✍ 古家あきら | 2026-09-15 更新
求人を出していない会社に応募できるか — 会社サイト32,838社を数えると「募集要項がある会社」は半分以下だった
先に結論です。求人を出していない会社にも応募はできます。 会社が求人媒体を使わずに自社で人を募集することを禁じる法律はなく、応募を受けるかどうかは会社の判断です。断られることはありますが、応募すること自体に問題はありません。
ただ、「求人を出していない」と思っている会社の多くは、実は「求人サイトに出していない」だけです。しょくばログという全国の会社データベースを運営していて、会社サイトの採用ページを32,838社分保存してあるのですが、その中で募集要項(募集職種・募集内容)を載せている会社は14,948社、45.5%でした。残りの半分以上は、採用ページはあっても募集要項が無いか、そもそも採用ページが無い会社です。一方で「現在募集しておりません」「募集は終了しました」とはっきり書いている会社は1,754社、5.3%しかありません。「募集していない」と宣言している会社は20社に1社で、残りは「書いていない」だけ、これがこの記事の出発点です。
この記事では、①なぜ求人が見つからない会社が多いのか(数字で)、②求人を出していないように見える会社の求人を見つける手順、③本当に出していない会社に直接応募する手順、④応募前に必ず確認する3点、の順に整理します。
「求人を出していない会社」は多数派 — 会社サイト32,838社を数えて分かったこと
まず、読者が「求人が見つからない」と感じる理由を、うちのデータで分解します。
うちのデータベースは国税庁の法人番号公表データが土台で、活動中の法人が5,028,697社あります。このうち、経済産業省のgBizINFOに公式サイトのURLが登録されている会社は43,562社、割合にして1%足らずです。もちろんURL未登録でもサイトを持つ会社は多いのですが、「公的データから会社サイトにたどり着ける会社」がこの程度しかない、というのが出発点になります。
そのURLをもとに会社サイトを取得し、トップページから「採用」「募集」「recruit」などのリンクを最大2階層たどって採用系ページの本文を保存したのが32,838社分です。この本文を語で数えました。
- 採用情報・採用サイト・RECRUITなど「採用ページがある」と分かる語がある会社:23,926社(72.9%)
- 募集要項・募集職種・募集内容がある会社:14,948社(45.5%)
- エントリーフォーム・応募フォーム・「応募はこちら」がある会社:9,328社(28.4%)
- 履歴書の郵送・メール・電話での応募を案内している会社:726社(2.2%)
- 「現在募集しておりません」「募集は終了しました」「募集停止」と明記している会社:1,754社(5.3%)。内訳は「現在募集していない」1,041社、「終了・締切」599社、「停止」114社
- 「随時募集」「通年採用」と書いている会社:1,538社(4.7%)
- マイナビ・リクナビ・Indeed・エン転職・dodaなど求人媒体名が出てくる会社:3,955社(12.0%)
- ハローワークに触れている会社:1,428社(4.3%)
- 採用の語も、募集要項も、「応募」の語もまったく出てこない会社:7,499社(22.8%)
ここから読めることは3つあります。
1つ目は、採用ページはあっても募集要項が無い会社が多いことです。採用の語がある会社が72.9%なのに募集要項があるのは45.5%。差の約27ポイントは「採用ページはあるが、社員インタビューや理念だけで、何を募集しているか書いていない」会社です。読者から見れば「求人を出していない」ように見えます。
2つ目は、募集していないと宣言する会社はごく少ないことです。5.3%です。求人が見つからない会社の大半は「募集を止めた」のではなく、単に募集要項を書いていない、あるいは求人媒体に載せていないだけです。
3つ目は、求人媒体名が出てくる会社は12.0%にとどまることです。会社サイトから求人サイトへ誘導している会社は8社に1社。裏返すと、求人サイトで検索して出てこないからといって、その会社が採用していないとは言えません。
なお、この32,838社にはサンプルの偏りがあります。gBizINFOにURLを登録している会社が母集団なので、従業員100人以上の会社が15,734社(47.9%)と、全国の会社の規模分布より大きい会社に寄っています。「全国の会社の45.5%に募集要項がある」と読まないでください。実態はもっと低いはずです。
規模が小さい会社ほど「募集要項が無い」
同じデータを従業員規模で分けると、傾向がはっきり出ます(従業員数はgBizINFO由来です)。
- 1〜9人(4,263社):募集要項あり 21.2%/応募フォームあり 13.1%
- 10〜29人(5,816社):募集要項あり 39.2%/応募フォームあり 21.8%
- 30〜49人(3,340社):募集要項あり 47.5%/応募フォームあり 27.2%
- 50〜99人(3,655社):募集要項あり 51.1%/応募フォームあり 32.3%
- 100〜299人(8,541社):募集要項あり 52.7%/応募フォームあり 34.8%
- 300人以上(7,193社):募集要項あり 52.9%/応募フォームあり 40.1%
1〜9人の会社では、募集要項がある会社が5社に1社、応募フォームがある会社は8社に1社です。小さい会社に応募したいなら、「求人が見つからない」のは普通の状態だと思ってください。しかもこれは公式サイトが公的データに載っている、比較的きちんとした小規模会社の数字です。
業種によって「募集していない」と書く率が違う
業種別(日本標準産業分類の大分類)で見ると、募集要項の記載率と「現在募集していない」の明記率にはこんな差がありました。
- 建設業(3,593社):募集要項あり 53.9%/募集していない明記 2.9%/随時募集 6.1%
- 情報通信業(2,237社):募集要項あり 53.1%/募集していない明記 6.5%/随時募集 4.6%
- 運輸業・郵便業(1,033社):募集要項あり 52.5%/募集していない明記 6.3%/随時募集 3.7%
- 製造業(6,905社):募集要項あり 48.0%/募集していない明記 5.5%/随時募集 3.6%
- 医療・福祉(3,473社):募集要項あり 45.1%/募集していない明記 6.9%/随時募集 8.4%
- 学術研究・専門技術サービス業(1,485社):募集要項あり 44.4%/募集していない明記 5.2%/随時募集 4.9%
- 教育・学習支援業(346社):募集要項あり 44.2%/募集していない明記 13.0%/随時募集 7.2%
- 卸売業・小売業(1,569社):募集要項あり 42.1%/募集していない明記 5.4%/随時募集 4.2%
- 宿泊業・飲食サービス業(855社):募集要項あり 32.5%/募集していない明記 2.9%/随時募集 2.9%
建設業と医療・福祉は「随時募集」が多く、教育は「現在募集していない」が13.0%と突出しています。教育は年度単位で採用が動くので、時期を外すと「募集終了」の表示が残りやすい、と読んでいます。宿泊・飲食は募集要項の記載率が最も低く、店舗ごとの張り紙や求人サイトに募集が散っていて、本社サイトに集約されていない業種です。この業種で「サイトに求人が無い」は、募集していない根拠にはまったくなりません。
「出していない」と決める前に — 求人が見つかる場所は4つある
求人サイトで出てこない会社の求人は、次の4か所で見つかることがあります。手軽な順に書きます。
1. 会社サイトの採用ページ(求人サイトには出していない求人)
上で見たとおり、募集要項をサイトに載せている会社は45.5%あります。求人サイトに出ていなくても、会社サイトには出ているケースが一番多い見落としです。採用ページは「採用情報」「リクルート」「RECRUIT」のメニュー名で、トップページの上部か最下部にあることがほとんどです。
見つけたら、募集要項に雇用形態・就業場所・賃金・労働時間が書いてあるかを見てください。職業安定法第5条の3は、会社が労働者を募集するときに業務内容・賃金・労働時間などの労働条件を明示することを求めています。会社サイトの募集要項も「募集」なのでこの対象で、まともな会社ならこれらの項目が揃っています。要項の読み方は求人票の見方と同じです。
2. ハローワーク求人(会社サイトに書いていない求人)
うちのデータでハローワークに触れている会社は4.3%しかありませんが、これは「サイトに書いていない」だけで、ハローワークに求人を出している会社はずっと多いです。ハローワークインターネットサービスは、会社名で求人を検索できます。求人サイトにもサイトにも求人が無い小さな会社が、ハローワークにだけ出しているケースは珍しくありません。
一つ知っておくべきことがあります。ハローワーク求人の有効期間は、受理日の翌々月の末日までです(例:4月15日受理なら6月30日まで)。期限が切れると求人は検索に出なくなりますが、会社が更新の手続きをすれば継続されます。つまり「先月あった求人が消えた」は、採用が決まったのではなく、有効期限切れの可能性があります。求人が消える理由の全体は会社の求人が突然消える理由と対処法で整理しています。
3. 求人サイトの「掲載終了」ページと、店舗・支店ごとの求人
求人サイトで会社名を検索すると、「掲載終了」の求人が残っていることがあります。掲載終了でも、その会社が過去にどの職種を・どの条件で募集したかは読めます。次に募集が出るときも、ほぼ同じ条件です。応募前の材料として十分使えます。
もう一つは、店舗・支店・営業所の名前で出ている求人です。飲食・小売・介護・運送は、本社名ではなく「◯◯店」「◯◯営業所」の名前で求人が出ます。会社名で検索して出てこなくても、拠点名で出ていることがあります。拠点の一覧は会社サイトの「店舗一覧」「事業所一覧」か、うちのデータベースの会社ページ(所在地)で当たれます。
4. 会社の「随時募集」「通年採用」の一文
募集要項が無くても、採用ページに「随時募集しています」「通年で採用しています」と一文だけ書いてある会社が1,538社(4.7%)ありました。これは「決まった求人は無いが、良い人が来れば会う」という意思表示です。この一文がある会社は、直接応募の成功率が高い会社です。
本当に求人を出していない会社に直接応募する手順
ここまで探しても求人が無ければ、会社は本当に募集を出していません。それでも応募はできます。やるべきことは「求人票の代わりを自分で埋める」ことです。
応募先の窓口を決める
うちのデータでは、応募フォームがある会社は28.4%、郵送・メール・電話での応募方法を案内している会社は2.2%でした。残りの約7割の会社には、応募の窓口がありません。この場合は、会社の代表電話か、問い合わせフォーム、または会社概要に載っている代表メールアドレスから連絡します。電話番号や問い合わせ先の探し方は会社の電話番号・問い合わせ先を調べる方法にまとめてあります。
採用担当の名前が分からなければ「採用ご担当者様」で構いません。従業員10人以下の会社なら、社長が直接読むことが多いです。
連絡文の骨子(求人票の空欄を自分で埋める)
求人が出ていない会社に応募するときは、相手が求人票を書いていないので、こちらが「何の職種で」「いつから」「どんな条件で」を先に出す必要があります。長く書く必要はなく、次の6点で足ります。
- 件名:「◯◯職への応募のご相談(氏名)」のように、応募であることを件名で分かるようにする
- 応募したい職種と理由:会社のどの事業・どの拠点で、何をしたいか。会社サイトの事業内容を読んだうえで、1〜2文で具体的に
- 経歴の要点:職歴と、応募職種に関係する経験を3行以内
- 希望の働き方:雇用形態(正社員・パート)、勤務開始できる時期、通勤圏
- 募集していないことを承知している一文:「現在募集をされていないことは承知のうえで、今後の採用予定があればご検討いただきたく連絡しました」
- 履歴書・職務経歴書を送れること:添付するか、指定の方法で送る旨
「募集していないのは承知している」の一文は必ず入れてください。これが無いと、担当者は「求人を見て応募してきたが、うちは出していない、どこで見たのか」と混乱し、返信より先に自社の求人が勝手に出回っていないかの確認を始めます。求人サイトに「架空の求人」が出回ることは実際にあり、会社側も警戒しています(求人票が「架空」だと見分ける方法)。
断られても「時期を変える」
直接応募の返事が「現在は募集していません」だったとしても、それは「今は」です。ハローワーク求人の有効期間が2か月強であることからも分かるとおり、会社の採用は数か月単位で動きます。「採用の予定が出たらご連絡いただけないか」と一文添えて、3〜6か月後にもう一度連絡すれば、そのときに求人が出ていることは普通にあります。上の業種別データで「現在募集していない」の明記率が13.0%だった教育業のように、時期で募集の有無が大きく変わる業種は特にそうです。
応募する前に必ず確認する3点 — 求人票が無い分、自分で確かめる
求人票がある応募と違い、直接応募では会社の基本情報を自分で確認する必要があります。最低限の3点です。
1. 会社が実在し、閉鎖・解散していないか
法人番号公表サイトかうちのデータベースで、会社名と所在地が登記どおりか、閉鎖されていないかを確認します。会社サイトが残っていても登記が閉鎖されている会社は実在します。うちのデータベースでは活動中の法人が5,028,697社で、登記閉鎖された法人は別に記録されています。確認の手順は会社の実在・倒産を確認する方法にあります。
2. 社会保険(厚生年金)の適用事業所か
正社員として応募するなら、その会社が厚生年金の適用事業所かどうかは、日本年金機構の「厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システム」で会社名から調べられます。法人は従業員数にかかわらず強制適用なので、ここに出てこない法人は、そもそも社会保険に入っていない可能性があります。求人票が無い応募では、この確認を飛ばしがちです。手順は会社が社会保険(厚生年金)に加入しているか確認する方法で書きました。
3. 労働条件を書面でもらえるか
直接応募で採用が決まったとき、会社は労働基準法第15条により、賃金・労働時間などの労働条件を書面(労働条件通知書)で明示する義務があります。求人票が無いからといって、この義務が無くなるわけではありません。内定の段階で「労働条件通知書をいただけますか」と聞いて、渋る会社は避けてください。面接前に確認しておく項目の全体は面接前にやる会社研究チェックリストにまとめてあります。
よくある質問
求人を出していない会社に応募するのは失礼ではありませんか
失礼ではありません。会社が自社サイトや紹介で人を採ること(直接募集)は職業安定法で認められており、応募を受けるかどうかは会社が判断します。うちのデータでも「随時募集」「通年採用」と書いて直接の応募を待っている会社が1,538社ありました。失礼になるのは、募集していないことを知らないふりをして「求人を見ました」と書くことです。承知のうえで連絡していると明記してください。
求人サイトに載っていない会社は、採用する気が無いのですか
そうとは限りません。会社サイト32,838社のうち、求人媒体名に触れている会社は12.0%です。大半の会社は求人サイトを常時使っているわけではなく、欠員が出たときにハローワークや紹介、自社サイトで補充しています。「現在募集していない」と明記している会社は5.3%で、それ以外の会社は募集の有無を外に出していないだけです。
「募集していない」と書いてある会社に応募してもいいですか
応募自体はできますが、返事は期待できません。書いてある会社は5.3%と少数で、わざわざ書いているのは問い合わせが多くて断るのが手間な会社か、採用を止めた会社です。この場合は「募集再開の予定があれば」と短く連絡して、時期をあけてもう一度連絡する方が現実的です。
直接応募で採用された場合、求人サイト経由と条件は変わりますか
法律上は変わりません。労働基準法第15条の労働条件の書面明示は、応募経路にかかわらず会社の義務です。会社側の事情として、求人サイト経由の採用には掲載料や成功報酬がかかるので、直接応募は会社にとって費用が低い経路です。それが条件に反映されるかは会社次第ですが、少なくとも不利になる理由はありません。
ハローワークで会社名を検索して出てこなければ、ハローワークには出していないということですか
有効期間内の求人が無い、という意味です。ハローワーク求人の有効期間は受理日の翌々月の末日までなので、期限切れの求人は検索に出ません。会社がハローワークに求人を出す習慣があるかどうかは、会社サイトの採用ページに「ハローワークでも募集中」のような記載があるか(うちのデータでは4.3%)、あるいは直接聞くしかありません。
まとめ
- 求人を出していない会社にも応募はできる。会社の直接募集は法律で認められており、応募を受けるかは会社の判断
- 会社サイト32,838社を数えると、募集要項がある会社は45.5%、応募フォームがある会社は28.4%、「募集していない」と明記する会社は5.3%。大半の会社は「募集していない」のではなく「書いていない」
- 1〜9人の会社では募集要項がある会社は21.2%。小さい会社ほど求人が見つからないのは普通
- 応募前に、会社サイトの採用ページ・ハローワーク(有効期間は受理日の翌々月末)・求人サイトの掲載終了分・拠点名の求人、の4か所を当たる
- 直接応募では「募集していないことを承知している」と明記し、職種・時期・条件を自分で書く
- 求人票が無い分、実在・社会保険の適用・労働条件の書面明示の3点は自分で確認する
出典:法人番号公表サイト(国税庁)/gBizINFO(経済産業省)/厚生労働省 神奈川労働局・大阪労働局 ハローワーク求人の有効期間に関する案内/職業安定法第5条の3、労働基準法第15条(e-Gov法令検索)/しょくばログ保存の会社サイト採用ページ32,838社分の語の集計(2026年9月15日時点)。集計は語の有無で数えたもので、個々の会社の募集状況を保証するものではありません。