✍ 古家あきら | 2026-09-30 更新
旅館業許可を調べる方法 — 許可を出すのは保健所のある自治体。会社サイト31,159社で数えたら「旅館業」に触れていたのは57社、許可番号まで書いていたのは4社だった
先に結論です。旅館業の許可は、施設がある場所の自治体に問い合わせるか、その自治体が公開している「許可施設一覧」を見るのが確実です。 会社のサイトを見ても、ほとんど書いてありません。
- 許可を出すのは誰か…旅館業法第3条で、原則は都道府県知事。ただし保健所を設置する市と特別区(東京23区)では、市長・区長が許可を出します。つまり「東京都の一覧に載っていない=無許可」ではありません。23区内の施設は、区の一覧や保健所を見る必要があります
- 許可は施設ごと…会社に1枚ではなく、ホテル1棟・旅館1軒ごとに許可を受けます。同じ会社でも、施設が違えば許可の窓口も違うことがあります
- 民泊は許可ではなく「届出」…住宅宿泊事業法にもとづく民泊は、許可ではなく都道府県知事などへの届出で営めます。そのかわり、年間の宿泊日数は180日までです
しょくばログという会社データベースを運営していると、「取引先がホテルを運営すると言っているが、本当に許可を持っているのか」「応募しようとしている宿が、ちゃんとした営業なのか」という相談を受けることがあります。そこで、しょくばログが保存している会社サイト31,159社で、旅館業の許可について何が書いてあるかを数えました。「旅館業」という言葉に触れていたのは57社。許可番号まで書いていたのは4社でした。
この記事では、条文で制度の形を確かめたうえで、実際に許可を確かめる方法と、会社サイトの書き方の実態をお見せします。
旅館業の許可とはどんな制度か
旅館業法は、宿泊施設の衛生と安全を守るための法律です。宿泊料を受けて人を泊める営業をするには、許可が要ります。
条文で確かめた要点は次のとおりです(e-Gov法令検索の現行法、2025年6月1日施行分まで反映)。
- 許可が要る(第3条第1項)…旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)の許可を受けなければならない
- 許可を出さない場合(第3条第2項)…施設の構造設備が基準に合わないとき、設置場所が公衆衛生上不適当なとき、申請者が欠格事由(破産者で復権していない、許可を取り消されて3年たっていない、暴力団員等など)に当たるとき
- 学校などの近く(第3条第3項)…学校や児童福祉施設などの周囲おおむね100メートル以内で、その環境が著しく害されるおそれがあるときも、許可しないことができる
- 営業の譲渡(第3条の2)…旅館業を譲渡するとき、譲渡人と譲受人が知事の承認を受ければ、譲受人が営業者の地位を引き継ぐ
- 合併・分割(第3条の3)…法人の合併や分割でも、知事の承認を受ければ地位を引き継ぐ
- 宿泊者名簿(第6条)…営業者は宿泊者名簿を備え、知事から求められたら提出する
- 取消し・停止(第8条)…法律違反などがあれば、許可の取消しや1年以内の営業停止を命じられる
- 罰則(第10条)…許可を受けずに旅館業を営んだ者は、6か月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(または両方)
電気工事業の登録(有効期間5年)などと違い、旅館業法の条文には許可の有効期間や更新の定めがありません。 一度取った許可が、施設や営業者が変わらないかぎり続く形です。だからこそ、「いつ・誰が・どの施設で」許可を受けたのかを、施設ごとに確かめることが大切になります。
4つの営業の種類と、民泊
旅館業法第2条は、旅館業を次の3つに分けています。
旅館・ホテル営業
施設を設け、宿泊料を受けて人を泊める営業で、簡易宿所営業と下宿営業以外のものです。ホテルも旅館も、ビジネスホテルも、ここに入ります。
以前は「ホテル営業」と「旅館営業」が別の種類でしたが、2018年の法改正で「旅館・ホテル営業」に一本化されました。改正前にどちらかの許可を受けていた施設は、新しい「旅館・ホテル営業」の許可を受けたものとみなされています(改正法の附則第3条)。
簡易宿所営業
宿泊する場所を多数人で共用する構造・設備を主とする施設の営業です。カプセルホテル、ゲストハウスの相部屋(ドミトリー)、山小屋などが典型です。一棟貸しの宿がこの許可で営業していることもあります。
下宿営業
1か月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて人を泊める営業です。なお、旅館・ホテル営業や簡易宿所営業の許可を持っていれば、同じ施設で下宿営業を営むのに別の許可は要りません(第3条第1項ただし書き)。
民泊(住宅宿泊事業)は許可ではなく届出
2018年に施行された住宅宿泊事業法で、旅館業の許可を持たない人でも、届出をすれば「住宅」に人を泊められるようになりました(第3条第1項)。
- 届出先…都道府県知事。保健所設置市などで事務を担う市・区では、その長
- 日数の上限…人を泊める日数が1年間で180日を超えないもの(第2条第3項)
- 標識…届出住宅ごとに、公衆の見やすい場所に決められた様式の標識を掲げる(第13条)
- 罰則…届出で虚偽の届出をした者は、6か月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(または両方)(第73条)
つまり、宿泊事業には「旅館業の許可」と「民泊の届出」という別の入口があります。180日を超えて営業している民泊施設があれば、旅館業の許可か、ほかの制度(国家戦略特区の「特区民泊」など)の枠組みで営業しているはずです。
旅館業の許可を調べる3つの方法
1. 自治体が公開している「許可施設一覧」を見る
いちばん手早いのは、施設がある自治体の一覧です。多くの自治体が、旅館業法の許可施設を一覧で公開しています。
- 京都市…「旅館業法に基づく許可施設一覧」をオープンデータで公開しています。施設名・営業者名・所在地・許可番号・許可日・営業の種別が並び、Excel と PDF で毎月更新されています
- 東京都…都が設置している保健所の管轄区域について、旅館業施設の一覧を公開しています。ただし対象は八王子市・町田市を除く市町村部(島しょを含む)で、23区と八王子市・町田市は入っていません。 これらは区・市が自分で許可を出しているからです
- ほかにも、千葉県、神奈川県、さいたま市、広島市、福岡市などが一覧を公開しています
ここで注意したいのが、東京都の例のように、「都道府県の一覧」と「保健所設置市・特別区の一覧」が別々になっていることです。調べる施設の住所がどの保健所の管轄かを先に確かめ、その保健所を持つ自治体の一覧を見てください。
東京都の一覧には「従業員向けの研修所や会員制の施設など、一般客を受け入れない施設も含まれる」「休止中の施設が含まれている可能性がある」という注意書きもあります。一覧に載っていることは「許可がある」ことの確認にはなりますが、「いま営業している」ことの確認にはなりません。
2. 施設を管轄する保健所に問い合わせる
一覧を公開していない自治体や、一覧の更新前に開業した施設は、保健所に問い合わせます。施設の名称と所在地を伝えて、旅館業の許可があるか、営業の種別は何かを確かめます。
3. 営業者の名義と、会社の法人番号を突き合わせる
許可の一覧で見つかったら、「営業者名」が取引しようとしている会社と同じかを確かめます。ホテルでは、建物を持つ会社、運営する会社、ブランドを貸す会社が別々のことが珍しくありません。許可を受けているのは「営業者」です。
営業者名の会社が実在するかは、法人番号の調べ方の手順で、法人番号・本店所在地・商号の変更履歴を見れば確かめられます。施設名(屋号)しか分からないときは、店名やサイト名から運営会社を調べる方法が使えます。
民泊の場合は、施設の入口の標識に届出番号が書かれています。東京都は、住宅宿泊事業の届出について、届出日・届出番号・住宅の所在地を公表しています(事業者の同意にもとづく公表です)。
会社サイトで数えたら、「旅館業」に触れていたのは57社だった
しょくばログは、会社の公式サイトのテキストを保存しています。文字化けがひどいものを除いた31,159社について、旅館業の許可と民泊の届出にかかわる言葉を数えました。
「旅館業」に触れていたのは57社(0.18%)
31,159社のうち、「旅館業」という言葉がサイトのどこかにあったのは57社でした。「民泊」か「住宅宿泊事業」に触れていたのは97社。どちらかに触れていたのは145社、両方に触れていたのは9社です。
一方、「ホテル」「旅館」「宿泊」「民泊」「ゲストハウス」「簡易宿所」のどれかがサイトにある会社は4,117社ありました。宿泊にかかわる言葉を使う会社は多いのに、その法的な根拠(旅館業の許可)を書いている会社はごく一部です。
許可番号まで書いていたのは4社
「旅館業」に触れた57社のうち、
- 「旅館業の許可」「旅館業法にもとづく許可」のように許可を得ていることを書いていた…4社(7.0%)
- 旅館業・簡易宿所・ホテル営業の近くに「第〇号」の形で番号まで書いていた…4社(7.0%)
- 「旅館・ホテル営業」という許可の種別の正式名を書いていた…1社
- 「簡易宿所」「下宿営業」…0社
- 「保健所」…1社
でした。宅地建物取引業者の免許番号や、建設業許可の番号をサイトに書く会社は多いのですが、旅館業の許可番号をサイトに出す会社は、ほとんどありませんでした。
ホテル・旅館の名前を持つ会社でも、97社中5社
もっと直接的に、商号(会社名)に「旅館」「ホテル」「民宿」「ペンション」「ゲストハウス」「ホステル」「民泊」を含む会社を見ました。「ホテル用品」「ホテルリネン」のように宿泊業ではない商号98件を除くと、活動中の会社は6,311社。このうちサイトのテキストを読めた97社で数えると、
- 「旅館業」に触れていた…5社
- 許可番号らしき「第〇号」まで書いていた…1社
- 「保健所」に触れていた…1社
- 「特定商取引」(通信販売の表示)に触れていた…14社
でした。宿を運営している会社そのものでも、サイトに旅館業の許可を書くのは5%程度です。「サイトに許可のことが書いていないから怪しい」とは言えません。確かめるなら、サイトではなく自治体の一覧か保健所です。
民泊に触れる会社は、宿よりも不動産会社
「民泊」「住宅宿泊事業」に触れた97社の業種を見ると、不動産業が20社で、不動産業の会社(サイトを読めた503社)の4.0%にあたります。宿泊業・飲食サービス業(807社)では8社(1.0%)でした。
97社のうち「住宅宿泊管理業」(民泊の管理を請け負う事業)に触れていたのは11社(11.3%)、「住宅宿泊事業」という法律上の言葉を使っていたのは8社(8.2%)、「特区民泊」に触れていたのは2社でした。民泊は、自分で宿を営む会社より、物件を貸す・管理する側の会社が話題にしていることが多いのが分かります。
反対に、「旅館業」に触れた57社では、宿泊業・飲食サービス業が31社でした。宿泊業・飲食サービス業のサイトを読めた807社のうち3.8%です。
宿の名前を持つ会社の実数
登記の側からも見ておきます。国税庁の法人番号データで、商号に次の語を含む法人(閉鎖済みを含む)を数えました。
- 「旅館」…2,124法人。閉鎖率17.2%、有限会社が57.9%
- 「ホテル」…5,568法人。閉鎖率19.8%、有限会社が33.3%、株式会社が53.1%
- 「民宿」…103法人。閉鎖率18.4%、有限会社が69.9%
- 「ペンション」…105法人。閉鎖率26.7%、有限会社が66.7%
- 「民泊」…79法人。閉鎖率15.2%、合同会社が16.5%、有限会社は0
- (比較)株式会社・有限会社・合同会社の全体…閉鎖率13.7%、有限会社の割合は33.2%
旅館・民宿・ペンションは、有限会社の割合が会社全体(33.2%)の1.7〜2.1倍です。有限会社は2006年の会社法施行以降は新しく作れないので、この3つは古くからの家業として続いてきた宿が多いと読めます(有限会社の見方は有限会社は就職先として大丈夫かで詳しく書きました)。一方の「民泊」は有限会社が0で、合同会社が目立ちます。2018年の住宅宿泊事業法の施行以降に作られた会社が中心だからでしょう。
ホテル名の法人の閉鎖率や、都心のホテル名法人に合同会社が多い理由は、大手ホテルの客室単価とホテル名法人の登記データで詳しく扱いました(集計時点が違うため、件数が少しずれています)。
取引や応募の前に確かめる順番
1. 施設の住所から、管轄の保健所を確かめる(都道府県か、保健所設置市か、23区か) 2. その自治体の「旅館業 許可施設一覧」で施設名を探す。載っていれば、許可番号・許可日・営業の種別を控える 3. 一覧の「営業者名」と、相手の会社名が同じか確かめる。違えば、運営委託なのか、建物の所有者なのか、関係を聞く 4. 営業者の会社を法人番号で確かめる(商号・本店・閉鎖の有無) 5. 民泊なら、施設入口の標識と届出番号を確かめる。年間180日の上限がある点も頭に入れる 6. 一覧に見つからなければ、保健所に問い合わせる
取引先の確認項目全体は新規取引先の確認事項に、業種ごとの許認可の調べ方は会社の許認可の調べ方にまとめています。酒を出す宿なら、酒類販売業免許の調べ方もあわせて見てください。
この集計の方法と限界
- 会社サイトのデータ…しょくばログが保存している会社公式サイトのテキストのうち、文字化けの割合が0.5%を超えるものを除いた31,159社が対象です。保存したページの範囲に書かれていなければ「触れていない」と数えています。予約ページや施設ごとの別サイトに書いている会社は、数に入っていない可能性があります
- 言葉の拾い方…「旅館業」「民泊」「住宅宿泊事業」などの文字列の有無で数えています。「第〇号」は、旅館業・簡易宿所・ホテル営業などの語の近く(60文字以内)に番号が書かれているかで判定しており、別の許可の番号を拾っている可能性もあります
- 業種…しょくばログのデータにある日本標準産業分類(大分類)で分けています。宿泊業と飲食サービス業は同じ大分類に入っているため、分けて数えていません
- 商号のデータ…国税庁の法人番号公表サイトのデータで、商号に語を含むかどうかで数えています。「ホテル」には、宿泊業ではない商号(ホテル用品など)が一部残っている可能性があります。有限会社の割合は、各語ではすべての法人種別を分母にしています
- 閉鎖率…閉鎖済みの法人の割合で、倒産だけでなく、合併や清算、休眠会社の整理も含みます
よくある質問
旅館業の許可番号から、施設や会社を検索できますか?
国がまとめて検索できる仕組みはありません。許可を出した自治体(都道府県、保健所設置市、特別区)ごとに管理されているので、施設がある自治体の一覧で探すか、保健所に問い合わせます。京都市のように、許可番号・許可日まで載せた一覧をオープンデータで出している自治体もあります。
東京23区のホテルの許可は、どこで確かめればいいですか?
各区です。東京都が公開している旅館業施設の一覧は、都が設置している保健所の管轄区域が対象で、23区と八王子市・町田市は含まれていません。施設がある区の保健所(区の生活衛生の担当窓口)を確かめてください。
旅館業の許可に有効期間はありますか?
旅館業法の条文には、許可の有効期間や更新の定めはありません。ただし、法律違反があれば許可の取消しや営業停止を命じられることがあります(第8条)。また、営業を譲り受けた会社が地位を引き継ぐには、知事の承認が要ります(第3条の2)。
民泊と旅館業の許可は、どう違いますか?
旅館業は「許可」、民泊(住宅宿泊事業)は「届出」です。民泊は、年間で人を泊める日数が180日を超えないことが条件で、届出住宅ごとに標識を掲げる義務があります。180日を超えて営業するなら、旅館業の許可などの別の枠組みが必要です。
会社のサイトに旅館業の許可が書いていない宿は、無許可なのでしょうか?
それだけでは判断できません。しょくばログの集計では、ホテル・旅館などの名前を持つ会社でサイトを読めた97社のうち、「旅館業」に触れていたのは5社でした。宿を運営する会社でも、サイトに許可を書かないのが普通です。確かめるなら、自治体の許可施設一覧か保健所です。
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※本記事の件数・比率は、しょくばログ収録データ(会社公式サイトの保存分31,159社、国税庁 法人番号公表サイトのデータ)を2026年9月30日に集計したものです。条文は e-Gov法令検索(旅館業法 昭和23年法律第138号、住宅宿泊事業法 平成29年法律第65号)で確認しました。自治体の一覧は、京都市オープンデータ「旅館業法に基づく許可施設一覧」、東京都保健医療局「旅館業施設の一覧について」、東京都産業労働局「住宅宿泊事業者の届出情報の公表について」を2026年9月30日に確認しました。