✍ 古家あきら | 2026-10-13 更新
社名に使えない言葉・文字はあるのか — 登記できる文字と、付けられない名称(銀行・信託・保険など)。活動中の会社442万社のうち社名にローマ字を含むのは18.4%、「信託」を含む155社は4割が合資・合名会社
先に結論です。社名に使える文字は、漢字・ひらがな・カタカナに加えて、ローマ字・アラビア数字と6種類の記号(& ’ , ‐ . ・)までです。 記号は言葉の区切りにしか使えず、社名の先頭や末尾には置けません(ピリオドだけは省略の意味なら末尾に置けます)。
もうひとつの決まりが、特定の業種でなければ使えない言葉です。「銀行」は銀行でなければ使えず、「信託会社」「保険会社」「金融商品取引業者」と誤解されるような名前も、それぞれの法律で禁じられています。また、株式会社でない者が「株式会社」と名乗ること、会社でない者が会社と誤解される名前を使うことも会社法で禁じられています。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「求人票の会社名に英語や記号が入っていて、本当にこれが正式名称なのか分からない」「○○銀行という名前の会社があったが、銀行なのか」といった声をいただきます。そこで、国税庁の法人番号公表サイトで閉鎖の記録がない会社(株式・有限・合同・合資・合名)442万2,900社の社名を数えてみました。
社名に使える文字は「日本文字+ローマ字・数字・6つの記号」
社名(法律の言葉では「商号」)に使える文字は、商業登記規則第50条と、それにもとづく法務大臣の告示(平成14年11月1日施行)で決まっています。法務省の案内を要約すると次のとおりです。
- ローマ字(大文字・小文字とも)
- アラビア数字
- アンパサンド(&)、アポストロフィー(’)、コンマ(,)、ハイフン(‐)、ピリオド(.)、中点(・)
記号には置き場所の制限があります。
- 記号は、言葉と言葉を区切る目的でしか使えない。そのため社名の先頭・末尾には置けない
- ピリオドだけは、省略を表す場合に限って社名の末尾に置ける(「Co.」のような使い方)
- 空白(スペース)は、ローマ字で複数の単語を書くときの区切りにだけ使える
- 「ABC東日本」のように、日本文字とローマ字を組み合わせるのは問題ない
逆にいうと、「!」「?」「@」「#」「★」や、ギリシャ文字・ローマ数字(Ⅰ、Ⅱ)、丸数字などは登記できません。広告やロゴで「★」入りの名前を使っている会社でも、登記上の社名には入っていないということです。
もうひとつ注意したいのが、「株式会社」の部分です。会社法第6条第2項で、会社は種類に応じて「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」の文字を社名に入れなければなりません。法務省の案内でも、「K.K.」のような略記で代えることはできないとされています。英語表記の「Co., Ltd.」は登記上の社名ではなく、会社が任意で使っている表記です(英語表記の調べ方は会社の英語表記を調べる方法にまとめています)。
台帳で数えると:ローマ字入りの社名は18.4%、合同会社では44.1%
442万2,900社の社名から「株式会社」などの会社の種類の部分を除き、使われている文字を数えました。
- ローマ字を含む社名:81万4,622社(18.4%)
- そのうち、漢字・かなを一切含まずローマ字だけの社名:66万2,985社(15.0%)
- アラビア数字を含む社名:3万7,944社(0.86%)
- & ’ , ‐ . のいずれかを含む社名:11万4,276社(2.6%)
- 中点(・)を含む社名:21万9,369社(5.0%)
- 空白を含む社名:約17.8万社(4.0%)
会社の種類で見ると、差がはっきり出ます。ローマ字を含む社名の割合は、株式会社23.6%、合同会社44.1%、有限会社2.7%、合資会社2.0%、合名会社2.1%でした。社名にローマ字が使えるようになったのは平成14年(2002年)11月からです。有限会社は2006年の会社法施行で新しく作れなくなったため、ローマ字が使えた期間が短く、割合が低いのは自然です。逆に合同会社は2006年以降にできた形なので、半数近くがローマ字入りの社名になっています。
記号の内訳は、ピリオド(.)3万8,048社、アンパサンド(&)3万418社、ハイフン類3万4,565社、アポストロフィー(’)1万3,455社、コンマ(,)1,018社でした。コンマが少ないのは、「Co., Ltd.」のような英語表記を登記上の社名にはまず入れないからだと考えられます。
求人票や名刺の社名と、法人番号で出てくる社名の表記が違って見えるとき、この「登記できる文字」の範囲を知っていると混乱が減ります。全角・半角の違いや、読み方が分かりにくい場合は、会社名の読み方(フリガナ)を調べる方法も参考にしてください。
特定の業種でなければ使えない言葉
文字の種類とは別に、言葉そのものに制限があるケースがあります。今回、条文をe-Gov法令検索で確認できたものを挙げます。
- 銀行(銀行法第6条):銀行は社名に「銀行」の文字を使わなければならず、銀行でない者は、名称や商号に銀行であることを示す文字を使ってはならない
- 信託(信託業法第14条):信託会社は社名に「信託」の文字を使わなければならず、信託会社でない者は、信託会社であると誤認されるおそれのある文字を使ってはならない(一部の認可を受けた者は除く)
- 保険(保険業法第7条):保険会社は生命保険会社・損害保険会社であることを示す文字を使わなければならず、保険会社でない者は、保険会社であると誤認されるおそれのある文字を使ってはならない
- 金融商品取引業者(金融商品取引法第31条の3):金融商品取引業者でない者は、「金融商品取引業者」という名称や、それに紛らわしい名称を使ってはならない
- 会社の種類(会社法第6条第3項・第7条):会社は別の種類の会社と誤認されるおそれのある文字を使えず、会社でない者は会社と誤認されるおそれのある文字を使えない
- 他の会社と誤認させる名前(会社法第8条):不正の目的で、他の会社と誤認されるおそれのある名称を使ってはならない。営業上の利益を侵害された会社は、使用の停止を求められる
ここで大事なのは、法律によって書き方の強さが違うことです。銀行法は「銀行であることを示す文字」そのものを禁じていますが、信託業法・保険業法は「誤認されるおそれのある文字」という書き方です。そのため、保険代理店が「○○保険サービス」「○○保険事務所」と名乗ることは広く行われています。
この記事では、条文を確認できたものに限って挙げました。ほかにも業法で名称の使用が制限されている業種はあります。気になる言葉があるときは、その業種の法律を確かめるのが確実です。
台帳で数えると:「銀行」155社、「信託」155社、「保険」7,183社
規制のある言葉を含む社名を、活動中の会社442万2,900社から数えました。
- 「銀行」を含む社名:155社(株式会社154・有限会社1)。うち151社は社名が「銀行」で終わる
- 「信託」を含む社名:155社(株式会社82・合資会社48・合名会社15・有限会社8・合同会社2)
- 「保険」を含む社名:7,183社(有限会社3,524・株式会社3,337・合同会社246ほか)
- 「証券」を含む社名:313社
「保険」を含む社名が「銀行」の40倍以上あるのは、先ほどの条文の違いがそのまま表れています。保険代理店や保険の相談窓口の会社が「保険」を名前に入れているケースが多く、有限会社が半数近くを占めています。
目を引いたのは「信託」です。155社のうち合資会社と合名会社が63社(40.6%)。活動中の会社全体では、合資・合名会社は合わせて1.6%しかありません。社名を見ると「(地名)信託合資会社」という形が並んでいます。古い時代に設立された会社が、閉鎖の記録がないまま台帳に残っていると見られます。
閉鎖の割合も見ておきます。台帳に載っている株式・有限・合同・合資・合名会社全体では、閉鎖済みの会社は14.3%です。これに対し、社名に「銀行」を含む会社は28.6%、「信託」を含む会社は39.2%が閉鎖済みでした。金融機関は合併や統合で名前が消えることが多く、その跡がこの数字に出ていると考えられます。
なお、台帳に閉鎖の記録がないことは、今もその業種の免許を持って営業していることを意味しません。 「銀行」「信託」「証券」と名のつく会社が実際に免許・登録を受けているかは、金融庁の「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」で確かめるのが確実です。暗号資産や金融の登録業者の確かめ方は、暗号資産・金融の登録業者を確認する方法で詳しく書いています。
求人や取引で「この社名、大丈夫?」と思ったときの確かめ方
社名の文字や言葉に引っかかったときは、次の順番で確かめると迷いません。
1. 法人番号公表サイトで正式な社名を確かめる:求人票の表記と登記上の社名が同じかを見る。調べ方は法人番号の調べ方へ 2. 社名の変更履歴を見る:最近になって社名を変えていないかを確かめる。手順は会社の旧社名を調べる方法へ 3. 同じ・似た社名の会社がないかを見る:全国には同じ社名の会社がたくさんあり、取り違えが起きやすい。詳しくは類似商号とはへ 4. 規制のある言葉が入っていたら、監督官庁の一覧で確かめる:「銀行」「信託」「証券」などは金融庁の一覧で、免許・登録の有無を見る
お金の振込先で社名が略されて表示され、戸惑うこともあります。口座名義の読み方は振込先の口座名義が会社名と違うときの確認方法を参考にしてください。
よくある質問
社名に「!」や「★」を入れることはできますか?
登記上の社名には入れられません。使える記号は& ’ , ‐ . ・の6種類だけです。ロゴや広告で「★」入りの名前を使っている会社はありますが、法人番号公表サイトで出てくる正式な社名には入っていません。
英語だけの社名は認められますか?
認められます。2002年11月から、ローマ字だけの社名も登記できるようになりました。しょくばログの台帳では、活動中の会社の15.0%が、会社の種類の部分を除くとローマ字だけの社名です。ただし「株式会社」「合同会社」などの部分は日本語で入れる必要があり、「Co., Ltd.」や「K.K.」で代えることはできません。
社名に「銀行」が入っている会社は、すべて銀行ですか?
銀行法は、銀行でない者が銀行であることを示す文字を使うことを禁じています。ただ、しょくばログの台帳で社名に「銀行」を含む会社155社のうち4社は、社名が「銀行」で終わらない形です。また、閉鎖の記録がないことと今も営業していることは別です。銀行かどうかは、金融庁の免許一覧で確かめてください。
保険代理店が「保険」を社名に入れてもよいのですか?
保険業法が禁じているのは、保険会社であると誤認されるおそれのある文字です。台帳では社名に「保険」を含む会社が7,183社あり、「保険サービス」「保険事務所」といった名前が多く見られました。保険会社なのか代理店なのかは、社名だけでなく、会社のサイトで事業内容を確かめると分かります。
他の会社と同じ社名は付けられますか?
本店が同じ住所で同じ社名を登記することはできません(商業登記法第27条)が、住所が違えば同じ社名の会社は全国にたくさんあります。ただし、不正の目的で他の会社と誤認されるような名前を使うことは、会社法第8条で禁じられています。同じ社名の会社の見分け方は、類似商号の記事にまとめています。
まとめ
- 社名に使える文字は、日本文字に加えてローマ字・アラビア数字・6種類の記号(& ’ , ‐ . ・)まで。記号は区切りにしか使えず、先頭・末尾には置けない
- 「銀行」は銀行でなければ使えず、「信託」「保険」「金融商品取引業者」は、誤認・紛らわしい名前の使用がそれぞれの法律で禁じられている
- 活動中の会社442万社のうち、社名にローマ字を含むのは18.4%。合同会社では44.1%、有限会社では2.7%
- 社名に「銀行」を含む会社は155社、「信託」は155社(4割が合資・合名会社)、「保険」は7,183社
- 規制のある言葉が入った社名を見たら、法人番号で正式名を確かめ、監督官庁の一覧で免許・登録の有無を見る
社名は、会社がいちばん最初に名乗る情報です。どんな文字や言葉が使えて、何が使えないのかを知っておくと、求人票や取引先の名前を見たときの「おや?」に、落ち着いて答えを出せるようになります。
参照した一次資料
- 法務省「商号の登記に用いることができる符号の制限の緩和について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji44.html
- e-Gov法令検索:会社法(第6条〜第8条)、銀行法(第6条)、信託業法(第14条)、保険業法(第7条)、金融商品取引法(第31条の3)、商業登記法(第27条) https://laws.e-gov.go.jp/
- 金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」 https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyo.html
- 国税庁 法人番号公表サイト https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/
- しょくばログDB(国税庁 法人番号公表サイト全件。2026年10月13日実測。集計スクリプト scripts/analyze_shamei_kisei_go.py)