✍ 古家あきら | 2026-10-13 更新

情報通信業の倒産が2026年度上半期266件、前年同期比33.0%増 — 社名から情報通信と読める8万4,310社をDBで数えると、閉鎖済みは15.3%、存続の32.3%が東京

先に結論です。2026年度上半期(4-9月)、情報通信業の倒産は266件で、前年同期から33.0%増えました。 10産業のうち件数が増えたのは6産業ですが、伸び率では情報通信業がいちばん大きい数字です。

ただ、件数そのものは全体5,373件の約5%にとどまります。「IT業界が崩れている」と読むのは早すぎます。読むべきなのは、小さなソフトウェア・Web・システム会社が、静かに数を減らしているという方向のほうです。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「応募しようとしているIT企業が、ちゃんと続く会社か知りたい」「システムの発注先が小さいけれど大丈夫か」という相談を受けます。この記事では、①公表された数字、②うちの台帳で数えた情報通信系の会社、③応募者・発注者が確かめたいこと、の順に書きます。

公表された数字(出典つき)

東京商工リサーチが2026年10月8日に公表した「2026年度上半期(4-9月)の全国企業倒産」によると、主な数字は次のとおりです。いずれも負債1,000万円以上の倒産が対象です。

出典:https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1203308_1610.html (東京商工リサーチ「2026年度上半期(4-9月)の全国企業倒産5,373件」2026年10月8日)

全体の数字と地区別の読み方は、2026年上半期の倒産5,373件を地区別に読んだ記事にまとめています。ここでは情報通信業に絞ります。

なお、公表資料には情報通信業の内訳(ソフトウェア業か、Web制作か、通信か)までは書かれていません。この記事でも、内訳を推測で埋めることはしません。

当サイトで最近扱ったIT関連の破産

数字だけだと実感がわかないので、しょくばログで直近に取り上げた例を2つ挙げます。どちらも報道された事実の範囲で書いています。

この2社が、266件のどれにどう数えられているかは公表資料からはわかりません。ただ、「売上の急変」と「人への依存」という、小さなIT企業に典型的な2つの崩れ方を示しています。

しょくばログの台帳で数えた「情報通信系」の会社

国税庁の法人番号データには業種が載っていません(理由は会社の業種を調べる方法で説明しています)。そこでしょくばログでは、社名の言葉から日本標準産業分類の大分類を推定した列を持っています。社名から業種を読めない会社は対象外になるので、実数より小さく出る点はご承知ください。

株式会社・有限会社・合資会社・合名会社・合同会社の5種類に絞って数えると、次のとおりでした。

情報通信系は、全体より閉鎖済みの割合がやや高めです。ただしこれは「いま台帳を切ったときの割合」で、何年に何社なくなったかという推移ではありません。閉鎖の時期には、休眠会社の一斉整理のような事情も混ざるためです。

法人格で分けると、合同会社の閉鎖済み比率は低い

合同会社は2006年に始まった新しい形なので、設立から日が浅い会社が多く、閉鎖済みの割合が低く出ます。「合同会社だから安定している」という意味ではありません。

社名の言葉別に見ると

「システム」を名乗る会社は古くからあり、閉鎖済みの割合も高めです。「IT」を名乗る会社は比較的新しく、まだ閉鎖が少ない層だと読めます。

存続している会社の32.3%が東京

社名から情報通信業と推定でき、登記が閉鎖されていない7万1,376社の所在地は、東京都が2万3,042社(32.3%)で、大阪府6,412社、神奈川県5,187社と続きます。IT企業は東京への集まり方が強い業種です。

IT企業に応募する人が確かめたいこと

倒産件数が増えたからといって、IT企業を避ける必要はありません。見るべきなのは、その会社が「どこから売上を得ているか」です。

1. 元請けか、何次の下請けか

受託開発の会社は、取引先1社への依存が大きいことがあります。面接で「売上の上位の取引先」と「直接契約の割合」を聞くのは失礼な質問ではありません。客先常駐が中心の会社は、SES企業の見分け方も参考になります。

2. 自社サービスの売上が伸びているか

自社サービスの会社は、売上が1年で大きく変わることがあります。決算公告や会社の発表で、直近2期の売上を比べてみてください。

3. 「社長しかわからない仕事」が多すぎないか

小さな会社ほど、代表者が営業も技術も抱えています。チームの体制と、引き継ぎの仕組みを聞いておくと安心です。

発注している側が確かめたいこと

システムやWebサイトを外注している会社は、発注先が倒れたときに備えて、ソースコード・ドメイン・サーバーの名義が自社にあるかを確認しておくと被害を抑えられます。発注先の会社そのものは、社名ではなく法人番号で確かめるのが確実です。取引先の信用の見方全体は取引先の信用の調べ方にまとめています。

運営者として思うこと

266件という数字は、5,373件のなかでは大きくありません。それでも33.0%増という伸び方は、小さなIT企業の多い地域や職種にいる人には無視できない数字です。

会社データベースを運営していて感じるのは、IT企業は「社名からは事業の中身がほとんど読めない」業種だということです。「システム」「ネット」と名乗っていても、受託開発なのか、通信機器の販売なのか、Web制作なのかは外からわかりません。だからこそ、応募や発注の前に一歩踏み込んで聞く価値があります。

よくある質問

情報通信業の倒産は本当に増えているのですか?

東京商工リサーチの集計では、2026年度上半期(4-9月)の情報通信業の倒産は266件で、前年同期比33.0%増でした。2年ぶりの増加です。ただし全体5,373件の約5%で、件数の多さでは建設業やサービス業他のほうが上です。

266件の内訳(ソフトウェア業、Web制作など)はわかりますか?

公表資料には内訳が書かれていません。この記事でも推測では埋めていません。

しょくばログの「情報通信系8万4,310社」はどう数えたのですか?

国税庁の法人番号データに業種がないため、社名に含まれる言葉から日本標準産業分類の大分類を推定しました。社名から業種がわからない会社は含まれないので、実際の情報通信業の会社数より少なく出ています。

倒産した会社は、しょくばログではすぐ「閉鎖」になりますか?

なりません。破産手続が終わって登記記録が閉じるまでは「存続」の表示のままです。倒産の種類による違いは破産・民事再生などの違いで、閉鎖後の記録の見方は閉鎖登記簿の記事で説明しています。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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