✍ 古家あきら | 2026-09-13 更新

業種別の離職率ランキング — 宿泊・飲食23.7%から金融・保険6.6%まで、応募前は「計」ではなく「一般労働者」の数字で見る

「離職率が高い業種はどこか」と聞かれたら、答えは1行で済みます。令和7(2025)年の離職率は、産業計13.7%。最も高いのは宿泊業・飲食サービス業の23.7%、最も低いのは金融業・保険業の6.6%です(厚生労働省「令和7年雇用動向調査」、2026年8月31日公表)。

ただ、この順位表をそのまま応募先の判断に使うと、1つ間違えます。「計」の離職率は、パートタイム労働者の出入りに引っ張られているからです。教育・学習支援業は計で15.1%ですが、一般労働者(いわゆるフルタイム)だけだと9.8%。卸売業・小売業は11.9%が8.5%に下がります。正社員として応募するなら、見るべきは「一般労働者」の列です。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「この業界は離職率が高いと聞いたが本当か」という質問をよく受けます。この記事では、①16業種の離職率の全列挙、②「計」と「一般労働者」で順位が入れ替わる話、③入職率とセットで読む方法、④うちのデータで見た「求人を出している会社の割合」と離職率のズレ、⑤35歳未満の中途採用者の離職、の順に書きます。1社の離職率をどう推定するかは会社の離職率を調べる4つの方法に、業種別の平均勤続年数は平均勤続年数は業種でどれだけ違うかに分けてあり、この記事は「業種ごとの離職率の実数」を担当します。

業種別の離職率(令和7年・計)— 16業種を全部並べる

雇用動向調査の「離職率」は、1月1日時点の常用労働者数に対する、その年1年間の離職者数の割合です。対象は常用労働者5人以上の事業所で、令和7年は上半期9,277事業所・下半期8,807事業所の回答をもとに推計されています。以下、令和7年の離職率(計)を高い順に並べます。

上位3業種(宿泊・飲食、サービス業、生活関連サービス・娯楽)が20%台で、次の教育・学習支援業との間に5ポイント以上の段差があります。下位は金融・保険、複合サービス(郵便局・協同組合など)、建設、電気・ガスが8%台以下。同じ日本の会社でも、業種で離職率は3.6倍違う(23.7% ÷ 6.6%)ということです。

人数で見ると、離職者数が最も多いのは医療・福祉の120.0万人、次いで卸売・小売の112.1万人、宿泊・飲食の104.3万人。医療・福祉は離職率としては真ん中あたりですが、働いている人が多い(1月1日時点で839.9万人)ので、辞める人の数では最多です。

「計」と「一般労働者」で順位が入れ替わる — 応募前に見るべき1点

同じ表を「一般労働者」(パートタイム労働者以外)だけで並べ直すと、順位がかなり動きます。

差が大きいのは教育・学習支援業(15.1% → 9.8%、5.3ポイント差)、生活関連サービス・娯楽業(20.1% → 16.1%)、卸売・小売業(11.9% → 8.5%)です。これらの業種は、パートタイム労働者の離職率がそれぞれ26.6%、25.1%、17.6%と高く、そこが「計」を押し上げています。教育・学習支援業は、一般労働者だけで見ると製造業(9.2%)とほぼ変わらない水準で、「離職率が高い業種」の上位からは外れます。

逆に、宿泊・飲食(21.5%)とサービス業(20.3%)は一般労働者でも20%を超えているので、パートを除いても「辞める人が多い業種」であることは変わりません。

産業計で見ると、一般労働者の離職率は11.4%、パートタイム労働者は19.9%。この8.5ポイントの差が、業種ごとのパート比率の違いを通じて「計」の順位を動かしています。正社員として応募するなら、その業種の一般労働者の離職率を相場として置く。これが、この記事でいちばん伝えたい1点です。

「離職率」と「3年以内離職率」は別の数字

ここで、よく混ざる2つの統計を切り分けておきます。

前者は「毎年の出入り」、後者は「新卒だけを3年追った累積」なので、桁が違って見えても矛盾はありません。「うちの業界は離職率3割」という言い方をする人がいたら、それは新卒3年の話であることが多い。雇用動向調査の離職率で3割を超える業種は1つもありません(最高が宿泊・飲食の23.7%)。

新卒3年離職率の業種別の読み方は、平均勤続年数は業種でどれだけ違うかでしょくばらぼ掲載社の3年度合算と並べて書いています。この記事では、それと重ならないように、新卒以外の若手(35歳未満の中途採用者)の離職を後半で扱います。

入職率とセットで読む — 「辞める人が多い」と「減っている」は別

離職率だけを見ると「宿泊・飲食は人が辞めていく業界」に見えますが、同じ調査の入職率を横に置くと景色が変わります。宿泊・飲食の入職率は27.8%で、離職率23.7%を4.1ポイント上回っています(入職超過率+4.1ポイント)。つまり、辞める人も多いが入る人はもっと多い、人が業界の中を回っている状態です。

入職超過率(入職率−離職率)を業種別に見ると、令和7年は次のようになります。

さらに一般労働者だけで見ると、離職超過の業種が増えます。製造業 −0.4、教育・学習支援業 −0.4、医療・福祉 −0.5、生活関連サービス・娯楽業 −1.1、複合サービス事業 −2.1。医療・福祉は「計」では+0.2の入職超過ですが、一般労働者は離職が入職を上回り、パートタイム労働者(+1.7)で補っている構造です。

応募する側にとって、この違いは意味があります。離職率が高くても入職超過なら、その業種は採用を続けていて、転職先も業界内に多い。離職率が低くても離職超過なら、その業種は採用を絞っている可能性があり、辞めた後の同業への転職は狭くなります。「離職率が高い=避けるべき」ではなく、「離職率が高く、かつ離職超過」が本当に注意すべき組み合わせです。令和7年に一般労働者で「離職率が産業計11.4%より高く、かつ離職超過」の両方を満たすのは、生活関連サービス・娯楽業(離職率16.1%、入職超過率−1.1)と医療・福祉(13.6%、−0.5)の2つでした。

前年からどう動いたか — 産業計は0.5ポイント低下、卸売・小売は3.2ポイント低下

令和6年から令和7年への変化も、同じ調査で追えます。産業計の離職率は14.2%から13.7%へ0.5ポイント低下しました。業種別に大きく動いたのは次の通りです。

卸売・小売業の3.2ポイント低下は、一般労働者(10.7% → 8.5%)とパートタイム労働者(21.3% → 17.6%)の両方が下がった結果です。1年で3ポイント動く業種があるので、「この業種は離職率◯%」と覚えるより、毎年8月末に出る最新の数字を引き直すほうが確実です。

離職の理由も同じ調査にあります。令和7年の離職率13.7%のうち、「個人的理由」(結婚・出産育児・介護看護・その他の個人的理由の合計)によるものが10.2%、「事業所側の理由」(経営上の都合・出向・出向元への復帰の合計)が0.9%。離職の大半は本人都合で、会社都合は1%に満たないというのが全体像です。事業所側の理由が前年比+0.1ポイントで、増えてはいますが小さい。会社都合の離職が目立つ会社は、業種の相場から外れているということになります。人手不足倒産の見分け方で書いた「人が辞めて潰れる」型は、この0.9%の側の話です。

うちのデータで確かめた — 「求人を出している会社の割合」は離職率と一致しない

ここからがしょくばログのデータです。厚生労働省の「職場情報総合サイト しょくばらぼ」の一括ダウンロードCSV(2026年6月10日版・146,479社)には、各社がハローワークインターネットサービスに求人を出しているか(一般求人フルタイム/パートタイム/新卒・既卒の3区分)が全社分入っています。「離職率が高い業種ほど、求人を出している会社の割合も高いはずだ」という仮説を、この146,479社で確かめました。

結果は、一致しませんでした。フルタイム求人を出している会社の割合(業種別・掲載社数2,000社以上の業種)は次の通りです。

離職率が最も高い宿泊・飲食は15.1%で全体平均を下回り、離職率が下から3番目の建設業(8.7%)と、下から5番目の運輸業(9.0%)が上位に来ています。離職率が20.1%の生活関連サービス・娯楽業は10.5%で下から2番目です。

理由は2つあります。1つは求人を出す媒体が業種で違うこと。情報通信業や生活関連サービス業は、ハローワークではなく民間の求人サイトや自社サイトで採用する会社が多い。もう1つは会社の規模です。同じCSVで規模別に見ると、フルタイム求人を出している割合は30人以下で12.7%、31〜100人で33.3%、101〜300人で43.0%、301〜1,000人で46.9%、1,001人以上で47.7%と、規模が大きいほど高い。医療・福祉の301〜1,000人では87.3%が出しているのに、情報通信業の同じ規模では12.1%です。

ここから言えるのは、「求人がたくさん出ている業種・会社=辞める人が多い」という読み方は、業種をまたぐと成り立たないということです。求人の出方から離職を推定するなら、会社の求人が突然消える理由で書いたように、同じ会社の求人を時系列で追って「同じ職種を何度も出しているか」を見るのが筋で、他社や他業種と横に比べるものではありません。

うちのデータ② — 35歳未満の中途採用者は、新卒より辞めている

同じCSVには、若者雇用促進法の公表項目として「新卒者等以外(35歳未満)の採用・定着状況」——前年度・2年度前・3年度前の採用者数と離職者数——を記入した会社があります。採用者数が1人以上で離職者数も記入している1,355社について、3年度分を合算しました。

(記入社数が40社未満の業種は、数字が少数の会社に左右されるため省いています。)

同じCSVで新卒者の3年度合算を同じ方法で出すと、1,813社・採用17,661人・離職2,725人で15.4%。つまり、同じ公表企業群の中で、35歳未満の中途採用者は新卒採用者より7.1ポイント多く辞めています。

業種別で目を引くのは情報通信業です。雇用動向調査の離職率は10.4%(一般労働者10.0%)で16業種の真ん中より下なのに、35歳未満の中途採用者の3年度合算離職は31.2%で、この集計の中では最も高い。情報通信業の「辞めやすさ」は、業界全体に薄く広がっているのではなく、若手の中途採用者に集中している、と読めます。転職で情報通信業に入る人は、業種の離職率10.4%ではなく、こちらの数字を相場と考えたほうが実態に近いはずです。

同じCSVの「中途採用比率」(前年度の採用者に占める中途採用の割合)を記入した922社の中央値は60.0%で、業種別ではサービス業89.0%(127社)、運輸・郵便業82.4%(60社)、医療・福祉80.0%(74社)が高く、製造業47.4%(302社)、情報通信業42.0%(46社)、金融・保険業18.9%(26社)が低い。離職率が高い業種ほど採用を中途で埋めている、という並びとおおむね一致しています。

注意として、これらはしょくばらぼに自発的に情報を載せた会社の集計で、集計に使えた会社は146,479社のうち新卒欄で1.2%(1,813社)、35歳未満中途欄で0.9%(1,355社)しかありません。公表義務のある大きな会社に偏っているので、個々の数値は「公表している会社の中での実績」として読んでください。

応募前の使い方 — 業種の相場を置いてから、その会社を見る

以上を、応募先を見るときの手順に落とすとこうなります。

離職率が高い業種を避ける、という判断自体は否定しません。ただ、業種の数字は「その業種で働く人全体の平均」であって、応募先の1社の数字ではない。業種の相場を知る意味は、その会社が相場から外れているかどうかを判定するためです。相場を知らずに「離職率20%は高い」と言っても、宿泊・飲食では並みの数字であり、金融・保険なら異常値です。

よくある質問

離職率が高い業種のワースト3はどこですか?

令和7年雇用動向調査の「計」で、宿泊業・飲食サービス業23.7%、サービス業(他に分類されないもの)21.2%、生活関連サービス業・娯楽業20.1%です。一般労働者だけで見ても上位3つは同じ顔ぶれ(21.5%、20.3%、16.1%)です。ただし、3業種とも入職率が離職率を上回っている(入職超過)ので、「人が減っている業界」ではありません。

離職率が低い業種はどこですか?

同じ調査で、金融業・保険業6.6%、複合サービス事業8.6%、建設業8.7%、電気・ガス・熱供給・水道業8.8%です。一般労働者では金融・保険6.3%、複合サービス7.7%、建設7.9%、電気・ガス8.0%。ただし複合サービス事業は入職超過率が−2.3ポイントで、離職率は低いが人は減っている業種です。

離職率は何%以上だと高いと言えますか?

業種で相場が違うので、一律の線は引けません。産業計は13.7%(一般労働者11.4%)で、これを上回る業種が「平均より高い」と言えます。1社について判断するときは、その業種の一般労働者の離職率を相場に置き、それより明らかに高いかどうかで見てください。会社が自社で公表している離職率は、分母を正社員だけにしているか、パートや契約社員を含めているかが会社ごとに違うので、比べる前にその定義を確認し、正社員だけなら一般労働者の列と比べてください。

業種別の離職率はどこで確認できますか?

厚生労働省「雇用動向調査」の結果の概要(毎年8月末に前年分を公表)に、「産業別の入職と離職」として16業種の入職率・離職率・入職超過率が、計・一般労働者・パートタイム労働者の3列で載っています。事業所規模別や年齢階級別の詳しい表はe-Statに掲載されています。新卒の3年以内離職率は、同じ厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況」(毎年10月頃公表)で、こちらは業種別・事業所規模別に出ています。

離職率が高い業種の会社は、避けたほうがいいですか?

業種の離職率だけでは決められません。宿泊・飲食のように離職率が高くても入職超過の業種は、業界内に転職先が多く、辞めても次がある構造です。避けるべきかどうかは、その会社の勤続年数・平均年齢・求人の出方が業種の相場から外れているかで判断してください。うちのデータでは、35歳未満の中途採用者の離職は情報通信業が31.2%と最も高く、雇用動向調査の離職率(10.4%)からは見えない偏りがあります。業種の数字は「相場」であって、個社の判定は別の作業です。

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出典

業種別の入職率・離職率・入職超過率、離職者数、1月1日現在の常用労働者数、前年との差、離職理由別離職率は、厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」(2026年8月31日公表)の「産業別の入職と離職」(表4-1・表4-2)、「入職と離職の推移」(表1)、「離職理由別離職率の推移」(図6)、および付属統計表2-1・2-2から引用しました。離職率は「1月1日現在の常用労働者数に対する年間離職者数の割合」で、常用労働者5人以上の事業所が対象です。新規学卒者の3年以内離職率(令和4年3月卒業者:高卒37.9%・大卒33.8%、大卒の宿泊業・飲食サービス業55.4%)は、厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(2025年10月24日公表)によります。

ハローワーク求人の掲載割合(業種別・規模別)、35歳未満の中途採用者および新卒者の3年度合算の離職割合、中途採用比率の中央値は、厚生労働省「職場情報総合サイト しょくばらぼ」の一括ダウンロードCSV(公的オープンデータ・2026年6月10日版)146,479社分を、しょくばログのデータベース上で2026年9月13日に独自に集計したものです。厚生労働省が公表している統計ではありません。 3年度合算は、前年度・2年度前・3年度前の採用者数と離職者数をそれぞれ足し合わせて割ったもので、採用者数が1人以上かつ離職者数を記入した会社に限っています。掲載するかどうかは会社の任意で、記入している会社は公表義務のある大きな会社に偏っているため、個々の数値は「公表した会社の中での実績」として読んでください。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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