておきたいことがあります。行政処分の有無は、登記簿にも、国税庁の法人番号公表サイトにも、一切載りません。 営業停止を命じられても、許可を取り消されても、会社の登記は何も変わらないからです。この記事の後半で、金融庁が公表している処分事例2,816行を全部数え、法人番号が付いている712社をうちのデータベースに当てた結果を出しますが、業務廃止を命じられた491社のうち、登記が閉鎖されているのは21社だけでした。処分は「会社の外側」を見ないと分からない、ということです。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「取引先候補が過去に処分を受けていないか確認したい」「応募先の会社名で検索したら『業務停止』という言葉が出てきたが本当か」という相談が定期的に来ます。うちは31都府県の建設業許可データ238,052社分を取り込んでいて、会社の許認可を調べる方法では「許可を持っているか」を確認する先を業種別に整理しました。この記事はその裏側、「許可を止められた・取り消された」を確認する先の整理です。①行政処分とは何か、②業種別の公表先と掲載期間、③金融庁の事例集を数えて分かったこと、④調べるときの勘違い、⑤うちのデータベースでできること・できないこと、の順に書きます。

行政処分とは — 許認可の「裏側」で、重さに段階がある

行政処分は、役所が法律にもとづいて会社に対して行う、権利や義務を変える決定のことです。会社を調べる文脈で出てくるのは、ほとんどが業法(建設業法・宅建業法・労働者派遣法・特定商取引法・金融商品取引法など)にもとづく監督処分で、軽いものから重いものまで段階があります。

ここで大事なのは、行政処分を出した役所が、その処分を公表する役所でもあることです。建設業の許可は国土交通大臣または都道府県知事が出すので、処分も同じ大臣・知事が出し、公表するのは国土交通省。派遣の許可は厚生労働大臣なので、処分も厚生労働省。役所が違えば公表先も違い、横断して束ねる仕組みが無い——これが「一括検索できない」理由の全部です。許可の確認先がバラバラなのと同じ構造で、会社の許認可を調べる方法に書いた分かれ道が、処分でもそのまま再現されます。

業種別・行政処分の公表先と掲載期間

2026年9月12日に、それぞれの公式ページを実際に開いて確認した範囲で書きます。掲載期間はどれも有限で、古い処分は公表先から消えます。

建設業・宅建業・マンション管理業・運送業・旅行業 — 国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」

国土交通省が運営するネガティブ情報等検索サイトは、国土交通省所管の事業者の過去の行政処分歴を、分野ごとに検索できるサイトです。トップページの区分は、①建物の設計・判定・評価(一級建築士、指定確認検査機関など)、②建設工事(建設業者、測量業者、建設コンサルタントなど)、③不動産の売買・管理(宅地建物取引業者、マンション管理業者、賃貸住宅管理業者など)、④旅客運送(鉄道、バス、タクシー、船舶、航空)、⑤貨物運送(トラック)、⑥自動車の製造・整備、⑦旅行(第一種旅行業者)の7つです。

建設業許可番号や宅建業免許番号の読み方は会社の許認可を調べる方法に、宅建業の免許と倒産の関係は不動産仲介会社の倒産と宅建免許に書きました。処分の確認は、この2つで許可・免許を確認した「次の一手」として位置づけると分かりやすいと思います。

派遣会社・人材紹介会社 — 厚生労働省の報道発表と都道府県労働局

労働者派遣事業・職業紹介事業の処分は、厚生労働省本省の報道発表(処分ごとに1件ずつ)と、管轄の都道府県労働局のページに載ります。たとえば大阪労働局は「需給調整事業部に係る行政処分」というページで、「労働者派遣事業に係る行政処分」「職業紹介事業者に対する行政処分」「関係派遣先派遣割合報告書未提出事業者に対する行政処分」「職業紹介事業報告書未提出事業者に対する行政処分」と区分して、令和6年3月から令和8年5月までの処分を並べています。

注意点が2つあります。ひとつは、許可の有無を確認する人材サービス総合サイトには、処分情報の検索機能が無いこと。許可事業所の一覧は引けますが、「この会社は過去に事業停止を受けたか」はそこでは分かりません。もうひとつは、厚生労働省の労働者派遣事業関係業務取扱要領が、派遣元事業主の処分として許可の取消・事業停止命令・改善命令の3段階を挙げ、加えて無許可で派遣を行った事業主は「厚生労働省及び管轄する都道府県労働局のホームページ等において事業主名等が公表」されると明記していることです。つまり派遣の分野では「許可を持つ会社への処分」と「無許可業者の公表」の2系統があります。許可番号の読み方と確認手順は派遣会社・人材紹介会社の許可番号を確認する方法にまとめました。

訪問販売・通信販売・電話勧誘 — 消費者庁「執行事例の検索」と景品表示法の措置命令

消費者庁の執行事例の検索は、特定商取引法にもとづく処分(業務停止命令・指示・業務禁止命令など)を、事業者名・取引類型(訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引、訪問購入)・商品・役務・違反行為・処分行政庁・処分日で検索できるページです。2026年9月12日時点で526件の執行事例が検索できます。掲載期間は「原則として処分日が属する年度の翌年度の開始から5年間を経過するまでの間」で、それを過ぎると検索対象から外れます。

広告や表示の問題(いわゆる「優良誤認」「有利誤認」)は特定商取引法ではなく景品表示法の領域で、こちらは消費者庁の景品表示法関連報道発表資料に措置命令が年度別・月別で並んでいます。求人票や会社概要の「業界No.1」「実績◯万件」といった表記が本当かを確かめる文脈では、「架空求人」を見分ける方法と合わせて、この措置命令の一覧に社名が無いかを見るのが実務的です。

銀行・証券・保険・貸金・暗号資産 — 金融庁「行政処分事例集」

金融庁の行政処分事例集は、平成14年度以降に金融庁と各財務(支)局が発出・公表した処分を1本のExcelファイル(令和8年6月30日時点・357KB)にまとめたもので、Excelのオートフィルタで年度・業態・法令・処分の種類で絞り込めます。対象は預金取扱金融機関・保険会社・金融商品取引業者等・その他(貸金業者、暗号資産交換業者など)。この記事の後半で、このファイルを全部数えます。

カルテル・談合・優越的地位の濫用 — 公正取引委員会

独占禁止法にもとづく排除措置命令・課徴金納付命令・確約計画の認定・警告は、公正取引委員会の独占禁止法(排除措置命令・確約計画の認定・警告等)に、平成29年から令和8年まで年別に並んでいます。取引先候補が入札談合やカルテルで処分を受けていないかは、ここが公式です。

労働基準法違反 — 労働局・労働基準監督署の公表事案

労働基準関係法令の違反で送検された会社は、厚生労働省と都道府県労働局が社名を公表しています。これは業法の監督処分とは別の系統で、労働基準法違反で社名を公表された会社の調べ方で公表リスト400件を全部数えて中身を書いたので、応募先の確認ではそちらを先に見てください。

この記事に載っていない業種

古物商(公安委員会)、飲食店(保健所)、医療・介護(都道府県・厚生労働省)、貸金業のうち都道府県登録(都道府県)など、上に挙げていない分野もそれぞれ処分主体があります。共通する探し方は「許可を出した役所の名前」+「監督処分」または「行政処分」で検索することです。許可を出した役所は会社の許認可を調べる方法の業種別一覧で分かります。役所が分かれば、公表先はその役所のサイトの中にあります。

金融庁の行政処分事例集2,816行を全部数えた

ここからはうちのデータです。金融庁の行政処分事例集(令和8年6月30日時点)をダウンロードして、注記の行を除いた2,816行を全部数えました。同一の命令書が複数行に分かれている場合があるので、行数は「処分の件数」とは一致しません。その前提で読んでください。

業態と処分の種類

読みどころは、「処分=会社が消える」ではないことです。直近5年度で見ても6割は業務改善命令で、会社は営業を続けたまま態勢を直しています。処分歴があるかどうかと、その処分が何だったかは、分けて読む必要があります。

法人番号が付いている712社をうちのデータベースに当てた

事例集には「平成28年1月以降に新規登録若しくは更新を行った案件については、新規登録若しくは更新時点の法人番号を併記している」という注記があり、1,667行に法人番号が付いていて、重複を除くと712社(うち1社は「-」で無効)でした。この711の法人番号を、国税庁の法人番号公表サイト全件を取り込んだうちのデータベース(法人番号5,791,529件)に当てた結果がこれです。

そして、この記事でいちばん伝えたい数字です。業務廃止命令を受けた会社で法人番号が分かる491社をうちのデータベースに当てると、490社がヒットし、登記記録が閉鎖されているのは21社(4.3%)だけでした。登録取消しを受けた50社では、閉鎖済みは7社。金融庁から「業務をやめなさい」「登録を取り消す」と言われた会社の9割以上が、登記の上では今も普通に存在しています。

これが「行政処分は登記簿にも法人番号にも載らない」の実態です。登記簿は会社の骨格(商号・本店・目的・資本金・役員)を公示する書類で、会社の登記簿は誰でも見られるのですが、そこに処分歴という項目は無く、業務廃止命令を受けても登記が動く理由がありません。法人番号公表サイトが公開しているのも商号・所在地・法人番号と閉鎖の有無だけです。「登記が生きている」「法人番号がある」は、処分を受けていないことの証明にはならない、と覚えておいてください。閉鎖の仕組みそのものは会社が解散・休眠しているか調べる方法に書きました。

調べるときによくある勘違い

うちのデータベースでできること・できないこと

正直に線を引きます。しょくばログは行政処分のデータを持っていません。 うちが持っているのは、国税庁の法人番号公表サイト全件(5,791,529件)と、31都府県が公開している建設業許可データ238,052社分、gBizINFOの届出・認定・補助金・調達データ、介護事業所・障害福祉サービス事業所の指定情報などで、いずれも「許可・認定・登録を持っている」側の情報です。処分で許可が取り消されれば、次に都道府県がデータを更新した時点で許可データから消えますが、「取り消された」という履歴は残りません。

だから使い方はこうなります。

よくある質問

会社の行政処分を一括で検索できるサイトはありますか

公的なものはありません。処分を出した役所がそれぞれ公表しているので、建設・不動産・運送は国土交通省のネガティブ情報等検索サイト、派遣・職業紹介は厚生労働省と都道府県労働局、訪問販売・通信販売は消費者庁の執行事例の検索、金融は金融庁の行政処分事例集、独占禁止法は公正取引委員会、という具合に業種で振り分けて探します。民間の有料サービスがこれらを横断で集めている場合はありますが、元データはいずれも上の公的な公表先です。

行政処分を受けた会社は、登記簿を見れば分かりますか

分かりません。行政処分は登記事項ではないので、営業停止も許可取消も登記簿には載りません。うちのデータベースで確かめたところ、金融庁から業務廃止命令を受けた491社のうち登記記録が閉鎖されているのは21社だけで、9割以上は登記が生きたままでした。処分歴は、登記簿ではなく処分を出した役所の公表先で確認してください。

昔の処分は調べられますか

公表先ごとに期限があります。国土交通省のネガティブ情報等検索サイトは最近5年分、消費者庁の執行事例の検索は処分日が属する年度の翌年度の開始から5年間です。金融庁の行政処分事例集は平成14年度以降を1つのファイルに載せているので、金融分野は比較的さかのぼれます。期限を過ぎた処分は公的な検索では出てこないので、「出てこない」ことを「無かった」と読まないでください。

都道府県知事が出した処分は、国のサイトで見られますか

建設業と宅建業は見られます。国土交通省のネガティブ情報等検索サイトは、建設業者について「国土交通大臣、各地方整備局長、北海道開発局長、沖縄総合事務局長等又は地方公共団体」、宅地建物取引業者について「国土交通大臣、各地方整備局長、北海道開発局長及び沖縄総合事務局長並びに都道府県知事」が行った処分を掲載しています。派遣・職業紹介は本省の報道発表と管轄労働局のページに分かれるので、両方を見てください。

処分歴のある会社に応募したり取引したりするのは避けるべきですか

処分の重さと時期で分けて考えるのが現実的です。金融庁の事例集では直近5年度の処分の6割が業務改善命令で、会社は営業を続けたまま態勢を直しています。営業停止や許可取消は事業の継続に直結する重い処分で、こちらは慎重に見る必要があります。いつの処分で、何を命じられ、その後どうなったか(金融庁の事例集には「解除の有無」の列があります)まで見て判断してください。

まとめ

しょくばログでは全国約579万件の法人番号の会社情報を無料で公開しています。会社名で検索すれば法人番号・所在地・法人種別と登記記録の閉鎖の有無がその場で分かるので、処分の公表先で引く前の「正式な商号と法人番号の確認」にお使いください。処分の公表先は社名の表記ゆれに弱いので、ここを固めてから引くのがいちばん確実です。

参照した一次資料

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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