✍ 古家あきら | 2026-10-11 更新

類似商号とは — いまも同じ社名の会社は作れるのか(社名が他社とまったく同じ会社は36.1%)

先に結論です。かつての「類似商号規制」は、2006年施行の会社法で廃止されました。いまは、本店の住所まで同じでなければ、他社とまったく同じ社名でも登記できます。 残っている決まりは大きく2つで、ひとつは商業登記法第27条の「同じ住所に同じ商号は登記できない」、もうひとつは会社法第8条の「不正の目的で、他の会社と誤認されるような名前を使ってはいけない」です。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「求人を見た会社を検索したら、同じ名前の会社が何社も出てきた」「取引先の社名で調べたら別の会社の情報が出た」という相談をよく受けます。そこで台帳で数えてみました。閉鎖の記録がない株式会社・有限会社・合同会社・合名会社・合資会社 4,422,900社 のうち、社名が他社とまったく同じ会社は1,598,298社(36.1%) ありました。3社に1社以上は、どこかに同じ名前の会社があるということです。

類似商号とは — 廃止された規制の中身

類似商号とは、すでに登記されている他社の商号(会社名)と同じ、または紛らわしいほど似ている商号のことです。会社法ができる前の旧商法・旧商業登記法のもとでは、同じ市区町村の中で、同じ事業目的の他社がすでに登記している商号と同じか似た商号は、登記できませんでした。これが「類似商号規制」です。

この時代に会社を作る人は、法務局で「商号調査」をして、同じ市区町村に似た名前の会社がないかを確かめる必要がありました。「商号調査とは」という検索がいまも残っているのは、その名残です。

2006年の会社法で廃止された

2006年5月に施行された会社法で、この規制は廃止されました。中小企業基盤整備機構のJ-Net21も、会社法の施行で同一市区町村内の商号の規制は廃止されたと説明しています。 いまは、同じ市区町村で、同じ業種の会社が同じ名前で登記していても、本店の住所が違えば新しく登記できます。

いまも残っている商号のルールは2つ

規制がなくなったといっても、何でも自由というわけではありません。現在の法律で確認できる決まりは次の2つです。

1. 同じ住所に同じ商号は登記できない(商業登記法第27条)

商業登記法第27条は、商号が他人の既に登記した商号と同一で、かつ本店の所在場所も同一であるときは、その商号の登記はできないと定めています。条文の見出しは「同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止」です。

ポイントは2つあります。

2. 他の会社と誤認させる名前を、不正の目的で使ってはいけない(会社法第8条)

会社法第8条第1項は、何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称や商号を使ってはならないと定めています。第2項では、それで営業上の利益を侵害された会社が、使用の停止や予防を請求できるとしています。会社法第978条第3号には、この規定に違反した者を百万円以下の過料に処するという定めもあります。

また、広く知られた他社の社名や商標と同じか似た表示を使って混同を生じさせる行為は、不正競争防止法第2条第1項第1号の「不正競争」にあたります。

ただ、これらは「登記の段階で止める仕組み」ではありません。登記そのものは通り、問題が起きたあとに争われる形です。同じ名前の会社が登記されていること自体は、違法でも珍しいことでもない、というのが現在の姿です。

法人格の文字にも決まりがある

もうひとつ、会社法第6条は、会社の種類に応じて商号の中に「株式会社」「合同会社」などの文字を使うことを義務づけ、他の種類の会社と誤認されるおそれのある文字を使うことを禁じています。逆に言えば、「株式会社アシスト」と「合同会社アシスト」は、法律上はまったく別の商号として並び立ちます。

台帳で数えた「同じ社名の会社」の実数

ここからは、しょくばログの台帳(国税庁の法人番号公表データ由来)で、閉鎖の記録がない5種類の会社 4,422,900社を対象に数えた結果です。社名は「株式会社」などの法人格の文字も含めて、一字一句同じものだけを同名として数えています。

同じ名前の会社がいちばん多い社名

同名の会社が多い社名の上位10は次のとおりです。

上位はすべて、カタカナの短い英単語か、イニシャルを使った社名でした。前向きな意味の英単語は誰でも思いつくので、重なりやすいのだと考えられます。株式会社フロンティアは、47都道府県すべてに少なくとも1社ずつありました。株式会社アシストは43都道府県にあり、東京都港区だけで24社、新宿区に22社、中央区に19社です。

同じ社名の会社が10社以上ある社名を名乗っている会社は 577,036社、100社以上ある社名では 54,405社 でした。

法人格の種類で、重なりやすさが違う

法人格ごとに、他社とまったく同じ社名を持つ会社の割合を出すと、差がはっきり出ました。

合名会社・合資会社は、創業者の名字や地名を入れた古い社名が多く、重なりにくい傾向があります。一方で、合同会社が株式会社より低いのは、比較的新しい会社が多いことに加えて、社名の付け方が多様になっていることが考えられます。ここは台帳から理由までは分かりません。

また、「株式会社」などの文字を取り除いた残りの部分が同じで、法人格だけが違う組み合わせ(例:株式会社〇〇と合同会社〇〇)は 257,592通り ありました。

「近所の同名会社」も珍しくない

取り違えが起きやすいのは、同じ地域に同じ名前の会社があるときです。

類似商号規制があった時代は、同じ市区町村で同じ事業目的の同名会社は登記できませんでした。それでも、いまは同じ市区町村の中に同名の会社が7万社以上あります。住所の表記まで同じ16組は、商業登記法第27条の決まりからすると珍しいケースです。住所の書き方が同じでも建物や部屋が違うのか、別の事情があるのかは、台帳の情報からは判断できません。

同じ名前の会社を取り違えないための確認項目

同名の会社が3社に1社以上あるという前提に立つと、社名だけで会社を特定するのは危ないということになります。求人への応募、取引の開始、振込先の確認など、会社を特定したい場面では次の順番で確かめるのが確実です。

1. 法人番号で特定する

法人番号(13桁)は1社に1つだけ割り当てられ、社名が同じでも番号は必ず違います。国税庁の法人番号公表サイトで社名を入れ、所在地で絞り込んで番号を控えておけば、以後はその番号で同じ会社を追えます。具体的な手順は 会社名から法人番号を調べる方法 にまとめています。

2. 本店所在地を、番地まで照らし合わせる

求人票や名刺、請求書に書かれた住所と、法人番号公表サイトや登記の本店所在地を照らし合わせます。同じ市区町村に同名の会社がある例が3万組以上あるので、市区町村名だけでなく、町名・番地まで見るのが大事です。登記の内容は、相手の許可なく誰でも確認できます(会社の登記簿は誰でも見られる)。

3. 「株式会社」の前後と法人格の種類を見る

「株式会社〇〇」と「〇〇株式会社」は、登記上は別の商号です。株式会社と合同会社で同じ名前、という組み合わせも25万通り以上あります。契約書や振込先の名義を見るときは、法人格の種類と位置まで確かめてください。振込先の名義と社名の表記の違いについては 振込先の口座名義が会社名と違うときの確認方法 で扱っています。

4. 社名が変わっていないかを確かめる

探している会社が社名を変えていて、いまの名前は別の会社と同じ、ということもあります。法人番号で追えば、社名が変わっても同じ会社だと分かります。調べ方は 会社の旧社名を調べる方法 を参考にしてください。

5. 会社のサイトと登記の情報が一致するか見る

検索で出てきた会社のサイトが、本当にその会社のものかも確認が要ります。サイトに書かれた所在地・代表者名・法人番号が、登記の情報と合っているかを見ます。新しい取引先を確認するときの項目は 新規取引先の確認事項 に一覧にしています。

社名の「似ている」は商標の話になることもある

類似商号の規制がなくなったいま、社名やブランド名を守る手段として意識したいのが商標登録です。商号の登記は、同じ名前の別会社が生まれることを止めません。一方、商標は登録された範囲で、似た名前の使用を止められる場合があります。

会社の側から見ると、「社名を登記した=名前を独占できた」ではない、ということです。その会社が社名やブランド名を商標登録しているかは、特許庁のJ-PlatPatで調べられます(会社の特許・商標を無料で調べる方法)。

社名にまつわる話では、「日本」「全国」のような大きな言葉を社名に入れることにも登記上の資格審査はありません。こちらは 社名に「日本」「全国」を含む会社は大企業のサインか で実数を出しています。

よくある質問

類似商号規制はいつ廃止されたのですか

2006年5月に施行された会社法で廃止されました。それ以前は、同じ市区町村で同じ事業目的の他社が登記している商号と同じか似た商号は登記できませんでした。いまは、本店の所在場所まで同じ場合に、同じ商号の登記ができないという決まり(商業登記法第27条)が残っています。

同じ市区町村に、同じ名前の会社を作ってもいいのですか

本店の住所が違えば、登記はできます。しょくばログの台帳でも、同じ市区町村の中に同名の会社がある組み合わせは34,998組(77,157社)ありました。ただし、他の会社と誤認させる不正の目的で名前を使うことは会社法第8条で禁じられており、使用の停止を求められることがあります。どこまでが「不正の目的」にあたるかは個別の事情によるため、会社を作る側の判断は司法書士などの専門家に確認してください。

求人を見た会社を検索したら、同じ名前の会社が複数出てきました。どれが本物ですか

社名だけでは決められません。求人票に書かれた本店所在地を、国税庁の法人番号公表サイトで出てくる各社の所在地と番地まで照らし合わせ、一致した会社の法人番号を控えてください。求人票に住所がないときは、応募の前に問い合わせて確認するのが確実です。

同じ名前の会社が多い社名は、怪しい会社なのですか

そうとは限りません。台帳では、活動中の会社の36.1%が他社とまったく同じ社名でした。株式会社アシストは777社あります。同名であることは、その会社の良し悪しとは関係がありません。大事なのは、自分が見ている会社がどれなのかを法人番号と所在地で特定することです。

「商号調査」は、いまも必要ですか

旧法の時代のように、登記のために同じ市区町村の似た商号を調べる必要はなくなりました。ただ、同じ住所に同じ商号がないかの確認や、他社の社名・商標と紛らわしくないかの確認は、会社を作る側にとって意味があります。法人番号公表サイトでの社名検索と、J-PlatPatでの商標検索が、無料でできる範囲の確認です。

まとめ

参照した一次資料

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

← お役立ち記事一覧へ