✍ 古家あきら | 2026-09-10 更新

不動産仲介の倒産が過去最多に迫るペース、それでも宅建業者は11年連続で増加 — 1社を見分ける「免許番号の年輪」

先に結論から。不動産仲介業の倒産は増えていますが、不動産会社そのものは減っていません。2026年1-8月の倒産は86件で通年130件程度のペース。一方、宅地建物取引業者は132,291業者で11年連続の増加です。つまりこの業界で起きているのは「縮小」ではなく入れ替わりの速さです。だから応募先や仲介の依頼先を見るときに、業界全体の景気を心配してもあまり意味がありません。見るべきは目の前の1社の年輪です。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、倒産のニュースが出るたびに同じ検索が増えるのが分かります。「◯◯不動産 潰れる」「不動産会社 危ない 見分け方」。今日はその見分け方を、不動産業だけが持っている特殊な手がかり——免許番号——を軸に整理します。

今日のニュース:不動産仲介の倒産、通年で過去最多に迫る

2026年9月8日、帝国データバンクが「不動産代理・仲介業の倒産動向(2026年1-8月)」を公表しました。集計対象は負債1,000万円以上・法的整理による倒産です。

出典:帝国データバンク「不動産代理・仲介業の倒産動向(2026年1-8月)」(2026年9月8日)

件数そのものより、件数は前年並みなのに負債総額だけが1.7倍になっていることに注目しました。1件あたりの規模が大きくなっている。ただし内訳を見ると負債5,000万円未満が7割ですから、大半は小さな会社です。ごく少数の大型案件が総額を押し上げた形と読むのが自然でしょう。

一方で、宅建業者数は11年連続で増えている

ここで並べたい数字があります。国土交通省が毎年公表している「宅地建物取引業法の施行状況調査」です。

出典:国土交通省「令和6年度宅地建物取引業法の施行状況調査結果について」(令和7年10月3日)

倒産が年130件、業者数が13万2千。割合にすると0.1%です。(倒産の集計時点と業者数の基準日は厳密には揃わないので、あくまで桁の感覚として見てください。)

そして業者数は減るどころか、20年前の水準を超えて過去10年で最も多い。つまり辞める会社と同じかそれ以上の数が、毎年新しく免許を取っているということです。この業界は少額の資本で開業でき、宅建士1人(専任の取引士)を置ければ形になります。入りやすい業界は、同じだけ出やすい。倒産件数の多さは業界の危険度ではなく、回転の速さを映していると考えたほうが実態に近いはずです。

なお、会社の終わり方は倒産だけではありません。免許を更新せずに静かに店じまいする廃業は、倒産統計には出てきません。この点は倒産統計に映らない会社の終わり方にまとめています。

不動産会社にだけある手がかり:免許番号の「カッコ内の数字」

業界全体を心配しても仕方がない、という話をしました。では1社をどう見るか。不動産業には他業種にない便利な仕組みがあります。免許番号です。

`東京都知事(3)第○○○○○号` のように書かれている、あのカッコの中の数字です。

宅地建物取引業の免許の有効期間は5年間で、「有効期間が満了する日の90日前から30日前まで」に更新申請が必要です(出典:国土交通省「宅地建物取引の免許について」)。カッコの中は、この更新を何回したかに1を足した数字です。ざっくり次のように読めます。

免許を出しているのが誰か、も同時に分かります。2つ以上の都道府県に事務所を置く場合は国土交通大臣免許、1つの都道府県内なら知事免許です。「大臣免許=大手」と単純には言えませんが、少なくとも他県にも拠点を持っている会社だと分かります。

ただし、この読み方には2つの落とし穴があります

第一に、免許換えをすると数字は(1)に戻ります。 知事免許の会社が他県に支店を出して大臣免許に切り替えた場合、それまでの更新回数は引き継がれません。業歴30年の会社が(1)になっていることは普通に起こります。(1)だから新しい会社、とは限らないわけです。

第二に、更新の間隔は昔と違います。 有効期間が5年になったのは平成8年(1996年)の改正からで、それ以前は3年でした。数字が5や6を超える古い会社では、単純な「1つ=5年」の計算がずれます。

だから免許番号は当たりをつける道具であって、確定情報ではありません。正確な業歴を知りたいなら登記の設立年月日を見るのが確実です(会社の設立年を調べる方法)。

免許と行政処分は、無料で確認できます

免許番号は名刺やサイトの表記を信じるのではなく、実物を照合できます。

免許の有無・内容 … 国土交通省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システム。商号や免許番号から検索でき、宅建業者のほかマンション管理業者、賃貸住宅管理業者、不動産鑑定業者なども引けます。他業種の許認可の確認先は会社の許認可を調べる方法にまとめてあります。

行政処分の履歴 … 国土交通省のネガティブ情報等検索サイト。宅地建物取引業者について公開されるのは免許取消・業務停止・指示の3種類で、公開期間は5年です。

処分は珍しいことなのか。令和6年度の実績は免許取消99件、業務停止16件、指示32件の合計147件(前年度比20件・12.0%減)。ほかに文書による行政指導が592件(同61件・11.5%増)ありました。13万業者に対して処分147件ですから、引っかかる会社は例外です。逆に言えば、検索して名前が出てくることの意味は重い。応募でも取引でも、確認は数分で終わります。

しょくばログのデータで見た「不動産会社の顔つき」

ここからは、うちのデータベースで実際に数えた結果です。全国579万件の法人登記データのうち、商号に「不動産」を含む法人は31,560社あり、そのうち現存が27,570社(87.4%)でした。この27,570社を法人の種類で分けると、こうなります。

比較対象として、現存法人5,028,697社の全業種平均は株式会社50.0%・有限会社28.4%・合同会社8.2%です。つまり不動産会社は、有限会社の比率が全業種平均より高く、合同会社の比率が低い。業種分類が付いている「不動産業・物品賃貸業」の現存73,805社で見ても同じ傾向で、有限会社33.2%・合同会社5.9%でした(業種分類は判定できた法人に限られるため、商号ベースの集計と合わせて2つの断面で確認しています)。

これは何を意味するか。有限会社は2006年5月の会社法施行以降、新しく作れません。(法人の種類ごとの違いは法人の種類一覧にまとめています。)だから商号が「有限会社◯◯不動産」なら、その会社は最低でも20年の業歴があるということです。倒産の7割が負債5,000万円未満の小規模事業者だったという事実と重ねると、見えてくる像は「小さくて新しい会社が消えている」ではありません。小さくて古い会社が、代替わりや採算で終わっているという像に近い。老舗か新興かの見分け方そのものは老舗か新興かを見分ける方法に書きました。

地域も数えました。商号に「不動産」を含む現存法人のうち、東京都が5,556社(20.2%)、関東7都県で38.7%、近畿6府県で16.4%。倒産の内訳(関東44.2%、近畿27.9%)と並べると、関東はおおむね会社の分布どおりですが、近畿は分布から見ると倒産の構成比が高めに出ています。ただし、うちの集計は商号ベース、帝国データバンクの集計は「不動産代理・仲介業」という業種ベースで、範囲が一致していません。断定はできない、というのが正直なところです。

応募前・依頼前にやる4ステップ

数字をまとめると、確認の順番はこうなります。

1. 免許番号を検索システムで照合する。 名刺やサイトの表記どおりに免許が存在するか。カッコの数字で業歴の当たりをつける。免許換えの可能性を忘れない 2. ネガティブ情報等検索サイトで処分歴を見る。 出てこないのが普通。出てきたら中身を読む 3. 法人としての実在と登記の生死を確認する。 免許は生きていても登記が動いていない会社はあります → 会社が実在するか確認する方法 4. 営業の実態を複数のサインで見る。 所在地、電話、求人の出し方、更新が止まっていないか → 営業実態のない「幽霊会社」を見分ける5つのサイン

取引先として与信を見るなら、この4つの上に決算や取引状況を重ねる考え方を取引先の信用を調べる方法にまとめています。

よくある質問

不動産会社の免許番号のカッコの数字が大きいほど安心ですか

業歴の長さの目安にはなりますが、安心の保証ではありません。5年ごとの更新回数に1を足した数字なので、(5)なら20年超の業歴があると推測できます。ただし免許換えをすると(1)に戻り、1996年より前は更新が3年ごとだったため、数字と年数は完全には対応しません。設立年は登記で確認するのが確実です。

不動産会社の倒産が過去最多なら、この業界への転職は避けるべきですか

業界全体で判断する材料としては弱いです。倒産は年130件程度の見込みに対し、宅地建物取引業者は132,291業者あり、しかも11年連続で増えています。業界が縮んでいるのではなく、出入りが多い構造です。見るべきは業界の平均ではなく、応募先1社の免許・処分歴・登記・営業実態です。

不動産会社の行政処分歴はどこで調べられますか

国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで無料で検索できます。宅地建物取引業者について公開されるのは免許取消・業務停止・指示の3種類で、公開期間は処分から5年です。令和6年度の監督処分は全国で147件でした。

「有限会社」の不動産会社は古い会社ということですか

はい、少なくとも2006年5月より前に設立された会社です。有限会社は会社法の施行以降は新設できないためです。商号に「不動産」を含む現存法人27,570社のうち31.4%が有限会社で、全業種平均の28.4%より高い比率でした。古いこと自体は弱みでも強みでもありませんが、「小さいから新しい会社だろう」という推測は外れやすい、とは言えます。

まとめ

不動産代理・仲介業の倒産は2026年1-8月で86件、通年では過去最多の2025年に迫るペースです。しかし宅地建物取引業者数は132,291業者で11年連続の増加。この2つは矛盾しません。入れ替わりが速い業界だというだけのことです。

だから「業界が危ないかどうか」を考えるより、目の前の1社の年輪を数えるほうが早い。不動産業には免許番号という他業種にはない年輪があり、処分歴も無料で照合できます。しょくばログでは全国579万件の法人データから、会社の実在・登記・所在地を確かめる入口をまとめています。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

← お役立ち記事一覧へ