✍ 古家あきら | 2026-10-10 更新
全国の企業倒産、2026年度上半期は5,373件で5年連続の増加。地区別に「1万社あたり」で割ると、近畿19.4件・関東9.6件と2倍の差──しょくばログDBの稼働中442万社で見る
先に結論です。東京商工リサーチの集計では、2026年度上半期(4〜9月)の全国企業倒産は5,373件(前年同期比3.8%増)、負債総額は8,561億6,900万円(同23.5%増)でした。 年度上半期として5年連続の増加で、2013年度(5,505件)に次ぐ多さです。
この件数を地区別に見て、しょくばログの台帳にある稼働中の会社の数で割ってみると、会社1万社あたりの倒産件数は近畿が19.4件でいちばん多く、関東は9.6件と、約2倍の差がありました。 件数だけを見ると関東が最多ですが、会社の数が多いぶん、割合で見ると順位が入れ替わります。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「倒産が増えた」というニュースのたびに、「それは会社の数が多いからでは」という疑問を持ちます。この記事では、公表された数字を押さえたうえで、分母を足して見たときに何が見えるかを書きます。
出典:2026年度上半期(4-9月)の全国企業倒産5,373件(東京商工リサーチ・2026年10月8日公表)
出典:https://www.tsr-net.co.jp/news/status/detail/1203308_1610.html
公表された事実を整理する
東京商工リサーチの公表(負債額1,000万円以上の企業倒産が対象)から、確かめられる点を並べます。
- 件数は5,373件で、前年同期比3.8%増。年度上半期では5年連続の増加
- 負債総額は8,561億6,900万円で、同23.5%増。ただし2年連続で1兆円を下回った
- 負債10億円以上は118件(同14.5%増)。一方で負債1億円未満が77.0%を占め、年度上半期では30年間で最高の比率
- 形態別では破産が90.7%で、こちらも30年間で最高
- 従業員10人未満の会社が90.6%。300人以上の倒産は5年ぶりに発生しなかった
- 「人手不足」関連の倒産は240件(前年同期205件)で過去最多。「物価高」倒産は436件(同370件)
- 「ゼロゼロ融資」利用後の倒産は149件(同215件)で、3年連続で減った
産業別では、飲食業を含むサービス業他が1,828件(構成比34.0%)で最多でした。情報通信業は266件で前年同期比33.0%増と、伸び率が目立ちます。建設業は1,035件で、5年ぶりにわずかに前年を下回りました。
まとめると、「件数は増え続けているが、その中心は従業員10人未満・負債1億円未満の小さな会社で、そのほとんどが再建ではなく破産で終わっている」という姿です。
地区別の件数を「1万社あたり」に直す
東京商工リサーチは地区別の件数も公表しています。ここに、しょくばログの台帳(国税庁の法人番号公表データを元にした台帳)から、各地区の稼働中の会社数を並べます。会社数は、株式会社・有限会社・合同会社・合名会社・合資会社の5種類で、登記上の閉鎖がないものを数えました。全国で442万2,900社です。
- 近畿:倒産1,377件/稼働中71万1,345社=1万社あたり19.4件
- 北陸:倒産130件/稼働中7万6,100社=1万社あたり17.1件
- 中部:倒産665件/稼働中46万2,669社=1万社あたり14.4件
- 東北:倒産265件/稼働中21万1,836社=1万社あたり12.5件
- 九州:倒産505件/稼働中43万5,825社=1万社あたり11.6件
- 中国:倒産216件/稼働中19万8,939社=1万社あたり10.9件
- 関東:倒産1,948件/稼働中203万4,512社=1万社あたり9.6件
- 四国:倒産102件/稼働中10万6,727社=1万社あたり9.6件
- 北海道:倒産165件/稼働中18万4,947社=1万社あたり8.9件
全国では1万社あたり12.1件です。地区の区分は東京商工リサーチの定義に合わせました(関東に新潟・山梨を含む、など)。
近畿は「会社の数の割に」倒産が多い
近畿は、稼働中の会社に占める割合が16.1%なのに、倒産件数に占める割合は25.6%でした。逆に関東は、会社の46.0%が集まっているのに、倒産は36.3%にとどまります。
理由をこのデータだけで言い切ることはできません。ただ、今回の上半期で負債額が最も大きかったのは大阪のクレジットカード決済代行会社で、関連会社の破産も同じ地域で続きました。大型の連鎖が1つあると、地区の件数は押し上げられます。年によって順位が入れ替わる可能性は十分にあります。
北陸・中部も全国平均を上回る
北陸(17.1件)と中部(14.4件)も全国平均の12.1件を上回りました。中部は5年連続、北陸は4年連続で前年同期を上回っており、単発ではなく増える流れが続いている地区です。一方、東北(265件)は前年同期比11.3%減で、5年ぶりに前年を下回りました。
この「1万社あたり」を読むときの注意
この比較は、目安として使ってください。理由が3つあります。
1つ目は、分母と分子の範囲が完全には一致しないことです。東京商工リサーチの「企業倒産」には個人企業も含まれます。一方、しょくばログの分母は法人の5種類だけです。個人事業者の多い地域ほど、1万社あたりの数字はやや高めに出ます。
2つ目は、台帳の「稼働中」は登記上の閉鎖がないという意味で、実際に事業をしているかまではわからないことです。休眠状態の会社も数に入っています。休眠会社の多い地域では、分母が大きくなり、数字は低めに出ます。
3つ目は、半年分の件数だということです。大型倒産やその関連会社の倒産が1件あるだけで、件数の少ない地区は数字が大きく動きます。北陸(130件)や四国(102件)の比較は、とくに幅をもって読む必要があります。
ちなみに、台帳での登記上の閉鎖率は、近畿が12.6%、関東が13.9%で、倒産の多さとは逆の並びでした。閉鎖には倒産のほか、廃業や合併、休眠会社の整理が含まれるため、倒産の指標としては使えません。
取引先・働く人が、この数字から持ち帰れること
全国の件数が増えたからといって、自分の取引先が危ないわけではありません。ただ、倒産の9割が従業員10人未満の会社で、9割が破産で終わっているという事実は、取引の現場では重く受け止めたいところです。小さな会社は、悪くなってから倒れるまでが早く、再建の手続きを経ずに終わることが多いからです。
日々の取引で確かめておきたいのは、次のような点です。
- 法人番号で、商号・所在地の変更履歴を見る。短い期間に何度も変わっていないか
- 支払いの遅れや、支払条件の変更の申し入れがないか
- 採用ページの求人が急に止まった、あるいは逆に大量の募集が出ていないか
- 関連会社が同じ住所に集まっている場合、一社の不調が他社に及ばないか
具体的な手順は 会社の実在と倒産を確かめる方法 と 取引先の信用調査のやり方 にまとめています。倒産件数が調査会社ごとに違う理由は 倒産件数が調査会社ごとに違う理由 で解説しました。
関連する直近の動き
同じ上半期の数字を、切り口を変えて読んだ記事があります。東京都だけを見ると924件で、過去10年で2番目の多さでした(東京の企業倒産、2026年度上半期は924件)。人手不足を理由にした倒産は過去最多の240件で、詳しくは 「人手不足」倒産、上半期は過去最多の240件 で扱いました。働く側から兆しを見る方法は 人手不足倒産の見分け方 にあります。
よくある質問
全国の企業倒産5,373件には、個人事業主も含まれますか
東京商工リサーチの「企業倒産」は、負債額1,000万円以上の倒産を対象にしており、法人だけでなく個人企業も含みます。この記事の「1万社あたり」は分母を法人に限っているため、厳密な倒産率ではなく、地域を比べるための目安です。
近畿は倒産しやすい地域ということですか
今回の半年の数字では、会社の数に対して倒産が多く出ました。ただ、大型倒産と関連会社の連鎖が1つあるだけで件数は動きます。1期だけで「倒産しやすい地域」と決めつけるのは早く、何期か続けて見る必要があります。
倒産の9割が破産なのはなぜですか
倒産した会社の多くが従業員10人未満・負債1億円未満の小さな会社だからです。民事再生などの再建型の手続きは、費用や時間がかかり、事業を続ける見込みも求められます。小さな会社では、再建を選ぶ余地がないまま破産に進むことが多くなります。
自分の取引先が倒産していないか、どう確かめればいいですか
まず法人番号で登記上の状態と商号・所在地の変更履歴を確かめ、次に調査会社や官報の公告を見るのが基本です。しょくばログの会社ページでも、法人番号にもとづく登記情報を無料で確認できます。
しょくばログの「稼働中」は、営業している会社のことですか
いいえ。登記上の閉鎖がない会社、という意味です。実際には事業をしていない休眠会社も含まれます。営業の実態は、会社のサイトや求人、取引の状況とあわせて確かめてください。
まとめ
2026年度上半期の全国の企業倒産は5,373件で、5年連続で増えました。中心は従業員10人未満・負債1億円未満の小さな会社で、9割が破産で終わっています。地区別の件数を稼働中の会社数で割ると、近畿は1万社あたり19.4件、関東は9.6件でした。件数の多い少ないだけでなく、分母を置いて見ると、ニュースの数字は違う顔を見せます。