✍ 古家あきら | 2026-09-16 更新

会社の採用人数・離職者数を調べる方法 — 新卒求人なら「直近3年分」を出してもらえる制度がある。ただし公開している会社は15万社中1.8%

先に結論です。新卒向けの求人なら、会社の「直近3事業年度の採用者数と離職者数」は、求めれば出してもらえます。 若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)第13条第2項・第14条第2項で、新卒者等を対象にした募集・求人を行う会社は、応募者や紹介を受けた学生から求めがあれば「青少年雇用情報」を提供しなければならない、と決まっているからです。ハローワークの大卒等・高卒求人には申込書に「青少年雇用情報欄」が付いていて、記入内容は求人票と一緒に公開されます。

ただし、中途採用にはこの制度がありません。 中途で「何人採って何人辞めたか」を知るには、有価証券報告書の従業員数の年次差、301人以上の会社に公表義務がある中途採用比率、厚生労働省「しょくばらぼ」の任意公開、会社サイトの採用実績、そして面接で聞く、の組み合わせになります。

しょくばログという全国の会社データベースを運営していると、「求人票に採用予定人数しか書いてなくて、定着しているのか分からない」「離職率を聞いたら面接で嫌われないか」という相談を受けます。この記事では、①制度で出してもらえる範囲、②どこで見られるか、③厚生労働省「しょくばらぼ」の150,856社と、うちが保存している会社サイトの採用ページ32,838社を数えて、実際にどれくらいの会社が採用者数・離職者数・離職率を公開しているのか、④公開している会社の数字の中身、⑤中途採用での代替手段と面接での聞き方、を順に書きます。

新卒求人には「青少年雇用情報」の提供義務がある

若者雇用促進法第13条は、学校卒業見込者等(新卒者等)を条件にした募集を行う者に、「青少年の募集及び採用の状況、職業能力の開発及び向上並びに職場への定着の促進に関する取組の実施状況その他の青少年の適職の選択に資するもの」=青少年雇用情報を提供するよう努めることを求め(第1項・努力義務)、その募集に応じる、または応じようとする学生から求めがあれば提供しなければならない(第2項・義務)と定めています。第14条は、ハローワーク・職業紹介事業者・特定地方公共団体に新卒求人を申し込む会社について同じ構造で、申込みの際は提供の努力義務、求人の紹介を受けた(受けようとする)学生から求めがあれば提供義務です。

提供する項目は厚生労働省令で3つの類型に分かれています。厚生労働省「職場情報の提供制度」の記載を引くと次の通りです。

このうち、この記事の主題である採用者数・離職者数は(ア)の1番目です。ルールを整理すると、会社は「幅広く出すのが努力義務」「求めがあれば(ア)〜(ウ)の各類型から1つ以上を出すのが義務」です。つまり厳密には、求めても会社が(ア)から「平均勤続年数」だけを選んで出すことは制度上あり得ます。ただ厚生労働省の事業主向け案内(青少年雇用情報シートの書き方のポイント)は「可能な限り全ての項目を記入」を求めており、ハローワークに新卒求人を出す場合は「全ての項目をご記入」が案内されています。

細かい定義も、同じ案内に書かれています。

制度が動き出したのは平成28年(2016年)3月1日です。翌年の平成29年3月1日以降は、ハローワークの求人申込書(大卒等・高卒)の4枚目に「青少年雇用情報欄」が追加され、それまで別紙だった青少年雇用情報シートの提出は不要になりました。所定外労働時間と有給の項目(ウ)については 会社の残業時間・有給消化率を外から調べる方法 で書いたので、ここでは(ア)の採用・離職に絞ります。

どこで見られるか — 5つの窓

① ハローワークの新卒求人票。 大卒等・高卒求人の青少年雇用情報は、ハローワークの求人情報提供端末で求人票と合わせて求職者に公開されます(厚生労働省の事業主向け案内に明記)。ハローワークインターネットサービスの新卒・既卒求人でも求人票の一部として見られます。未記入の項目があって求職者から照会があった場合は、ハローワークから会社に問い合わせをして提供を求める運用です。

② 厚生労働省「職場情報総合サイト しょくばらぼ」。 若者雇用促進法・女性活躍推進法・次世代法にもとづく職場情報を会社ごとに1ページにまとめた国のサイトで、「新卒者の採用・定着状況(前年度/2年度前/3年度前)」の男性・女性・男女計・離職者数が項目として載ります。全件のCSVもダウンロードできます(2026年9月16日版で150,856社)。うちのデータベースの会社ページに載せている平均勤続年数・平均年齢・所定外労働時間・有給取得率・女性管理職比率も、出典はこのしょくばらぼです。

③ 会社サイトの採用ページ。 「採用実績」「募集人数」「定着率」を書く会社があります。後で数えますが、少数派です。

④ 就職四季報(東洋経済新報社)。 上場・大手を中心に、採用数・3年後離職率・平均勤続年数を会社に回答してもらって載せている本で、新卒の会社研究では定番です。載るのは回答した会社だけで、中小はほぼ載りません。

⑤ 有価証券報告書(EDINET)。 上場会社等は「従業員の状況」で従業員数・平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与を毎年書くので、従業員数の年次差から純増減は読めます。ただし採用数と退職数は分けて書かれないので、「100人採って90人辞めた」と「10人採って0人辞めた」の区別はつきません。有報のある会社は上場会社に偏ることは 会社が上場しているか確認する方法 で書いた通りです。

つまり、制度として「採用者数・離職者数」の数字そのものが取れるのは①と②の新卒ルートだけで、③〜⑤は会社の任意か、間接的な数字です。

しょくばログの数字①:しょくばらぼ150,856社で、採用者数・離職者数を書いているのは1.8%

ではどれくらいの会社が実際に公開しているのか。厚生労働省「しょくばらぼ」の全件CSV(2026年9月16日版・150,856社・634列)を取得して、「新卒者の採用・定着状況」の男女計が記入されている会社を数えました。

企業規模別に記入率を見ると、山の位置が面白い。

30〜99人の会社が最も記入していて、1,000人以上は最も記入していない。大手は就職四季報や自社の採用サイトで出す代わりに、しょくばらぼの項目までは埋めていない、と読むのが自然です。逆に言えば、中小の新卒採用を調べるならしょくばらぼは意外に使えます。

業種別(しょくばらぼの業種欄・大分類)の記入率は次の通りです。

記入のある2,751社のうち建設業が1,025社と、3社に1社が建設業です。建設業許可を持つ会社は都道府県の名簿で従業員数などが揃うこと、若手採用の難しさから情報開示に前向きな会社が多いこと、の両方が背景にあると見ています。都道府県別では東京都321社、北海道207社、新潟県146社、大阪府134社、愛知県122社の順で、東京一極ではありません。

しょくばログの数字②:公開している会社では、3年度前に採用した人の21.8%が離職。6割の会社は離職ゼロ

記入のある2,751社の中身を足し上げました。3年分(前年度・2年度前・3年度前)の値が揃っている会社の合計です。

「3年度前に採用した人のうち離職」は、厚生労働省が毎年出す新規学卒就職者の「3年以内離職率」に近い意味の数字です。国の統計(雇用保険の加入記録から集計・令和4年3月卒業者・令和7年10月24日公表)は、大学卒33.8%、高校卒37.9%、短大等44.5%、中学卒54.1%。しょくばらぼで自ら公開している会社の21.8%は、それより12ポイント低い。これは「公開している会社は定着が良い会社に偏っている」と読むべきで、公開の有無そのものが情報です。国の統計の事業所規模別(大学卒)は5人未満57.5%、5〜29人52.0%、30〜99人41.9%、100〜499人33.9%、500〜999人31.5%、1,000人以上27.0%と、小さい会社ほど高い。

会社別に分けると、分布はかなり偏っています。

つまり公開している会社の7割は「3年で新卒5人以下」の規模感です。3年度前に1人以上採用した1,412社に絞って離職を見ると、離職ゼロが832社(58.9%)、採用者の3分の1以上が離職した会社が380社(26.9%)、半数以上が離職した会社が276社(19.5%)。中央値は離職ゼロですが、2割の会社は半数以上が3年で辞めています。母数が1〜3人の会社では1人辞めると「半数以上」になるので、人数の小さい会社の率は割合ではなく人数で読んでください。

男女別では、3年合計の採用者18,498人のうち男性12,240人(66.2%)・女性6,258人(33.8%)。建設業と製造業が多い母集団の反映です。新卒者等以外(35歳未満)の採用は記入2,014社の合計で9,499人、離職2,062人(21.7%)でした。

企業規模別の「3年合計の離職者÷採用者」は、1〜9人21.5%、10〜29人17.3%、30〜99人12.9%、100〜299人15.3%、300〜999人18.1%、1,000人以上15.7%。業種別は製造業12.8%、建設業12.6%、学術研究・専門技術サービス業10.4%が低く、運輸業・郵便業29.0%(513人中149人)、不動産業・物品賃貸業29.2%(243人中71人)、生活関連サービス業・娯楽業33.7%(101人中34人)が高い。ただし後ろ3業種は採用者の母数が数百人以下で、数社の値で動く水準です。業種ごとの離職率の一般論は 業種別の離職率 に厚生労働省の雇用動向調査で書いています。

しょくばログの数字③:会社サイトの採用ページで「募集人数」を書く会社は9.7%、「離職率」は1.6%

会社が自分のサイトでどれくらい書いているかも数えました。うちのデータベースで採用ページのテキストを保存している32,838社(gBizINFOに登録があり、公式サイトの採用ページを取得できた会社)を、語で検索した結果です。

採用ページを持っている会社に限っても、離職率を書くのは60社に1社、離職者数を書くのは250社に1社です。「青少年雇用情報」という制度の名前を採用ページに書いている会社は46社しかなく、制度はハローワークの求人票の中で完結していて、会社サイトには出てきていないことが分かります。

書いてある数字の中身も拾いました。「離職率 ○%」の形で数値が読めた321件の分布です。

「定着率 ○%」で読めた379件は中央値93.4%、90%以上が295件(77.8%)。つまり会社サイトに離職率・定着率を書くのは、書いて得になる数字を持っている会社だけです。国の3年以内離職率が3割台であることを考えると、サイトに離職率5%と書いてある会社は珍しく良い会社か、分母の取り方(全社員の年間離職率と新卒3年以内離職率は別の数字)が違うかのどちらかで、後者の確認は面接で必要です。

「募集人数 ○名」で人数が読めた2,652件は、1名が1,012件(38.2%)、2名455件(17.2%)、3〜5名558件(21.0%)、6〜10名269件(10.1%)、11名以上358件(13.5%)。半数以上が2名以下で、中小の採用ページの「募集人数」は1枠ずつの補充採用が中心です。従業員規模別(gBizINFOの従業員数)に「募集人数」の記載率を見ると、1〜9人2.8%、10〜29人6.3%、30〜99人9.7%、100〜299人12.1%、300人以上13.5%と規模に比例し、「離職率」の記載率も0.8%→1.1%→1.7%→2.0%→2.1%と同じ形です。小さい会社ほど採用ページに数字がないのは、隠しているのではなく書く習慣がないだけのことが多い、というのがデータベースを見ていての感触です。

中途採用で「何人採って何人辞めたか」を知りたいとき

青少年雇用情報は新卒等の募集にしか付いていません。中途で知るための現実的な手は4つです。

① 中途採用比率の公表。 労働施策総合推進法の改正で、常時雇用する労働者が301人以上の会社は、正規雇用労働者の採用者数に占める中途採用者数の割合(直近3事業年度分)を公表する義務があります(2021年4月1日施行)。しょくばらぼの「中途採用比率」欄に990社分が載っていて、自社サイトで公表している会社もあります。300人以下には義務がありません。

② 有価証券報告書の従業員数の年次差。 上場会社等なら「従業員の状況」の単体従業員数を数年分並べれば純増減が分かります。採用と退職は分かれていないので、年次差が小さくても中で大量に入れ替わっている可能性は残ります。従業員数の他の調べ方は 会社の従業員数を無料で調べる方法 にまとめています。

③ 求人の出方を見る。 同じ職種の求人が年中出ている、求人票の「募集人数」が従業員数に対して大きい、といった間接的なサインです。求人票の各欄の読み方は 求人票の見方 で書きました。

④ 面接で聞く。 「直近3年で何人入って何人辞めましたか」は、新卒なら制度で出してもらえる数字ですから、中途で聞いても失礼ではありません。聞き方は「配属予定の部署の人数と、直近1〜2年の入退社」に絞ると、会社側も答えやすい。数字を出せない会社は多いですが、「把握していない」と「言いたくない」の違いは返答で分かります。

実際の手順(新卒・中途共通)

1. ハローワークインターネットサービスで会社名を検索し、新卒・既卒求人が出ていれば求人票の青少年雇用情報欄を読む。大卒等求人ならハローワークの端末で求人票と一緒に公開されています 2. しょくばらぼで会社名を検索し、「新卒者の採用・定着状況」「新卒者等以外(35歳未満)の採用・定着状況」「中途採用の実績」「中途採用比率」「平均継続勤務年数」を見る。空欄なら、その会社は公開していないということです 3. 会社サイトの採用ページで「採用実績」「募集人数」「定着率」「離職率」を探す。離職率が書いてあれば、分母(全社員か新卒か)と期間(年間か3年以内か)を確認する 4. 上場会社等ならEDINETで有価証券報告書の「従業員の状況」を3年分並べる 5. 新卒で応募するなら、会社に青少年雇用情報を求める。 若者雇用促進法第13条第2項・第14条第2項の義務なので、応募者・紹介を受けた学生は求める権利があります。ハローワーク経由なら窓口に「青少年雇用情報の未記入項目を照会してほしい」と伝えれば、ハローワークが会社に問い合わせます。求めたことを理由にした不利益な取扱いは指針で禁じられています

会社研究の全体の手順は 面接前にやる会社研究チェックリスト に、離職率の推定方法は 会社の離職率を調べる方法 にまとめています。

よくある質問

青少年雇用情報は、どんな会社にも請求できますか

新卒者等(学校卒業見込者等)を条件にした募集・求人を行っている会社に対して、その募集に応じる(応じようとする)学生、または求人の紹介を受ける(受けようとする)学生が求めた場合です。中途採用の応募者に対する提供義務はありません。また会社は3類型それぞれ1つ以上を出せば義務は果たしたことになるので、「採用者数・離職者数」が必ず出てくるとは限りません。ただしハローワークに新卒求人を出す会社には全項目の記入が案内されており、実務上は求人票で読めることが多いです。

求人票に「新卒等離職者数」とあるのは何の数字ですか

ハローワークの大卒等・高卒求人票の青少年雇用情報欄にある「新卒者等の採用者数/離職者数」で、前年度・2年度前・3年度前の各年度に採用した新卒者等の人数と、そのうち離職した人数です。新卒と同じ採用枠で採った既卒者を含み、海外支店勤務者は除きます。しょくばらぼの「新卒者の採用・定着状況」も同じ項目です。3年度前の欄が「採用5人・離職2人」なら、3年前に入った5人のうち2人が辞めた、と読みます。

しょくばらぼに載っていない会社は、情報を隠しているのですか

違います。しょくばらぼの項目は、ハローワーク求人票の青少年雇用情報や女性活躍推進法・次世代法の公表データベース、会社自身の登録から集められていて、項目の記入を会社に強制する仕組みではありません。2026年9月16日版の150,856社のうち採用・定着状況を記入しているのは2,751社(1.8%)です。1,000人以上の会社は記入率0.5%と最も低く、記入していないのは大手ほど普通です。載っていないことは「隠している」より「入力していない」の意味で、その会社の情報はハローワーク求人票・会社サイト・就職四季報で当たってください。

内定者数や採用人数の「平均」はありますか

会社全体を代表する統計はありません。うちが数えた範囲では、しょくばらぼで採用・定着状況を公開している2,751社の7割は「3年間の新卒採用者が5人以下」、会社サイトの採用ページで「募集人数」を書いた2,652件の半数以上が2名以下でした。国の統計(新規学卒者の就職者数)は会社単位ではなく学校側の集計なので、「1社あたり」に直せません。会社の規模で見当をつけるなら、上の規模別の数字を目安にしてください。

離職率が書いてある会社は安心ですか

会社サイトに離職率を書く会社は32,838社中539社(1.6%)で、書いてある数字の中央値は5.0%、8割が10%以下でした。書いている会社は概して良い数字を持っていますが、「全社員の年間離職率」なら定年退職を含むかどうか、「新卒3年以内離職率」なら対象年度がいつか、で意味が変わります。国の3年以内離職率が大学卒33.8%であることを物差しに、数字の定義を面接で確認するのが順当です。

まとめ

出典

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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