✍ 古家あきら | 2026-09-16 更新

会社の英語表記を調べる方法 — 登記に英文社名は載らない、では何を見るか

先に結論です。会社の英語表記は、登記簿を取っても分かりません。 商業登記に載る商号は日本語の商号1つだけで、「株式会社〇〇」を「〇〇 Co., Ltd.」と英訳した名前は登記の対象になっていないからです。ローマ字を商号に使うこと自体は2002年11月から認められましたが、それは「商号そのものにローマ字を使う」話であって、「日本語の商号とは別に英文の社名を登記する」制度はありません。

では何を見るか。確かめる順番は3つです。①国税庁の法人番号公表サイトに、会社が任意で登録した「商号の英語表記」があるかを見る。②無ければ公式サイトの会社概要・フッター・英語ページで会社が自分で使っている表記を拾う。③上場会社ならEDINET(金融庁)の提出者情報に載る英字名を見る。この3つで見つからなければ、その会社は英語表記を対外的に決めていない可能性が高く、こちらで勝手に作らず本人に聞くのが正解です。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していて、社名の表記ゆれには毎日のように付き合っています。この記事では、①なぜ登記に英文社名が載らないのか、②英語表記を確認できる場所とその順番、③EDINETに英字名がある4,368社(上場3,439社・非上場929社)を分類して見えた「Co., Ltd. と Inc. と Corporation の割合」、④会社サイトの採用ページ32,838社で英語表記がどれくらい出てくるか、⑤見つからないときの書き方、の順に整理します。

登記に英文社名が載らない理由 — ローマ字商号は使えるが、K.K. は使えない

会社の商号は登記事項で、商業登記簿を取れば誰でも見られます(会社の登記簿は誰でも見られる)。ただし、商号として登記できる文字には決まりがあります。法務省の案内「商号にローマ字等を用いることについて」によると、商業登記規則(昭和39年法務省令第23号)第50条と平成14年7月31日の法務省告示で、商号に使える文字は次のように定められています。

この改正省令の施行日が平成14年(2002年)11月1日です。それ以前は商号にローマ字を使えなかったので、「ABC株式会社」のような社名は2002年11月以降に設立か商号変更をした会社に限られます。

ここで大事なのは、法務省の案内が続けて書いている次の一文です。「会社の種類に従い株式会社、合名会社等の文字を用いなければなりません(会社法第6条第2項)ので、これらを「K.K.」等に代えることはできません」。つまり、「〇〇 K.K.」「〇〇 Co., Ltd.」「〇〇 Inc.」という英文社名は、そもそも商号として登記できません。登記できるのは「〇〇株式会社」「株式会社〇〇」の形だけで、英文の別名を併記する欄もありません。だから登記簿をいくら見ても、その会社が英語で何と名乗っているかは出てこないのです。

商号にローマ字を含む会社は、活動中の会社の17.3%

うちのデータで、実際にどれくらいの会社が商号にローマ字を使っているかを数えました。国税庁の法人番号公表サイトの全件データをもとにした台帳から、閉鎖されていない(活動中の)法人5,028,697社の商号に、ローマ字(半角・全角の A〜Z、a〜z)が1文字でも含まれるかを見たものです。

会社の種類(法人番号の法人種別)ごとに見ると、差がはっきり出ます。

有限会社の2.7%という低さは、制度の歴史そのものです。有限会社は2006年5月の会社法施行で新設できなくなったので、今ある有限会社はほぼ全部がそれ以前の設立で、その大半はローマ字商号が解禁される2002年11月より前に名前を決めています。逆に合同会社は2006年5月以降にしか存在しない種類なので、最初からローマ字が使える前提で名前を付けた会社ばかりです。同じ「会社」でも、種類を見れば社名にローマ字が入っている確率が16倍違う、というのはデータベースを扱っていないと気づきにくい点だと思います。会社の種類ごとの違いは 法人の種類一覧と見分け方 にまとめてあります。

なお、商号にローマ字を含んでいても、それは「登記された商号がローマ字」なのであって、英語表記が決まっているという意味ではありません。「ABC株式会社」の英語表記が「ABC Co., Ltd.」なのか「ABC Inc.」なのか「ABC Corporation」なのかは、やはり登記からは分かりません。

英語表記を確認できる場所 — この順番で見る

1. 国税庁 法人番号公表サイトの「英語表記」(会社が任意で登録)

いちばん先に見るべきなのがここです。国税庁の法人番号公表サイトには「英語表記の登録」という仕組みがあり、法人番号の指定を受けた法人が、商号の英語表記と所在地の英語表記を自分で登録できます。登録は任意で、登録した情報は「法人番号公表サイト」「英語版webページ」「ダウンロード機能、Web-API機能で提供する情報」の3つで公表されます。国税庁のページには「英語表記情報は、履歴を含めて公表されます」とも書かれているので、英語表記を変更した会社は変更前の表記も残ります。

見方は簡単で、法人番号公表サイトで会社名か法人番号を検索し、会社の詳細ページを開くと、登録がある会社には「商号又は名称(英語表記)」「所在地(英語表記)」の欄が表示されます。ここに載っている表記は会社自身が国税庁に届け出たものなので、外部から取れる英語表記としてはもっとも確度が高いと考えてください。法人番号の検索の仕方は 法人番号を会社名から検索する方法 にあります。

この登録が実務で必要になる場面もあります。税関の案内によると、日EU・EPAで日本からEUへ輸出する際の原産地に関する申告文には法人番号を記載することになっていて、EU側は法人番号公表サイトを参照して確認する運用です。そのため、輸出事業者は法人番号と商号・所在地の英語表記を公表サイトに登録しておく必要があります。逆に言えば、EU向けの輸出をしている会社は、ここに英語表記が載っている可能性が高いということです。

ただし任意登録なので、登録していない会社のほうが圧倒的に多いのが実態です。ここに無いからといって英語表記が無いわけではなく、次の場所に進んでください。

2. 公式サイトの会社概要・フッター・英語ページ

会社が自分で使っている英語表記は、公式サイトの「会社概要」「会社案内」ページに「英文社名」「英語表記」「Company Name (English)」といった行で載っていることが多いです。載っていない場合は、サイトのフッター(ページ最下部の著作権表示 ©)、英語版ページ(「English」「EN」のリンク)、採用ページの会社情報欄を見てください。フッターの「© 2026 〇〇 Co., Ltd.」は、会社が対外的に使っている表記そのものです。

公式サイトを探すときは、会社名で検索して出てきたサイトが本当にその会社のものかを先に確かめてください。同名の会社は珍しくありません(会社名で検索しても出てこない理由と対処法)。ドメインが co.jp なら、登記された法人が1社1つしか取れないので実在の裏付けになります(会社のドメインから実在を確認する方法)。

3. 上場会社なら EDINET の提出者情報

有価証券報告書を出している会社は、金融庁の開示システム EDINET に「提出者名(英字)」が登録されています。EDINETが公開している「EDINETコードリスト」には提出者ごとの英字名が入っていて、うちの台帳にも取り込んであります。上場区分が「上場」の3,834社のうち、英字名が入っている会社は3,439社(89.7%)、非上場の有報提出会社1,092社では929社(85.1%)でした。上場会社なら10社に9社はここで英語表記が確定します。会社が上場しているかの確認は 会社が上場しているか確認する方法 を参照してください。

EDINETの英字名は、有価証券報告書の英文表記や海外投資家向けの資料と揃えてあることが多いので、上場会社の英語表記としては公式サイトと並ぶ根拠になります。

4. 定款・商標・その他

会社によっては、定款に「当会社は、〇〇株式会社と称し、英文では 〇〇 Co., Ltd. と表示する」のように英文名を定めています。ただし定款は登記事項ではないので、外部の人が自由に取り寄せることはできません(会社の定款は外部から見られるのか)。取引先として契約を結ぶ段階なら、定款の商号条項を見せてもらうのがいちばん確実です。

英語の社名やロゴを商標登録している会社なら、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で出願人名から商標を引くと、英文表記の商標が出てくることがあります(会社の特許・商標を調べる方法)。ただし商標は「使っている英語表記」であって「正式な英語社名」とは限らないので、補助的な確認に使ってください。

EDINETの英字名4,368社を分類したら、Co., Ltd. が48%、Inc. が22%、Corporation が18%

ここからはうちのデータです。英語表記の「型」がどう分かれているかは、公表されている英字名をまとめて数えないと見えません。EDINETコードリストの提出者名(英字)が入っている4,371社のうち、ローマ字を含まない値(「-」だけの行など)3件を除いた4,368社(上場3,439社・非上場の有報提出会社929社)の末尾の語を機械的に分類しました。

日本の会社の英語表記は「Co., Ltd. が定番」と言われますが、数字で見ると有価証券報告書を出すような規模の会社でも半分弱で、Inc. と Corporation を合わせると約4割になります。どれが正しいという話ではなく、同じ「株式会社」を英語にする決まった訳語は無く、会社ごとに選んでいるということです。だからこそ、こちらで「株式会社=Co., Ltd.」と機械的に置き換えてはいけません。

大文字だけの表記が44%、「The」で始まる社名が112社

同じ4,368社を、英字の大文字・小文字で分けると次のとおりです。

また、「The」で始まる英字名が112社ありました。電力会社や古い金融機関に多い型です。会社名の先頭の「The」は、会社が定めた正式表記の一部なので、勝手に落とさないでください。

Co., Ltd. の中でも、空白とカンマの打ち方は10通りに割れる

もう一段細かく見ると、「Co., Ltd.」と分類した2,111社の中でも、カンマと空白の打ち方がばらばらです。末尾の文字列をそのまま数えると次のようになりました。

同じ会社の英語表記を書くときに、「Co.,Ltd.」と「Co., Ltd.」のどちらが正しいかは、会社が自分で決めた表記に合わせる以外に答えがありません。契約書や請求書で英語表記を使う場面では、公式サイトかEDINETの表記を1文字単位でそのまま写すのが、あとで揉めない唯一の方法です。日本語の商号でも「前株・後株」を取り違える事故が絶えないのと同じ話です(前株と後株の違い)。

会社サイトの採用ページ32,838社では、英語の会社表記が出てくるのは51.5%

もう1つ、うちが保存している会社サイトの採用ページ(gBizINFOに公式サイトが登録されている会社を中心に32,838社分)の本文で、英語の会社表記に使う語がどれくらい出てくるかを数えました。数え方は「Co., Ltd.」「Inc.」「Corporation」「Corp.」「Ltd.」「Limited」「K.K.」「Holdings」「LLC」「G.K.」のいずれかが本文に1回でも出てくるか、です。注意点として、これは自社の英語表記だけでなく、取引先や親会社の社名として出てくる場合も含みます。「その会社の英語表記が採用ページに載っている率」ではなく、「英語の会社表記が出てくるページの率」として読んでください。

EDINETの英字名では Co., Ltd. が48.3%でしたが、採用ページの語の出現でも Co., Ltd. が Inc. の2倍以上あり、非上場を含めた会社サイトでも Co., Ltd. がもっとも多い型であることは変わりません。一方で、合同会社の英語表記としてよく紹介される「G.K.」の語が出てくるページは12社しかありませんでした。「LLC」は364社ありますが、こちらは海外の会社名として出てくるものを多く含むので、合同会社の英語表記の比較には使えません。G.K. という表記は、紹介されている割に実際の会社サイトではほとんど見かけない、というのが数えて分かったことです。

会社が大きいほど、業種では情報通信・製造で英語表記が出てくる

同じデータを従業員規模(gBizINFO由来)で分けると、規模とともに率が上がります。

業種(日本標準産業分類の大分類、うちの台帳での実効業種)で見ると、差はさらに大きくなります。

情報通信と製造は海外取引や英文サイトを持つ会社が多く、医療・福祉や教育は国内完結の事業が多い、という肌感覚どおりの並びです。実務上の意味は、医療法人や社会福祉法人、地域の教育事業者の英語表記は、探しても存在しないことが普通だということです。そういう相手に英語表記が必要になったら、探し続けるより本人に聞くほうが早く、確実です。

英語表記が見つからないときの書き方

ここまで探して英語表記が見つからない会社は、対外的に英語表記を決めていない可能性が高い会社です。その場合の扱いを3つに分けます。

よくある質問

会社の英語表記は登記簿謄本(履歴事項全部証明書)に載っていますか

載っていません。登記される商号は1つで、商業登記規則第50条で使える文字はローマ字・アラビア数字・6種類の記号までと決まっています。法務省の案内のとおり「株式会社」等の文字を「K.K.」等に代えることはできないので、「〇〇 Co., Ltd.」のような英文社名は商号として登記できず、英文の別名を載せる欄もありません。

国税庁の法人番号公表サイトに英語表記が載っている会社と、載っていない会社の違いは何ですか

英語表記は会社が任意で登録するものなので、載っているのは登録手続をした会社だけです。載っていないのは「英語表記が無い」ではなく「国税庁に登録していない」という意味です。日EU・EPAでEUに輸出する会社は、原産地に関する申告のために登録が実質的に必要なので、輸出事業者は載っている可能性が高くなります。

「株式会社」は英語で Co., Ltd. と Inc. のどちらが正しいのですか

決まった訳語はありません。EDINETに英字名を出している4,368社を数えると、Co., Ltd. が48.3%、Inc. が21.6%、Corporation が18.1%、Ltd. 単独が6.5%で、会社ごとに選んでいます。正しいのは「その会社が自分で決めた表記」で、公式サイト・法人番号公表サイトの英語表記・EDINETのいずれかで確認してから使ってください。

社名にアルファベットが入っている会社なら、英語表記もそれと同じですか

同じとは限りません。商号にローマ字を含む会社は活動中の会社の17.3%ありますが、それは「登記された商号にローマ字が使われている」だけで、「株式会社」の部分をどう英語にするかは別です。「ABC株式会社」の英語表記が ABC Co., Ltd. なのか ABC Inc. なのかは、やはり会社が決めたものを確認する必要があります。

英語表記を間違えて契約書や送金先に書いてしまうと、どうなりますか

契約の相手方の特定は、日本国内であれば登記された日本語の商号と法人番号で行うのが基本なので、英語表記の不一致だけで契約が無効になるものではありません。ただ、海外送金では受取人名義の不一致で着金が止まったり、照会が入ったりすることがあります。英文の書類で会社を特定するときは、英語表記と一緒に法人番号(Corporate Number)と日本語の商号を併記しておくと、表記ゆれがあっても相手を一意に特定できます。

まとめ

出典:法務省「商号にローマ字等を用いることについて」(商業登記規則第50条・平成14年7月31日法務省告示、平成14年11月1日施行)/国税庁 法人番号公表サイト「英語表記の登録」(商号・所在地の英語表記を任意登録、履歴を含めて公表)/税関「日EU・EPAを利用した日本からEUへの輸出に関するお知らせ(国税庁法人番号公表サイトへの英語表記登録)」/金融庁 EDINET「EDINETコードリスト」の提出者名(英字)4,371件(しょくばログ取り込み分・2026年6月14日時点)/国税庁 法人番号公表サイトの全件データをもとにしたしょくばログの台帳(活動中5,028,697社・閉鎖済み762,832社の商号の文字種、2026年9月16日集計)/しょくばログ保存の会社サイト採用ページ32,838社分の語の集計(2026年9月16日時点)。英字名の分類は末尾の語による機械判定で、個々の会社の正式な英語表記を保証するものではありません。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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