✍ 古家あきら | 2026-09-19 更新
設立したばかりの会社に転職して大丈夫か — 新設法人は年15.7万社、開業5年で廃業は1割弱。応募前に外から確認する5つのこと
先に答えを書きます。設立したばかりの会社は、それだけで危ないわけではありません。ただし、古い会社を見るときに使う「平均勤続年数」「離職率」「口コミ」は、若い会社ではほとんど効きません。 代わりに見るべきは、法人としての実在(法人番号と登記)、社会保険と労働保険の適用、法人格と代表者、求人票の会社情報欄の整合、そして事業内容と資金の具体性の5つです。この記事では、その5つに入る前に「若い会社はどれだけあって、どれだけ残るのか」を公的な数字とうちのデータベースで確認します。
若い会社はどれくらいあるか — 2025年の新設法人は15万7,011社、活動中の会社の3.1%分が毎年生まれている
東京商工リサーチの「2025年 新設法人動向」調査(2026年5月12日公表)によると、2025年に全国で設立された法人は15万7,011社で、前年(15万3,938社)から1.9%増え、統計を始めた2008年以降で最多を更新しました。法人格別では株式会社が10万558社(64.0%)、合同会社が4万4,991社(28.6%)、一般社団法人が6,480社(4.1%)、医療法人が1,186社(0.7%)です。
しょくばログという会社データベースを運営していると、この「年15万社」がどれくらいの規模かを実感として持てます。うちのデータベースで活動中(閉鎖の記録がない)の法人は502万8,697社なので、1年に生まれる法人はその3.1%にあたります。10年で3割分の法人が新しく生まれている計算で、「設立10年以内」は珍しい会社ではありません。
もう一つ、法人格の偏りも見えます。活動中の会社のうち合同会社は41万2,442社で8.2%ですが、2025年の新設法人では28.6%と3倍以上の比率です。「合同会社の求人」に出会う確率は、若い会社ほど高くなります。合同会社と株式会社の違いは 法人の種類一覧と見分け方 で扱っているので、ここでは「合同会社だから危ない、は成り立たない」とだけ書いておきます。
なお、うちが国税庁の法人番号公表サイトの差分データを40営業日分(2026年7月22日〜9月16日)数えたときは、新規の法人番号指定が4万4,145件、1営業日あたり約1,100件でした。この件数には社団法人や組合なども含まれるため、東京商工リサーチの「新設法人」とは範囲が違いますが、毎日1,000社以上の法人が生まれているという水準感は一致します。
開業5年でどれだけ残るか — 日本政策金融公庫の追跡調査で廃業割合は1年目2.2%、5年目8.9%
「設立したばかりの会社は潰れやすい」というイメージの根拠になる数字は、実はそれほど多くありません。うちが一次資料で確認できた中で、開業した企業を毎年追いかけて廃業の有無を数えている調査は、日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業パネル調査」です。
第4コーホート(2016年に開業した企業3,517社・不動産賃貸業を除く)を2020年末まで追跡した結果(同研究所・井上考二「2016年に開業した企業の5年間の動向」2022年)の廃業割合は次のとおりです。
- 開業翌年(2017年末):廃業 2.2%・存続 97.5%
- 3年目(2018年末):廃業 4.7%・存続 94.7%
- 4年目(2019年末):廃業 7.0%・存続 92.1%
- 5年目(2020年末):廃業 8.9%・存続 89.7%(不明1.4%を全部廃業に数えても10.3%)
過去のコーホートの5年目の廃業割合は、2001年開業が15.4%、2006年開業が15.2%、2011年開業が10.2%で、2016年開業は最も低い値でした。同論文は、2020年のコロナ禍に対応する資金繰り支援が廃業のペースを下げた可能性を挙げています。
業種の差も大きい数字です。第4コーホートの5年目で廃業割合が最も高いのは「飲食店、宿泊業」の12.3%、低いのは「製造業」の6.1%、「運輸業」の6.6%、「卸売業」の6.7%でした。飲食店・宿泊業は第2コーホートで23.2%、第3コーホートで18.9%と、いずれの世代でも最も廃業割合が高い業種です。
ここで一つ注意があります。この調査の対象は、日本政策金融公庫の融資を受けて開業した企業です。つまり融資審査を通った企業の数字であり、自己資金だけで始めた会社や、審査に通らなかった会社は含まれません。全部の新設法人に当てはめると、廃業割合はもう少し高いと考えるのが自然です。それでも「開業5年で残るのは半分」のような極端な数字ではなく、追跡できた範囲では5年で9割前後が残っている、という読み方が実態に近いと思います。
外から見える「設立年つきの会社データ」は、生き残った会社に偏る — うちの設立5年以内3,604社のうち閉鎖済みは0.5%
若い会社を調べるときに一番つまずくのは、設立年そのものです。国税庁の法人番号公表サイトには設立年月日の項目がなく、うちのデータベースの土台にも設立日の列はありません(詳しくは 会社の設立年を調べる方法)。設立年が分かるのは、経済産業省の gBizINFO に会社が自分で登録した情報が中心です。
うちのデータベースで gBizINFO 由来の設立年月日が取れる会社は6万3,954社です。全体579万件の1.1%で、これを会社の年齢別に分けると次のようになります。
- 設立2年以内:1,299社(うち閉鎖済み4社・0.3%)
- 設立3〜5年:2,305社(閉鎖13社・0.6%)
- 設立6〜10年:4,063社(閉鎖14社・0.3%)
- 設立11〜20年:7,741社(閉鎖28社・0.4%)
- 設立21〜30年:7,871社(閉鎖20社・0.3%)
- 設立31〜50年:1万8,225社(閉鎖51社・0.3%)
- 設立51年以上:2万2,449社(閉鎖51社・0.2%)
設立5年以内の3,604社のうち閉鎖済みは17社、0.5%です。データベース全体では579万1,529件のうち閉鎖済みが76万2,832件で13.2%なので、設立年が分かる会社の閉鎖率は全体の25分の1しかありません。これは若い会社が潰れないことを示す数字ではなく、設立年を自分で登録するような会社は、その時点で活動している会社に偏っていることを示す数字です。設立年別に見ても、2015年から2024年に設立された会社は各年700〜850社しか載っておらず、年15万社の新設法人のうち0.5%ほどです。
つまり、外から設立年つきで見つかる若い会社は、それ自体が「登録する余裕のある会社」というふるいを通っています。求人票やサイトで設立年を名乗っている若い会社をこのデータだけで「安全」と判断するのは早計ですし、逆に載っていない会社を「怪しい」と判断する材料にもなりません。
若い会社の「平均勤続年数」と「平均年齢」は短くて当たり前 — 設立5年以内の会社は勤続の中央値1.0年
離職率の代わりによく使われるのが平均勤続年数です。しかし、設立5年の会社で勤続10年の社員がいるはずがありません。この当たり前を数字で確かめるために、厚生労働省の職場情報総合サイト(しょくばらぼ)に公表されている会社のうち、うちのデータベースに設立年と平均勤続年数の両方が取り込めている2,227社を、会社の年齢別に並べました。
- 設立5年以内(106社):平均勤続年数の中央値 1.0年・平均年齢の中央値 34.0歳
- 設立6〜10年(99社):勤続 4.8年・平均年齢 37.0歳
- 設立11〜20年(201社):勤続 6.0年・平均年齢 40.1歳
- 設立21〜50年(756社):勤続 10.8年・平均年齢 43.2歳
- 設立51年以上(1,052社):勤続 14.0年・平均年齢 45.0歳
会社の年齢が上がるほど勤続年数も平均年齢も伸びていて、勤続年数の上限は会社の年齢でほぼ決まっています。設立5年以内の会社の勤続1.0年は、社員が定着していないのではなく、そもそも在籍できる年数が短いだけです。会社の離職率を調べる方法 で書いた「勤続年数から離職率を推定する」やり方は、若い会社では使えません。会社の平均年齢の目安 も同じで、若い会社の平均年齢が低いのは業種より会社の年齢の効果が大きいと考えるべきです。
では若い会社では何を見ればいいか。ここからが本題です。
応募前に外から確認する5つのこと
古い会社を見るときの指標が効かない以上、若い会社では「実在」「制度」「整合」の3方向から確かめるのが現実的です。全部無料で、応募前に自分でできます。
1. 法人番号と登記で「法人として存在しているか」を確かめる
求人票やサイトに書かれた会社名で、国税庁の法人番号公表サイトを検索します。出てこなければ、法人として登記されていないか、商号の表記が違うかのどちらかです。個人事業として求人を出している場合もあり、それ自体は違法ではありませんが、社会保険の扱いが変わります(後述)。法人番号が分かれば、法務局の登記簿(登記情報提供サービスで1件330円)で設立年月日・本店・代表者・事業目的を確認できます。無料で済ませたい場合の探し方は 会社の設立年を調べる方法 にまとめています。
見るポイントは、設立年月日と求人票の「設立年」が合っているか、本店所在地が求人票の勤務地や会社サイトの住所と一致しているか、の2点です。設立が数か月前で本店がバーチャルオフィスというだけで危ないとは言えませんが、応募前に面接で「実際の勤務場所」を聞く材料にはなります。
2. 社会保険・労働保険に入っているかを検索する
法人は原則として厚生年金・健康保険の適用事業所になり、従業員を1人でも雇えば労働保険(労災・雇用保険)の成立手続きが必要です。設立したばかりの会社で一番起きやすいのが、この手続きの遅れです。日本年金機構の「厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システム」で会社名か所在地から検索でき、厚生労働省の「労働保険適用事業場検索」でも確認できます。検索の手順と、出てこない場合の解釈は 会社が社会保険に加入しているか確認する方法 で詳しく書きました。
設立直後は手続き中で載っていないこともあるので、「出てこない=未加入」と決めつけず、面接で加入状況を聞くのが正解です。求人票に「社会保険完備」と書いてあるのに検索で出てこない場合は、その場で確認する価値があります。
3. 法人格と代表者を見る
若い会社は合同会社の比率が高く(2025年の新設法人の28.6%)、株式会社でも資本金が小さいことが普通です。法人格の違いは労働条件に直結しませんが、決算公告の義務や役員の呼び方が違うので、法人の種類一覧と見分け方 で最低限の違いは押さえておくと、面接での質問が具体的になります。
代表者については、登記に載る氏名が求人票やサイトの「代表」と一致しているか、他の会社の代表も兼ねているかを見ます。複数の会社の代表を兼ねていること自体は珍しくありませんが、その会社が本業なのか、片手間の新設法人なのかは働き方に影響します。
4. 求人票の「会社の情報」欄で整合を見る
ハローワークの求人票には、会社名・所在地のほかに設立年・資本金・従業員数・事業内容を書く欄があります。若い会社ではこの欄が「設立2024年・資本金100万円・従業員3人」のようになるのが自然で、それは減点材料ではありません。見るのは整合です。設立年が登記と合っているか、従業員数が3人なのに「複数拠点」「大規模プロジェクト」と書いていないか、試用期間の長さと条件が明記されているか。試用期間の読み方は 求人票の試用期間の見方 に書いています。
従業員数は、うちのデータベースで公的データから取れる会社が全体の2.5%ほどしかなく、若い会社ではさらに少ないので、求人票の自己申告が唯一の手がかりになることが多いです(会社の従業員数を無料で調べる方法)。だからこそ、面接で「今何人いて、今年何人採る予定か」を直接聞くことに意味があります。
5. 事業内容と資金の出どころが具体的か
古い会社なら取引先や実績で判断できますが、若い会社には実績がありません。代わりに見るのは、事業内容の具体性と資金の出どころです。会社サイトや gBizINFO の事業概要が「コンサルティング」「マーケティング支援」だけで何を誰に売っているか分からない場合と、「◯◯業界向けの◯◯を月額で提供」と書けている場合では、応募後に聞ける話の深さが違います。
資金については、外から分かる範囲は限られますが、補助金の採択(gBizINFO に届出・認定・補助金の情報が載る会社があります)、親会社や出資元の存在(サイトの会社概要・登記の商号に親会社名が入るケース)は無料で確認できます。前身の事業があって法人化しただけの会社、子会社として新設された会社、経営陣による買収で新しい法人になった会社は、法人としては若くても事業は古いことがあります。この見分けには 会社の旧社名を調べる方法 で書いた「法人番号は変わらない」という性質が使えます。有限会社や合同会社から株式会社に組織を変えただけなら、法人番号も設立年も引き継がれるので「若く見えて古い会社」にはなりません。逆に、旧法人を閉じて別法人で再出発した会社は、旧法人の閉鎖の記録が 会社が解散・休眠しているか調べる方法 の手順で追えます。
「設立が新しい」だけで避けると失うもの
ここまで慎重な話を書きましたが、うちのデータベースを見ていて思うのは、設立年だけで応募先を絞ると、選択肢の大きな部分を最初から捨てることになる、という点です。年15万社の新設法人は活動中の法人の3.1%分で、10年分なら3割分にあたります。若い会社の中には、会社の設立年から見る「老舗」と「新興」の見分け方 で書いたとおり、設立5年で従業員100人を超える会社もあれば、設立50年で数人の会社もあります。会社の年齢は規模とも安定とも一対一で結びついていません。
若い会社の実際のリスクは「潰れること」より「制度が整っていないこと」に寄っています。就業規則がまだない、評価制度がない、社会保険の手続きが遅れている、といったことは応募前の確認と面接の質問でかなり分かります。上の5つのうち、1と2は検索だけで済み、3〜5も30分あれば終わります。若い会社に応募するときは、口コミを探す時間をこの5つに回すほうが、判断の材料としては確実です。
よくある質問
設立1年未満の会社の求人に応募しても大丈夫ですか
法人番号と登記で実在が確認でき、社会保険・労働保険の加入(または手続き中であることの説明)が取れれば、設立からの期間だけで避ける理由はありません。日本政策金融公庫の追跡調査では、開業翌年末の廃業割合は2.2%です。ただし就業規則や評価制度が未整備なことは多いので、労働条件は求人票と雇用契約書の書面で必ず確認してください。
若い会社の離職率はどうやって調べればいいですか
平均勤続年数からの推定は使えません。設立5年以内の会社は勤続年数の中央値が1.0年で、これは定着していないのではなく在籍できる年数が短いだけです。代わりに、面接で「設立からの採用人数と現在の在籍人数」を聞くのが最も直接的です。採用10人で在籍3人なら、その差が実質の離職です。
合同会社の求人が多い気がします。株式会社より不安定ですか
2025年の新設法人のうち合同会社は28.6%で、活動中の会社全体の8.2%より3倍以上多く、若い会社ほど合同会社に出会います。法人格の違いは設立の手続きや内部の意思決定の仕組みの違いで、労働条件や安定性を直接決めるものではありません。
社会保険の適用事業所検索で会社が出てきません。ブラックですか
設立直後は手続き中で未反映のこともあり、検索に出ないことだけで未加入とは断定できません。面接で加入状況と、加入していない場合の理由と時期を聞いてください。「法人なのに加入の予定がない」という答えなら、それは制度上問題のある状態なので避ける判断で構いません。
設立が新しいのに「創業50年」と書いてある会社があります。嘘ですか
個人事業から法人化した、旧法人を閉じて新法人にした、事業を別法人に移した、といった場合に「創業」と「設立」がずれます。嘘とは限りませんが、前身の法人が閉鎖されている場合はその経緯(休廃業か、倒産か)を確認する価値があります。前身の法人番号が分かれば、閉鎖の記録は法人番号公表サイトで無料で見られます。
まとめ
- 2025年の新設法人は15万7,011社(東京商工リサーチ)。活動中の法人502万8,697社の3.1%分が毎年生まれており、「設立10年以内」は珍しくない
- 日本政策金融公庫の追跡調査(2016年開業3,517社)では、廃業割合は1年目2.2%・5年目8.9%。業種で6〜12%の幅があり、飲食・宿泊が最も高い。融資先の数字なので全体はもう少し高いと見るのが自然
- 外から設立年つきで見つかる若い会社は、うちのデータベースで設立5年以内3,604社のうち閉鎖済み0.5%と、生き残った会社に偏る。「載っている=安全」「載っていない=怪しい」のどちらにも使えない
- 平均勤続年数・平均年齢は会社の年齢でほぼ決まる(設立5年以内は勤続の中央値1.0年)ので、若い会社では離職率の代理指標にならない
- 応募前に見るのは、法人番号と登記、社会保険・労働保険の適用、法人格と代表者、求人票の会社情報欄の整合、事業内容と資金の具体性の5つ。全部無料で、30分あれば終わる
数字の出所:東京商工リサーチ「2025年 新設法人動向」調査(2026年5月12日公表)、日本政策金融公庫総合研究所・井上考二「2016年に開業した企業の5年間の動向 —『新規開業パネル調査(第4コーホート)』結果から—」(2022年)、うちのデータベース(国税庁法人番号公表サイト全件579万1,529件・活動中502万8,697社/gBizINFO 由来の設立年月日6万3,954社/厚生労働省 職場情報総合サイト由来の平均勤続年数・平均年齢2,227社、いずれも2026年9月19日集計)、国税庁 法人番号公表サイト差分データ(2026年7月22日〜9月16日・40営業日分)。