✍ 古家あきら | 2026-09-14 更新
三井住友銀行をメインバンクにする会社が860社増え、メガバンクで唯一の増加 — 銀行から外れた3,450社の理由は「休廃業」が「倒産」の3.7倍。登記の閉鎖762,832件と並べると、外から読めるのは「なぜ」ではなく「どう閉じたか」だけだった
東京商工リサーチ(TSR)が2026年9月13日に公開した「2026年メインバンク調査」の分析で、三井住友銀行をメインバンクとする企業は10万2,557社、前年から860社の増加で、メガバンク3行のなかで唯一、社数が増えました。1年間で新たにメインバンクになった企業が4,310社、廃業やメイン替えで外れた企業が3,450社、差し引きで860社の純増です。
報道で確認できる数字を並べます。新規4,310社のうち業歴5年未満が1,349社(31.3%)、10年以上が2,028社(47.0%)。業種はサービス業他1,444社(33.5%)、建設業571社(13.2%)、情報通信業505社(11.7%)。本社地は東京都1,913社(44.3%)、大阪府934社(21.6%)、兵庫県497社(11.5%)。支店別のトップは、2025年5月に始まった中小企業・新設企業向けのデジタルサービス「Trunk(トランク)」のデジタル支店「トランクNORTH」の151社で、渋谷駅前(71社)や本店営業部(70社)を上回りました。三井住友銀行によると、新規口座開設数の半数が新設法人(2026年6月時点)で、2026年7月に9万口座を突破したとのことです。
一方で外れた3,450社の理由は、「休廃業・解散」1,062社(30.7%)、「銀行変更」1,052社(30.4%)、合併や存在不明などの「その他」(30.3%)、「倒産」289社(8.3%)でした。
出典:東京商工リサーチ TSRデータインサイト「三井住友銀行の『メインバンク取引社数』増加 ~ メガバンクで唯一増加、新設・中小企業向け脚光 ~」(2026年9月13日)
先に結論を書きます。この調査でいちばん見落とされやすいのは、「銀行から外れた会社の理由」の並びです。倒産は289社、休廃業・解散は1,062社で、会社が銀行の前から消える理由は、倒産より休廃業のほうが3.7倍多い。 これは銀行が取引を通じて「何が起きたか」を知っているから分けられる数字で、登記や国税庁の公表データからは、この2つを分けることができません。うちのデータで閉鎖済みの法人762,832件を数えると、そのことがはっきり出ました。順に書きます。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「応募先の会社は取引銀行がメガバンクだと安心か」「新しい会社は口座も作れないと聞くが本当か」「取引先が消えたのは倒産か、たたんだだけか」という相談があります。この記事では、TSRの調査の数字と、うちのデータベースの実数を並べて、それぞれが何を数えていて何を数えていないかを分けます。
銀行が数える「外れた理由」と、登記に残る「閉じ方」は別のもの
うちのデータベースは国税庁の法人番号公表データをもとにしていて、記事執筆時点で5,791,529件の法人を持っています。このうち登記記録が閉鎖されているのは762,832件(13.2%)です。国税庁の公表データには「登記記録の閉鎖等の事由」という項目があり、区分は4つしかありません。閉鎖済み762,832件の内訳は次の通りでした。
- 清算の結了等 … 491,764件(64.5%)
- 登記官による閉鎖 … 210,087件(27.5%)
- 合併による解散等 … 59,612件(7.8%)
- その他の清算の結了等 … 1,369件(0.2%)
ここで注意がいるのは、破産手続が終結した会社も、自分で解散して清算した会社も、公表データでは同じ「清算の結了等」に入ることです。銀行の分類にある「倒産」と「休廃業・解散」は、登記の側では区別されません。TSRの調査で「倒産8.3%、休廃業・解散30.7%」と分けて出せるのは、銀行が取引先として、その会社に何が起きたかを知っているからです。
逆に、登記にしか残らない情報もあります。「登記官による閉鎖」の210,087件は、役員変更などの登記を12年間していない株式会社が「みなし解散」とされ、その後も動きがなければ登記官の職権で閉鎖される、という流れが主です。これは「誰かが手続きをして閉じた」のではなく、「放置されたまま消えた」会社です。銀行の分類でいえば「休廃業・解散」か「存在不明」に混ざる部分で、外から見てもっとも判別しにくい閉じ方です。解散と閉鎖の違いは会社が解散・休眠しているか調べる方法に書きました。
つまり、銀行が持っているのは「なぜ消えたか」、登記が持っているのは「どう閉じたか」で、この2つは重なりません。応募先や取引先を外から調べるときに使えるのは後者だけ、というのが今回の数字から読める前提です。
「登記官による閉鎖」は株式会社に偏り、合同会社ではほとんど起きない
閉じ方を法人種別で分けると、差がはっきり出ます。
- 株式会社(2,920,971件、閉鎖407,175件=13.9%) … 閉じ方は「清算の結了等」56.4%、「登記官による閉鎖」32.5%、「合併」11.0%
- 有限会社(1,675,486件、閉鎖245,936件=14.7%) … 「清算の結了等」73.5%、「登記官による閉鎖」23.8%、「合併」2.7%
- 合同会社(451,017件、閉鎖38,575件=8.6%) … 「清算の結了等」90.1%、「合併」6.3%、「登記官による閉鎖」3.6%
会社法の「休眠会社のみなし解散」は株式会社を対象にした制度で、合同会社には適用されません。合同会社の閉鎖の9割が「清算の結了等」なのは、閉じるときに自分で手続きをするしかないからです。合同会社の閉鎖率が8.6%と低いのは、制度が2006年に始まって歴史が浅いことと、この「放置では消えない」性質の両方が効いていると読めます。法人の種類ごとの違いは法人の種類一覧にまとめてあります。
新規の3割が「業歴5年未満」 — 設立年月日が外から分かる会社は63,954社しかない
TSRの調査では、新たにメインバンクになった4,310社のうち1,349社(31.3%)が業歴5年未満で、その業種は「受託開発ソフトウェア業」114社、「経営コンサルタント業」98社など、小さな資本で始められるものが目立つとされています。
うちのデータで同じことを確かめようとして、まず壁に当たりました。国税庁の法人番号公表データには、設立年月日が入っていません。 うちが設立年月日を持っているのは、経済産業省のgBizINFOに登録があり、日付が確認できた63,954社だけです。579万件の1.1%で、しかも補助金の申請や入札のために自分で登録した会社に偏っています。この前提で数えると、次の通りでした。
- 設立から5年未満(2021年9月14日以降の設立) … 3,049社(4.8%)
- 5年以上10年未満 … 4,036社(6.3%)
- 10年以上 … 56,869社(88.9%)
5年未満の3,049社の法人種別は、株式会社2,475社(81.2%)、合同会社391社(12.8%)で、本店は東京都が1,173社(38.5%)、東京・大阪・兵庫の3都府県を合わせると1,457社(47.8%)です。TSRの調査で新規4,310社の77.6%(3,344社)が東京・大阪・兵庫に集中しているのと比べると、うちのデータのほうが地方の割合が高い。ただし、うちの63,954社は「gBizINFOに自分で登録した会社」という偏りがあるので、どちらが日本の新設法人の実態に近いかは、この2つの数字からは言えません。参考に、閉鎖されていない法人5,028,697件のうち、東京・大阪・兵庫の3都府県にある会社は1,774,276件(35.3%)です。
この3,049社のうち、すでに登記が閉鎖されているのは15社(0.5%)で、理由は「清算の結了等」8社、「合併」7社、「登記官による閉鎖」は0でした。全体の閉鎖率13.2%と比べると桁が違いますが、これは「若い会社は潰れない」という意味ではありません。みなし解散は登記の放置が12年続かないと始まらないので、5年未満の会社が「登記官による閉鎖」に至ることは制度上ほぼ起きない、というだけです。設立年を外から確かめる方法は会社の設立年を調べる方法に書いてあります。
「メガバンクがメインバンク」は安心材料になるか — 数えられる範囲で言えること
TSRの調査を、応募者や取引先の立場で読み直すと、3つのことが言えます。
- メインバンクは登記にも公表データにも載らない。 取引銀行が分かるのは、会社サイトや採用ページに会社が自分で書いている場合だけです。うちが会社サイトの本文を保存している32,838社のうち、取引銀行を書いているのは16.8%(5,507社)でした。調べ方と限界は会社のメインバンクを調べる方法にまとめてあります。
- 「メガバンクと取引がある」は、審査を通った証拠にはならなくなってきた。 今回の調査で三井住友銀行の新規の3割が業歴5年未満、支店別トップがデジタル支店で、新規口座の半数が新設法人だったのは、初期費用・月額無料のネット口座で新設法人を取りに行っている結果です。「メガバンクの口座がある=一定の与信を通った」という昔の読み方は、少なくとも新しい会社には当てはまりにくくなっています。
- 銀行が「休廃業」と「倒産」を分けられるのは、銀行だからです。 外から見る側は、登記の閉鎖事由(清算の結了等・登記官による閉鎖・合併)までしか読めません。会社が消えたと聞いたとき、うちの会社ページで「閉鎖日」と「閉鎖事由」を確かめ、「登記官による閉鎖」なら放置型、「合併」なら別の会社に引き継がれた可能性がある、というところまでが、無料で確かめられる範囲です。合併で消えた会社の追い方は「買収された会社」は登記から消えるのかに書きました。
三井住友銀行をメインバンクとする10万2,557社は、うちのデータで閉鎖されていない法人5,028,697件の2.0%にあたります。TSRの調査がメインバンクを判定できた母数はこの記事には書かれていないので、「日本の会社の2%がSMBCをメイン」と読むのは正確ではありませんが、メガバンク1行の取引先が全法人のなかでどのくらいの厚みかの目安にはなります。
よくある質問
三井住友銀行がメインバンクの会社は、外から調べられますか
登記簿にも国税庁の法人番号公表データにも、取引銀行の項目はありません。会社が自分のサイトや採用ページに「取引銀行」を書いている場合に限って分かります。うちのデータで会社サイトの本文を保存している32,838社のうち、取引銀行を書いているのは5,507社(16.8%)でした。上場会社であれば有価証券報告書や事業報告に主要取引先として銀行名が出ることがあります。
「休廃業・解散」と「倒産」は、法人番号の公表データで区別できますか
できません。公表データの「登記記録の閉鎖等の事由」は「清算の結了等」「合併による解散等」「登記官による閉鎖」「その他の清算の結了等」の4区分で、破産手続が終結した会社も、自主的に解散・清算した会社も「清算の結了等」に入ります。倒産かどうかを確かめるには、官報の公告や、信用調査会社の倒産情報を別に当たる必要があります。
「登記官による閉鎖」とはどういう会社ですか
役員変更などの登記を12年間していない株式会社が、法務省の公告と通知のあと「みなし解散」とされ、その後も登記がなければ登記官の職権で登記記録が閉鎖される、という流れで消えた会社が主です。うちのデータでは閉鎖済み762,832件のうち210,087件(27.5%)がこの区分で、株式会社の閉鎖に限ると32.5%、合同会社では3.6%でした。誰かが手続きをして閉じた会社ではないので、実際にいつ営業をやめたのかは登記からは分かりません。
新しい会社はメガバンクで口座を作れない、というのは本当ですか
TSRの記事は、新設法人の口座開設審査は「メガバンクがより厳しい」と言われてきたが、ネット口座の登場で変化しているようだ、と書いています。三井住友銀行の「Trunk」は2025年5月に始まり、2026年7月に9万口座を突破、新規口座の半数が新設法人(2026年6月時点)とされています。うちのデータで確かめられるのは、設立5年未満と分かる3,049社のうち閉鎖済みが15社(0.5%)という登記側の数字までで、口座の有無は分かりません。
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出典:東京商工リサーチ TSRデータインサイト「三井住友銀行の『メインバンク取引社数』増加 ~ メガバンクで唯一増加、新設・中小企業向け脚光 ~」(2026年9月13日)
参考:国税庁 法人番号公表サイト(登記記録の閉鎖等の事由の区分)/経済産業省 gBizINFO(設立年月日)
しょくばログの数字は、記事執筆時点(2026年9月14日)のデータベースで数えたものです。法人数・閉鎖数は国税庁の公表データの取り込み時点で変わります。