✍ 古家あきら | 2026-09-13 更新

求人票の試用期間の見方 — 採用ページ6,735件で試用期間に触れた求人は48件、「同条件」と書いたのは3件だけだった

「試用期間3ヶ月」と書かれた求人と、試用期間について何も書かれていない求人。どちらが安心かと聞かれたら、答えは「書いてあるほう」です。書いていない求人は「試用期間がない」のではなく、「あるかどうかも、期間中の条件も分からない」という状態だからです。

先に結論を書きます。求人票の試用期間で見るべきは3点だけです。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、会社が自分のサイトに載せている求人の生データを大量に見ることになります。今回は会社の採用ページから収集した求人6,735件(2,628社分)のうち、雇用形態欄か給与欄で「試用期間」に触れている求人を全部抜き出して、書き方を分類しました。結果は48件(29社)。全体の0.7%です。求人票全般の読み方は求人票の見方、給与表記の読み方は求人票の給与の見方、「正社員」表記の読み方は求人の「正社員」が本当に正社員か見分ける方法に分けて書いています。この記事は試用期間だけの各論です。

試用期間とは何か — 法律上は「解約権を留保した労働契約」

最初に、言葉の中身を確定させておきます。試用期間は「お試しのアルバイト期間」でも「まだ雇われていない期間」でもありません。入社した日から労働契約は成立していて、会社側が本採用を断る権利(解約権)を一定期間だけ持っている、という状態です。

この考え方を示したのが最高裁大法廷 昭和48年12月12日判決(三菱樹脂事件)で、試用期間中の労働契約を「解約権留保付きの労働契約」と整理し、本採用拒否は通常の解雇より広く認められるとしつつも、採用時に知ることができず、知ることが期待できないような事実が試用期間中に判明した場合に限る、という枠をはめました。つまり「試用期間中だから理由なく辞めさせられる」は、判例上も通りません。

もう1つ、労働基準法第21条。解雇予告(30日前予告または予告手当)の適用除外として「試の使用期間中の者」を挙げていますが、ただし書きで「十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合」はこの限りでないと定めています。試用期間中でも、入社15日目からは通常の解雇予告のルールが適用されるということです。会社が「試用期間3ヶ月」と定めていても、この14日は動きません。

試用期間の長さに、法律の上限はない

意外に思われるのですが、試用期間を「何ヶ月まで」と定めた条文はありません。一般には3ヶ月か6ヶ月が多く、後で示すうちのデータでもその2つでほぼ全部です。長すぎる試用期間が無効と判断された裁判例はありますが、それは個別の事情による判断で、「◯ヶ月を超えたら違法」という線が引かれているわけではない。だから求人票では「あり/なし」と「何ヶ月」が書いてあるかが、まず見るべき点になります。

「試用期間」は求人の明示事項、「期間中の条件が違うなら両方書く」も義務

ここが読み方の土台です。職業安定法施行規則 第4条の2第3項は、求人の際に明示すべき労働条件を列挙していて、その第2号の2に「試みの使用期間に関する事項」が入っています。つまり試用期間の有無と内容は、会社が求職者に示さなければならない項目です。

さらに同条第6項は、試みの使用期間中の従事すべき業務の内容等と、当該期間が終了した後の従事すべき業務の内容等とが異なる場合には、それぞれの内容等を示すことにより行わなければならないと定めています。試用期間中だけ時給、試用期間中だけ契約社員、試用期間中は月給が2万円低い——こういう設計自体は禁止されていません。ただしその場合は、期間中の条件と本採用後の条件を両方書くのが会社側の義務です。

ハローワークの求人申込書はこの構造をそのまま欄にしていて、厚生労働省の「求人申込書の書き方」には、試用期間が「あり」の場合はその期間を記入し、試用期間中の労働条件が「異なる」場合は「試用期間中の労働条件の内容」に試用期間中の条件をできる限り詳しく記入するよう書かれています。ハローワーク求人票に「試用期間」の欄が必ずあるのはこのためです。

問題は、会社が自分のサイトに載せる求人にはその欄がないことです。ここからがうちのデータの話になります。

会社の採用ページ6,735件を数えたら、試用期間に触れていたのは48件だった

しょくばログでは会社の公式サイトから採用情報を収集していて、求人ごとに職種・雇用形態・勤務地・給与の記載文字列がそのまま残っています。2,628社・6,735件(収集は2026年6月11日〜6月26日)のうち、雇用形態欄または給与欄に「試用期間」(表記ゆれの「使用期間」を含む)が含まれる求人を数えました。

先に断っておくと、うちの収集は職種・雇用形態・勤務地・給与の4項目が対象で、求人ページの本文全部を保存しているわけではありません。だから「48件以外は試用期間がない」とは言えない。言えるのは、雇用形態や給与を書く場所で試用期間に触れる会社は100社に1社ほど、ということです。ハローワーク求人票なら必ず埋まる欄が、自社サイトでは事実上存在しない。「記載なし」はこの意味で、「なし」ではなく「不明」です。

期間が書いてあったのは26件、3ヶ月が16件・6ヶ月が8件

48件のうち、試用期間の長さが書かれていたのは26件でした。

「試用期間あり」とだけ書いて期間を書かない求人が、触れている求人の半分近くを占めます。法律に上限がない以上、「あり」の一言では何ヶ月か分からない。これは面接で聞くべき項目です。

書き方は6パターンに分かれた

48件を、期間中の労働条件がどう書かれているかで分けると次のようになりました。

期間中の条件が本採用後と同じだと書いた求人は、48件のうち3件でした。逆に、下がると書いたのは17件。触れている求人の中では「下がる」と書くほうがずっと多い。ただしこれは「試用期間に触れる動機が、条件が違うことの説明にある」という解釈が自然で、書かれていない会社の大半で条件が下がるという意味ではありません。

②の17件を少し細かく見ます。月給どうしで比べられる6件の差は、最小1万円(24万円→23万円)から最大15万円(35万円→20万円)まで開いていました。月給の求人なのに「試用期間中は時給1,050円〜1,150円」と時給に切り替わるものが2件。この「月給→時給」パターンは、月の労働時間によって手取りが大きく動くので、求人票の給与の見方で書いた固定残業代の読み方と同じくらい注意が要ります。

⑥の「試用期間6ヶ月は契約社員」は1件だけですが、実は条文どおりの書き方です。期間中と後で条件が異なるなら両方書く、という第6項の要請をそのまま満たしている。正直に書いている会社ほど、一見「怖い」表記になる——これは求人の「正社員」が本当に正社員か見分ける方法でも書いた構図です。

「使用期間」と書いた求人が4件(2社)

表記ゆれの話も一応。「試用期間」を「使用期間」と書いた求人が4件(2社)ありました。「正社員(使用期間3ヶ月)」「使用期間3か月経過後手当加算」。意味は文脈で通じますが、法令用語は「試みの使用期間」で、略すなら「試用期間」です。会社の採用ページは入力チェックが効かないので、こういう揺れがそのまま出ます。読む側は「使用期間」も同じものとして拾ってください。

触れている29社の半分は建設業

29社の業種を登記上の分類で見ると、建設業が15社でした。うちが求人を収集している2,628社全体では建設業は898社(34.2%)なので、試用期間に触れる会社の中では建設業の比率が明らかに高い。日給や月給の現場職で、試用期間中の減額を給与欄に書き込む慣行があるのだと思います。会社の業種の確かめ方は会社の業種を調べる方法にまとめています。

「試用期間中は時給◯◯円」を最低賃金と比べる

ここが、この記事でいちばん実用的な部分です。②の17件のうち、試用期間中の時給を金額で書いていたのは9件ありました。この9件を、その会社の都道府県の地域別最低賃金(令和7年度。厚生労働省の全国一覧。発効日は令和7年10月1日から令和8年3月31日まで順次で、うちの収集時点ではすべて発効済み)と比べました。

下回る7件の中身は、兵庫県(最低賃金1,116円)で「時給1,250円(試用期間中は時給750円)」が2件、京都府(同1,122円)で試用期間中805円・900円・800〜805円が3件、大阪府(同1,177円)で「時給1,050円〜1,150円(試用期間中)」が1件、北海道(同1,075円)で「試用期間中は1,050円」が1件です。

これを見て「7件は違法」と決めつけるのは早い、というのがうちの読み方です。理由は2つあります。

1つ目は、減額の特例が制度として存在すること。 最低賃金法第7条第2号は「試の使用期間中の者」について、都道府県労働局長の許可を受ければ最低賃金を減額して適用できると定めています。ただし厚生労働省の許可申請の案内によると、減額率の上限は20%(最低賃金法施行規則第5条)、期間は最長でも6ヶ月、しかも対象になるのは「本採用労働者の賃金水準が最低賃金額と同程度」か「試の使用期間中の労働者の賃金を著しく低額に定める慣行が存在する」など、減額に合理性がある業種・職種に限られます。許可制であって、会社が勝手に下げていい制度ではありません。

この20%で線を引くと、7件のうち4件(兵庫の750円×2、京都の805円と800〜805円)は、特例を最大限使っても届かない水準です。1,116円の20%減は892円、1,122円の20%減は897円なので、750円や805円はその下にある。残り3件(京都900円・大阪1,050〜1,150円・北海道1,050円)は20%の範囲内で、許可があれば成立し得る額です。

2つ目は、古い記載が残っている可能性のほうが高いこと。 京都府の3件は、試用期間中の額どころか本採用後の時給(815円〜900円、1,000円〜)自体が最低賃金を下回っています。これは減額特例では説明がつかず、求人ページが何年も更新されていないと考えるのが自然です。最低賃金は令和7年度に全国加重平均で66円上がって1,121円、全都道府県が1,000円を超えました。改定に追いつかない求人ページはこの記事の主題とは別に大量にあって、最低賃金と求人時給のズレで実求人を数えています。

どちらにしても、応募者にとっての結論は同じです。「試用期間中は時給◯◯円」を見たら、その都道府県の最低賃金と比べる。下回っていたら、減額特例の許可を取っているのか、それとも古い数字なのかを聞く。 聞いて答えが返ってこない会社は、求人ページの管理がされていないか、条件を把握していないかのどちらかで、それ自体が判断材料になります。

応募前に聞く3つの質問

うちのデータで見た「書かれ方」を踏まえると、求人票の試用期間で確認すべきことは3つに絞れます。

1. 試用期間はありますか。あるなら何ヶ月ですか。 「あり」とだけ書いた求人が5件、期間の記載がないものが22件ありました。法律に上限がない以上、期間は聞かないと分かりません。

2. 試用期間中の給与と雇用形態は、本採用後と同じですか。 違うなら両方を示すのが会社の義務です(職業安定法施行規則 第4条の2第6項)。「同じです」と口頭で言われたら、その言葉を労働条件通知書で確認する。「違います」なら、その内容が求人票に書いてあったかを見る。書いていなかったなら、明示義務の観点で会社側に不備があります。

3. 試用期間中の時給は、この都道府県の最低賃金を上回っていますか。 下回るなら、減額特例の許可の有無を聞く。許可があるなら期間は最長6ヶ月・減額率は20%以内です。

そのうえで、労働基準法第15条第2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できると定めています。試用期間中の条件が求人票と違ったときに、我慢して本採用まで待つ契約上の理由は、少なくとも法律の側にはありません。求人票の保存(スクリーンショット・URL・日付)を入社前にしておくのが、実務上いちばん効きます。会社側の下調べは面接前5分でできる会社研究チェックリストに手順化してあります。

よくある質問

求人票に試用期間の記載がなければ、試用期間はないと考えていいですか

考えられません。うちのデータでは、会社の採用ページの求人6,735件のうち雇用形態欄・給与欄で試用期間に触れていたのは48件(0.7%)だけで、残りは「ない」のではなく「書く欄がない」状態です。試用期間の有無は明示事項(職業安定法施行規則 第4条の2第3項第2号の2)なので、聞けば答える義務がある項目として、面接で確認してください。

試用期間中は解雇されやすいのですか

本採用拒否は通常の解雇より広く認められますが、無条件ではありません。最高裁は三菱樹脂事件(昭和48年12月12日)で、採用時に知ることができず知ることが期待できない事実が試用期間中に判明した場合に限る、という枠を示しています。また労働基準法第21条により、入社から14日を超えれば、試用期間中でも解雇予告(30日前)または予告手当が必要です。「試用期間中だから即日クビ」は、14日を過ぎたら法律上通りません。

試用期間中だけ時給で、本採用後は月給という求人は違法ですか

それ自体は違法ではありません。ただし期間中と後で条件が異なるなら、両方を求人に示す義務があります(職業安定法施行規則 第4条の2第6項)。うちのデータでも「月給290,000〜380,000円、時給1,050円〜1,150円(試用期間中)」のように両方を書いた求人が実在します。問題は、時給が書かれていない・最低賃金を下回っている場合で、後者なら減額特例の許可の有無を確認してください。給与欄全体の読み方は求人票の給与の見方にまとめています。

試用期間が6ヶ月を超える求人は避けるべきですか

法律に上限がないので「違法」とは言えませんが、うちのデータで期間が書かれた26件は3ヶ月16件・6ヶ月8件・3〜6ヶ月2件で、6ヶ月を超える記載は1件もありませんでした。なお最低賃金の減額特例が使える期間も最長6ヶ月です。6ヶ月を超える試用期間を提示されたら、その理由と、期間中の条件が本採用後と同じかを聞いたうえで判断してください。長い試用期間そのものより、期間中の条件が不明なことのほうが実害が出ます。

試用期間中は社会保険に入らない、と言われました

試用期間中でも、加入要件を満たす労働者は入社日から社会保険(健康保険・厚生年金)の被保険者になります。「試用期間が終わってから加入」という運用に法的根拠はありません。会社が社会保険の適用事業所かどうかは外から確認できるので、会社が社会保険に加入しているか確認する方法を先に見てください。求人票に社会保険の記載がない場合の読み方はブラック企業の見分け方にも書いています。

まとめ

応募先の会社そのものを先に確認したい場合は、しょくばログの会社検索で社名を入れると、登記情報・所在地・業種・公開されている求人をまとめて見られます。求人の実在性が怪しいときは架空求人を見分ける6つのサインも併せてどうぞ。

出典・データの出どころ

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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