✍ 古家あきら | 2026-10-03 更新
2026年8月の有効求人倍率は1.18倍で横ばい、宿泊・飲食の新規求人は11.1%減──しょくばログで見る自社HP求人の正社員比率85.7%
先に結論です。2026年8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.18倍で、前月と変わりませんでした。 一方で、新しく出された求人の数(新規求人)は前年の同じ月より3.4%少なく、とくに宿泊業・飲食サービス業は11.1%、卸売業・小売業は10.2%減っています。同じ日に総務省が出した完全失業率は2.5%で、前の月より0.1ポイント上がりました。
全体の倍率は動いていないのに、業種ごとに見ると求人の出方がはっきり分かれた月でした。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「求人倍率が高いから仕事は見つかる」「低いから厳しい」と一つの数字で語られる場面をよく見ます。けれど実際の求人は、業種や地域、雇用の形で中身がかなり違います。この記事では公表された数字を整理し、台帳の数字も添えて、仕事を探す人と人を採る会社が何を見ればよいかを書きます。
出典:一般職業紹介状況(令和8年8月分)について(厚生労働省・2026年10月2日)
出典:労働力調査(基本集計)2026年8月分(総務省統計局・2026年10月2日)
公表された数字
求人の側(厚生労働省)
- 有効求人倍率:1.18倍(前月と同じ)
- 新規求人倍率:2.06倍(前月より0.04ポイント低下)
- 正社員の有効求人倍率:1.00倍(前月と同じ)
- 有効求人・有効求職者:どちらも前月より0.7%増
- 新規求人(原数値):前年同月より3.4%減
業種別の新規求人(前年同月比)は、増えたのが製造業3.9%、情報通信業3.3%、サービス業(他に分類されないもの)0.9%。減ったのが宿泊業・飲食サービス業11.1%、卸売業・小売業10.2%、生活関連サービス業・娯楽業5.7%でした。
都道府県別(就業地別)では、最も高いのが福井県の1.72倍、最も低いのが大阪府の0.95倍です。
働く人の側(総務省)
- 完全失業率:2.5%(前月より0.1ポイント上昇)
- 完全失業者:180万人(前年同月より2万人減)
- 就業者:6,849万人(前年同月より14万人増)
- 正規の職員・従業員:3,735万人(前年同月より24万人増)
仕事を離れた理由で見ると、前年同月より「自発的な離職(自己都合)」が4万人増え、「勤め先や事業の都合による離職」は2万人減りました。会社の都合で職を失った人が増えたのではなく、自分から辞めて次を探している人が増えた形です。
数字をどう読むか
「横ばい」の中で、求人を減らした業種がある
有効求人倍率は、ハローワークに出ている求人の数を、仕事を探している人の数で割ったものです。今月は求人も求職者も同じ0.7%増えたので、割り算の答えは変わりませんでした。
ただ、新しく出た求人は前年より減っており、減り方は宿泊・飲食と卸売・小売で大きくなっています。人手不足が続くと言われてきた業種で求人が減っているのは、採用をあきらめたのか、原材料や人件費の上昇で募集を絞ったのか、統計だけでは分かりません。業種ごとに理由はさまざまだと考えておくのが安全です。
なお、この統計はハローワークを通した求人だけを数えています。求人サイトや会社のホームページだけで募集している会社は入っていません。
正社員の倍率は1.00倍
全体の1.18倍に対し、正社員だけで見ると1.00倍です。正社員の仕事を探す人1人に、正社員の求人がほぼ1件という計算になります。全体の数字だけを見て「仕事は選べる」と考えるのは、正社員を希望する場合は当てはまりにくいことが分かります。
しょくばログの台帳で見ると
自社ホームページの求人は、正社員が85.7%
しょくばログでは、会社のホームページの採用ページに載っている求人を集めています(2026年6月に収集した2,628社・6,735件)。このうち雇用の形が書かれていた2,968件を数えると、正社員・正職員が2,543件で85.7%、パート・アルバイトを含むものが287件で9.7%でした。給与の記載があったのは全体の45.2%です。
自社のホームページで募集する会社は、正社員を中心に採ろうとしている傾向が読めます。ハローワークの統計に出てこない求人が、こうしたところにあります。ハローワークや求人サイトに出していない会社に応募できるかは求人を出していない会社に応募できるかにまとめました。
業種による閉鎖の割合は、どれも16%前後
台帳で業種を判別できた法人のうち、閉鎖の記録がある割合は、宿泊業・飲食サービス業16.5%、卸売業・小売業16.2%、製造業16.0%、情報通信業15.4%でした。台帳全体では13.3%です。求人の増減ほど、業種による差は大きくありません。
求人が減っている業種でも、会社が一斉に消えているわけではないということです。業種の判別はすべての法人について済んでいるわけではないので、目安として見てください。
福井県と大阪府
有効求人倍率で最も高い福井県は、台帳の活動中の法人が26,861社。最も低い大阪府は418,747社です。会社の数が多い地域ほど倍率が高いわけではなく、倍率は求人と求職者のつり合いで決まります。地域の数字は「その地域に住んで、その地域で働く」前提で見るのが基本です。
仕事を探す人・採る会社が確かめたいこと
1. 業種ごとの求人の動きを見る
全体の倍率よりも、自分が働きたい業種の新規求人が増えているか減っているかのほうが、実感に近い数字です。業種による辞めやすさの違いは業種別の離職率で書きました。
2. 雇用の形を求人票で確かめる
正社員の倍率は全体より低い1.00倍です。求人票に書かれた雇用の形と、試用期間や契約期間の条件を確かめてください。見分け方は正社員と契約社員の求人の見分け方にあります。宿泊・飲食で多いシフト制の求人についてはシフト制とはにまとめました。
3. 応募先の会社が実在し、続いているかを見る
自己都合で辞めて次を探す人が増えている時期は、転職先の選び方がそのまま次の数年を左右します。応募前に法人番号で会社の実在と所在地を確かめ、ブラック企業の見分け方なども参考にしてください。
4. 採る側は、求人の数より中身で選ばれる
求人を減らす業種がある月は、裏を返すと、出し続ける会社が目に留まりやすい時期でもあります。給与の書き方は求人の給与欄の見方で書きました。台帳で給与の記載があった自社求人は半分に届いていません。条件をはっきり書くだけでも、応募する側の安心につながります。
よくある質問
Q. 有効求人倍率1.18倍なら、仕事は見つけやすいのですか。
全体では求職者1人に1件以上の求人がある計算です。ただ正社員に限ると1.00倍で、業種や地域によって大きく違います。大阪府は0.95倍でした。希望する業種・地域・雇用の形で見るのが確実です。
Q. 完全失業率が上がったのは、景気が悪くなったからですか。
8月の完全失業率は2.5%で、前月より0.1ポイント上がりました。ただ前年同月と比べると、完全失業者は2万人減り、就業者は14万人増えています。1か月の動きだけで景気の向きを判断するのは早いと考えます。
Q. 宿泊・飲食の新規求人が11.1%減ったのは、その業種の会社が減ったからですか。
統計からは分かりません。しょくばログの台帳では、宿泊業・飲食サービス業の閉鎖の割合は16.5%で、ほかの業種と大きな差はありませんでした。求人が減った理由は、会社ごとの事情によると考えるのが妥当です。
Q. ハローワーク以外の求人は、この統計に入っていますか。
入っていません。一般職業紹介状況はハローワークを通した求人と求職者の統計です。会社のホームページや求人サイトだけに出ている求人は含まれません。
まとめ
2026年8月の有効求人倍率は1.18倍で横ばいでしたが、新規求人は宿泊・飲食で11.1%、卸売・小売で10.2%減り、業種ごとの差が目立つ月でした。正社員に限ると倍率は1.00倍です。しょくばログで集めた自社ホームページの求人は85.7%が正社員で、ハローワークの統計に出てこない求人もあります。全体の数字だけでなく、業種・地域・雇用の形に分けて見ること。仕事を探す人にも、人を採る会社にも、それが一番の近道です。