✍ 古家あきら | 2026-10-04 更新
技能実習の「認定取消し」は累計770社。理由の3割は労働安全衛生法違反だった──入管庁の公表一覧を落として、しょくばログの台帳563社と照らした
先に結論です。技能実習の受入企業が「技能実習計画の認定」を取り消された件数は、2018年度から2026年9月29日までで770件です。出入国在留管理庁(入管庁)が年度別の一覧をExcelで公開しており、会社名・所在地・取消しの理由・日付まで誰でも確認できます。
その一覧を全件読むと、理由にいちばん多く出てくるのは「労働安全衛生法違反で罰金刑」の265件(34.4%)でした。外国人の扱いに固有の問題より前に、職場の安全管理という、日本人の従業員にも同じように関わる問題で処分に至っている例が多いことになります。
しょくばログという会社データベースを運営していると、「行政処分は登記簿にも法人番号にも載らない」という事実に何度も行き当たります。この記事は個別の会社を評価するものではありません。公表されている一覧の読み方と、台帳と照らして分かったことを書きます。
出典:東京商工リサーチ「外国人『技能実習制度』認定取消しは累計754社」(2026年10月1日)
出典:出入国在留管理庁「公表情報(監理団体一覧、行政処分等、失踪者数ほか)」
報道で確認できる事実
東京商工リサーチ(TSR)の集計は、法務省・厚生労働省が2018年度以降に公表した認定取消しを対象にしたものです。
- 累計754社(2026年8月まで)。個人企業などを除いた660社を分析
- 年度別では2021年度の177社が最多。2026年度は4〜8月で50社が公表され、前年度と同じ水準
- 産業別は製造業255社(38.6%)、建設業214社(32.4%)で、2業種で全体の7割。細かい業種では「とび工事業」が51社で最多
- 都道府県別は愛知県46社、大阪府42社、広島県41社、愛媛県37社、東京都28社の順
- 売上高が分かった552社のうち、1億円以上5億円未満が185社(33.5%)で最多。1億円未満も115社(20.8%)ある一方、100億円以上も38社
- 660社のうち24社は、すでに休廃業・解散の状態にある
- 国内の技能実習生は2025年末で約45万人。制度は2027年4月から「育成就労制度」に移る
入管庁の一覧を落として数えた
TSRの記事を読んだあと、入管庁のページから平成30年度〜令和8年度の9本のExcelを落とし、受入企業ごとに1件として数えました。入管庁が同じページで出している集計表(2026年9月29日現在)と件数が一致することを確かめています。
年度別の件数
- 2018年度:8件
- 2019年度:23件
- 2020年度:77件
- 2021年度:177件
- 2022年度:114件
- 2023年度:120件
- 2024年度:55件
- 2025年度:130件
- 2026年度(9月29日まで):66件
TSRが数えた8月までの50件に、9月の16件が加わって66件になっています。2026年度は6月に19件、7月に14件、9月に16件と、夏以降に公表が続いています。取り消された技能実習計画の数は合計1万1,874件で、1社あたり平均すると約15件の計画が一度に取り消された計算です。
措置理由に出てくる言葉
1件の理由に複数の違反が書かれていることがあるため、重複して数えています(770件中)。
- 労働安全衛生法違反で罰金刑:265件(34.4%)
- 認定された計画どおりに技能実習を行わせていない:144件(18.7%)
- 計画どおりに賃金を支払っていない:110件(14.3%)
- 技能実習生の人権を著しく侵害した:97件(12.6%)
- 虚偽の帳簿を出した・虚偽の答弁をした:87件(11.3%)
- 不法就労に関わった:45件(5.8%)
労働安全衛生法違反は、TSRの集計で製造業と建設業が7割を占めることと符合します。機械や高所での作業がある現場では、安全措置の不備が労災につながり、それが送検・罰金を経て認定取消しにまで進む、という順番です。
しょくばログの台帳と照らすと
770件のうち、社名に株式会社・有限会社などの法人格がつくものが679件、個人名などが91件でした。法人679件を、社名と都道府県の組み合わせでしょくばログの台帳(国税庁の法人番号データ)に当て、1社に特定できたのが563社です。
9割以上は、今も登記が「活動中」
- 登記が閉鎖されている:32社(5.7%)。うち23社は取消しの日より後に閉鎖
- 残る531社は登記上は活動中。そのうち512社(96.4%)がインボイスの登録事業者
- 法人の種類は株式会社412社(73.2%)、有限会社134社(23.8%)、合同会社13社
台帳全体で登記が閉鎖されている法人は13.3%なので、それより低い数字です。認定取消しは比較的最近の出来事が多く、ほとんどの会社は処分のあとも事業を続けている、と読むのが自然です。「処分を受けた会社は消えている」とは限らず、今も求人を出したり取引をしたりしている可能性がある、ということでもあります。
台帳の表示だけでは処分は分からない
しょくばログの会社ページに出る「活動中」は、登記が閉じていないという意味です。行政処分の有無は、国税庁の法人番号データにも商業登記にも記録されません。処分を確かめるには、公表元の一覧を自分で見る必要があります。業種ごとの公表先は会社の行政処分を調べる方法にまとめています。
受け入れる会社・応募する人・取引先が確かめたいこと
1. 入管庁のExcelで社名を検索する
入管庁の公表ページで年度別のExcelを開き、社名や所在地で検索すれば、取消しの有無と理由が分かります。監理団体の側の名簿は登録支援機関・監理団体を調べる方法で扱いました。
2. 労基法違反の公表も合わせて見る
認定取消しの理由の多くは、先に労働安全衛生法や労働基準法の違反で送検されたことです。厚生労働省の公表は労基法違反で公表された企業の調べ方、労災の見え方は会社の労災事故は外から分かるかで書いています。
3. 契約や求人の会社を法人番号で押さえる
一覧に載るのは社名と所在地です。同じ社名の別会社もあるので、取引先や応募先は法人番号まで確かめると取り違えを防げます。
4. 受け入れる側は、安全管理を外国人対応と切り離さない
理由の3割強が労働安全衛生法違反だったことは、受入企業にとって重い数字です。言葉の壁がある職場ほど、安全教育や表示の工夫が欠かせません。2027年4月の育成就労制度への移行に向けて、受け入れの仕組みを見直す会社も多いはずです。
よくある質問
Q. 認定取消しを受けた会社の一覧はどこで見られますか。
出入国在留管理庁の「公表情報(監理団体一覧、行政処分等、失踪者数ほか)」のページに、年度別のExcelがあります。外国人技能実習機構(OTIT)のサイトの「行政処分等」からもたどれます。
Q. TSRの754社と、この記事の770件はなぜ違うのですか。
TSRは2026年8月までの公表を集計しています。この記事は入管庁の一覧を9月29日現在で数えたため、9月分の16件が加わっています。
Q. 取消しを受けた会社は、もう外国人を雇えないのですか。
技能実習法では、認定を取り消された会社は一定期間、新たに計画の認定を受けられない決まりがあります。期間や他の在留資格での雇用の扱いは、入管庁や専門家に確認してください。
Q. しょくばログで「活動中」と出ていれば、処分は受けていないのですか。
いいえ。「活動中」は登記が閉じていないという意味で、行政処分の有無は表しません。今回照らした563社のうち531社は、処分後も登記上は活動中でした。
Q. 外国人を多く雇っている会社を、台帳から探せますか。
台帳には従業員の国籍は載っていません。外国人が設立する会社の動きは外国人の起業が2026年上期は4,731社に減った話で別に扱っています。
まとめ
技能実習の受入企業への認定取消しは、2026年9月29日現在で770件。理由にいちばん多いのは労働安全衛生法違反の罰金刑で、3件に1件の割合でした。しょくばログの台帳と照らせた563社のうち、9割以上は今も登記上は活動中です。処分は登記にも法人番号にも出てこないので、気になる会社は公表元の一覧で確かめる。入社前の確認全般はブラック企業の見分け方も参考にしてください。