✍ 古家あきら | 2026-10-05 更新
民泊の届出番号を確認する方法 — 「第M」から始まる番号は玄関の標識に。民泊を事業として掲げる会社サイト48社のうち、届出番号を載せていたのは0社だった
先に結論です。住宅宿泊事業法にもとづく民泊は、許可ではなく「届出」で営む事業です。 届出先は都道府県知事で、保健所を設置する市や東京23区などが事務を担っている地域では、その市長・区長です(住宅宿泊事業法3条1項)。届出が受理されると、「第M」から始まる届出番号が通知されます。
その民泊が届出をしているかどうかは、次の順で確かめるのが現実的です。
- 施設の玄関などにある標識を見る:住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に標識を掲げなければなりません(13条)。観光庁の民泊制度ポータルサイトも「届出番号の記載された標識が施設の玄関に掲示されているかで確認できます」と案内しています
- 予約サイトの物件ページを見る:事業者は、仲介を委託するときに届出番号を仲介業者に伝えることになっています。観光庁は、仲介サイトで「届出番号や許可を得ている物件か等が確認できるか」を見るよう案内しています
- 自治体に問い合わせる:届出の受理は自治体の仕事なので、最終的な確認先は施設のある都道府県・市・区です
一方で、会社のサイトに届出番号はほとんど載っていません。 しょくばログという会社データベースを運営していると、業種をまたいで会社の公式サイトの文章を読む機会が多いのですが、保存している31,159社のサイトのうち、民泊を事業として掲げている会社は48社でした。そのうち「第M」から始まる届出番号を載せていた会社は0社。かわりに目立ったのは、住宅宿泊管理業の登録番号(「国土交通大臣(01)第F…号」の形)を載せていた8社です。
この差には理由があります。後で書きます。
民泊の届出番号とは
民泊は「届出」で営める宿泊事業
住宅宿泊事業法2条3項は、旅館業法の営業者以外の人が、宿泊料を受けて「住宅」に人を泊める事業で、泊めた日数が1年間で180日を超えないものを「住宅宿泊事業」と定めています。この届出をして事業を営む人が「住宅宿泊事業者」です(2条4項)。
ここでいう「住宅」は、台所・浴室・便所・洗面設備があり、実際に人の生活の本拠として使われている家屋や、入居者を募集中の家屋などです(2条1項)。
届出書には、商号・名称、法人なら役員の氏名、住宅の所在地、管理業務を委託する場合はその住宅宿泊管理業者の商号などを書き、住宅ごとに提出します(3条2項)。つまり届出番号は、会社に1つ付くものではなく、届出住宅ごとに付く番号です。
届出番号は「受理されてから」付く
届出は観光庁の「民泊制度運営システム」から出すことが多いのですが、観光庁の操作手順書は、送信直後の画面に出る「受付番号」は届出番号ではないと注意しています。届出番号は、行政機関が届出を不備なく受け付けたときに通知されるもので、通知を受けるまで事業を始めることはできません。
番号の形は「第M〜号」です。千葉県のページは、住宅宿泊事業者を「第Mから始まる届出番号をお持ちの方」と言い表しています。
標識に書かれるもの
標識は、国土交通省令・厚生労働省令で定める様式のものを、届出住宅ごとに掲げます(13条)。観光庁の案内のとおり、この標識に届出番号が書かれています。標識を掲げなかった場合は30万円以下の罰金の対象です(76条2号)。
届出をめぐる主な罰則
- 虚偽の届出:6か月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(または両方)(73条1号)
- 標識を掲げない:30万円以下の罰金(76条2号)
- 宿泊日数などの定期報告をしない・偽る:30万円以下の罰金(76条3号)。事業者は宿泊させた日数などを定期的に都道府県知事に報告します(14条)
届出をせずに、宿泊料を受けて人を泊める営業を続ければ、住宅宿泊事業ではなく旅館業の無許可営業の問題になります。旅館業法の罰則は、旅館業許可を調べる方法で整理しています。
旅館業の許可・特区民泊との見分け方
「民泊」と呼ばれる宿には、法律の入口が3つあります。観光庁の民泊制度ポータルサイトは、次の3つを挙げています。
- 旅館業法の許可(ホテル・旅館、簡易宿所など):確認先は、施設のある都道府県(保健所を設置する市・特別区を含む)。許可施設を自治体のサイトで公開している場合もあります
- 国家戦略特区法の認定(特区民泊):確認先は、特区民泊に取り組む自治体への問い合わせや、その自治体のサイト
- 住宅宿泊事業法の届出:確認先は、施設の玄関の標識(届出番号)
見分けるときの手がかりは、番号の種類です。「第M」から始まる届出番号があれば住宅宿泊事業法の民泊、旅館業の許可番号なら旅館業法の施設です。番号の書式は自治体ごとに違うので、迷ったら番号ごと自治体に問い合わせるのが確実です。
もう1つの手がかりは営業日数です。住宅宿泊事業は年間180日まで(2条3項)。さらに都道府県や保健所設置市などは、騒音などで生活環境が悪くなるのを防ぐため、条例で区域と期間を決めて営業を制限できます(18条)。1年中予約が取れる施設なら、旅館業の許可か特区民泊の認定で営んでいると考えるのが自然です。
民泊の届出番号を確認する方法
1. 施設の標識を見る
いちばん確実なのは現地の標識です。玄関などに標識があり、届出番号が書かれているかを見ます。宿泊する前なら、予約サイトの写真や施設の案内に標識が写っていることもあります。
2. 予約サイトの物件ページを見る
事業者は、宿泊の予約の代理や媒介を他人に委託するときは、登録を受けた住宅宿泊仲介業者か旅行業者に委託しなければならず、そのとき届出番号を伝えることになっています。観光庁は、仲介サイトで次の3つがわかるかを確かめるよう案内しています。
- 利用条件の事前案内がなされているか
- 届出番号や許可を得ている物件か等が確認できるか
- 物件の住所が確認できるか
予約サイトそのものが登録を受けているかは、民泊制度ポータルサイトの「住宅宿泊仲介業者 登録事業者リスト」で確かめられます。旅行会社の登録の見方は旅行業登録を確認する方法にまとめました。
3. 自治体の一覧と窓口
届出を受理した住宅の一覧を公開している自治体もあります。ただし、一覧に届出番号が載っているとは限りません。 たとえば千葉県は「県内届出受理施設一覧」を公開していますが、令和2年5月7日の住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)の一部改正に伴って、届出番号の掲載はなくなったと書いています。番号まで確かめたいときは、施設のある自治体の担当窓口に問い合わせるのが確実です。
4. 管理会社の登録を確かめる
運営を任された管理会社の登録は、国が確認先です。事業者は、届出住宅の居室が5を超えるときや、宿泊者がいる間に不在になるときなどは、管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません(11条1項)。住宅宿泊管理業は国土交通大臣の登録制で、登録は5年ごとに更新します(22条)。登録業者の情報は国土交通省のサイトで見られ、管理業者は営業所ごとに標識を掲げ、届出住宅に出入りする従業者は「従業者証明書」を携帯することになっています。
5. 行政処分を検索する
業務停止命令などの処分歴を調べたいときの手順は、会社の行政処分を調べる方法にまとめています。許認可全般の調べ方は会社の許認可を調べる方法が入口です。
民泊はどれくらい届け出られているか(観光庁の公表)
観光庁の「住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況」(令和8年9月15日時点)は、次のとおりです。
- 住宅宿泊事業の届出件数:67,932件(うち事業廃止24,895件)
- 届出住宅数:43,037件(令和8年7月より967件増)
- 住宅宿泊管理業者の登録:4,740件
- 住宅宿泊仲介業者の登録:66件
- 特区民泊の認定居室数:30,921居室(令和8年6月末時点)
施行直後の平成30年6月15日時点の届出件数は2,210件だったので、8年あまりで30倍を超えました。一方で、届け出た件数の36.6%はすでに事業を廃止しています。
自治体別の一覧を見ると、届出件数が多いのは大阪市(6,267件)、札幌市(6,227件)、新宿区(5,767件)です。ただ大阪市は廃止が4,224件(67.4%)で、届出住宅数は2,043件にとどまります。届出住宅数で見ると、新宿区(3,980件)、札幌市(3,103件)、墨田区(2,255件)、大阪市(2,043件)、福岡県(1,950件)の順です。「届出件数」と「いま届け出られている住宅の数」は別の数字なので、地域の民泊の多さを見るときは届出住宅数のほうを見てください。
会社サイトには、どこまで書いてあるのか(しょくばログの集計)
ここからは、しょくばログが保存している会社公式サイトの文章(文字化けの多いものを除いた31,159社)を数えた結果です。
「民泊」に触れる会社と、民泊を事業として掲げる会社
「民泊」という言葉がサイトのどこかにあったのは94社でした。このうち「民泊運営」「民泊代行」「民泊事業」「民泊管理」「住宅宿泊事業」など、民泊を事業として掲げる書き方をしていたのは48社です。
番号の書き方
その48社について、番号の載せ方を数えました。
- 「第M」から始まる届出番号:0社
- 「住宅宿泊事業の届出」や「届出番号」という言葉:1社
- 「住宅宿泊管理業」という言葉:9社
- 住宅宿泊管理業の登録番号(「国土交通大臣(01)第F…号」の形):8社
- 特区民泊に触れる:1社
- 上のどれにも触れていない:37社(77.1%)
民泊に触れる94社全体に広げて、「第M」に続く番号や「届出番号」という言葉を探しても、民泊の届出番号は見つかりませんでした。
この数字の読み方
「届出番号を載せている会社が0社」は、届出をしていない会社ばかり、という意味ではありません。 理由は3つあります。
1. 届出番号は会社ではなく住宅に付く番号です。何十件も物件を持つ会社が、会社概要に番号を並べることはまずありません。番号は物件ごとに、標識と予約サイトの物件ページに出すものです 2. 民泊を事業として掲げる会社には、管理会社や運営代行の会社が多いと考えられます。管理会社が示すべきなのは、自社の届出番号ではなく住宅宿泊管理業の登録番号です。実際、番号を載せていた8社はすべてこちらでした 3. サイトの文章は保存した時点のもので、物件ページや予約サイトまでは含みません
つまり、会社サイトで確かめられるのは「管理会社として登録しているか」までで、物件ごとの届出は、標識・予約サイト・自治体で確かめることになります。この構造は、物件ではなく会社の登録を見る賃貸住宅管理業の登録を確認する方法と似ています。
法人の形・業種・所在地
民泊を事業として掲げる48社は、株式会社45社・合同会社2社・有限会社1社でした。業種(日本標準産業分類の大分類)は、不動産業・物品賃貸業が13社(27.1%)で最も多く、分類不能11社、宿泊業・飲食サービス業7社、建設業4社と続きます。不動産会社が管理や運営代行の一部として民泊を扱っている姿が見えます。
所在地は東京都22社・大阪府11社で、2都府で33社(68.8%)を占めました。
社名に「民泊」を含む法人
しょくばログの法人DBで、社名に「民泊」を含む法人は79件ありました。内訳は株式会社33件、一般社団法人などの「その他の設立登記法人」32件、合同会社13件などです。業界団体や協会のような法人が多いのが、ほかの業種と違うところです。79件のうち12件(15.2%)はすでに登記上閉鎖しています。
民泊を使う・その会社で働くときに見ておきたいこと
泊まる側は、予約前に物件ページで届出番号か許可の有無、住所が示されているかを見て、到着したら玄関の標識を確かめるのが基本です。標識が見当たらず、物件ページにも番号がないなら、予約サイトや自治体に問い合わせるきっかけになります。
民泊の運営会社や管理会社で働こうとしている人は、次を見ておくと実態がつかみやすくなります。
- 住宅宿泊管理業の登録番号を示しているか。管理を請け負う会社なら、登録は必須です
- 扱っている物件が住宅宿泊事業(180日まで)なのか、旅館業の簡易宿所なのか、特区民泊なのか。営業日数の上限が違うので、売上の組み立ても違います
- 物件のある自治体の条例による制限(18条)。区域や期間を絞っている自治体があります
会社そのものが実在するか、続いているかは、会社が実在するか・倒産していないかを確かめる方法の手順で確かめられます。
よくある質問
民泊の届出番号は、どこかで一括検索できますか?
観光庁の民泊制度ポータルサイトで公開されているのは、届出件数などの集計と、住宅宿泊仲介業者の登録リストなどです。届出番号で物件を一括検索できる国の公開ページは、執筆時点で見つけられませんでした。届出受理施設の一覧を公開している自治体はありますが、千葉県のように届出番号を載せていない一覧もあります。確実なのは、標識と、施設のある自治体への問い合わせです。
届出番号があれば、1年中営業できますか?
できません。住宅宿泊事業は、人を泊めた日数が1年間で180日を超えないものに限られます(2条3項)。さらに、条例で区域と期間を決めて営業を制限している自治体もあります(18条)。180日を超えて営業するには、旅館業の許可か、特区民泊の認定が必要です。
管理会社の登録番号と、民泊の届出番号は何が違いますか?
届出番号は、住宅宿泊事業者が住宅ごとに自治体に届け出て受け取る番号で、「第M」から始まります。住宅宿泊管理業の登録番号は、事業者から管理業務を受託する会社が国土交通大臣の登録を受けたことを示す番号で、「国土交通大臣(01)第F…号」のような形です。前者は物件、後者は会社に付く番号です。
届出番号の通知が来る前に予約を受けてもいいですか?
観光庁の操作手順書は、届出番号の通知を受けるまで事業を実施することはできないと注意しています。システムに出る「受付番号」は届出番号ではありません。
民泊の届出は会社の登記簿に載りますか?
載りません。登記簿にあるのは商号・本店・目的・役員などで、住宅宿泊事業の届出は自治体への手続きです。登記の「目的」に「住宅宿泊事業」と書いてあっても、それは「その事業をする予定がある」という意味で、届出をした証明にはなりません。
データについて
- 会社サイトの集計:しょくばログが保存している会社公式サイトの文章のうち、文字化けの多いものを除いた31,159社。表現の数え方は正規表現ベースで、個社名は出していません。業種は日本標準産業分類の大分類で、しょくばログの法人DBに付いているものを使っています。集計スクリプトは `scripts/analyze_minpaku_todoke_hp_cache.py`(2026年10月5日実行)
- 社名の集計:国税庁法人番号公表サイトのデータをもとにした、しょくばログの法人DB
- 制度の説明:住宅宿泊事業法(2条・3条・11条・13条・14条・18条・22条・73条・76条、e-Gov法令検索)、観光庁 民泊制度ポータルサイト「安心できる民泊環境」、観光庁「民泊制度運営システム 操作手順書(住宅宿泊事業者向け)」、千葉県「民泊について(住宅宿泊事業法)」
- 届出・登録の件数:観光庁「住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況」「届出及び登録の状況一覧」(令和8年9月15日時点。特区民泊の認定居室数は令和8年6月末時点)