✍ 古家あきら | 2026-09-08 更新

会社に労働組合があるか調べる方法 — 名簿は公開されていない、では何を見るか

先に結論です。日本の労働組合を一覧できる名簿は、どこにも公開されていません。 厚生労働省が毎年出している労働組合基礎調査は「何組合あるか」「何人いるか」の統計であって、組合の名前が並んだリストではありません。だから「この会社に組合があるか」を名簿で確認する、という方法は最初から存在しません。

そのうえで、外から当たれるルートは4つあります。①法人登記した組合を法人番号で引く ②上場企業なら有価証券報告書の「労働組合の状況」を読む ③連合などの上部団体が公開している加盟組合リストを引く ④面接で聞く。 この4つで届く範囲と、届かない範囲がはっきり分かれます。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、労働組合まわりの照会をいただくことがあります。うちは国税庁の法人番号公表データを土台に全国約579万社ぶんの登記情報を持っていますが、「この会社に組合があるか」という項目は1件も持っていません。持っていないというより、そういうデータが公表される仕組みが無いのです。

ただし、ひとつ抜け道があります。労働組合の一部は法人として登記されていて、そこには法人番号が付いている。 つまり、うちのデータベースに載っている。この記事では、その「載っている組合」が実際にどのくらいあり、どういう名前で、どう検索すればたどり着けるのかを、実際に集計して確かめました。

その前に:会社に労働組合がある確率は、規模でまったく違う

調べ方に入る前に、期待値をそろえておきます。ここを飛ばすと「見つからない」の意味を読み違えます。

厚生労働省の「令和7(2025)年労働組合基礎調査の概況」(令和7年12月24日公表・2025年6月30日現在)によると、単一労働組合の数は22,244組合、労働組合員数は992万7千人、推定組織率は16.0%でした。前年より0.1ポイント下がって、過去最低です。

ここまでは、よくニュースになる数字です。実務で効くのはその先の企業規模別です。民営企業の推定組織率は、こうなっています。

99人以下の会社では、0.7%です。 千社に7社。つまり中小企業では、労働組合が無いほうが圧倒的に普通です。応募先に組合が見つからなかったとき、それは会社の姿勢を示す情報ではなく、単に会社の規模を示している可能性のほうがずっと高い。この記事の一番大事なところは、たぶんここです。日本の会社の大半が少人数であることは中小企業の定義で確定させたとおりで、労働組合はその大半の側にはほとんど存在しません。

産業でも大きく違います。同じ調査の産業別推定組織率(単位労働組合)から抜き出すと、

なお推定組織率のピークは昭和24(1949)年の55.8%、組合員数のピークは平成6(1994)年の12,698,847人(単一労働組合)。そこからほぼ一貫して下がってきた末の16.0%です。だから「昔からある会社なのに組合が無い」という状況は、珍しくもなんともありません。

ルート①:法人番号で引く — 登記した組合だけが見える

いちばん手が届きやすいのがここです。ただし見えるのは一部だという前提込みで使ってください。

なぜ一部なのか(労働組合法11条)

労働組合法第11条は、こう定めています。

「この法律の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受けた労働組合は、その主たる事務所の所在地において登記することによつて法人となる。」

読みどころは「登記することによつて法人となる」です。法人になるかどうかは、組合の任意です。 労働委員会の資格審査を受けて証明をもらい、そのうえで登記した組合だけが法人になります。逆に言えば、多くの組合は法人格を持たない任意団体のまま活動していて、その場合は登記もされず、法人番号も付きません。

だから法人番号のデータで探しても、出てくるのは「登記まで済ませた組合」だけです。これが、このルートの上限です。

実際にいくつあるのか

うちのデータベース(国税庁 法人番号公表データ由来、2026年9月8日時点)で数えました。

厚労省調査の単位労働組合は45,100組合(2025年6月30日現在)ですから、法人番号で見えるのはそのうちの一部にとどまります。感覚としては「1割強しか可視化されていない」くらいで見ておくのが安全です。

所在地の分布はこうでした(活動中5,741件)。

いちばん少ないのは山梨県・島根県・鳥取県の各17件です。

「会社名+労働組合」という名前が、検索の入口になる

ここが今回いちばん面白かったところです。

活動中の5,741件のうち、名称が「〜労働組合」で終わるものは4,535件ありました。この4,535件について、末尾の「労働組合」を外した部分が実在する会社の商号と完全一致するかを照合したところ、

3件に1件は、実在する会社の名前+「労働組合」という名前で、その会社と同じ都道府県に登記されている。 つまり会社名で検索すれば、組合のほうがヒットするということです。

実際にやってみます。しょくばログの検索窓に「北海道電力」と入れると、6件出ます。

会社本体と一緒に、労働組合が並んで出てきます。国税庁の法人番号公表サイトでも同じことができます。手順は会社名から法人番号を検索する方法と同じで、会社名を入れるだけです。

この方法の落とし穴:同名の別会社

ひとつ、実例で注意点を出しておきます。「永和製作所」で検索すると2件出ます。

所在地がまったく違います。 商号が同じ会社は日本中にあるので、名前が一致しただけでは「この会社の組合」とは言えません。必ず所在地を照合してください。 先ほど「完全一致1,839件」と「都道府県まで一致1,486件」を分けて出したのは、この差が353件ぶん実在するからです。

「ユニオン」を名乗る組合もある

「労働組合」という語を名前に含まない組合もあります。うちのデータで、名称に「ユニオン」を含み「労働組合」を含まず、法人種別が設立登記法人またはその他(人格のない社団等)のものは363件ありました。会社名だけで当たって空振りしたら、「◯◯ユニオン」「◯◯労組」でも引いてみる価値があります。

そして、いちばん大事な但し書きです。ここで見つからないことは、組合が無いことの証明にはなりません。 法人登記していない組合のほうが多数派だからです。

ルート②:上場企業なら、有価証券報告書に欄がある

相手が上場企業なら、確度の高い情報が無料で取れます。有価証券報告書の「第1 企業の概況 5 従業員の状況」です。ここに「(3) 労働組合の状況」という項目が置かれるのが実務の通例で、組合名・組合員数・加盟している上部団体まで書かれます。EDINETで登録なしに読めます。

ただし、条文の書きぶりは知っておいたほうがいいです。企業内容等の開示に関する内閣府令の第二号様式 記載上の注意(29)には、こうあります(有価証券報告書の第三号様式(9)はこれを準用します)。

「労働組合との間に特記すべき事項等があった場合にはその旨を簡潔に記載すること。」

つまり法令が求めているのは「特記すべき事項があったとき」の記載であって、組合の有無そのものを毎年書けとは言っていません。多くの会社が「(3) 労働組合の状況」として書いているのは実務の慣行です。ですから、

という非対称な読み方になります。相手が上場しているかどうかの判定は会社が上場しているか確認する方法にまとめました。非上場企業には有価証券報告書そのものが無いので、このルートは使えません。

ルート③:上部団体の加盟組合リストを引く

組合の側が公開しているルートです。日本労働組合総連合会(連合)は「連合加盟労働組合リスト」という検索ページを持っていて、組合名の一部から加盟組合を引けます。

実際に「北海道電力」で引くと、こう返ってきます。

加盟している産別(構成組織)まで分かります。 構成組織名から一覧を出すこともできます。

このルートにも上限が2つあります。ひとつは、リストのページ自身が「リストに掲載していない加盟労働組合もあります」と明記していること。連合に加盟していても載っていない組合があります。

もうひとつはカバー範囲です。令和7年労働組合基礎調査によると、連合に加盟している組合員は682万2千人で、全労働組合員992万7千人の68.7%。残りの3割は連合以外です(全労連43万5千人、全労協6万7千人ほか)。連合のリストで出てこない=組合が無い、ではありません。

ルート④:求人票には書いていない。だから聞くしかない

求人票を隅から隅まで読んでも、労働組合の有無は分かりません。これは印象ではなく、様式の問題です。

ハローワークが公開している「求人申込書の書き方」(全7ページ)を機械的に検索したところ、「組合」という語は1度も出てきませんでした。 求人申込書に労働組合の欄が無いのだから、そこから作られる求人票にも載りようがありません。求人票から読み取れる/読み取れないの線引きは求人票の見方に整理しています。

となると、残る現実的な手段は面接で聞くことです。角が立ちにくい聞き方としては、

労働条件の交渉相手を探す文脈ではなく、社内のコミュニケーションの形を知りたいという文脈で置くと、ふつうの質問として受け取られます。面接前に確認しておくことの全体像は面接前の会社研究チェックリストにまとめました。

入社が決まった後なら、確実に分かる手がかりがあります。労働協約の有無、就業規則で組合に触れているか、給与明細に組合費の控除があるか。この3つはほぼ確定情報です。

見つからなかったときに、代わりに見るもの

4つのルートを回っても分からない会社のほうが多数派です。そのとき「組合が無いから不安な会社だ」と結論を出すのは、根拠として弱すぎます。99人以下の会社では0.7%しか組合が無いのですから、組合の有無は会社の良し悪しをほとんど分けていません。

代わりに、外から確認できて意味のある指標に振り替えたほうが実用的です。

ひとつ余談を。法人番号のデータで「〜健康保険組合」を数えると1,584件ありました。自前の健康保険組合を持っているのは、単独なら常時700人以上(複数企業の共同設立なら合算3,000人以上)が目安になる世界です。会社名で検索して健保組合が一緒に出てきたら、それだけで相当の規模の会社だと分かります。会社の規模を外から測る話は会社の規模を調べる方法に詳しく書きました。

よくある質問

Q. 全国の労働組合の名簿は、どこかにありませんか

公的にも民間にも、網羅的な名簿は公開されていません。 厚生労働省の労働組合基礎調査は都道府県を通じて全国の組合から回答を集めていますが、公表されるのは組合数・組合員数・産業別・規模別といった統計表だけで、個々の組合名は表章されません。法人登記した組合であれば法人番号のデータに現れますが、それは全体の一部です。名簿という形で全国の組合を一覧できる一次資料は、公表されていないと理解してください。

Q. 法人番号で検索して出てこなければ、組合が無いということですか

言えません。 労働組合法第11条のとおり、法人になるかどうかは組合の任意です。登記していない組合には法人番号が付かないので、データに現れません。厚労省調査の単位労働組合45,100組合に対し、法人番号のデータで名称に「労働組合」を含む活動中の法人は5,741件しかありません。「出てきたら、ある」は言えますが、「出てこないから、ない」は言えない、という非対称なツールです。

Q. 労働組合が無い会社は避けたほうがいいですか

規模を無視して判断材料にはできません。 民営企業の推定組織率は99人以下で0.7%、100〜999人で9.9%です。中小企業に応募するなら、組合が無いのが標準です。一方、1,000人以上の会社で組合の形跡がまったく無いなら、38.7%という水準からは外れているので、労使のコミュニケーションがどういう形で担保されているのかを面接で確認する価値はあります。「有無」ではなく「規模に対して自然かどうか」で見るほうが実用的です。

Q. 会社に組合が無い場合、個人で入れる組合はありますか

あります。 会社の枠を越えて個人単位で加入できる労働組合(合同労組・ユニオンと呼ばれる形態)があり、連合の構成組織にも全国ユニオンが入っています。連合加盟労働組合リストや、各地域のユニオンのサイトから探せます。ただし、加入や相談の判断は個別事情によるので、この記事では「そういう選択肢が制度として存在する」というところまでにとどめます。

Q. 面接で労働組合について聞くと、印象が悪くなりませんか

聞き方によります。 労働条件を争う前提の質問に聞こえると身構えられますが、「社内のコミュニケーションや、意見を上げる仕組みがどうなっているか」という文脈なら、ふつうの質問です。そもそも中小企業では組合が無いのが標準なので、「無いんですね」で終わる場面が大半になります。むしろ無い会社で、代わりに何があるのか(社内アンケート、面談、労使協議の場)を聞くほうが、実態が見えます。

Q. 労働組合の名前に会社名が入っていないこともありますか

あります。 産業別組合の支部として組織されている場合や、地域のユニオンに加入している場合は、会社名が組合名に入りません。うちのデータでも、名称に「支部」を含む労働組合は630件、「労働組合連合会」を含むものが312件ありました。会社名で引くルートが効くのは、あくまで企業別組合が独立して法人登記しているケースです。

まとめ

しょくばログでは全国約579万社の会社情報を無料で公開しています。会社名で検索すると、その会社と関連する法人(子会社・健康保険組合・労働組合・生活協同組合など)が並んで表示されるので、応募先や取引先を調べる最初の一歩にお使いください。

参照した一次資料

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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