✍ 古家あきら | 2026-10-13 更新
和菓子店の倒産、2026年1〜9月で22件と過去最多ペース──社名に和菓子の言葉を持つ会社は全国481社。登記から読める「家業の形」と、働く人・取引先が確かめたいこと
先に結論です。帝国データバンクによると、2026年1〜9月に倒産した和菓子店は22件で、これまで最も多かった2025年を上回るペースです。 2020年以降に倒産した138件のうち、業歴100年以上の店が24件(17.4%)、業歴50年以上が半数を占めていました。
原因として挙げられているのは、原材料高、職人の高齢化による技術の引き継ぎの難しさ、店舗や工場への投資の負担、コロナ禍の借入の返済です。長く続いてきた店ほど、いくつもの負担が同時にのしかかっている、というのがこの調査から読めることです。
しょくばログという会社データベースを運営していると、社名を見ただけで「この会社は家業として長く続いてきたのだろう」と感じる登記に毎日のように出会います。この記事では、報道の数字を整理したうえで、台帳から和菓子系の社名を持つ会社を数え、洋菓子系の会社と比べてみます。個別の店や会社を評価するものではありません。
出典:「和菓子店」の倒産動向(2026年1-9月)(帝国データバンク・2026年10月3日)
調査で確認できる数字
帝国データバンクの公表内容から、数字と定義だけを抜き出します。
- 2026年1〜9月の倒産:22件(負債1,000万円以上の法的整理)
- 推移:最多だった2025年を上回り、過去最多を更新するペース(2025年の件数は本文に記載なし)
- 2020年以降の倒産138件のうち、業歴100年以上:24件(17.4%)
- 同じく、業歴50年以上:半数
- 集計対象の「和菓子店」:菓子製造(小売を含む)のうち、まんじゅう・干菓子・練り切りなど和菓子を作る企業
数字は負債1,000万円以上の法的整理だけを数えたものです。手続きをせずに店を閉じた「休廃業」は含まれていません。実際に看板を下ろした店は、この数字よりずっと多いと考えるのが自然です。
なぜ和菓子店は苦しいのか
調査が挙げている背景を、立場ごとに分けて整理します。
- 仕入れの側:小豆、砂糖、もち米の値上がりが続き、包装資材・光熱費・人件費も上がっている
- 売る側:和菓子は普段のお茶請けや地域の贈答に根ざしていて、値上げへの抵抗が強い。値上げのあと来店の回数や販売数が落ち、仕入れの上昇分を転嫁しきれない店がある
- 需要の側:若い世代の和菓子離れと常連客の高齢化、冠婚葬祭の簡素化や手土産需要の縮小
- 人の側:代表者の体調不良や職人の引退をきっかけに、続けられなくなる店がある
倒産した例として、調査は高砂屋といづみや(いずれも破産)を挙げています。高砂屋の経緯は創業1918年の和菓子店の破産を取り上げた記事で詳しく書いています。
一方で、業績を伸ばしている店もあります。観光地で訪日客を取り込む店、コンビニやスーパー向けにOEM(相手先ブランドでの製造)を請け負う店、ネット通販やふるさと納税で販路を広げる店、あんことチョコレートを組み合わせた「ネオ和菓子」やフルーツ大福で若い客をつかむ店です。値上げが通りにくい業種の事情は価格転嫁ができない業種の記事でも触れています。
しょくばログの台帳で数えた和菓子系の会社
ここからは、しょくばログが持つ国税庁の法人番号データで数えた結果です。株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社のうち、社名に「和菓子」「菓匠」「饅頭・まんじゅう」「羊羹・ようかん」「最中」「団子・だんご」「煎餅・せんべい」「おかき」「あられ」「甘納豆」「どら焼・どらやき」のいずれかを含む会社を集計しました。「大福」は地名や屋号として菓子と関係なく使われる例が多いと考え、外しています。
- 該当する会社:481社
- うち登記が閉鎖されている会社:62社(12.9%)
- 5種類の会社全体(約516万社)での閉鎖済みの割合は13.5%
最初にお断りしておくと、この数え方は和菓子店の一部しか拾えていません。和菓子店の多くは「〇〇屋」「〇〇堂」「〇〇本舗」のような屋号を社名にしていて、社名だけでは和菓子かどうか分からないからです。それでも、どんな形の会社が多いかの傾向はつかめます。
今も残る会社の約半分が「もう新しく作れない形」
閉鎖されていない419社を、会社の種類で分けました。
- 株式会社:192社(45.8%)
- 有限会社:187社(44.6%)
- 合同会社:28社(6.7%)
- 合資会社:9社
- 合名会社:3社
有限会社・合資会社・合名会社を合わせると199社、47.5%です。5種類の会社全体(閉鎖されていない約446万社)では34.4%なので、和菓子系の社名は2006年以前から続く形の会社が多いことが分かります。有限会社は2006年から新しく作れなくなりました。有限会社への就職で気になる点は有限会社に就職するのは不利なのかという記事に、合資・合名会社の仕組みは合資会社・合名会社とはどんな会社かという記事にまとめています。
逆に、2006年以降に作れるようになった合同会社は6.7%で、全体の9.2%より少なめです。新しく和菓子の会社を立ち上げる人がいないわけではありませんが、主役はまだ古くからの会社だと読めます。
洋菓子系の会社と比べると
比べるために、社名に「洋菓子」「パティスリー」「ケーキ」「シュークリーム」「バウムクーヘン」「ショコラ」を含む会社も数えました。
- 該当する会社:597社、うち閉鎖済み69社(11.6%)
- 今も残る528社のうち有限会社:284社(53.8%)
- 有限・合資・合名の合計:298社(56.4%)
- 合同会社:43社(8.1%)
意外なことに、有限会社の割合は洋菓子系のほうが高く出ました。昭和の終わりから平成にかけて開業した町のケーキ屋さんが、有限会社のまま続いている姿が浮かびます。「和菓子だけが古い」のではなく、菓子づくりは業態を問わず、小さな家業として長く続いてきた会社が多いというのが台帳から見える姿です。
閉じ方の違い
閉鎖済みの会社を、閉鎖の理由で分けると違いが出ました。
- 和菓子系(62社):清算の結了など42社、登記官による閉鎖16社(25.8%)、合併4社
- 洋菓子系(69社):清算の結了など59社、合併6社、登記官による閉鎖4社(5.8%)
登記官による閉鎖は、長いあいだ登記の更新がない会社を法務局が職権で整理したものです。和菓子系はその割合が4分の1を超えました。件数が少ないので強い結論は出せませんが、手続きをしないまま活動が止まり、そのまま整理された会社が一定数あることはうかがえます。登記官による閉鎖が何を意味するかは閉鎖登記簿の記事で説明しています。
働く人・取引先が確かめておきたい3つのこと
1. 運営している会社の登記が生きているか
店の看板と、運営している会社の名前は違うことがよくあります。法人番号で会社を引けば、登記が閉鎖されていないか、所在地が変わっていないかを無料で確かめられます。手順は法人番号の調べ方で説明しています。
2. 後を継ぐ人が決まっているか
今回の調査でも、代表者の体調不良や職人の引退がきっかけになる例が挙がっていました。和菓子の職人として働く人にとって、店主の年齢や後継ぎの有無は大事な情報です。面接で「この先、お店はどなたが継ぐ予定ですか」と聞くのは失礼なことではありません。老舗を外から見るときの考え方は老舗と新興の会社の見分け方にまとめています。
3. 給料や支払いが遅れ始めていないか
取引先として納品している場合、支払いの遅れは最初に出やすいサインです。勤め先が倒産して給料が払われないときは、国の未払賃金立替払制度を使える場合があります。条件と流れは給料が遅れる会社の記事で説明しています。
運営者として思うこと
和菓子系の社名を一つずつ見ていくと、地名と菓子の名前を組み合わせた、その土地でしか通じない名前が並んでいます。倒産の件数は22件でも、その裏には、手続きをせずに静かに暖簾を下ろした店がたくさんあるはずです。
一方で、調査が紹介しているように、販路や商品を変えて伸びている店もあります。好きなお店や勤め先の今を知りたいときは、まず登記という誰でも見られる記録から確かめてみてください。
よくある質問
和菓子店の倒産は増えているのですか?
帝国データバンクによると、2026年1〜9月の倒産は22件で、過去最多だった2025年を上回るペースです。数字は負債1,000万円以上の法的整理だけを数えたもので、手続きをせずに閉めた店は含まれていません。
倒産した和菓子店は古い店が多いのですか?
2020年以降の倒産138件のうち、業歴100年以上が24件(17.4%)、業歴50年以上が半数でした。長く続いた店ほど、設備の更新や後継ぎの問題を同時に抱えやすいと考えられます。
しょくばログで和菓子店を探せますか?
会社名や法人番号で検索できます。ただし和菓子店の多くは屋号を社名にしているため、社名の言葉だけで和菓子店を全部見つけることはできません。店の運営会社の名前が分かれば、登記の状態を確かめられます。
通っている和菓子店が閉まったかどうかは、どうすれば分かりますか?
店の告知が一番確かです。運営会社が分かる場合は、法人番号で登記が閉鎖されていないかを確かめられます。ただし破産や解散が決まっても、手続きが終わるまで登記はしばらく閉鎖になりません。違いは会社が解散・休眠しているか調べる方法で整理しています。