✍ 古家あきら | 2026-10-08 更新

求人票と実際の労働条件が違うときの見方 — 会社サイトの募集要項1万1,950社で、仕事内容・勤務地・時間・休日・給与の5つを全部書いているのは37.4%、「変更の範囲」は1.4%だった

先に結論です。求人票と実際の条件が違うと感じたとき、まず確かめたいのは「求人票に書いてあったのに違う」のか、「そもそも書いていなかった」のかです。 会社サイトの募集要項を数えてみると、後者のほうがずっと多い状態でした。

しょくばログという会社データベースを運営していると、会社サイトの「募集要項」を大量に読むことになります。保存している会社サイト31,159社のうち、「募集要項」という見出しがあるのは11,950社(38.4%)。その募集要項の中身を、職業安定法が求人のときに明示を求めている項目に照らして数えると、こうなりました。

書いていない項目は、面接や内定のときに初めて具体的になります。そこで「聞いていた話と違う」が起きやすい、というのがこの記事の見立てです。

求人のときに明示が必要な労働条件

厚生労働省のリーフレット「企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!」(2024年4月1日施行の改正職業安定法施行規則の案内)には、求人票や募集要項で「最低限明示しなければならない労働条件」として次の項目が並んでいます。

同じリーフレットには、ハローワークへの求人申し込みだけでなく自社ホームページでの募集でも、求人票や募集要項に少なくともこれらを明示しなければならないと書かれています。会社サイトの募集要項も対象、ということです。

ただし、求人広告のスペースが足りないなどやむを得ない場合は「詳細は面談時にお伝えします」と付けて、一部を後で明示することも認められています。その場合でも、原則として面接などで最初に接触する時点までに、すべての労働条件を明示することになっています。

求人票全体の読み方は求人票の見方にまとめています。この記事は、その中でも「書いてある条件と実際が違う」場面に絞った話です。

会社サイトの募集要項は、どこまで書いているか

しょくばログが保存している会社サイトで、「募集要項」の見出しから後ろ4,000字の範囲に、各項目にあたる言葉があるかを数えました。母数は募集要項がある11,950社です。

上の5つ、仕事内容・休日・時間・給与・勤務地は、半分以上の会社が書いています。一方、試用期間から下は少数派です。試用期間・契約期間・変更の範囲は、どれも入社してから「そんな話は聞いていない」になりやすい項目です。

項目の数で見ると、明示が必要な10項目(業務内容・就業場所・就業時間・休日・賃金・試用期間・加入保険・契約期間・時間外労働・受動喫煙対策)のうち、8項目以上に触れている募集要項は1,353社(11.3%)。10項目すべてにあたる言葉があったのは98社(0.8%)でした。

この数え方は言葉があるかどうかだけを見ています。「休日」と書いてあっても日数まで書いているとは限りませんし、逆に別ページの求人詳細に書いている会社もあります。それでも、「会社サイトの募集要項だけを見て応募すると、確認していない項目がかなり残る」ことは読み取れます。

食い違いが起きやすい5つの項目

給与:固定残業代の「時間数」

募集要項で「固定残業」「みなし残業」「定額残業」に触れているのは842社(7.0%)でした。そのうち、近くに「○時間」と時間数を書いているのは399社(47.4%)。半分強は時間数が見当たりません。

厚労省のリーフレットでは、固定残業代を採る場合は「基本給の額」「何時間分の時間外手当としていくらか」「それを超えた分は追加で払うこと」を書く例が示されています。時間数が分からないと、月給の中にどれだけ残業代が含まれているかが分かりません。入社後に「基本給が思っていたより低い」と気づく典型です。給与欄の読み方は求人票の給与の見方で詳しく扱っています。

雇用形態と契約期間

「正社員」と書いてあっても、契約期間の欄がない求人は珍しくありません。今回の数えでは、契約期間に触れている募集要項は4.0%しかありませんでした。期間の定めがある契約なら、更新の有無や上限も明示が必要な項目です。雇用形態欄の見分け方は求人の「正社員」が本当に正社員か見分ける方法にまとめています。

試用期間中の条件

試用期間に触れている募集要項は19.6%です。試用期間があるか、何か月か、その間の給与が本採用後と同じかは、入社直後の手取りに直結します。厚労省の記載例でも「月給25万円(ただし、試用期間中は月給20万円)」のように、試用期間中の賃金を分けて書く形が示されています。詳しくは求人票の試用期間の見方で書きました。

勤務地と仕事内容の「変更の範囲」

2024年4月から、業務内容と就業場所は「雇い入れ直後」に加えて「変更の範囲」も明示する項目になりました。リーフレットの説明では、変更の範囲とは将来の配置転換などの見込みも含めた、契約期間中に変わりうる範囲のことです。

会社サイトの募集要項でこの言葉が見つかったのは1.4%でした。転勤や職種変更の可能性は、求人票の「勤務地」欄だけでは分からないことが多いということです。転勤の読み方は転勤があるか応募前に調べる方法を参照してください。

休日と時間外労働

休日に触れている募集要項は67.6%と多いのですが、「土日祝」「シフト制」など書き方はさまざまです。年間休日の日数まで書いているかは別の話で、会社の年間休日を調べる方法で平均値とあわせて扱っています。時間外労働(残業)に触れているのは40.3%で、残りの6割は「残業があるのか、どれくらいか」が募集要項からは読めません。

違うと感じたときに確かめる順番

1. 手元に何が残っているかを集める

求人票や募集要項の画面、面接で受け取った資料、内定通知、労働条件通知書を並べます。会社サイトの募集要項は書き換えられることがあるので、応募した時点の画面を保存しておくと後で比べられます。厚労省のリーフレットには、企業が募集情報を出す場合は掲載した時点を明示するなどして、正確かつ最新の内容に保つ義務がある、とも書かれています。

2. 「書いてあって違う」か「書いていなかった」かを分ける

求人票に書いてあった条件が変わったのなら、リーフレットでは、面接などの過程で最初に明示した条件が変わる場合は、企業はその変更内容を明示する必要があるとされています。変更点が書面で示されているかを確かめます。

求人票に書いていなかった項目なら、まず会社に「この点はどうなっていますか」と聞くのが先です。上の集計どおり、書かれていない項目は珍しくありません。

3. 契約前なら、労働条件通知書で確かめる

労働契約を結ぶときは、労働基準法に基づいて労働条件通知書などで条件を明示することになっています。こちらも2024年4月から「変更の範囲」などが追加されています。求人票と通知書を並べて、違うところに印をつけてから質問すると話が早く進みます。

4. 自分で判断できないときの相談先

法律上どうなるか、何を請求できるかは個別の事情で変わるため、この記事では判断しません。ハローワークの求人であれば紹介を受けたハローワーク、労働条件全般は各都道府県労働局の総合労働相談コーナーや労働基準監督署が相談先です。労基法違反で公表された会社があるかは労働基準法違反で社名を公表された会社の調べ方で確かめられます。

応募前にしておくと、食い違いに気づきやすいこと

求人票は「書いてあること」より「書いていないこと」で差がつく、というのが募集要項を1万件以上数えてみての実感です。書いていない項目は、悪意ではなく単に書き慣れていないだけのことも多いはずです。ただ、どちらにしても応募する側が先に聞いておけば、入社後の食い違いはかなり減らせます。

よくある質問

求人票と違う条件で内定を出されました。違法ですか?

この記事では個別の違法性は判断しません。厚労省のリーフレットでは、面接などの過程で最初に明示した労働条件が変わる場合は、企業がその変更内容を明示する必要があるとされています。変更点が書面で示されているかを確かめ、判断に迷う場合は総合労働相談コーナーや労働基準監督署に相談してください。

会社のホームページの募集要項も、明示のルールの対象ですか?

厚労省のリーフレットには、ハローワークへの求人申し込みや求人広告の掲載とあわせて、自社ホームページでの募集を行う場合も、求人票や募集要項で少なくとも定められた労働条件を明示しなければならないと書かれています。

募集要項に「詳細は面接で」と書いてあるのは問題ないのですか?

スペースが足りないなどやむを得ない場合は、「詳細は面談時にお伝えします」と付けて一部を後で明示することも認められています。ただし原則として、面接など最初に接触する時点までにすべての労働条件を明示することになっています。面接で書面をもらえるか確認しておくと安心です。

「変更の範囲」が書かれていない求人は、古い求人ということですか?

そうとは限りません。今回の数えは「変更の範囲」という言葉の有無だけを見ており、別の言い方で書いている会社や、求人詳細を別ページに置いている会社は拾えていません。書かれていない場合は、転勤や職種変更の可能性を面接で直接聞くのが確実です。

しょくばログで、会社の労働条件を調べられますか?

しょくばログには会社サイトから取得した求人の情報がある会社もありますが、労働条件そのものを保証するものではありません。最新で正確な条件は、応募先の求人票・労働条件通知書で確認してください。会社の実在や設立年などの基本情報を確かめる用途に使っていただくのが向いています。

まとめ

数字について

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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