✍ 古家あきら | 2026-10-10 更新
埼玉・志木の製本会社ティーエムビーが自己破産申請、負債5.1億円──社名に「製本」を持つ法人1,470社は閉鎖率24.6%、存続の54%が東京に集まる
先に結論です。埼玉県志木市の株式会社ティーエムビーが、2026年10月5日にさいたま地方裁判所へ自己破産を申請したと報じられました。負債総額は約5億1,000万円、債権者は約125人です。 志木市内に本社工場・東工場・南工場の3棟を構え、製本、断裁、折加工、中綴じ、糊綴じ、型抜き、梱包・発送までを請け負っていました。
しょくばログという会社データベースを運営していると、製本や印刷の会社は「社名に業種がそのまま入っている」ことが多いと感じます。そこで、社名に「製本」を持つ法人を台帳で数えてみました。閉鎖済みの割合は24.6%で、全法人の13.5%を大きく上回ります。
この記事は、ティーエムビーの経営を評価するものではありません。報道で確認できる事実を並べたうえで、製本業という業種の台帳の数字と、外注先の工場と付き合うときに見ておきたい点を、一般化してまとめます。
出典:【埼玉】製本加工のティーエムビーが自己破産申請 3工場でエコ綴じ・特殊製本も展開、負債5.1億円(JC-NET・2026年10月10日)
報道で確認できる事実
報道に書かれている内容を、そのまま並べます。
- 社名:株式会社ティーエムビー
- 所在地:埼玉県志木市
- 法人番号:8030001050224
- 設立:2010年6月
- 事業:製本、断裁、折加工、中綴じ、糊綴じ、型抜き、梱包・発送
- 工場:本社工場・東工場・南工場の3棟(いずれも志木市内)
- 売上:2018年10月期に約4億8,200万円
- 従業員:52人(2023年3月時点)
- 負債:約5億1,000万円(債権者約125人)
- 申請:2026年10月5日、さいたま地方裁判所へ自己破産を申請
経緯について、報道は次のように伝えています。ペーパーレス化で商業印刷物の市場が変わり、受注単価が下がった。人件費と光熱費の上昇も重なって赤字決算が続いた。エコ綴じに対応する設備を入れるなど付加価値を高める取り組みはしていたが、業績の回復には至らず、9月30日までに事業を止めた、という流れです。
申請の段階であり、破産手続の開始決定については、この時点の報道では確認できません。
しょくばログの台帳で見たティーエムビー
国税庁の法人番号データをもとにした、しょくばログの台帳では、ティーエムビーは次のように載っています。
- 株式会社、埼玉県志木市
- 登記の閉鎖:なし(存続のまま)
破産を申請しても、手続きが終わって登記が閉鎖されるまでは、データ上は存続のまま残ります。台帳に「閉鎖」と出ていないことは、会社が動いている証明にはなりません。破産・民事再生・特別清算の違いは倒産の種類を整理した記事で説明しています。
また、社名に「ティーエムビー」を含む法人は台帳に5社あります。アルファベットの略称をカタカナにした社名は重なりやすいので、取引先を特定するときは社名ではなく法人番号で確かめるのが確実です。
社名に「製本」を持つ会社は1,470社、閉鎖率は24.6%
台帳のうち、株式会社・有限会社・合名会社・合資会社・合同会社の5種類で、社名に「製本」を含む法人を数えました。
- 該当する法人:1,470社
- うち登記が閉鎖済み:362社(24.6%)
- 全法人(同じ5種類)の閉鎖率:13.5%
会社の種類で分けると、次のとおりです。
- 有限会社:962社(65.4%)
- 株式会社:428社(29.1%)
- 合資会社:69社
- 合名会社:7社
- 合同会社:4社
有限会社が3社に2社を占めます。有限会社は2006年の会社法施行で新しく作れなくなった形なので、それ以前から続く会社が多い業種だと読めます。一方で、合同会社はわずか4社です。新しく製本の会社を立ち上げる動きは、社名の上ではほとんど見えません。ティーエムビーのように2010年に設立された株式会社は、この業種では比較的新しい部類です。
比べるために、社名に「印刷」を持つ法人も数えました。12,926社のうち閉鎖済みは2,665社で、閉鎖率は20.6%でした。製本はそれよりさらに4ポイントほど高い数字です。印刷会社の動きについては、下関のアロー印刷の特別清算を取り上げた記事でも扱っています。
なお、閉鎖の数は過去に積み上がった累計です。休眠会社の一斉整理で閉鎖された会社も含むため、「最近になって製本会社が急に減った」という意味ではありません。あくまで、いま台帳を切り取ったときの割合として見てください。
存続している製本会社の54%は東京にある
閉鎖されていない製本会社1,108社を都道府県別に並べると、偏りがはっきり出ます。
- 東京都:600社
- 大阪府:96社
- 埼玉県:91社
- 愛知県:39社
- 京都府・神奈川県・長野県:各24社
東京だけで54.2%です。区で見ると江東区85社、文京区81社、新宿区74社、板橋区57社と続きます。出版社や印刷会社が多い地域と重なっているのが、数字からも読み取れます。
埼玉県は全国3位で、存続している91社のうち戸田市が22社、川口市が8社、新座市が7社です。いずれも東京に接する県南部の市で、志木市もその並びにあります。
外注先の工場と付き合うときの4つのこと
製本は、印刷物が完成する最後の工程です。ここが止まると、納品そのものが止まります。印刷会社や出版社、販促物を発注する会社の立場で、一般化して整理します。
1. 工程の「最後」を1社に寄せすぎない
製本・断裁・発送まで1社に任せると管理は楽になります。ただ、その1社が止まったときに、刷り上がった紙がそこに残ります。繁忙期の案件や定期刊行物は、代わりに頼める工場を平時から1社知っておくと慌てずに済みます。取引先の探し方・調べ方は会社の取引先の調べ方でまとめています。
2. 預けているものを把握しておく
製本の工場には、刷り本や紙、抜き型など、発注側のものが置かれていることがあります。破産手続に入ると、持ち出しには破産管財人とのやり取りが必要になります。何をどこに預けているかを一覧にしておくのは、すぐにできる備えです。
3. 単価の値下げが続く相手ほど、状態を気にかける
今回の報道では、受注単価の低下とコスト上昇が重なったとされています。値下げに応じ続ける外注先は、発注側から見れば都合がよい相手です。ただ、それが続いているなら、相手の体力が削られている可能性もあります。外から見える手がかりは取引先の信用の調べ方や、決算公告を出していない会社の記事で整理しています。
4. 働く側は、給与の立替払制度を知っておく
ティーエムビーは2023年時点で52人が働いていた会社です。勤め先が倒産して給与が払われないときには、国の未払賃金立替払制度があります。仕組みは給料が遅れる会社の記事で説明しています。
運営者として思うこと
製本の会社の数字を見ていて目に留まったのは、合同会社が4社しかないことでした。新しく入ってくる会社がほとんどないまま、既存の会社が少しずつ閉じていく。台帳からは、そういう業種の形が見えます。
ただ、本はなくなっていませんし、冊子やカタログ、パッケージの加工も続いています。仕事が減ったというより、残った工場に仕事が寄っていく局面なのだと思います。だからこそ、発注する側は「どこに頼んでいるか」を一度確かめておく価値があります。
よくある質問
ティーエムビーは倒産したのですか?
報道によると、2026年10月5日にさいたま地方裁判所へ自己破産を申請し、9月30日までに事業を停止しています。破産手続の開始決定については、この記事を書いた時点の報道では確認できていません。
しょくばログで見ると、もう閉鎖になっていますか?
2026年10月10日時点の台帳では、登記は閉鎖されておらず存続のまま載っています。破産手続が終わり、登記が閉鎖されてから反映されます。
製本会社はどのくらい減っているのですか?
社名に「製本」を持つ法人1,470社のうち、登記が閉鎖済みなのは24.6%です。これは過去からの累計で、年ごとの減り方を示すものではありません。
取引先の製本会社が破産したら、預けている紙や刷り本はどうなりますか?
破産手続が始まると、会社の財産は破産管財人が管理します。自社の所有物を引き取るには、管財人に申し出て確認を受けるのが一般的です。具体的な対応は弁護士に相談してください。