✍ 古家あきら | 2026-09-13 更新

ガソリンスタンドの倒産・廃業が5年連続増、1-8月で144件 — 給油所は31年で60,421→26,412カ所に半減。社名に「石油・燃料・給油」を持つ法人10,529件を数えると、閉鎖率は都市部のほうが高かった

帝国データバンク(TDB)が2026年9月12日に公表した調査によると、2026年1-8月にガソリンスタンド(SS)事業者の倒産が19件(前年同期17件)、休廃業・解散が125件(同115件)、あわせて144件が市場から退出しました。前年を約1割上回るペースで、1-8月としては過去10年で最も多い水準です。このペースが続くと退出件数は5年連続の増加となり、年間200件を超えれば2018年以来8年ぶりになります。過去10年の累計では1,700社超のSS事業者が消えました。

TDBが指摘する背景は、人口減少と高齢化、ハイブリッド車・EVの普及による燃料需要の減少、セルフ式や大手チェーンとの競争でガソリン1リットルあたりの利益が数円しか残らない構造です。採算面では、地方では4社に1社が赤字、人口が多い首都圏でも2割を超える事業者が赤字で、京阪神や中京圏は赤字割合が相対的に低い、という地域差が示されています。

出典:帝国データバンク「地方で消えるガソスタ 倒産・廃業、5年連続で増加 10年で1700社超が消滅」(2026年9月12日・PR TIMES)

出典:Yahoo!ニュース(帝国データバンク配信)同記事(2026年9月12日)

先に結論を書きます。「ガソリンスタンドが消えている」のは、今年始まった話ではなく、31年続いている減り方の途中です。 ただし今年の144件には、これまでと違う読み方が要る点が2つあります。ひとつは、退出の大半(144件中125件)が倒産ではなく「休廃業・解散」で、外から見えにくい消え方だということ。もうひとつは、赤字が多いのは地方なのに、うちのデータで登記が閉じている割合が高いのは都市部だということです。順に書きます。

しょくばログという会社データベースを運営していると、「近所のスタンドが閉まったが、運営会社はまだあるのか」「スタンドの会社に応募したいが、この業界は大丈夫か」という相談が来ます。この記事では、TDBの数字、資源エネルギー庁の登録データ、うちのデータベースの3つを並べて、それぞれが何を数えていて何を数えていないかを分けます。

給油所は31年で半分以下になった — 60,421から26,412カ所へ

まず、公的な「給油所の数」から。経済産業省・資源エネルギー庁は毎年度末、揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)にもとづく登録ベースで、揮発油販売業者数と給油所数を集計しています。近畿経済産業局が公表資料を転載した推移表を見ると、全国の給油所数は次の通りです。

ピークからの減少は 34,009カ所、率にして56.3%。給油所の数は31年で半分以下になっています。2025年度の減少幅597カ所は、2020年度以降の5年間(632、530、512、549、405)と比べても大きい部類です。また、揮発油販売業者(事業者)の数は2024年度末で12,113者、前年度比294者(2.36%)減でした。

出典:近畿経済産業局「給油所数」(資源エネルギー庁「揮発油販売業者数及び給油所数の推移(登録ベース)」令和7年度末の転載、2026年8月31日更新)

出典:資源エネルギー庁「令和6年度末揮発油販売業者数及び給油所数を取りまとめました」(2025年7月30日)

ここで注意したいのは、「給油所の数」と「事業者の数」と「倒産・廃業の件数」は別の数字だということです。1社が複数の給油所を運営していれば、店を1つ閉めても事業者の数は減りません。逆に、TDBの144件は「事業者の退出」を数えていて、その事業者が持っていた給油所が何カ所かは数字に出ません。この違いを踏まえて、うちのデータを見ます。

社名に「石油・燃料・給油・ガソリン」を持つ法人10,529件 — 閉鎖率18.5%、全国平均は13.2%

しょくばログの法人データベース(国税庁の法人番号公表サイトをもとにした全国5,791,529件)で、社名に「石油」「燃料」「給油」「ガソリン」のいずれかを含む法人を数えました。「◯◯石油店」「◯◯燃料」のような、地場のスタンドや燃料店に多い社名の型です。元売・卸・石油化学の会社も社名で拾ってしまうため、業種を厳密に切り出したものではなく、「スタンド・燃料店に多い社名の法人」の集計として読んでください。

閉鎖事由の配分が全国並み、というのは意外と大事な点です。ゴルフ場の民事再生を読んだ記事では、社名に「ゴルフ」を持つ法人は登記官による閉鎖(休眠のまま放置されて登記が閉じられるケースなど)が43.2%と突出していました。スタンド・燃料店の社名を持つ法人は、閉めるときに清算結了まできちんと手続きしている割合が全国と変わらない。「赤字でも、畳むときは畳む」商売だと読めます。TDBの144件のうち125件が休廃業・解散だった、という数字とも整合します。

倒産と休廃業・解散の違い、そして登記の閉鎖が何を意味するかは、倒産1,037件は「17年ぶり」水準でも会社が消える出口は倒産だけではない、という記事と、会社が解散・休眠しているか調べる方法の記事に書いています。

有限会社が株式会社より多い — 「新しく作れない会社」が半分を占める業種

法人種別の内訳は、うちのデータベースで見る業種の中でもかなり珍しい形でした。

全国の全法人では有限会社の割合は28.9%(1,675,486件)です。それがこの集計では49.2%と、株式会社を上回っています。有限会社は2006年の会社法施行以降、新しく作ることができません。つまり、この社名の型を持つ法人の半分は、少なくとも20年前から続いている会社だということです。合資会社・合名会社が300件超あるのも同じ話で、戦後すぐから続く地場の燃料店の名残と読めます。

これは、TDBが「地方で消えるガソスタ」と表現している現象の、登記側の姿だと思います。新規参入がほとんどなく、20年以上前からある会社が一つずつ減っていく。閉鎖率が全国平均より5ポイント高いのは、業界が荒れているというより、母集団が古いからです。会社の種類ごとの違いは法人の種類一覧の記事を参照してください。

閉鎖率は「赤字が多い地方」より都市部のほうが高い

ここが今回いちばん引っかかった数字です。TDBの調査では赤字の割合は「地方で4社に1社、首都圏で2割超、京阪神・中京は相対的に低い」でした。うちのデータで、同じ地域区分で登記の閉鎖率を出すと、順序が逆になります。

都道府県別(50件以上ある県のみ)で閉鎖率が高いのは、滋賀26.6%(109件中29件)、三重24.9%(197件中49件)、福井24.7%(97件中24件)、東京23.9%(792件中189件)、島根23.3%(133件中31件)。低いのは、青森11.0%(173件中19件)、沖縄12.6%(159件中20件)、秋田12.6%(111件中14件)、高知13.5%(126件中17件)、山梨13.6%(88件中12件)でした。件数が多い順では、東京792、北海道654、愛知522、大阪430、千葉373件です。

「赤字が多いのは地方、閉鎖が多いのは都市部」を、うちのデータだけで説明することはできません。ただ、矛盾ではないと思っています。考えられる読み方を2つ書きます。

1. 地方では「閉められない」。TDBのリリースの表題にある「地域最後の給油所」という言葉の通り、その町で唯一の給油所になると、赤字でも辞めにくい。資源エネルギー庁は給油所が少ない市町村を「SS過疎地」として対策の対象にしており、赤字と存続は別の力で決まっています(参考:資源エネルギー庁「SS過疎地対策について」) 2. 都市部では「閉めたほうが合理的」になりやすい。土地の価値が高く、給油所をやめて別の用途に転じる選択肢がある。うちの閉鎖事由の配分(清算結了が6割超)は、「潰れた」より「畳んだ」が多いことを示しています

どちらも仮説で、うちのデータは登記の開閉しか見ていません。断定できるのは、赤字率の高さと登記の閉鎖率の高さは、この業種では一致していない、という事実だけです。

応募先・取引先がスタンド運営会社のとき、何を見るか

TDBの数字と登記の数字を並べたうえで、実際に1社を見るときの確認点をまとめます。

なお、うちのデータベースには、この社名の型の法人のうち182件が厚生労働省「しょくばらぼ」に企業情報を載せていました。従業員規模を書いた182件のうち、30人未満が65件、100人未満が105件、300人以上は19件。中央値は61人です。スタンドの会社は「小さい会社」のイメージがありますが、複数店舗を運営して100人を超える会社も少なくありません。社員数が少ないことをどう読むかは社員数が少ない会社は危ないのかの記事に書きました。

よくある質問

ガソリンスタンドの倒産は今年どれくらい増えているのですか?

帝国データバンクの2026年9月12日発表によると、2026年1-8月の倒産は19件で前年同期の17件を上回り、休廃業・解散125件(前年同期115件)とあわせて144件が退出しました。1-8月としては過去10年で最多で、通年で200件を超えれば2018年以来8年ぶりです。件数の多くは倒産ではなく休廃業・解散だという点に注意してください。

全国の給油所の数はいくつですか?

資源エネルギー庁の登録ベースの集計で、2025年度末(2026年3月31日現在)の給油所数は26,412カ所です。ピークだった1994年度末の60,421カ所から56.3%減っています。2024年度末は27,009カ所で、1年で597カ所減りました。

社名に「石油」が付く会社は危ないのですか?

しょくばログのデータでは、社名に「石油」「燃料」「給油」「ガソリン」を含む法人10,529件のうち閉鎖済みは1,952件(18.5%)で、全国平均の13.2%より高い水準です。ただし半数が有限会社で、20年以上続いている会社が多い集計でもあります。業種全体の数字より、その会社の登記が生きているか、給油所を何カ所運営しているか、燃料以外の収入があるかを個別に見るほうが役に立ちます。

赤字が多いのは地方なのに、閉鎖率が都市部で高いのはなぜですか?

うちのデータだけでは断定できません。地方では「地域最後の給油所」として赤字でも続けざるを得ない事情があり、都市部では土地の転用など閉める選択肢が多い、という読み方はできます。登記の閉鎖率は「経営が苦しいか」ではなく「会社を畳んだか」を示す数字で、両者は別物だと考えてください。

まとめ

会社名や地域から実際の登記状況を確かめたいときは、しょくばログの会社検索から社名で引いてください。

古家あきら
全国の会社データベース「しょくばログ」を運営しています。会社の登記・求人・クチコミのデータと毎日向き合う中で気づいた“会社の調べ方”を、現場の目線で書いています。

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