✍ 古家あきら | 2026-10-02 更新

鳥取・倉吉で明治5年創業のガソリンスタンド「湊屋石油」が破産、負債約4億8000万円。売上は22億円から8億円台へ──しょくばログDBで見る鳥取県の「石油」社名法人55社、閉鎖率23.6%

先に結論です。鳥取県倉吉市でガソリンスタンドを営んできた湊屋石油株式会社が、2026年10月1日に事業を止め、同じ日に鳥取地裁倉吉支部から破産手続き開始決定を受けました。 帝国データバンクの調べとして報じられた負債は約4億8000万円です。創業は1872年(明治5年)。1982年8月期に約22億3300万円あった年売上は、2025年8月期には約8億3000万円になっていました。

報道では、地域の人口減少で利用者が減ったこと、新型コロナで経営環境が悪くなったことに加え、2022年の本店新築にともなう多額の借入金が負担になったことが原因として挙げられています。近年はカフェやチョコレート専門店も始めていました。

しょくばログの台帳で、鳥取県に本店がある法人のうち社名に「石油」を含むものを数えると累計55社。閉鎖の登記がある割合は23.6%で、鳥取県の法人全体(13.5%)を大きく上回ります。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「長く続いている会社だから大丈夫だと思っていた」という声をよく聞きます。この記事は湊屋石油の経営を評価するためのものではありません。地方の老舗と取引する人、そこで働く人が、何を確かめればよいかを書きます。

出典:【倒産】明治5年創業の老舗…ガソリンスタンド運営を主体にLPガス事業も手掛け一時は年間売上高22億円超(BSS山陰放送・2026年10月2日) 出典:湊屋石油が破産手続き開始 倉吉市のGS事業者(日本海新聞)

報道で確認できる事実

BSS山陰放送の報道(帝国データバンクの調べ)から、確かめられる内容を並べます。

日本海新聞も、10月1日付で破産手続きが始まったことを伝えています。この記事で書くことは、報道で確認できる範囲にとどめます。従業員の数や、ガソリンスタンドの店舗数は報道では明らかにされていません。

しょくばログの台帳で見ると

湊屋石油は、台帳ではまだ「活動中」

しょくばログの台帳(国税庁の法人番号の公表データがもと)では、湊屋石油株式会社は倉吉市昭和町に本店がある株式会社として載っていて、閉鎖の登記はまだありません。

破産手続きが始まっても、台帳に閉鎖の記録がつくのは手続きが終わり、登記が閉じられてからです。それまで数か月から1年以上かかることもあります。台帳の「活動中」は、いま事業が動いている証明にはなりません。 倒産したかどうかの確かめ方は会社の実在・倒産の確認方法に、破産・民事再生などの違いは倒産の種類の違いにまとめています。

鳥取県の「石油」社名法人は55社、4社に1社が閉鎖

鳥取県に本店がある法人で、社名に「石油」を含むものは累計55社。活動中は42社で、閉鎖の登記がある割合は23.6%でした。鳥取県の法人全体は累計20,155社、閉鎖の割合は13.5%なので、およそ1.7倍です。

活動中の42社を種類で分けると、有限会社が30社(71.4%)、株式会社が9社(21.4%)です。有限会社は2006年の会社法の施行で新しく作れなくなったので、それより前からある小さな会社が多いと読めます。全国で見ても、社名に「石油」を含む法人は累計8,649社、閉鎖の割合は19.0%、活動中の7,005社のうち有限会社が48.1%です。鳥取県は、全国よりも古い小さな会社の割合が高いことになります。

社名だけで拾った数なので、ガソリンスタンドと関係のない会社が混じったり、スタンドを営んでいても社名に「石油」がない会社がもれたりします。おおよその姿として見てください。全国のガソリンスタンドの退出の動きはガソリンスタンドの倒産・廃業の記事で詳しく扱いました。

倉吉市の法人は1,582社が活動中

倉吉市に本店を置く法人は累計1,828社、活動中が1,582社。閉鎖の割合は13.5%で、鳥取県全体と同じ水準です。倉吉市内で社名に「石油」を含む活動中の法人は、湊屋石油を含めて4社でした。小さな町で燃料を届ける会社は、数えるほどしかありません。

取引先・働く人が確かめたいこと

1. 売上が細るなかでの「大きな借入」

今回の報道でいちばん目を引くのは、売上が最盛期の半分以下になっていたなかで、2022年に本店を新築し、その借入金が重荷になったという点です。建物や設備への投資は、売上が増える見込みがあれば前向きな判断です。しかし地域の人口が減り、利用者が戻らないと、毎月の返済だけが残ります。

取引先として気をつけたいのは、新しい店舗や本社が建ったことを「勢いがある」とだけ受け取らないことです。その投資を何でまかなったのか、売上の流れは上向いているのかを、決算書や取引の様子からあわせて見ておくと安心です。仕入れ値の上昇を価格に乗せにくい業種の事情は価格転嫁できない業種にまとめています。

2. 多角化は「本業の外」で資金を使う

カフェやチョコレート専門店のように、本業と離れた事業を始めるのは、地方の老舗がよく選ぶ道です。うまくいけば新しい収入の柱になりますが、立ち上げには店舗や人手の費用がかかり、軌道に乗るまで時間もかかります。本業の売上が減っている時期と重なると、資金繰りはさらに苦しくなります。創業の古さと今の経営の強さは別物です。見方は老舗企業の見分け方でも書きました。

3. LPガスや灯油の契約先は、切り替え先を確かめる

ガソリンスタンドやLPガスの会社は、地域の家庭や事業所に燃料を届けています。契約先が事業を止めたときは、管財人や代理人からの案内を確かめ、ガスや灯油の供給をどこが引き継ぐのかを早めに確認しておきましょう。LPガスの販売事業者の調べ方はLPガス販売事業者の登録の調べ方にあります。契約の相手は、社名ではなく法人番号で控えておくと取り違えずにすみます。

4. 働く人は、給料と離職の書類を先に確保する

勤め先が事業を止めたとき、まだ払われていない給料は、国の未払賃金立替払制度で一部を受け取れる場合があります。給与明細や雇用契約書、離職票は早めに手元にそろえましょう。流れは給料が遅れる会社と立替払制度で説明しています。取引先の見方全般は取引先の信用の調べ方にまとめています。

よくある質問

破産手続きが始まった会社は、しょくばログでどう表示されますか?

破産手続きが終わって登記が閉じられるまでは「活動中」のまま表示されます。国税庁の公表データに閉鎖の記録が反映されるのはそのあとです。最新の状況は、報道や官報、取引先からの通知もあわせて確かめてください。

社名に「石油」がある会社は倒産しやすいのですか?

台帳では、閉鎖の登記がある割合が全国で19.0%、鳥取県で23.6%と、法人全体より高くなっています。ただし、これは長い年月のあいだに閉じた会社の割合で、いまの倒産のしやすさを示すものではありません。古い有限会社が多いことも影響していると考えられます。個々の会社の良し悪しは、この数字からは判断できません。

創業100年を超える会社でも、倒産することはありますか?

あります。湊屋石油は創業から150年を超えていました。歴史の長さは信用のひとつの目安ですが、いまの売上の流れや借入の重さを示すものではありません。長く続く会社ほど、ここ数年の変化に目を向けることが大切です。

取引先の地方企業の様子を、ふだんから確かめる方法はありますか?

法人番号で会社を特定し、本店の住所や商号の変更、閉鎖の登記がないかを定期的に見ておくのが基本です。あわせて、支払いの遅れや納品・配送の乱れなど、ふだんの取引の変化に気を配ることが、いちばん早いサインになります。

まとめ

湊屋石油は、明治5年から倉吉で燃料を扱ってきた老舗です。売上が最盛期の半分以下になるなかで本店を新築し、カフェやチョコレート店にも手を広げましたが、借入の重さを支えきれず、事業を止める判断に至りました。

しょくばログの台帳では、鳥取県の「石油」社名法人の7割が有限会社で、閉鎖の割合は県全体の約1.7倍です。地方の老舗と付き合う側は、歴史の長さや新しい建物だけで安心せず、売上の流れ、投資のまかない方、ふだんの取引の変化に目を配っておくことが、いちばんの備えになります。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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