✍ 古家あきら | 2026-10-06 更新
防犯カメラ「IoTube」のMOYAIが破産、売上15億5619万円から1年で約3億5800万円に──資本金4億円でも続かなかった理由と、しょくばログDBで見る社名に「IoT」を持つ法人61社・虎ノ門の1万2,093社
先に結論です。LED蛍光灯一体型のネットワーク防犯カメラ「IoTube」を開発販売していた株式会社MOYAI(東京都港区虎ノ門)が、2026年9月28日に東京地裁へ破産を申請し、同じ日に破産開始決定を受けました。 東京商工リサーチによると、負債総額は債権者約100名に対して約10億円です。
売上高は2024年10月期に15億5619万円まで伸びていましたが、2025年10月期は約3億5800万円にとどまりました。1年で4分の1以下です。同じ期の最終赤字は7億353万円で、売上のおよそ2倍にあたります。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「資本金が大きいから大丈夫そう」という見方を本当によく耳にします。MOYAIの資本金は4億415万5000円でした。この記事はMOYAIの経営を評価するものではありません。資本金の大きい若い会社に応募するとき、取引するときに、どこを見ればよいかを台帳の数字とあわせて書きます。
出典:防犯カメラ開発などを手掛けていた(株)MOYAI(東京)が破産開始決定(東京商工リサーチ・2026年10月5日)
出典:IoT・サイネージ「MOYAI」に破産開始決定、負債10億円(不景気.com・2026年10月6日掲載)
報道で確認できる事実
- 会社:株式会社MOYAI(東京都港区虎ノ門2-6-1)
- 設立:2018年11月
- 資本金:4億415万5000円
- 本業:通信機能を持つLED蛍光灯一体型ネットワーク防犯カメラ「IoTube」の開発販売、AI解析を使ったデジタルメディア事業
- 2024年10月期:売上高15億5619万円、赤字1億6683万円(棚卸資産の評価損などが発生)
- 2025年10月期:売上高約3億5800万円、最終赤字7億353万円
- 悪化の背景:固定費の増加、取引先への納品の遅れ
- 手続き:2026年9月28日に東京地裁へ破産を申請し、同日に破産開始決定
- 破産管財人:相羽利昭弁護士(三宅・今田・池田法律事務所)
- 負債:債権者約100名に対して約10億円
不景気.comは、大手鉄道会社への納入実績があったことも伝えています。製品が評価され、売上が15億円台まで伸びた翌年に、売上が大きく減って赤字が広がった、という流れです。
しょくばログの台帳で見ると
本人の会社は、まだ「活動中」と表示される
しょくばログの台帳では、株式会社MOYAI(法人番号3010001196214)は、この記事を書いた時点で「活動中」の表示です。台帳の元になっている国税庁の法人番号公表サイトは、登記が閉鎖されたときに表示が変わります。破産開始決定が出ても、手続きが終わって登記が閉じるまでは閉鎖の表示になりません。この時間差は会社の実在と倒産の確かめ方にまとめています。
台帳には、読みが「モヤイ」の法人がほかにも全国に30社以上あります。熊本や福岡の「もやい」、一般社団法人やNPO法人の「もやい」など、今回の会社とは関係のない法人です。取引先や応募先を確かめるときは、社名ではなく法人番号で照合してください。
社名に「IoT」を持つ法人は61社、閉鎖率は19.7%
台帳で、社名に「IoT」を含む法人を数えると累計61社でした。そのうち閉鎖が12社で、閉鎖率は19.7%です。台帳全体(575万社、閉鎖率13.2%)より6ポイントほど高くなっています。
社名に「サイネージ」を含む法人は22社(閉鎖4社)、「防犯カメラ」を含む法人は10社(閉鎖0社)でした。いずれも数が少なく、業界の傾向を語れる数ではありません。社名に流行りの言葉を入れた会社が、その言葉の事業を続けているとも限りません。目安として見てください。
港区は16万社、そのうち虎ノ門の住所は1万2,093社
港区に本店がある法人は、台帳で累計16万102社でした。閉鎖は2万4,918社で、閉鎖率は15.6%です。住所が虎ノ門に限ると1万2,093社で、閉鎖は2,978社、閉鎖率は24.6%でした。
虎ノ門の閉鎖率が高いのは、この地域の会社が危ないという意味ではありません。大きなオフィスビルが集まる地域では、本社の移転や、グループ会社の合併・清算で登記が閉じることがよくあります。台帳の閉鎖率は「その時点で登記が閉じているかどうか」を数えたもので、景気の良し悪しを直接示すものではない点に注意してください。
応募する人・取引先が確かめておきたいこと
1. 資本金は「集めたお金」で、「いま残っているお金」ではない
資本金4億円は、会社が出資を受けて集めたお金の記録です。そのお金を開発や人件費に使えば、資本金の数字は残ったまま手元の現金は減っていきます。報道によると、MOYAIは赤字が続く中で債務超過に陥りました。資本金だけで会社の体力を判断できない理由は、資本金が大きいのに倒産する会社の記事で詳しく書きました。
2. 「売上が伸びた翌年」こそ、伸び方を見る
今回は、売上が15億円台に伸びた年に、すでに棚卸資産の評価損が出ていました。在庫として抱えた製品の価値が下がっていたということです。売上の伸びと同時に、在庫や納品の遅れが増えていないかは、取引の現場で気づける部分があります。取引先の見方は取引先の調べ方にまとめています。
3. 若い会社は、決算が「見えない」ことを前提にする
設立から8年ほどの非上場の会社は、決算書を外に出していないことが多くあります。応募や取引の前には、直近の業績、資金を出している株主、主要な取引先を、面談や商談の場で直接聞くのが確実です。若い会社の破産の流れは、サバの養殖スタートアップの破産の記事でも扱っています。
4. 働いていた人は、未払いの給料を立替払制度で確かめる
会社が破産したとき、払われなかった給料や退職金の一部を国が立て替える「未払賃金立替払制度」があります。窓口は労働基準監督署です。給与明細と勤務の記録を手元に残し、破産管財人からの案内を待ちます。
よくある質問
Q. 破産開始決定が出たのに、なぜ台帳は「活動中」なのですか。
台帳は国税庁の法人番号公表サイトの情報をもとにしています。表示が「閉鎖」に変わるのは登記が閉鎖されたときです。破産手続きが終わるまでには時間がかかるため、その間は「活動中」のままです。
Q. 資本金が4億円もあるのに、なぜ破産したのですか。
資本金は出資を受けた金額の記録で、現金がいくら残っているかは示しません。報道によると、MOYAIは固定費の増加や納品の遅れで赤字が広がり、債務超過に陥って資金繰りが限界に達しました。
Q. 社名に「IoT」を持つ会社は、閉鎖しやすいのですか。
61社と数が少なく、そう言い切ることはできません。社名に「IoT」という文字が入っている法人を数えただけで、IoT事業を営む会社の全数でもありません。台帳の断面の目安として見てください。
Q. 大手企業に納入実績がある会社なら、安心して取引できますか。
納入実績は製品の評価を示しますが、会社の資金の余裕までは示しません。今回も、大手への納入実績があったと伝えられる中で、納品の遅れと費用の増加が重なりました。取引の条件や支払いの状況は、実績とは別に確かめる必要があります。
まとめ
- 防犯カメラ「IoTube」の株式会社MOYAI(東京都港区、2018年設立)が、2026年9月28日に破産開始決定を受けた。負債は約10億円
- 売上高は2024年10月期の15億5619万円から、2025年10月期は約3億5800万円へ。最終赤字は7億353万円
- 資本金は4億415万5000円。資本金の大きさは、手元の現金の多さを示さない
- しょくばログの台帳では、社名に「IoT」を持つ法人は累計61社、閉鎖率19.7%。虎ノ門の住所の法人は1万2,093社、閉鎖率24.6%
- 応募する人も取引先も、資本金や納入実績ではなく、直近の業績と資金の出どころを直接確かめる
会社の今の状態は、しょくばログで社名か法人番号を検索すると確かめられます。