✍ 古家あきら | 2026-10-03 更新
青森みちのく・岩手・秋田の3地銀が経営統合の協議へ — メインバンクにする会社は合計2万9,236社。会社サイトを数えたら、前回の合併で消えた旧行名がまだ残っていた
先に結論です。青森みちのく銀行を傘下に持つプロクレアホールディングス、岩手銀行、秋田銀行の3者が、2028年4月の経営統合をめざして協議に入ると発表しました(2026年10月2日)。 合併ではなく持ち株会社をつくる方式で、本社は盛岡市に置く方向です。3行の総資産は合計で13兆円を超え、全国で10位程度の地方銀行グループになると報じられています。
東京商工リサーチの集計では、3行をメインバンクにしている会社は合計2万9,236社。統合が実現すると、メインバンクとしての取引社数は全国8位、地方銀行では4位、東北では七十七銀行(1万7,932社)を抜いて1位になります。
ただ、取引先の会社にとって大事なのは順位よりも「自分の口座や借入、請求書の振込先はどうなるのか」です。今回発表されたのは「協議に入る」ことで、3行は合併しない方針です。 当面、銀行名も口座も変わりません。
しょくばログという会社データベースを運営していると、銀行の統合のたびに「取引先の振込先が変わった」「会社概要の取引銀行が古いままだ」という話に出会います。この記事では、報道で確かめられる事実と、うちの台帳と会社サイトの保存テキストで数えた結果を並べます。
出典:東北3地銀、統合協議入り 再来年4月目指す 青森みちのく・岩手・秋田(時事通信・2026年10月2日)
出典:青森みちのく銀・秋田銀・岩手銀の統合協議 メインバンク社数は8位に、東北最大地銀G誕生へ(東京商工リサーチ・2026年10月2日)
報道で確認できる事実
- 発表日:2026年10月2日。3行の頭取が盛岡市で会見(岩手日報)
- めざす時期:2028年4月の経営統合
- 方式:持ち株会社方式。3行は合併しない。本社は盛岡市の方向
- 総資産(2026年3月末):プロクレアHD 5兆8,454億円、岩手銀行 3兆9,137億円、秋田銀行 3兆5,768億円
- メインバンクにする会社の数(東京商工リサーチ):青森みちのく銀行 1万3,221社、秋田銀行 8,419社、岩手銀行 7,596社
- 青森県での存在感:青森みちのく銀行は県内で71.2%のシェアを持つ
東京商工リサーチは、システム費用の増加やネット銀行との競争の中で、地方銀行が生き残るにはメインバンクの取引先が「約2万社」が一つの目安とされる、という見方も紹介しています。
しょくばログの台帳で見る3県
登記が生きている法人は3県で8万9,420
国税庁の法人番号データを土台にしたうちの台帳で、本店が3県にある法人を数えました(会社以外の法人も含みます)。
- 青森県:活動中3万3,351法人、登記の閉鎖率13.2%
- 岩手県:活動中2万9,455法人、閉鎖率14.0%
- 秋田県:活動中2万6,614法人、閉鎖率13.6%
全国の閉鎖率は13.3%なので、3県とも全国並みです。3県とも有限会社と株式会社がほぼ同じ数で、それぞれ活動中の法人の3割台を占めます。
この8万9,420と、メインバンク取引の2万9,236社は数え方が違うので、割り算して「3社に1社」とは言えません。台帳には休眠中の会社や会社以外の法人も入り、東京商工リサーチの数は同社の企業データベースで取引銀行が分かる会社の数だからです。
会社サイトに「取引銀行」を書く会社は16.6%
うちは会社の公式サイトのテキストを保存しています。文字化けを除いた3万1,159社のうち、「取引銀行」「メインバンク」などの言葉が出てくる会社は5,171社(16.6%)でした。会社のメインバンクは登記にも決算公告にも載らないので、外から手がかりになるのはこの欄くらいです。詳しくは会社のメインバンクを調べる方法に書きました。
そのうち、今回の3行(青森みちのく銀行と、その前身の青森銀行・みちのく銀行を含む)のどれかの名前を書いている会社は63社でした。保存しているサイトは首都圏が多く、3県の会社のサイトは合わせて400社分しかないので、この63社は3県の実態を代表する数ではありません。そのうえで、読み取れたことが2つあります。
前回の合併から1年9か月、旧行名のほうが多かった
青森銀行とみちのく銀行は2025年1月1日に合併して青森みちのく銀行になりました(日本経済新聞)。ところが会社サイトの取引銀行の記載を数えると、新しい「青森みちのく銀行」と書いているのは8社、旧行名の「青森銀行」は8社、「みちのく銀行」は3社でした。合併から1年9か月たっても、旧行名のほうが多く残っています。
会社概要のページは、会社が自分で直さない限り更新されません。銀行の合併は会社側に手続きの負担がほとんど無いぶん、サイトの表記を直すきっかけもありません。メガバンクの旧行名が残っている例は三井住友銀行をメインバンクにする会社の記事でも触れました。
3行のうち2行以上と取引している会社も11社
63社のうち11社は、3行のうち2つ以上のグループの名前を並べていました。複数の銀行と取引するのは普通のことで、統合されると「別々の銀行」だった取引先が同じグループの中に入ります。持ち株会社方式なら口座はそのままでも、グループ全体としての貸出の枠をどう見るかは、銀行側の判断になります。統合の協議はまだ始まったばかりなので、ここは各行からの案内を待つしかありません。
取引先の会社が確かめておきたいこと
1. 「協議入り」と「合併」を混ぜない
今回発表されたのは協議の開始で、統合は2028年4月が目標です。しかも3行は合併しない方針なので、口座番号、支店名、振込先の銀行名は、少なくとも当面は変わりません。先回りして振込先の変更依頼を出す必要はありません。
2. 振込先の変更依頼は、必ず銀行の公式案内と突き合わせる
銀行の統合や合併のニュースが出ると、「口座が変わったので新しい口座に振り込んでほしい」という連絡が紛れ込みやすくなります。取引先から振込先の変更を言われたら、電話番号を自分で調べてかけ直すのが基本です。口座名義と会社名がずれているときの確かめ方は振込先の口座名義が会社名と違うときにまとめています。
3. 自社サイトの「取引銀行」欄を見直す
前回の合併で、旧行名のまま残っているサイトが多いことは上で見たとおりです。取引銀行の欄は、取引先や求職者が会社の安定性を読むときに見る場所です。古い銀行名が残っていると「更新されていない会社」に見えます。更新が止まったサイトの見られ方はホームページの更新が止まっている会社は大丈夫かで書きました。
4. 合併しても、取引先の会社の法人番号は変わらない
銀行が持ち株会社の下に入っても、取引先の会社そのものの登記や法人番号には何も起きません。会社どうしが合併したときに法人番号がどうなるかは合併・買収で法人番号はどうなるかに、持ち株会社の仕組みはホールディングスとは何をする会社かにあります。
よくある質問
Q. 統合したら、口座番号や振込先は変わりますか。
今回は持ち株会社方式で、3行は合併しない方針と報じられています。発表時点では、口座番号や銀行名が変わるという話は出ていません。変更がある場合は、各行から取引先に案内が出ます。それまでは振込先を変える必要はありません。
Q. 青森銀行・みちのく銀行と書いたままの会社は大丈夫ですか。
旧行名が書いてあることは、その会社の経営状態とは関係ありません。会社概要のページが更新されていない、というだけです。うちが保存しているサイトでも、合併から1年9か月たって旧行名のほうが多く残っていました。
Q. 取引先のメインバンクはどこで分かりますか。
非上場の会社のメインバンクは公的なデータに載っていません。会社サイトの「取引銀行」欄か、信用調査会社の有料レポートで推定することになります。手順は会社のメインバンクを調べる方法にまとめています。
Q. 地方銀行の統合は、地元の中小企業にとって悪いことですか。
一概には言えません。規模が大きくなれば、システムや人材への投資に余力が出るという見方があります。一方で、同じグループの中で融資の枠をどう見るかは、統合後の方針しだいです。発表されたのは協議の開始なので、今の時点で良し悪しを決めつけないほうが安全です。