✍ 古家あきら | 2026-10-12 更新

内定をもらった会社が不安になったら — 入社前に外から確かめられる項目(職場情報を公開している株式会社は4.4%、平均勤続年数まで出しているのはその2.0%)

先に結論です。内定先が不安になったときに、入社前に外から確かめられることは4つあります。 ①会社がいまも存在していて、社名と所在地が聞いていたとおりか(法人番号公表サイト)、②設立年月日・役員・本店移転などの登記の中身(登記事項証明書)、③平均勤続年数や残業時間などの働き方の数字(職場情報総合サイト)、④内定時にもらう労働条件の書面です。

ただし、③の働き方の数字は「調べれば出てくる」ものではありません。うちの台帳で数えると、厚生労働省の職場情報総合サイト(しょくばらぼ)に載っている活動中の株式会社は全体の4.4%で、そこに載っている会社でも平均勤続年数まで出しているのは2.0%でした。数字が見つからないのはふつうのことで、見つからないから危ない会社だ、とは言えません。 出ていない項目は、人事に直接聞くほうが早く確実です。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「内定をもらった会社の名前で調べたら、ほとんど情報が出てこなくて急に不安になった」という声を聞きます。不安の正体は、多くの場合「会社のことがよく分からないまま決めた」ことにあります。分からない部分のうち、外から埋められる部分を埋め、埋められない部分は質問に変える。その手順を、うちの台帳の実測と合わせて書きます。

不安の中身を3つに分けると、確かめられる範囲が見える

内定後の不安は、だいたい次の3つのどれかです。

このうち、外から確かめられるのは前の2つの一部だけです。3つ目は、どれだけ調べても入社前に答えは出ません。ここを外の情報で埋めようとすると、匿名の書き込みを読み続けることになり、不安はかえって大きくなります。この記事では、前の2つに絞って、確かめられることを順に並べます。

① 会社がいまも存在しているか — 法人番号公表サイトで見る

最初に見るのは、国税庁の法人番号公表サイトです。無料で、登録もいりません。社名で検索し、内定通知書や会社案内に書かれた所在地と一致する会社を選びます。同じ名前の会社は珍しくないので、所在地まで合わせるのが大事です。引き方の詳しい手順は会社名から法人番号を調べる方法にまとめています。

見るところは、商号(社名)・所在地・そして「閉鎖」の表示があるかどうかです。閉鎖されている法人には、閉鎖の理由も記録されます。うちの台帳で、閉鎖済みの株式会社40万7,175社の理由を数えると、清算の結了などが56.4%、登記官による閉鎖が32.5%、合併による解散などが11.0%でした。

ここで気をつけたいのは、「閉鎖になっていない=倒産していない」ではないことです。破産手続が始まっても、法人番号公表サイトの表示がすぐ「閉鎖」に変わるわけではありません。実際に、破産手続開始決定が出た会社を引いても閉鎖になっていなかった例をこちらの記事で確かめています。存在と営業中かどうかを分けて考える方法は、会社が実在するか確認する方法で詳しく書きました。

② 登記の中身 — 設立年月日・役員・本店の動き

もう一歩踏み込むなら、法務局の登記事項証明書(いわゆる登記簿)を取ります。会社の登記は誰でも取得でき、法務局の窓口のほか、オンラインの請求や登記情報提供サービスでも見られます。費用は1通あたり数百円です。

登記で分かることのうち、内定後の確認に役立つのは次の項目です。

設立から日が浅い会社だからといって、それだけで不安がる必要はありません。新しい会社で確かめておきたいことは、設立したばかりの会社に転職して大丈夫かで5つに絞っています。

なお、設立年は国の法人情報サイト(gBizINFO)にも載ることがありますが、うちの台帳で数えると、活動中の株式会社251万3,796社のうちgBizINFOで設立年が分かるのは5万2,727社(2.1%)、従業員数が分かるのは11万2,170社(4.5%)でした。ネット上の無料のデータベースで「設立年も従業員数も出てこない」のは、大多数の会社にとってふつうの状態です。 確実なのは登記事項証明書のほうです。

③ 働き方の数字 — 職場情報総合サイトと、新卒向けの制度

残業時間や有給休暇の取得日数、平均勤続年数のような数字は、厚生労働省の職場情報総合サイト(しょくばらぼ)で公開されていることがあります。会社が自分で登録する仕組みで、載っていれば無料で見られます。

ただ、うちの台帳と突き合わせると、公開している会社の少なさがはっきり出ます。

つまり、内定先がサイトに載っていても、知りたい数字が空欄であることのほうが多いのです。載っていない、あるいは空欄でも、それは「出していない」だけで、「悪い数字だから隠している」とは限りません。

新卒の場合は、もう一つ手があります。若者雇用促進法で、新卒者などを募集する会社は、応募者などから求めがあれば、採用・離職の状況や研修、残業・有休といった職場の情報を提供することになっています。制度の中身と使い方は会社の採用人数・離職者数を調べる方法で詳しく書きました。

④ 労働条件の書面 — 内定段階でもらい、聞いた話と照らす

いちばん実務的で、いちばん効くのがこれです。労働基準法第15条で、会社は労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間などの労働条件を書面などで明示することになっています。2024年4月からは、就業場所と業務の「変更の範囲」も明示する項目に加わりました。

内定の段階で労働条件通知書(または雇用契約書)を受け取ったら、面接や説明会で聞いた話と次の点が合っているかを照らします。

書面をまだもらっていないなら、「入社前に労働条件の書面をいただけますか」と頼むのは失礼なことではありません。不安の多くは、口頭で聞いた話と書面がずれていないかを確かめるだけで小さくなります。

うちのデータから見えること — 「外から分かる会社」はほんの一部

ここまでの数字をまとめると、外から無料で働き方の数字まで見える会社は、全体からすればごく一部です。インボイス(適格請求書発行事業者)の登録のように比較的多くの会社が出している情報でも、うちが取り込んだ登録データで数えると、活動中の株式会社で64.3%、合同会社で35.1%にとどまります(売上の規模などで登録しない事業者もいるため、未登録がそのまま問題を意味するわけではありません)。

運営者として毎日データを見ていて思うのは、「情報が少ない会社」は「怪しい会社」ではなく、「情報を外に出す必要がなかった会社」がほとんどだということです。取引先や大手の要請、採用の都合がなければ、会社はわざわざ数字を公開しません。だからこそ、内定者という立場は使ったほうがいい。応募者や内定者は、外の誰よりも直接聞きやすい位置にいます。

不安を「質問」に変える

調べても埋まらない部分は、人事への質問に変えます。聞き方の例です。

答えの中身だけでなく、答え方も手がかりになります。質問にきちんと答えてくれる会社は、入社後も相談しやすい傾向があります。面接前に調べておくことの一覧は面接前5分でできる会社研究チェックリストに、企業研究全体の進め方は転職の企業研究のやり方にまとめています。

やらないほうがいいこと

よくある質問

内定をもらったあとに会社を調べるのは失礼ですか?

失礼ではありません。法人番号公表サイトや登記事項証明書は、誰でも見られるように公開されている情報です。会社に知られることもありません。人事に質問するときも、「入社前に確認しておきたい」と伝えれば、多くの会社はふつうに答えてくれます。

内定先が入社前に倒産することはありますか?

ありえます。ただ、外から倒産を予測する確かな方法はありません。法人番号公表サイトで閉鎖になっていないかを見ても、破産手続の開始直後は表示が変わらないことがあります。気になる場合は、登記の動き(代表者の交代や本店移転が続いていないか)を見たうえで、人事に入社日や研修の予定を確かめておくのが現実的です。会社の解散や休眠の調べ方は会社が解散・休眠しているか調べる方法にまとめています。

職場情報総合サイトに内定先が載っていません。大丈夫ですか?

載っていないこと自体は問題ではありません。うちの台帳では、活動中の株式会社のうちこのサイトに載っているのは4.4%です。載っていない会社のほうが圧倒的に多いので、知りたい数字は人事に直接聞きましょう。

設立して数年の会社から内定をもらいました。不安です。

設立が新しいことは、それだけで良い悪いを決める材料にはなりません。登記事項証明書で設立年月日と役員を確かめ、代表者がどんな経歴の人か、事業で何をしているかを確認します。そのうえで、労働条件の書面と聞いた話が合っているかを照らしておけば、確かめられることはほぼ確かめたことになります。

労働条件通知書をまだもらっていません。催促してもいいですか?

かまいません。労働基準法では、労働契約を結ぶときに労働条件を書面などで明示することになっています。「入社前に条件を確認しておきたいので、書面をいただけますか」と丁寧に頼めば十分です。

まとめ

参照した一次資料

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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