✍ 古家あきら | 2026-10-05 更新
引越し業者の許可を確認する方法 — トラックの引越しは国交省の「一般貨物」の許可、軽は届出。引越しを事業として掲げる会社サイト173社のうち、許可に触れていたのは24.3%
先に結論です。トラックで他人の荷物を運んで運賃を受け取る引越し業者は、貨物自動車運送事業法3条により「一般貨物自動車運送事業」の許可を国土交通大臣から受けていなければなりません。 申請の窓口は各地の運輸局です。軽自動車だけで運ぶ場合は許可ではなく届出(36条)で、こちらは「軽貨物」と呼ばれることが多い区分です。
許可を受けているかどうかは、次の順で確かめるのが現実的です。
- 見積書の「事業許可番号」を見る:国の「標準引越運送約款」は、見積書に事業許可番号を書くことを定めています
- トラックのナンバーを見る:一般貨物の事業用トラックは緑ナンバーです
- 会社のサイトに運送約款と運賃・料金が載っているかを見る:個人向けの運賃・料金と約款は、営業所での掲示に加えてネットでの公表が義務になっています(一部の小規模な事業者を除く)
- 運輸局に問い合わせる/行政処分を検索する:処分歴は国交省のサイトで引けます
一方で、会社のサイトを見ても、許可のことはあまり書かれていません。 しょくばログという会社データベースを運営していると、業種をまたいで会社の公式サイトの文章を読む機会が多いのですが、保存している31,159社のサイトのうち、引越しを事業として掲げている会社は173社でした。そのうち一般貨物の許可や許可番号に触れていたのは42社(24.3%)、「標準引越運送約款」に触れていたのは11社(6.4%)です。
ただし、この数字は「許可を受けていない会社が多い」という意味ではありません。理由は後で書きます。
引越しに要る許可は「貨物自動車運送事業」の許可
引越しは「貨物の運送」の一種
引越しのための特別な許可制度があるわけではありません。引越しは、法律の上では貨物自動車運送事業の中の仕事です。貨物自動車運送事業法2条は、他人の需要に応じて、有償で、自動車を使って貨物を運ぶ事業を「一般貨物自動車運送事業」と定めています。家具や段ボールを運んで運賃を受け取る引越しは、まさにこれにあたります。
使う車によって、必要な手続きが分かれます。
- トラック(軽自動車以外)で運ぶ:一般貨物自動車運送事業の許可(3条)
- 軽自動車(三輪以上の軽自動車と二輪車)だけで運ぶ:貨物軽自動車運送事業の届出(36条)
単身向けの小さな引越しを軽バンで請け負う業者は、届出の側にいることがあります。届出は許可よりも参入の条件が軽い手続きで、同じ「引越し業者」でも、法律の上での立場は違います。
無許可で営むと罰則がある
許可を受けずに一般貨物の事業を営むと、3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金(または両方)です(70条1号)。届出をせずに軽の運送事業を営んだ場合は、100万円以下の罰金です(75条11号)。
また、許可を受けた事業者が名義を他人に使わせることも禁じられています(28条)。許可を持つ会社の名前で、許可を持たない別の業者が実際の作業をする形は、名義貸しにあたるおそれがあります。
「標準引越運送約款」は、許可を受けた業者のための決まり
一般貨物の事業者は、運送約款(お客さんとの取引のルール)を定めて国の認可を受けます(10条1項)。ただし、国が定めて公示した標準運送約款と同じものを使う場合は、認可を受けたものとみなされます(10条3項)。
引越しについては、国土交通省が「標準引越運送約款」(平成2年運輸省告示第577号、令和7年国土交通省告示第193号で改正)を定めています。この約款の1条は、適用範囲を「一般貨物自動車運送事業により行う引越運送」と書いています。つまり、標準引越運送約款は、許可を受けたトラック事業者の引越しを前提にしたルールです。
約款の中には、利用者が知っておくと役に立つ決まりがいくつもあります。
- 見積書の記載事項:申込者の氏名、受取日時、運賃等の合計額と内訳、解約手数料の額、そして事業者の名称・事業許可番号・住所・電話番号などを書く(3条2項)
- 見積料は取らない:下見をした場合の費用だけは、事前に金額を伝えて了解を得たうえで請求することがある(3条4項)
- 見積りの段階で内金・手付金は取らない(3条5項)
- 見積り時に約款を示す(3条6項)
- 受取日の3日前までに、見積書の内容に変更がないか確認する(3条7項)
- 解約・延期の手数料は、前々日に伝えたら見積運賃等の20%以内、前日は30%以内、当日は50%以内。3日前までの確認をしなかった場合は請求しない(21条)
- 荷物の一部がなくなった・壊れたときは、引き渡しの日から3か月以内に通知する。通知しないと業者の責任は消える(25条)
見積書に事業許可番号が書かれていなければ、そこで確かめるきっかけになります。
引越し業者の許可を確認する方法
1. 見積書の「事業許可番号」を見る
いちばん手早いのは、見積書に書かれた事業許可番号です。標準引越運送約款を使う業者なら、見積書に事業許可番号が書かれているはずです。
しょくばログが保存している会社サイトの中で許可番号らしい表記を拾うと、「関自貨第◯◯号」「近運自貨第◯◯号」「中運自貨第◯◯号」「北自貨◯◯号」のように、運輸局の略称に「自貨」と番号が続く形が多く見られました。
ただし、「◯自貨」の番号が書いてあれば一般貨物の許可、とは限りません。 サイトで見つけた13件のうち、少なくとも5件は「第一種貨物利用運送事業」や「自動車運送取扱事業」の番号でした。利用運送は、自社でトラックを持たずに他の運送会社に運ばせる事業で、別の制度です。番号のすぐ前に「一般貨物自動車運送事業」と書かれているかを見てください。
2. トラックのナンバーを見る
一般貨物の事業用トラックは緑ナンバーです(国土交通省の運輸局も、貨物自動車運送事業を「緑ナンバー」と案内しています)。見積りや下見に来た業者のトラックが自家用の白ナンバーなら、許可を受けていない可能性があります。軽の事業用は黒地のナンバーです。
3. サイトの運送約款と運賃・料金を見る
貨物自動車運送事業法11条は、一般貨物の事業者に、個人向けの運賃・料金と運送約款を営業所に掲示し、あわせてインターネットで公表することを求めています(事業の規模が著しく小さい場合などは除く)。引越しは個人のお客さんが中心の仕事なので、許可を受けた業者のサイトには約款や料金の説明が載っていることが多いはずです。
4. 運輸局に問い合わせる
許可の窓口は各地の運輸局です。許可を受けた事業者の一覧を全国まとめて引ける公式の検索窓口は、執筆時点で私は見つけられませんでした。業者名と所在地を伝えて、管轄の運輸局(運輸支局)に問い合わせるのが確実です。
5. 行政処分の履歴を検索する
国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」や、「自動車総合安全情報」の行政処分情報検索では、トラック事業者(一般貨物・軽貨物など)に対する事業停止や許可の取消しなどの処分を、事業者名や都道府県で検索できます。処分歴が出てくるということは、その会社が許可(または届出)のもとで事業をしている、という裏付けにもなります。処分の調べ方は会社の行政処分を調べる方法にまとめています。
6. 「引越安心マーク」の認定一覧を見る
公益社団法人全日本トラック協会は、引越事業者優良認定制度で認定した事業者に「引越安心マーク」を交付しています。協会の説明では、認定の柱は次の4つです。
- 標準引越運送約款を守る
- 代表お客様窓口とお客様対応責任者を置く
- 引越管理者講習の修了者を全事業所に置く
- 消費者契約法や個人情報保護法など、引越しに関わる法令を守る
協会のサイトに認定事業者の一覧があります。初回の平成26年度は、引越サービス名称の単位で301事業者、1,739事業所が認定されたと協会は発表しています。マークがないことは許可がないことを意味しませんが、ある会社は一つの目安になります。
会社サイトには、どこまで書いてあるのか(しょくばログの集計)
ここからは、しょくばログが保存している会社公式サイトの文章(文字化けの多いものを除いた31,159社)を数えた結果です。
「引越」に触れる会社と、引越しを事業として掲げる会社
「引越」「引っ越」という言葉に触れていた会社は1,208社(3.9%)でした。ただ、この中には「本社を引越しました」というお知らせも含まれます。そこで、「引越センター」「引越サービス」「単身引越」「オフィス引越」のように、引越しをサービスとして掲げる言い回しがある会社に絞ると173社になりました。以下はこの173社の数字です。
許可・約款・マークの書き方
- 一般貨物自動車運送事業に触れる:37社(21.4%)
- 一般貨物の許可・許可番号のいずれかに触れる:42社(24.3%)
- 「◯自貨第◯号」の形の番号を載せている:13社(7.5%)。うち少なくとも5件は利用運送・運送取扱の番号
- 「運送約款」に触れる:17社(9.8%)。うち「標準引越運送約款」と書いていたのは11社(6.4%)
- 引越安心マークに触れる:4社(2.3%)
- 軽貨物・貨物軽自動車運送事業に触れる:19社(11.0%)
- Gマーク(安全性優良事業所)に触れる:19社(11.0%)
- 上のどれにも触れていない:115社(66.5%)
引越しを掲げる会社の3社に2社は、許可にも約款にも、業界のマークにも触れていませんでした。
この数字の読み方
この数字は「許可を受けていない会社が3分の2もある」という意味ではありません。理由は3つあります。
- しょくばログが保存しているのは、サイトの文章の一部です。 約款や許可番号は「会社概要」や「約款」の別ページにあることが多く、保存した範囲に入っていない場合があります
- 引越しが本業でない会社も含まれます。 173社の業種(しょくばログの法人DBに付いている日本標準産業分類の大分類)を見ると、運輸業・郵便業は62社(35.8%)で、ほかに製造業15社、建設業9社、卸売・小売業9社などがありました。オフィス移転の支援や、家具・設備の搬入を手がける会社が「オフィス引越」を掲げている例があり、こうした会社は運送そのものを運送会社に任せていることがあります
- 元請けと実際に運ぶ会社が違うことがあります。 引越しの受付だけをして、許可を持つ別の運送会社に作業を頼む形もあります。その場合は、実際に運ぶ会社の許可を確かめることになります
それでも、利用者がサイトだけで許可を確かめられる会社は4社に1社ほど、というのが実態です。見積書と運輸局で確かめるほうが確実です。
法人の形と所在地
173社のうち、株式会社が163社(94.2%)でした。所在地は東京都52社、大阪府17社、愛知県16社、神奈川県10社の順です。
社名に「引越」を含む法人
国税庁の法人番号のデータをもとにした、しょくばログの法人DBで社名を数えると、社名に「引越」を含む法人は246法人(「引っ越」を含むものは別に2法人)ありました。
- 株式会社149(60.6%)、有限会社58(23.6%)、合同会社10、その他の設立登記法人27など
- すでに閉鎖している法人は38(15.4%)
- 閉鎖していない法人の所在地は、東京都35、大阪府28、神奈川県17、福岡県17、北海道13の順
社名に「引越」を含んでいても、法人DBの業種が運輸業・郵便業になっているのは21法人で、ほとんど(224法人)は業種が付いていません。社名だけでは、その会社が許可を受けた運送会社かどうかはわかりません。
引越し業者を選ぶ・その会社で働くときに見ておきたいこと
- 見積書に事業許可番号があるか:あれば、番号の前に「一般貨物自動車運送事業」とあるかを確認する
- 見積料・内金を求められていないか:標準引越運送約款では、見積料も見積り時の内金も取らない決まり
- 解約手数料の額が見積書に書いてあるか:書くことが約款の決まり
- 不用品の引取りを頼むなら、別の許可も要る:家庭のごみを運ぶには市区町村の一般廃棄物の許可が要り、買い取るなら古物商の許可が要ります。詳しくは不用品回収業者の許可を確認する方法と古物商許可を確認する方法
- 会社そのものが実在し、閉鎖していないか:法人番号と登記の状況で確かめられます(会社が実在するか・倒産していないかを確かめる方法)
引越し会社で働くことを考えている人にとっても、許可は大事な目安です。許可のある事業者には、運行管理者を置くことや、運転者の労働時間を管理することなど、安全のための義務がかかります。許可全般の調べ方は会社の許認可を調べる方法、運送業界の経営環境は運送会社の破産と燃料高・運送業の法人データで書いています。荷物を預かる側の倉庫については倉庫業の登録を確認する方法をどうぞ。
参考までに、国土交通省の集計では、令和7年3月31日時点の貨物自動車運送事業者(軽を除く)は62,383者でした。内訳は一般(特別積合せ・霊柩を除く)56,954者、霊柩4,799者、特別積合せ323者、特定307者です。引越しを手がける会社は、この中のごく一部です。
よくある質問
軽トラックや軽バンの引越し業者でも大丈夫ですか?
軽自動車だけで運ぶ業者は、許可ではなく届出(貨物自動車運送事業法36条)で事業ができます。違法ではありません。ただし、標準引越運送約款は一般貨物の事業者の引越しを前提にしたものなので、約款の決まりが当てはまるかどうかは、見積りの際にどのルールで請け負うのかを確かめてください。
見積書に許可番号が書いていない業者は違法ですか?
それだけで違法とは言えません。標準引越運送約款ではなく、独自に認可を受けた約款を使っている場合もありますし、軽の届出の業者の場合もあります。ただ、許可番号がなければ、どの許可(または届出)で事業をしているのかを業者に聞き、運輸局で確かめるきっかけにしてください。
引越しのキャンセル料はいつからかかりますか?
標準引越運送約款では、荷送人の都合で解約・延期する場合、手数料がかかるのは受取日の前々日・前日・当日に伝えたときだけです。額は見積運賃等の20%以内・30%以内・50%以内です。業者が受取日の3日前までの確認をしなかった場合は請求しません。独自の約款を使う業者は条件が違うことがあるので、見積書の解約手数料の欄を確かめてください。
引越しで家具が壊れたら、いつまでに伝えればいいですか?
標準引越運送約款では、荷物の一部がなくなった・壊れたことについての業者の責任は、荷物を引き渡した日から3か月以内に通知しないと消えます。気づいたら早めに、書面やメールなど記録が残る形で伝えておくのが安全です。
引越し業者の許可は会社の登記簿に載りますか?
載りません。登記簿にあるのは商号・本店・目的・役員などで、運送事業の許可は運輸局の手続きです。登記の「目的」に「一般貨物自動車運送事業」と書いてあっても、それは「その事業をする予定がある」という意味で、許可を受けた証明にはなりません。
データについて
- 会社サイトの集計:しょくばログが保存している会社公式サイトの文章のうち、文字化けの多いものを除いた31,159社。表現の数え方は正規表現ベースで、個社名は出していません。業種は日本標準産業分類の大分類で、しょくばログの法人DBに付いているものを使っています。集計スクリプトは `scripts/analyze_hikkoshi_kyoka_hp_cache.py`(2026年10月5日実行)
- 社名の集計:国税庁法人番号公表サイトのデータをもとにした、しょくばログの法人DB
- 制度の説明:貨物自動車運送事業法(2条・3条・10条・11条・28条・36条・70条・75条、e-Gov法令検索)、国土交通省「標準引越運送約款」(平成2年運輸省告示第577号、最終改正 令和7年国土交通省告示第193号)、近畿運輸局「引越Q&A」、国土交通省中部運輸局「貨物自動車運送事業(緑ナンバー)」、国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」・自動車総合安全情報「事業者の行政処分情報検索」、公益社団法人全日本トラック協会「引越事業者優良認定制度(引越安心マークについて)」
- 事業者数:国土交通省「貨物自動車運送事業者数(令和7年3月31日現在)」