✍ 古家あきら | 2026-10-07 更新
京都のFA設備メーカー「株式会社TAC」が自己破産申請の準備へ──売上は約4億1000万円から約1億7000万円に、負債は約6億3700万円。しょくばログの台帳では同じ「株式会社TAC」が全国に76法人、取引先は法人番号で見分ける
先に結論です。工場の自動化(FA)・省力化設備の設計から据付までを手がけてきた株式会社TAC(京都市南区)が、自己破産申請の準備に入ったと2026年10月7日に報じられました。 負債は約6億3,700万円です。
報道によると、2025年春以降の米国の関税政策で先行きが読みにくくなり、取引先が設備投資に慎重になって受注が減りました。年商を上回る借入金の返済が重く、資金繰りを立て直せなかったとされています。
しょくばログという会社データベースを運営していると、このニュースでまず気になるのは社名です。「TAC」は短く、よくある社名です。しょくばログの台帳で数えると、「株式会社TAC」という名前の法人は全国に76あります。 報道を見た取引先や応募者が「うちの取引先のTACだろうか」と迷うのは自然なことです。
この記事は同社の経営を評価するものではありません。報道で確認できる事実を整理したうえで、同じ名前の会社を取り違えない確かめ方と、FA設備の会社を外から見るときの手がかりを書きます。
出典:株式会社TAC(京都市南区)の自己破産申請準備に関する記事(JC-NET・2026年10月7日)
報道で確認できる事実
報道に書かれている内容を、そのまま並べます。
- 会社:株式会社TAC(京都府京都市南区)
- 設立:2002年3月
- 事業:FA・産業用省力製造設備の設計、製造、据付など。工場の生産工程を自動化・省力化する設備を一貫して手がけていた
- 主な取引先:GSユアサグループ、椿本チエイン、パナソニックグループ、TMTマシナリー、ヌヴォトンテクノロジージャパン
- 売上高:2009年3月期は約4億1,000万円、2026年3月期は約1億7,000万円
- 負債:約6億3,700万円
- 状況:事業を停止し、自己破産申請の準備に入った(申請の時期は未定)
- 原因:2025年春以降の米国関税政策で取引先の設備投資姿勢が慎重になり、受注が減少。年商規模を上回る借入金が返済の負担になった
売上は17年で半分以下になっています。負債約6億3,700万円は、直近の売上約1億7,000万円のおよそ3.7倍です。
ここで注意したいのは、まだ「申請の準備」の段階だという点です。裁判所が破産手続きの開始を決めたわけではありません。破産、民事再生、会社更生といった手続きの違いは倒産の種類の違いを整理した記事にまとめています。
「株式会社TAC」は全国に76法人ある
しょくばログの台帳(国税庁の法人番号データがもと)で、社名が「株式会社TAC」と完全に一致する法人を数えました。
- 「株式会社TAC」:76法人(うち登記が閉鎖されているのは9法人)
- 有限会社・合同会社なども含めて社名が「TAC」の法人:116法人、32都道府県に分布
- 登記が残っている「株式会社TAC」が多い都道府県:東京都14、大阪府8、神奈川県5、愛知県5、福岡県4
- 京都府に本店がある「株式会社TAC」:1法人(京都市南区上鳥羽清井町、法人番号 1130001025503)
京都市南区の「株式会社TAC」は台帳上この1社だけです。報道の所在地とも一致します。ただし、報道に法人番号は書かれていません。取引の有無を確かめるときは、請求書や契約書に書かれた住所と照らし合わせてください。
この1社の登記は、台帳ではまだ閉鎖されていません。破産の手続きが始まっても、登記が閉鎖されるのは手続きが終わってからです。この時間差は破産決定が出ても台帳に「閉鎖」が出ない会社の記事で詳しく書いています。
同じ名前の会社が多いケースは、これまでも何度か扱ってきました。カタログ通販会社の事業停止で同名6法人を見た記事と比べても、76法人は桁が違います。英字3文字のように短い社名ほど、名前だけでは見分けられません。
同じ名前の会社を見分ける手順
1. 法人番号を手に入れる:請求書、契約書、適格請求書(インボイス)の登録番号(「T」+法人番号)から分かります 2. 本店所在地を照らし合わせる:同じ名前でも、本店の住所が違えば別の会社です 3. 台帳で登記の状態を見る:閉鎖されていないか、最近住所や商号が変わっていないかを確かめます
法人番号の調べ方は法人番号の調べ方にまとめています。
社名に「オートメーション」「省力」を持つ会社の登記
TACの社名からは事業内容が分かりません。そこで、社名に「オートメーション」か「省力」を含む法人を、FA設備に近い会社の目安として数えてみました。
- 該当する法人:166法人
- 登記が閉鎖されている法人:26法人(閉鎖率15.7%)
- 全法人の閉鎖率:13.3%(約575万法人のうち約76万法人)
- 多い都道府県:東京都45、神奈川県22、大阪府10、愛知県7、福岡県7
閉鎖率は全法人の平均より2.4ポイント高い結果でした。ただし、社名で拾える会社はFA業界のごく一部です。TACのように社名に事業内容が入っていない会社のほうが多いので、この数字は業界全体の傾向を示すものではありません。また、登記の閉鎖には倒産だけでなく、合併や休眠会社の整理も含まれます。
取引先の設備投資に左右される仕事
今回の報道で目を引くのは、原因が同社の外にあった点です。FA設備は、取引先が工場に投資するときにはじめて注文が入ります。取引先が投資を見送れば、受注はそのまま減ります。
報道に並ぶ取引先は、電池、搬送機器、電機、繊維機械、半導体と業種が分かれています。それでも、関税で先行きが読みにくくなると、各社が同じ時期に投資を控えることがあります。取引先を分散しても、景気の波そのものは避けにくいということです。
中小企業の景況感は2026年9月の日銀短観の記事で取り上げています。設備投資の空気を知る材料になります。
応募者・取引先が確かめておきたいこと
報道が出るのは、たいてい事業が止まった後です。その前に外から確かめられることを挙げます。
- 売上の推移を見る:同社は17年で売上が半分以下になっていました。決算公告や信用調査で、何期分か並べて見ます。赤字が続く業種の見方は赤字が3期続く業種の記事で書いています
- 決算公告を探す:株式会社には決算公告の義務があります。出していない会社の扱いは決算公告を出していない会社の記事にまとめています
- 取引先の業種と景気の関係を考える:受注生産の会社は、取引先の投資計画に左右されます。主要取引先がどの業界に寄っているかを見ておきます
- 新しい取引先は登記から確かめる:契約前の確認項目は新規取引先の確認事項にまとめています
よくある質問
自己破産申請の「準備」とは、どういう状態ですか?
事業を止め、弁護士に手続きを任せて、裁判所への申し立てを準備している段階です。裁判所が破産手続きの開始を決めるのはその後です。準備中の段階では、取引先に弁護士から受任の通知が届くことが多く、それ以降の支払いや取引の連絡は弁護士を通すことになります。
報道の「TAC」が自分の取引先か分からないときは?
法人番号と本店所在地で照らし合わせてください。今回の報道は京都市南区の会社で、しょくばログの台帳では京都市南区の「株式会社TAC」は1社だけです。ほかの都道府県の「株式会社TAC」は別の会社です。
登記が閉鎖されていないのに、倒産したことはありますか?
あります。破産の手続きが終わるまで登記は残ります。台帳で「閉鎖」になっていないことは、営業を続けている証明にはなりません。報道や官報とあわせて確かめてください。
FA設備の会社に応募するとき、何を見ればいいですか?
主要な取引先の業界と、売上の推移です。取引先が特定の業界に寄っていると、その業界の投資が止まったときに影響を受けやすくなります。面接で主な取引先や受注の見通しを聞くのも一つの方法です。
まとめ
- 京都市南区の株式会社TAC(2002年設立)が、自己破産申請の準備に入ったと報じられた。負債は約6億3,700万円
- 売上は2009年3月期の約4億1,000万円から、2026年3月期には約1億7,000万円になっていた
- 報道では、米国の関税政策で取引先が設備投資を控え、受注が減ったことが原因とされている
- しょくばログの台帳では「株式会社TAC」は全国に76法人。京都市南区の法人は1社だけ
- 社名に「オートメーション」「省力」を持つ166法人の閉鎖率は15.7%で、全法人の13.3%より高い
- 短い社名の会社は、名前でなく法人番号と本店所在地で見分ける