✍ 古家あきら | 2026-09-10 更新

会社の特許・商標を無料で調べる方法 — J-PlatPatに「法人番号」の欄はありません

先に結論です。会社の特許・商標は、特許庁の「J-PlatPat」で誰でも無料で調べられます。ただし法人番号では引けません。 検索の入口は「出願人/権利者/名義人」という文字列の欄で、ここに会社名を打ち込む形になります。つまり、表記が1文字ずれたら当たりませんし、同じ名前の別会社が混ざります。

そして、その取りこぼしを一発で終わらせる裏口が用意されています。特許庁が出願する人・会社ごとに振っている「申請人識別番号」という9桁の番号です。これを一度つかまえてしまえば、あとは名前の揺れも同名他社も一切関係なく、その会社の出願だけを引けます。J-PlatPatの検索項目に最初から「申請人識別番号」が入っているのは、そのためです。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「取引先が特許取得済みと名乗っているが本当か」「求人票に業界初の特許技術とあるが確かめられるか」という質問をいただきます。答えは「確かめられます」なのですが、実際にやってみると、多くの人が会社名の入力の段階でつまずきます。 うちは全国の会社の商号をそのまま持っている側なので、なぜつまずくのかを印象ではなく実数で出せます。 そこも含めて書きます。

J-PlatPatとは何か — 登記や法人番号とは別系統の台帳です

J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)は、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営している無料の検索サービスです。ログイン不要、料金なしで、特許・実用新案・意匠・商標の出願と登録の情報を見られます。

ここで大事なのは、J-PlatPatは登記の系統ではないということです。会社の登記簿にも、国税庁の法人番号公表サイトにも、その会社が特許を持っているかどうかは一切載りません。特許庁が独自に管理している別の台帳です。だから、法人番号を調べる方法でつかんだ13桁を持っていっても、J-PlatPatでは使えません。

逆に言えば、登記からは絶対に読めないことが、J-PlatPatからは読めるということでもあります。会社の事業内容を調べる方法で書いたとおり、登記の「目的」欄には定型文が並んでいて実態が読み取れません。そこへいくと出願の中身は、その会社が実際に金と時間を投じた先の記録です。事業内容の裏取りとしては、むしろ登記より強い材料になります。

検索項目に法人番号は無い — 実際に用意されている欄

J-PlatPatの商標検索で指定できる検索項目は、公式ヘルプにそのまま一覧が出ています。商標そのものに関する項目(商標・称呼・図形等分類)と、商品・役務の項目(類似群コード・区分)のほかに、「その他の検索キーワード」として次の欄があります。

特許・実用新案検索のほうも同じ考え方で、「出願人/権利者/著者所属」と「申請人識別番号」が指定できます。公式ヘルプによれば申請人識別番号は9桁の連番(先頭のゼロは省略可)の形式で、国内の特許・実用新案でのみ選べる項目です。

どこにも法人番号はありません。 特許庁と国税庁はそれぞれ別に番号を振っていて、両者は紐づいていない。これが出発点です。

会社名で引くとどれだけ外れるのか — 435万社で数えました

「じゃあ会社名で引けばいい」と思われるはずです。ここが本題です。うちのデータベース(国税庁の法人番号公表データ由来、2026年9月10日集計)で、活動中の会社4,351,804社(株式会社・有限会社・合同会社の合計)の商号を数え直すと、こうなりました。

落とし穴1:株式会社が前にあるか、後ろにあるか

活動中の株式会社2,513,316社の内訳です。

およそ4社に1社が後株です。 (前後の比率が設立年代・業種・会社規模でどう変わるかは前株と後株の違いで数えています。)J-PlatPatの出願人名の欄には「完全一致」というモードがあり、これを選んで「株式会社◯◯」と打った場合、相手が後株ならヒットしません。まずここで落ちます。

対策は単純で、「株式会社」を外した部分だけを入れて部分一致で引くことです。公式ヘルプにも、出願人/権利者/名義人の欄には部分一致と完全一致のラジオボタンが出ると書かれていて、部分一致はワイルドカード(?)を使わずに部分一致検索を行う、と説明されています。名前の一部しか分からない場合はこちらを使う、というのが公式の想定です。

落とし穴2:同じ屋号の会社が、山ほどある

では「株式会社」を外して部分一致で引けば解決かというと、今度は逆方向の事故が起きます。関係のない会社が大量に混ざります。

商号から「株式会社/有限会社/合同会社」を取り除いた部分(ここでは屋号と呼びます)で数えると、活動中の会社4,351,804社のうち、

会社の2社に1社近くが、どこかの誰かと同じ屋号を名乗っています。 実際に多い屋号を数えると、こうなりました(いずれも法人格を除いた部分が完全一致するもの)。

「株式会社アシスト」の特許を調べたいと部分一致で引いたとき、目の前に出ている結果が1,376社のうちどれのものなのか、名前だけでは分かりません。 これは検索の腕で解決する問題ではなく、日本の商号がそういう状態だという話です。会社名で検索しても目的の会社にたどり着けない理由は会社名で検索しても出てこない理由にまとめましたが、特許・商標の世界では法人番号という逃げ道が無いぶん、この問題がいちばん露骨に出ます。

落とし穴3:カナ・英字・記号

同じデータで、屋号の文字種を数えるとこうなります。

英字については、もう一段だけ実務的な注意があります。英字を含む824,965社を数えると、そのうち813,177社が全角の英字で、半角の英字で登録されている会社は0社でした。 法人番号公表データ上、英字はすべて全角に寄せられています。名刺や自社サイトで見ている「ABC」と、公的なデータ上の「ABC」は、機械にとっては最初から別の文字列です。

検索して0件だったときは、まず全角と半角を入れ替えてもう一度打つのが最初の一手になります。中黒(・)の有無、長音(ー)とハイフン(-)の取り違えも同じです。

実際の手順 — 5ステップで識別番号までたどり着く

ここまでの落とし穴を全部避ける手順は、こうなります。

ステップ1:正式な商号を確定させる。 名刺や求人票の表記ではなく、登記上の正式表記を先に押さえます。前株か後株か、英字が全角か、中黒が入るか。しょくばログの会社ページや国税庁の法人番号公表サイトで、そのまま写せる形の商号を手に入れておきます。ここを飛ばすと以降が全部ずれます。

ステップ2:法人格を外した屋号だけを、部分一致で検索する。 「株式会社」「有限会社」「合同会社」は入れません。前株・後株の事故がこれで消えます。

ステップ3:結果が多すぎたら住所で絞る。 検索項目に「出願人/権利者/名義人住所」があるので、都道府県名や市区町村名を足します。同じ屋号の1,376社を東京の1社に絞り込むには、これが最短です。所在地の確定は会社の住所を調べる方法の手順で先に済ませておきます。

ステップ4:目的の会社の案件を1件開いて、申請人識別番号を控える。 出願人の情報として9桁の番号が表示されます。特許庁の「出願の手続」によれば、識別番号とは手続をする者に対し特許庁長官が付与する9桁のアラビア数字からなるコードで、1法人(個人)に対して1つ振られます。事前に請求しなくても、初めて出願した時点で自動的に付与されて通知される仕組みです。

ステップ5:以降は識別番号だけで引く。 検索項目を「申請人識別番号」に切り替えて9桁を入れれば、名前の揺れも同名他社も関係なく、その会社の出願だけが並びます。ここが本当のゴールです。 一度控えておけば、次回以降は数秒で終わります。

識別番号は法人に対して1つなので、社名を変更しても番号は変わりません。 旧社名時代の出願も同じ番号でつながって出てきます。社名変更をまたいで追える、というのは名前検索には絶対にできないことです。

「特許出願中」と「特許取得」は、まったく別のものです

調べる目的が「相手の言っていることが本当か」である場合、いちばん多い食い違いがここです。

J-PlatPatでは、この2つが画面上ではっきり分かれて表示されます。出願中しか無いのに「特許取得」と名乗っているなら、それは事実と違います。 特許法第188条は、特許を受けていない物に「特許」の表示や紛らわしい表示をすることを禁じており、第198条に罰則(300万円以下の罰金を含む)が置かれています。商標も同じ構造で、登録商標でないものを登録商標であるかのように表示することは商標法第74条が禁じ、第80条に罰則(300万円以下の罰金を含む)があります。

だから、求人票や会社概要の「特許技術」「業界初の特許」という表記は、J-PlatPatで登録番号まで確認できて初めて裏が取れたことになります。求人の表記が実態と合っているかを見る目線は実態のない求人の見分け方に書いたとおりですが、特許・商標はその中でも珍しく、公的な台帳で白黒がつく項目です。

同じ「お墨付き」でも、くるみん・えるぼし・健康経営優良法人のような国の認定は企業の認定マーク一覧の側で確認します。特許・商標は権利、認定マークは評価。根拠になっている台帳がまったく別だという点は押さえておいてください。

商標のときだけ必要になる、もう1つの視点

商標には「区分」という考え方があります。商標権は、指定した商品・サービスの範囲でしか効きません。 同じ言葉が、飲食店の看板としては他社のもので、ソフトウェアの名前としては別の会社のもの、ということが普通に起こります。

だから「この名前はもう取られているか」を調べるときは、言葉だけでなく区分もセットで見る必要があります。J-PlatPatには「区分」と「類似群コード」の検索項目があり、称呼(読み方)で似た商標を探す機能も用意されています。自社の新サービス名を決める前の下調べであれば、文字が一致するものだけでなく、読みが似ているものまで見ておくのが本来のやり方です。

ただし、ここから先の「権利範囲がぶつかるかどうか」の判断は弁理士の領域です。J-PlatPatで分かるのは登録されている事実までで、だから使ってよい/いけない、という結論までは出ません。 ここは正直に線を引いておきます。

よくある失敗

よくある質問

J-PlatPatの利用に登録や料金は必要ですか

必要ありません。INPITが運営する無料の公開サービスで、ログインなしで検索・閲覧できます。個人でも法人でも使えます。

法人番号から特許を調べる方法は、本当に無いのですか

J-PlatPatの検索項目に法人番号はありません。法人番号は国税庁が法人に振る13桁、申請人識別番号は特許庁が出願人に振る9桁で、別々の制度です。法人番号を起点にするなら、いったん正式な商号を確定させ、その商号で出願を1件見つけ、そこから識別番号に乗り換えるという経路になります。商号を正確に確定させる手順は法人番号を調べる方法にまとめています。

会社名で検索しても1件も出ません。特許を持っていないということですか

そう断定するのは早いです。順番に、表記(前株・後株、全角と半角、中黒の有無)、法人格を外した部分一致への切り替え、グループ会社名義の可能性、を確認してください。それらを潰したうえで0件なら、少なくとも国内の特許・実用新案・意匠・商標の出願は無い、と言えます。

相手が「特許出願中」と言っています。信用してよいですか

出願した事実そのものは確認できます。ただし出願中は審査前の状態で、そのまま登録される保証はありません。取引や応募の判断材料にするなら、登録番号まで出ているかどうかを分けて見てください。登録されていないものを「特許取得」と表示することは、特許法第188条が禁じています。

商標が登録されているかどうかだけ知りたい場合、いちばん早い方法は

J-PlatPatの商標検索で、その言葉を「商標(検索用)」の欄に入れて検索するのが最短です。会社を特定したいのではなく言葉の空き状況を知りたいだけなら、出願人の欄は使わなくて構いません。ただし区分によって結論が変わるので、自分が使いたい商品・サービスの区分まで見てください。

過去に出願していた会社が社名を変えた場合、追えますか

追えます。申請人識別番号は法人に1つ振られる番号で、社名変更では変わりません。旧社名時代の出願も新社名の出願も、同じ識別番号で並びます。名前を検索キーにしているうちは追えないので、これも識別番号まで到達する価値のひとつです。

まとめ

特許・商標の確認は、「会社名で引くもの」だと思っているうちは、当たらないか、混ざります。 前株・後株で28.77%が外れ、屋号の重複で46.9%が混ざる。これは検索の腕の問題ではなく、日本の商号がそうなっているという構造の問題です。

やることは3つです。正式な商号を先に確定させる。法人格を外した部分一致と住所で1社に絞る。案件を1件開いて9桁の申請人識別番号を控える。 ここまで来れば、あとは何度でも正確に引けます。

会社を「名前」で追うのをやめて「番号」で追う。法人番号のときとまったく同じ発想が、特許庁の側でも通用する、というだけの話です。

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出典・参考

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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