✍ 古家あきら | 2026-09-11 更新
社員数が少ない会社は危ないのか — 日本の会社の84.5%は「小規模」、少人数そのものは危険のサインではありません

先に結論です。社員数が少ないこと自体は、危ない会社のサインではありません。 中小企業庁が2023年12月に公表した集計(令和3年経済センサス‐活動調査の再編加工)では、日本の企業337.5万者のうち、小規模事業者は285.3万者・84.5%です。小規模事業者とは、製造業・建設業・運輸業などで従業者20人以下、卸売業・小売業・サービス業で5人以下の企業を指します。つまり日本の会社の8割以上は、そもそも「社員数が少ない会社」です。少人数を避けると、応募先も取引先もほとんど残りません。
ただし「少人数なら大丈夫」とも言いません。しょくばログという会社データベースを運営していると、「社員が5人しかいない会社に応募していいですか」「従業員3人の取引先と契約して平気ですか」という趣旨のご相談を、転職と取引の両方の文脈でいただきます。そのたびにお伝えしているのは、少人数であることは危険の証拠でも安全の証拠でもなく、判断材料としては薄すぎるということです。うちのデータベースで従業員数の分かる144,755社を、人数の帯ごとに切って数えてみると、少人数の会社は「若い会社が多い」「公式サイトを持たない会社が多い」「合同会社の比率が高い」という、それ自体は良くも悪くもない特徴を持っていました。この記事では、その実数と、少人数の会社を見るときに「人数の代わりに見るべきもの」を書きます。
従業員数そのものの調べ方は会社の従業員数を無料で調べる4つの方法、規模を複数の指標で見る手順は会社の規模の調べ方にまとめてあります。この記事は「少ないと分かったあと、それをどう受け止めるか」の話です。
「社員が少ない会社」は例外ではなく多数派
まず国の数字から確認します。中小企業庁が公表している「中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)」では、企業数の内訳は次のとおりでした。
- 中小企業 … 336.5万者(構成比99.7%)
- うち小規模事業者 … 285.3万者(構成比84.5%)
- 大企業 … 1万364者(構成比0.3%)
- 合計 … 337.5万者
出典は総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査」を中小企業庁が再編加工したもので、会社以外の法人と農林漁業は含まれていません。2014年時点の小規模事業者は325.2万者(85.1%)、2016年時点は304.8万者(84.9%)ですから、数は減っていても構成比は8割台半ばで安定しています。
大企業は0.3%。「社員が多い会社」のほうが、統計上ははるかに珍しい存在です。少人数の会社を「規模が小さいから」という理由だけで候補から外すのは、日本の会社の8割以上を見ないと決めているのと同じことになります。中小企業の法律上の線引きは中小企業の定義で条文ごとに確認できます。
うちのデータでも、従業員数の分かる会社の43.0%が20人以下
次に、うちのデータベースの実数です。国税庁の法人番号データを土台にした活動中の法人4,988,967社のうち、経済産業省gBizINFOから取り込んだ従業員数が分かるのは144,755社。この集団を人数で切ると、こう分布します。
- 5人以下 … 22,685社(15.7%)
- 6〜20人 … 39,559社(27.3%)
- 21〜50人 … 26,656社(18.4%)
- 51〜100人 … 13,432社(9.3%)
- 101〜300人 … 26,255社(18.1%)
- 301人以上 … 16,168社(11.2%)
20人以下で43.0%、50人以下で61.4%。中央値は28人です。従業員1人の会社が3,554社、10人以下で数えると41,510社(28.7%)あります。
ここで大事な注意があります。この144,755社は日本の会社全体より大きい側に偏っています。gBizINFOに従業員数が載るのは、補助金の交付や国の調達参加などで国に情報を出している会社が中心で、活動中の法人に対する割合は約2.9%にすぎません。国の統計で84.5%が小規模事業者なのに、うちの集団では20人以下が43.0%にとどまるのはそのためです。つまり実際の日本では、少人数の会社はうちの数字よりさらに多いと読んでください。
少人数の会社の「実際の特徴」を4つの実数で見る
少人数の会社が危ないかどうかを議論する前に、少人数の会社が実際にどういう集団なのかを、同じ144,755社で数えてみました。良い悪いではなく、「そういう傾向がある」という事実として並べます。
特徴1 — 5人以下の会社は「若い」。設立年の中央値は2012年
従業員数と設立年月日の両方が分かる17,020社で、人数の帯ごとに設立年を見ました。
- 5人以下(548社) … 設立年の中央値2012年。2016年以降の設立が39.1%、2005年以前が34.1%
- 6〜20人(2,128社) … 中央値1991年。2016年以降が11.8%、2005年以前が67.9%
- 21〜50人(2,706社) … 中央値1982年。2016年以降が5.7%、2005年以前が81.5%
- 51〜100人(1,823社) … 中央値1978年。2016年以降が4.7%、2005年以前が85.3%
- 101〜300人(4,739社) … 中央値1974年。2016年以降が3.3%、2005年以前が89.4%
- 301人以上(5,076社) … 中央値1972年。2016年以降が3.9%、2005年以前が88.8%
5人以下の会社の4割近くが、設立から10年経っていません。 一方で3社に1社は20年以上続いている会社です。つまり「5人以下」という帯の中に、創業したばかりの会社と、少人数のまま長く続いている会社が同居している。この2つは、応募先としても取引先としても性質がまったく違います。人数だけ見ると同じ「5人」に見えるのが、少人数の会社を人数で判断してはいけない最初の理由です。設立年の確認方法は会社の設立年の調べ方、設立年をどう読むかは会社の設立年から見る「老舗」「中堅」「新興」の目安にまとめています。
なお6〜20人になると設立年の中央値は一気に1991年まで下がります。「20人前後で30年続いている」は、日本の会社としてごく普通の姿です。
特徴2 — 公式サイトを持たない会社が多い。5人以下で把握できるのは14.3%
うちのデータベースで公式サイトのURLを把握できている割合を、人数の帯ごとに出しました。
- 5人以下 … 14.3%(3,242社)
- 6〜20人 … 18.2%(7,182社)
- 21〜50人 … 27.9%(7,431社)
- 51〜100人 … 35.1%(4,717社)
- 101〜300人 … 42.7%(11,224社)
- 301人以上 … 54.8%(8,868社)
301人以上でも半分強ですから、そもそもURLの把握率自体が高くないデータです。それでも5人以下と301人以上で4倍近い差があります。少人数の会社を検索して公式サイトが見つからないとき、それは「実態がない」のではなく「少人数の会社の多数派」であることのほうが、確率としてはずっと高い。営業実態のない「幽霊会社」を見分ける5つのサインで強調しているとおり、サイトが無い・電話が携帯・従業員数が非公開は、少人数の会社では同時に成立するのが普通で、1つのサインで黒と決めてはいけません。
特徴3 — 合同会社の比率が高い。5人以下で6.9%
法人の種類を人数の帯ごとに見ると、合同会社の比率がはっきり変わります。
- 5人以下 … 株式会社75.3%、有限会社12.6%、合同会社6.9%
- 6〜20人 … 株式会社72.6%、有限会社13.2%、合同会社2.6%
- 21〜50人 … 株式会社79.4%、有限会社8.7%、合同会社0.9%
- 301人以上 … 株式会社81.5%、有限会社0.3%、合同会社0.4%
合同会社は5人以下で6.9%、301人以上では0.4%。少人数の会社を見ていると合同会社に出会う確率が10倍以上高くなりますが、合同会社であること自体は不利の証拠ではありません。給与も社会保険も労働法も株式会社と法令上まったく同じです。この点は合同会社に入社するのは不利なのかで41万社の実データを使って書きました。有限会社が5人以下・6〜20人で1割を超えているのも、2006年の会社法施行前から続いている会社が少人数の帯に多いことの表れで、こちらは「長く続いている」側の証拠です。
特徴4 — インボイス登録率は5人以下でも88.4%
「少人数の会社は事業の実体が薄いのでは」という不安に対して、ひとつ数字を出しておきます。うちのデータベースで、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトに登録がある会社の割合を、人数の帯ごとに見ました。
- 5人以下 … 88.4%
- 6〜20人 … 87.3%
- 21〜50人 … 89.4%
- 51〜100人 … 91.1%
- 101〜300人 … 93.7%
- 301人以上 … 98.6%
5人以下でも9割近くがインボイス登録済みです。人数が減っても登録率はほとんど落ちません。インボイス登録は、課税事業者として税務署に届け出て番号を取っているという事実の確認になります(免税事業者は登録しないことも多いので、未登録が即マイナスというわけではありません)。取引先の登録番号から会社名を引く手順はインボイスの登録番号から会社名を逆引きする方法にあります。
「少人数だから消えやすい」はデータでは見えなかった
もうひとつ、よく聞く不安に「小さい会社は潰れやすい」があります。うちのデータベースで、gBizINFOに従業員数が載っている会社について、登記が閉鎖されている会社の割合を人数の帯ごとに出してみました。
- 5人以下 … 1.86%
- 6〜20人 … 1.82%
- 21〜50人 … 1.61%
- 51〜100人 … 1.98%
- 101〜300人 … 2.50%
- 301人以上 … 2.16%
- 全体 … 1.97%
5人以下の閉鎖率は全体より低く、101〜300人が最も高いという結果でした。ただしこれは慎重に読んでください。分母は「国に情報を出したことがある会社」に限られ、閉鎖には合併による閉鎖(大きい会社ほど起こる)も含まれます。「少人数だから潰れやすい」を支持する数字は、少なくともこの集団では出なかった、というところまでが言えることです。倒産と登記閉鎖は別の概念で、その違いは会社が解散・休眠しているか調べる方法で整理しています。
少人数の会社で「本当に確認すべき」3つのこと
ここまでで、人数そのものが判断材料として薄いことは伝わったと思います。では何を見るか。少人数の会社を応募先・取引先として見るとき、うちが実際に確認しているのは次の3点です。
1. 社会保険に入っているか(応募先なら最優先)
従業員を雇う法人には、人数にかかわらず厚生年金・健康保険の加入義務があります。5人だから入っていなくていい、という例外はありません(法人は1人でも強制適用)。日本年金機構の「適用事業所検索システム」に法人番号を入れれば、登録なし・無料で確認できます。少人数の会社で「出てこない」場合の読み方には注意点が5つあるので、応募先が社会保険に入っているか確認する方法を先に読んでください。
2. 設立年と、少人数のまま続いている年数
特徴1で見たとおり、5人以下の帯は「10年未満が4割・20年超が3分の1」に割れています。設立から20年以上経って5人なら、それはその規模で回る事業として成立している会社です。設立3年で5人なら、これから増えるのか、増やさない方針なのか、面接や商談で聞く価値があります。同じ「5人」でも、聞くべき質問が変わります。
3. 求人の出し方と、外に出ている情報の一貫性
少人数の会社は公式サイトを持たないことが多い(特徴2)ので、サイトの有無で判断せず、求人票・登記・電話番号・所在地が一貫しているかを見ます。求人票の給与が業種の相場から大きく外れていないか、募集人数が社員数に対して不自然に多くないか(社員5人で「10名募集」など)は、少人数の会社ほど効く確認です。求人票の読み方は求人票の見方、給与欄の分解は求人票の給与の見方にまとめています。取引先として見る場合のチェック項目は新規取引先の確認事項チェックリストに一覧化しました。
少人数の会社の労働環境は、公表データでは「残業が短く、勤続も短い」
参考までに、厚生労働省「しょくばらぼ」に正社員の平均継続勤務年数が載っている会社をうちのデータベースで人数の帯ごとに集計すると、こうなりました(活動中の法人で勤続年数の記載がある2,554社。帯分けはしょくばらぼ掲載の従業員数、残業は月平均所定外労働時間、有給は正社員の有給休暇取得日数。いずれも中央値)。
- 5人以下(145社) … 勤続3.9年、月の残業0.2時間、有給取得10.0日
- 6〜20人(537社) … 勤続11.0年、残業4.8時間、有給12.9日
- 21〜50人(776社) … 勤続12.0年、残業8.0時間、有給12.7日
- 51〜100人(524社) … 勤続12.6年、残業9.0時間、有給13.2日
- 101〜300人(484社) … 勤続12.8年、残業8.8時間、有給13.3日
- 301人以上(88社) … 勤続11.6年、残業15.8時間、有給11.5日
5人以下は勤続が極端に短く残業も極端に短い、という結果ですが、145社しかなく、しかも公表義務のない規模で自ら公表している会社です。特徴1のとおり若い会社が多いので、勤続が短いのは「辞める人が多い」のではなく「会社がまだ若い」ことの反映である可能性が高い。6〜20人になると勤続11.0年で、101〜300人の12.8年とそれほど変わりません。少人数の会社の残業や勤続を公表データで調べる手順と、公表率が規模で10倍違う話は会社の残業時間・有給消化率を外から調べる方法に、平均年齢が小さい会社ほど高く出る理由は会社の平均年齢の目安に書いています。
よくある質問
社員数が少ない会社は倒産しやすいですか
うちのデータでは、少人数ほど閉鎖率が高いという傾向は出ませんでした。 従業員数の分かる会社での登記閉鎖率は5人以下1.86%、101〜300人2.50%、全体1.97%です。ただし分母が国に情報を出したことのある会社に限られる点と、倒産と登記閉鎖は別の概念である点は割り引いてください。会社が続くかどうかは人数より、設立からの年数・社会保険の加入・事業の中身で見るほうが当たります。
社員5人の会社に応募するのは危険ですか
人数だけでは危険とも安全とも言えません。 5人以下の会社は設立10年未満が39.1%、20年超が34.1%と二極化しており、どちら側かで見るべき点が変わります。共通して最優先で確認するのは社会保険の加入(法人は人数にかかわらず強制適用)で、日本年金機構の適用事業所検索で無料で確認できます。次に設立年と求人票の一貫性を見てください。
社員数が少ない会社に労働組合がないのは問題ですか
問題ではなく、規模の反映です。 99人以下の会社で労働組合があるのは0.7%で、中小企業では無いほうが圧倒的に普通です。詳しくは会社に労働組合があるか調べる方法に書きました。少人数の会社で組合が見つからないことを、会社の姿勢の情報として読まないでください。
従業員数が「非公開」の会社は怪しいですか
怪しくありません。 そもそも従業員数が外から分かる会社は、活動中の法人4,988,967社のうち144,755社(約2.9%)しかありません。非公開が普通で、公開が例外です。従業員数を出していないことと実態がないことは別で、実態の確認は営業実態のない「幽霊会社」を見分ける5つのサインの手順で、複数のサインを重ねて判断してください。
社員数の平均はどのくらいですか
「平均」は規模の大きい会社に引っ張られるので、中央値で見てください。 うちのデータベースで従業員数の分かる144,755社の中央値は28人です。ただしこの集団は日本の会社全体より大きい側に偏っており、中小企業庁の集計では日本の企業の84.5%が小規模事業者(製造業等20人以下・商業サービス業5人以下)です。実態としては、日本の会社の「普通」は20人以下と考えるのが近い。
この記事の数字について
企業数337.5万者・中小企業336.5万者(99.7%)・小規模事業者285.3万者(84.5%)・大企業1万364者(0.3%)、および2014年・2016年時点の数値と小規模事業者の定義は、中小企業庁「中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)の集計結果」(令和5年12月13日公表。総務省「平成26年経済センサス‐基礎調査」、総務省・経済産業省「平成28年、令和3年経済センサス‐活動調査」の再編加工。会社以外の法人および農林漁業を含まない)から、2026年9月11日に確認しました。
活動中の法人4,988,967社、従業員数の分かる144,755社とその人数分布・中央値、設立年の帯別集計(17,020社)、公式サイトURLの把握率、法人種類の構成比、インボイス登録率、登記閉鎖率、しょくばらぼ掲載値(正社員の平均継続勤務年数・月平均所定外労働時間・正社員の有給休暇取得日数)の帯別中央値(2,554社。帯分けはしょくばらぼ掲載の従業員数)は、国税庁法人番号公表データと経済産業省gBizINFO全件データ(2026年6月14日取り込み)、国税庁適格請求書発行事業者公表サイト、厚生労働省しょくばらぼの各データをしょくばログのデータベースに取り込み、当社が2026年9月11日に独自に集計したものです。国や省庁が公表している統計ではありません。
この集計には偏りがあります。gBizINFOに従業員数が載る会社は国に情報を出したことのある会社が中心で、活動中の法人全体より規模の大きい側に寄っています。設立年が分かる会社はさらに少なく、5人以下の帯は548社です。しょくばらぼの数値は公表義務のない規模で自ら公表した会社に限られます。登記閉鎖率の分母には閉鎖済みの会社を含め、閉鎖には合併によるものも含まれます。人数の帯の割り当てはgBizINFO記載の従業員数によるもので、正社員・パートの区別はしていません。
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