✍ 古家あきら | 2026-09-26 更新
SES企業の見分け方 — 会社サイト31,396社で「SES」「客先常駐」を書く会社は314社、うち4割は派遣の許可番号も載せていた
先に結論です。SES企業かどうかは、会社サイトの「事業内容」「サービス」の欄に「SES」「システムエンジニアリングサービス」「客先常駐」と書いてあるか、募集要項の勤務地が「顧客先」「プロジェクト先」になっているか、会社概要に労働者派遣の許可番号(「派13-300000」のような番号)が載っているか、の3点でほぼ見当がつきます。書いていない会社は、面接で「今の案件のうち、自社内で開発しているものと、お客様先で働いているものの割合」を聞くのが確実です。
しょくばログという全国の会社データベースを運営していて、会社サイト(主に採用ページ)のテキストを保存しています。文字化けしたファイルを除いた31,396社分を数えたところ、「SES」「システムエンジニアリングサービス」「客先常駐」を事業や働き方として書いている会社は314社(1.0%)でした。そのうち121社(38.5%)は、同じサイトに労働者派遣の許可番号も載せていました。
「SES=やばい」「SESはやめとけ」という言葉をよく見かけますが、SESそのものは違法でも特殊でもなく、IT業界ではごく普通の働き方の一つです。見分けたいのは「SESかどうか」より、自分が望む働き方(自社内で作りたいのか、いろいろな現場を経験したいのか)と合っているかと、契約の形と実態がずれていないかの2つです。
この記事では、①会社サイト31,396社で見えた「SESを書く会社」の特徴、②サイトと求人票で見分けるポイント、③SES・請負・派遣の違いと偽装請負の線引き、④面接で確かめる質問、の順に整理します。
会社サイト31,396社を数えたら、SESを書く会社は314社だった
しょくばログが保存している会社サイトのテキストを対象に、語の出現を数えました(2026年9月26日集計。テキストは2026年6月に取得したもの)。
- 保存している会社サイト:33,081社(うち文字化け・画像のみ等を除いた31,396社を集計)
- 「SES」「システムエンジニアリングサービス」「客先常駐」のどれかが、事業や働き方として出てくる:314社(1.0%)
- 「客先常駐なし」「客先常駐はありません」のように、あえて否定する形で書いている会社:14社
後者の14社は、求人の売りとして「客先常駐がない」ことを書いている会社です。実際の書き方は「★100%自社開発(客先常駐なし)」「派遣や客先常駐ではありません」「客先常駐や転勤はありません」といったもので、SESが一般的な業界だからこそ、そうでないことを明記していることが読み取れます。SESを書く会社を数えるときは、この否定の書き方を除いています。
なお、この31,396社は「会社サイトを持ち、しょくばログがテキストを保存できた会社」で、全国の会社全体の縮図ではありません。
情報通信業に限ると8.1%
314社を業種(日本標準産業分類の大分類)で見ると、171社(54.5%)が情報通信業でした。業種がまだ付いていない会社が108社、不動産業・物品賃貸業に分類されている会社が20社で、残りはわずかです。
情報通信業に分類される会社サイトは2,103社あり、そのうち171社(8.1%)がSES関連の言葉を事業として書いていました。12社に1社ほどです。日本標準産業分類には「SES」という分類はないため、業種名だけを見てSESかどうかは分かりません。業種の読み方は会社の業種を調べる方法で詳しく書いています。
SESを書く会社は、ほかの言葉も一緒に書いている
314社のサイトに、ほかにどんな言葉が出てくるかを数えると、次のとおりでした。
- 「エンジニア」:293社(93.3%)
- 「派遣」:198社(63.1%)
- 労働者派遣の許可番号(「派」+2桁の都道府県番号+6桁程度の番号の形):121社(38.5%)
- 「受託開発」:108社(34.4%)
- 「自社開発」:40社(12.7%)
- 「自社サービス」「自社プロダクト」:39社(12.4%)
- 「二次請け」「商流」「元請」「プライム」など取引の階層を示す言葉:34社(10.8%)
- 「準委任」:10社(3.2%)
SESだけを事業にしている会社は多くなく、受託開発や派遣と並べて書いている会社が目立ちます。実際の書き方も「システム開発(請負型、SES型、オフショア開発)」「ERPシステム導入支援(受託型、SES型)」「自社内開発(〇〇開発センター)、もしくは大手客先常駐」といった具合で、案件ごとに契約の形を使い分けていることが分かります。
情報通信業の会社サイト2,103社全体では、派遣の許可番号を載せている会社は276社(13.1%)でした。SESを書く会社(38.5%)はその約3倍で、SESと派遣の両方の事業を持っている会社が多いことがうかがえます。
規模は情報通信業の平均的な会社より小さめ
gBizINFO(経済産業省の法人情報サイト)に従業員数が載っている会社で比べると、SESを書く314社のうち313社の従業員数の中央値は60人、情報通信業の会社サイト全体(2,235社)では95人でした。314社の内訳は次のとおりです。
- 10人以下:42社
- 11〜50人:105社
- 51〜100人:54社
- 101〜300人:74社
- 301人以上:38社
50人以下が147社と半分近くを占めます。一方で300人を超える会社も38社あり、「SES=小さな会社」とも言い切れません。従業員数の調べ方は会社の従業員数を無料で調べる方法にまとめています。
会社サイトと求人票でSES企業を見分けるポイント
数えた結果を踏まえると、見るべき場所は次の5つです。
1. 「事業内容」「サービス」のメニュー名
一番分かりやすいのは、会社サイトのメニューや事業紹介に「SES」「システムエンジニアリングサービス」「技術支援」「開発支援」「エンジニア派遣」と書かれているかです。保存テキストでも、トップページのメニューにそのまま「SES」と並べている会社が多くありました。「ITソリューション」「システムインテグレーション」のような広い言葉だけの場合は、中身の説明まで読みます。
2. 募集要項の「勤務地」「就業場所」
SESの求人では、勤務地が「顧客先(東京23区内)」「プロジェクト先による」「本社または顧客先」と書かれることが多いです。2024年4月からは、求人で「就業場所の変更の範囲」も示すことになったので、「雇入れ直後:本社」「変更の範囲:会社の定める場所(顧客先を含む)」のような書き方があれば、客先で働く可能性があると読めます。変更の範囲の読み方は転勤があるかを調べる方法で詳しく書いています。
3. 会社概要の「許可番号」
会社概要に「労働者派遣事業 許可番号 派13-〇〇〇〇〇〇」とあれば、その会社は派遣の許可を持っています。許可があること自体は悪いことではなく、案件によって派遣契約で働く場合があるという情報です。番号の読み方と、厚労省のサイトで本物かを確かめる方法は派遣会社・人材紹介会社の許可番号を確認する方法にまとめています。
4. 「自社開発」「受託開発」の書き方と割合
「自社開発」「受託開発」と書いてあっても、SESと並べて書いている会社はあります。SESを書く314社のうち、受託開発も書く会社が108社、自社開発も書く会社が40社でした。「自社開発あり」と「自社開発が中心」は違うので、事業ごとの売上や人数の割合が書かれていれば、そこまで見ます。
5. 「還元率」「待機」「商流」の言葉
エンジニア向けの採用ページには、「還元率」(案件の単価のうち給与に回す割合)、「待機」(案件がない期間の扱い)、「二次請けまで」「プライム案件」(取引の階層)といった、SESならではの言葉が出てくることがあります。314社のうち「商流」などの言葉は34社、「待機」は8社、「還元率」は6社と少数でしたが、書いてある会社は、SESの働き方を前提に条件を説明していると読めます。
求人票全体の読み方は求人票の見方で、給与欄の読み方は求人票の給与の見方で整理しています。
SES・請負・派遣の違いと、偽装請負の線引き
SESの契約は、一般に「準委任契約」(仕事の完成ではなく、作業をすること自体を約束する契約)の形をとることが多いと言われます。ここで押さえておきたいのは、契約書の名前ではなく、現場で誰が指示を出しているかで判断されるという点です。
厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号、いわゆる37号告示)は、請負の形で働かせる会社でも、次のような管理を自分で行っていなければ、労働者派遣事業にあたるとしています。
- 仕事の進め方の指示や、仕事ぶりの評価
- 始業・終業の時刻、休憩、休日、残業などの指示(単に把握するだけではだめ)
- 服務規律の指示や、誰をどこに配置するかの決定
- 仕事に必要な資金を自分で用意し、事業主としての責任を負うこと
さらに、厚労省の疑義応答集(第3集)は、システム開発について「準委任契約でも、実態として発注者と受注者側の労働者の間に指揮命令関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣事業に該当する」と明記しています。つまり、SESで客先に常駐していても、仕事の指示を出すのは自社の責任者であるのが本来の形で、お客様の社員から直接、作業の割り振りや残業の指示を受けている状態は、いわゆる偽装請負にあたるおそれがあります。
同じ疑義応答集は、発注者と受注者が対等な立場で協力し、受注者側の担当者が自分で判断して開発を進めているなら、会議に受注者側の管理責任者が毎回同席していなくても、それだけで直ちに偽装請負とはならない、とも説明しています。客先で働くこと自体が問題なのではなく、指示の出どころが問題だということです。
派遣の許可を持つSES企業が多いのは、案件の実態が「お客様から直接指示を受ける」形になる場合に、派遣契約に切り替えられるようにしているためと考えられます。
面接で確かめたい質問
サイトや求人票に書いていないことは、面接で聞くのが確実です。聞き方の例を挙げます。
- 「今いるエンジニアのうち、自社内で開発している人と、お客様先で働いている人は、それぞれ何人くらいですか」
- 「入社後、最初の案件はどうやって決まりますか。本人の希望はどこまで考慮されますか」
- 「お客様先で働く場合、日々の作業の指示は誰から受けますか。自社の責任者は現場にいますか」
- 「案件と案件の間に空きが出たとき、給与や働き方はどうなりますか」
- 「主な取引先は、エンドユーザー(システムを使う会社)ですか、それとも大手SIerですか」
3つ目の質問は、上で書いた偽装請負の線引きに直結します。「お客様の指示に従ってください」とだけ返ってくる場合は、どういう体制で管理しているのかをもう一歩聞いてみてください。会社のよしあし全般を見るときの考え方はブラック企業の見分け方にもまとめています。
よくある質問
SES企業は「やめとけ」と言われますが、本当に避けるべきですか
一概には言えません。SESには、いろいろな現場・技術に触れられる、未経験からでも実務経験を積みやすいといった面がある一方、案件によって仕事内容や通勤先が変わる、自社への帰属意識を持ちにくいといった面もあります。大事なのは、自分が何を経験したいかと合っているかと、契約の形と実態がずれていないかです。会社サイトで「SES」と書く会社は、情報通信業でも12社に1社ほどで、特殊な会社というわけではありません。
「自社開発」と書いてあれば、SESではないと考えてよいですか
そうとは限りません。しょくばログの集計では、SES関連の言葉を事業として書く314社のうち40社が「自社開発」も、108社が「受託開発」も書いていました。複数の事業を持つ会社は多く、どの事業に配属されるかで働き方は変わります。「自社開発が中心か」「配属はどう決まるか」を面接で確かめてください。
SESと派遣は何が違うのですか
契約の形と、仕事の指示を出す人が違います。派遣は派遣先の会社が直接指示を出す契約で、派遣元には厚生労働大臣の許可が必要です。SESは一般に準委任契約の形をとり、指示は自社(受注した会社)の側で出すのが本来の形です。ただし厚労省は、準委任でも実態として発注者から指揮命令を受けていれば派遣にあたるとしています。許可番号の確かめ方は派遣会社・人材紹介会社の許可番号を確認する方法を見てください。
会社のサイトにSESと書いていなければ、客先常駐はないと考えてよいですか
言い切れません。今回の集計は「会社サイトに書いてあるか」を数えたもので、書いていない会社にSESの仕事がないとは限りません。勤務地の欄が「顧客先」「プロジェクト先」になっていないか、会社概要に派遣の許可番号がないかを確かめ、最後は面接で客先で働く人の割合を聞いてください。反対に、「客先常駐なし」とはっきり書く会社も14社ありました。
SES企業かどうかを業種から調べることはできますか
業種だけでは分かりません。日本標準産業分類には「SES」という区分はなく、しょくばログの集計でも、SESを書く会社の54.5%は情報通信業、ほかは業種が未分類だったり不動産業・物品賃貸業に分類されていたりしました。業種は「どの分野の会社か」の目安にとどめ、事業内容と求人票で確かめるのが確実です。
まとめ
- SES企業かどうかは、会社サイトの事業内容の言葉、募集要項の勤務地(顧客先・プロジェクト先)、会社概要の派遣の許可番号の3点でほぼ見当がつく
- 会社サイト31,396社のうち、SES関連の言葉を事業として書く会社は314社(1.0%)、情報通信業に限ると8.1%。そのうち38.5%が派遣の許可番号も載せていた
- SESだけの会社は少なく、受託開発・派遣と並べて書く会社が多い。「自社開発あり」と「自社開発が中心」は別物
- 契約が準委任でも、お客様から直接指示を受けていれば派遣にあたる(厚労省37号告示・疑義応答集)。客先で働くことより、指示の出どころを確かめる
- 書いていない会社は、面接で「客先で働く人の割合」「日々の指示は誰から受けるか」を聞く
面接で「主な取引先」を聞く前に、公開情報からある程度当たりをつけておくこともできます。その手順は会社の取引先を調べる方法にまとめています。
出典:厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号・最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号)/厚生労働省「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集(第3集)」/しょくばログ保存の会社サイトテキスト33,081社(うち集計対象31,396社。2026年6月取得・2026年9月26日集計。語の出現による集計で、会社の事業内容や契約の実態を保証するものではありません)/gBizINFO(従業員数)